第065話 リーレンさんの婚約者と暗殺者掃除?
ハーメルに着いて早々に最悪と遭遇した。
S級暗殺者マジでパない、比べてA級の可愛い事よ。
人じゃなく魔物を狩れよと心底言いたい。
本当にもう、この世界の人間って…と、思うが現実は変わらない。
あー、もう、本当にもうどうしろって言うんだ?あんな化け物。
あんまりな状況にゴロゴロと転がる。
いや、だが、嘆いてばかりも居られない。
寧ろあそこで遭遇出来て幸運だったと考えるべきだ。
だからマーキング出来たと、これでギャバンの行動は此方に筒抜けだ。
襲撃迄に何とかあと1つ【LV】を上げて試練に挑み差を縮めておく。
頑張れ私、負けるな私、これもセアラを護る為だ。
そう考えて自分を鼓舞する、そうしている間にも馬車は進み領主邸、そうすっかり忘れていたがリーレンさんの婚約者である、ノットレザンジュ・レバノンが居る屋敷に着くのだった。
「聖女様、ご来訪をお待ちしておりました。どうぞ当家にごゆるりとご滞在を、そしてリーン久しぶりだね。元気にしていたかい?」
ぬう?!初めて見る程にカッコいい男性、そう言えばこういうタイプに会うのは転生して初だな。
リーレンさんの婚約者、初対面は合格を上げよう。
「此方こそ、今年もまたお世話になります。よろしくお願いします。ノットレザンジュ様」
セアラが手を差し出しノットレザンジュ――長いからノッ君でいいやが握る、微笑みは絶やさない、セアラを見下したりもしない。
ふむふむ、悪くは無い、中々の好青年だ、良いぞノッ君よ、その調子だと眺める。
一方でリーレンさんさんはどうかなーと見るともじもじしていらっしゃる。
何か普段の凛としたリーレンさんと違って可愛い。
と、言うよりもこっちが素かな?普段は騎士という事で仮面を付けて居るんだろう。
「お、お久しぶりでございます。ノットレザンジュ様」
「ああ、僕等の仲にそんな堅苦しい言葉は必要ない、昔通りで良いよ、リーン」
「で、では、ノッジュ、久しぶりです。元気そうで何よりです」
ふーん、リーレンさんはノッ君をノッジュ呼び、ノッ君はリーレンさんをリーン呼びか、予想以上に仲が良いな。
リーレンさんはまだちょっと硬いけど初々しくてカワイー。
一方でノッ君は押せ押せだ、あ、手を握った後に手の甲に唇落とした、リーレンさん真っ赤だ。
「リーンも元気そうで良かった…と、言いたいが疲れているね。やはり噂の暗殺者騒動か、今夜は当家の騎士が護衛を務めるからゆっくり休むと良い」
ほう、リーレンさんの状況を見抜くとはやるな!そして気遣いも出来るノッ君には花丸を上げよう。
しかし、やっぱりこれだけ派手に襲撃されてれば噂にもなるか、対策はされてるんだろうか?
「現在は聖王家、公爵家、侯爵家が総動員で依頼主を突き止め止めさせようとしている。金の流れから尻尾を掴んだようだから後数日でこの騒動も終わりだろう」
どうやらハミルトンの言ってた事は本当だったようだな。
まぁ、知らなくても此処で教えて貰えたと考えればやっぱあの戦いは損しかしてない、やはり許すマジだハミルトン。
「ではその数日を此処で過ごさせて頂いても?」
「大歓迎です。聖女様、十分に疲れをお癒し下さい」
うむ、見事だ、リーレンさんに相応しい男と認めよう、末永く幸せになるがよい。
「で、ですが私は聖女様の護衛騎士として…」
「そう硬い事を言わずに、リーンに似合うドレスを準備させてあるんだ。是非、着てほしい」
「リーレン、今日から数日は護衛騎士はお休みです。たっぷりとノットレザンジュ様に可愛がってもらって下さい」
セアラのその言葉に絶望した顔で「せ、聖女様ぁぁぁぁぁぁぁっ」と言いながらノッ君に連れて行かれるリーレンさん。
ちょっと可哀相な気もするけどセアラもノッ君も楽しそうだ。
そう言えばドレス姿のリーレンさんって見た事がないな、楽しみだと思いながら私とセアラ、ガレスさんと騎士さん達はレバノン伯爵邸に入って行った。
晩餐の食堂には私も入れて貰えた。
晩御飯は美味しかった、ドレス姿のリーレンさんめっちゃ可愛かった。
そして語られる2人の過去、何でも王都の夜会でリーレンさんを見初めたノッ君の一目惚れらしい、其処から押しに押して今の関係に成ったそうだ。
ホントに色々とやったらしい、手紙を送りまくり、花を贈り、アクセサリーを贈り、可愛い物好きと知ってファンシーグッズを贈ったり、騎士を目指してると知ったら特注で剣を打たせて贈ったらしい、物凄いな。
私なら好きな人が騎士なんて危険な仕事を目指して居たら止める、だけどノッ君は後押しした因みに今もリーレンさんの愛剣として使われているそうだ。
大切にしてるとは思ったけどノッ君からの贈り物だったんだね。
リーレンさんは色々とバラされて照れたり恥ずかしがったり、真っ赤になったり忙しい。
何時もと違うリーレンさんの一面が見れて大変に満足だ。
何だかんだ言ってもリーレンさんも楽しそうだ、幸せそうだ、嬉しそうだ。
セアラだけではない待ってる人が居るのだリーレンさんも護らねばと誓った。
他の皆、ガレスさんや騎士さんだって帰りを待つ人が居る筈だし、ちゃんと護るけどやっぱり私にとってセアラと同じくらいにリーレンさんは特別だ。
何せ声を掛けてくれた人1号だしね、セアラがまだ私を怖がりまくっていた頃から私のお世話をしてくれた貴重な人なのだ、リーレンさんには幸せになって欲しいと思う。
久々にお風呂に入れられる。
『洗浄』『乾燥』で普段から綺麗にはしているがやっぱりお風呂は格別である。
メイドさんにワシャワシャと洗われて温風を出す【魔導具】で乾燥される、気持ちよかった、やはり風呂は命の洗濯だ。
セアラとリーレンさんもメイド隊に洗われて綺麗になって出て来る。
ガレスさん達男性陣は当然、自分でだ。
シルバーとズィルバー、馬達も洗われる、とってもカッコ良くなったぞ、シルバー、ズィルバーも美人さんだ、すっごくラブリーだ。
さてお風呂も上がってまた女三人――二人と一匹のパジャマパーティーだ。
セアラは何時もの寝間着だがリーレンさんはノッ君が贈ったらしい寝間着だ、とても似合ってる。
出来る男は審美眼も確からしい。
「酷いです。聖女様」
強制休暇でノッ君に売られたリーレンさんはむくれていらっしゃる。
とても楽しそうに見えたがそれはそれでコレはコレらしい。
「ふふ、でも本当にノットレザンジュ様と一緒に居られて嬉しいでしょう?」
「………それは、そうなのですが…」
ノッ君と居られるのは嬉しいがセアラから離れるのは嫌らしい、色々と難儀だ。
「……でも本当に良いんですか?」
「はい?」
「ノットレザンジュ様との婚約です。本当なら来年に結婚だったのに私の為に伸ばしてしまって…それが申し訳なくて…」
そういえば言ってたな本当は18歳で結婚だったと、それがセアラの護衛騎士を続けたくて2年延長したって言ってた。
セアラの心配も最もだろう、この数ヶ月でリーレンさんは二度も死に掛けてる。
ダスド帝国の騎士に水晶大亀、何とか乗り越えて来たけど暗殺者の襲撃だって十分に危なかった、セアラが心配からそう言ってしまうのも分かる――でも
「……聖女様に私は不要ですか?」
リーレンさんは悲し気にそう言った。
セアラが慌ててブンブンと首を振る。
「リーレンは私に絶対、必要です。必須です。代わり何か有り得ません。だけど、でも…だから、こそ…」
危険な眼には会って欲しくない、ずっと無事に長生きして欲しいと願ってしまう。
それはセアラのささやかな我儘だ、大事な相手だからこそ傷付いて欲しくないと言う。
「なら問題はありません。私は聖女様の護衛騎士です。必要とされる限りお仕えします。本当なら聖女様が大聖女様に成られる迄、お傍に居たかった程です。流石にそれは叶わなかったので2年の延長です。どうかそれまでお傍に居る事をお許し下さい」
「分かりました。絶対!絶対ですよ?リーレン、その日まで絶対に無事に生き延びてリーレンとノットレザンジュ様の結婚式には招いてくれると!」
「はい、お約束します聖女様」
良い話だなーと思う。
私が口を挟む隙が無い。
リーレンさんとノッ君の甘々も良いけど、セアラとリーレンさんの主従愛も良い、甲乙つけがたい感じだ。
この日は私は喋らずにずっと聞き役に回っていた。
それでもお風呂上がりでホンワカヌクヌク、至福の一時だった。
だがこの日に『絶対と交わされた約束』の結末を私はまだ知らない。
さてこのまま眠れれば最高だろうがそうも行かない。
セアラも寝た夜、これからは裁き――天罰のお時間だ。
【亜空間機動】で窓の外へ、流石に12月に入りちょっとお寒い。
この世界は1月~3月が冬、4月~6月が春、7月~9月が夏、10月~12月が秋だ。
日数は一月30日ピッタリで一年360日になってる。
西向く士とかもない、切りが良くて大変、結構である。
バルコニーから眺めると沢山の警備兵、しっかりと此方を護ってくれている、ノッ君流石だ、褒めて遣わす。
この人数をやり過ごして暗殺とかまず有り得ない。
出来そうなのに1人心当たりがあるが動いてない、今夜は大丈夫そうだ。
国境の街だけあって騎士さん達もかなりお強いし数も居る。
安心して任せられる。
でも一応、常に【叡智】さんでセアラの状態はチェック、さあ、暗殺者狩りだ。
シルさん、サポートよろしく。
『了解しました。マスター』
そして私は一匹、深夜の街に飛び出した。
1人、2人、3人、4人、5人、6人、7人、8人――次々と暗殺者を気絶させてロープでグルグル、財布を抜いて『暗殺者』と書いた紙をペタンして行く。
でもそんな三下暗殺者ばかりじゃない、数が多いだけに流石に強いのもいる。
私の【亜空間機動】【隠身】からの奇襲を避ける男。
「くっ!何だ?白い綿猫の幼生?」
よし、よし、お前みたいなのを探してた。
こういう如何にも強いという奴は悪いが始末だ、私の経験値だ。
ギャバンに勝つ確率を少しでも上げる為だ。
セアラを狙った事を不幸だったと知るがよい。
そして始まる剣と刃となった尻尾の斬撃の応酬。
結構、つおい。
ハイドやバーン、この間の3人組よりは上だ。
でも私やあのギャバン程じゃない。
数回、切り結んだ所で男に致命傷。
「ガハッ?!」
倒れる、死亡確認、財布を抜いて『暗殺者』とペタリ。
何だろう?
悪いのは暗殺者である相手の筈だが強盗殺人してる気分だ。
強かったがLVは上がらなかった、次を探しにまた飛び立つ。
最終的にハーメルに居た暗殺者の三分の二を捕縛、倒した所で【LV】が上がった。
時間ももう遅い、我が愛する狐猫をダメにする巣箱Mk-2に帰ろう。
そして私は引き上げた。
コレで明日は試練だ。
それでも無理そうなら【SP】を使いまくりだと決めてレバノン伯爵邸へ帰った。
朝になった、【大睡眠耐性】が【LV4】になった、他の【異常耐性】は上がる機会が無いけど眠いのを我慢するだけのこれは結構、楽に上がる。
朝食の席、リーレンさんは昨日とは別のドレスだ。
何着準備したんだろう?ノッ君。
朝食が終わりに近づいた所で緊急らしい報告がノッ君に入る。
ノッ君が席を立ち、私とセアラ、リーレンさんは残される。
何があったんだろうとちょっと不安になる。
余り時間を置かずに私とセアラ、リーレンさんとガレスさん達が会議室に通される。
「ちょっとマズイ事態になった」
ノッ君のその言葉から説明が始まった。
何でも危険なS級暗殺者が発見されたらしい、間違いなくギャバンだなと思った。
名前はやっぱりギャバン、通り名は【黒影】で暗殺成功率100%だそうだ。
本当に心底から魔物を狩れよと思う、何で人間を殺してるんだ?
対策として信頼出来るS級冒険者を派遣してもらう事になったが到着は2日後、それまでに動かれたらヤバイ。
だから、対策として騎士の増員、ハーメルに近い幾つかの砦から回して貰おうと連絡したが良い返事がもらえない。
何処の砦のお偉いさんもセアラを見下していて護る価値があるのか?と見ているらしい。
むう、本当に急激に強くなったセアラだけど、知らない人達は本当に全然、知らない。
さて、どうやって説得しようとなった。
聖女や伯爵の権力で無理矢理に引っ張るはアウトだ。
それで真面目に仕事をしてくれるとは思えない。
そうなるとやはり――
「聖女様の今の力を示せばいいでしょう」
リーレンさんが言ってそれが良いだろうと皆が頷いた。
国境という事もあってハーメル近くには5つの砦がある、アトランティカ大国対策だね。
内の2つが馬で1日と非常に近い距離、引っ張って来るのは此処の騎士。
シルバー、ズィルバーなら半日も掛からない、数時間だ。
【光輝】を掛ければ更に一瞬だがリーレンさんが許してくれなかった、残念。
そして砦の一つに向かって出発する。
セアラの馬車には私とセアラ、リーレンさんとノッ君と御者さんだけである。
急いで行って急いで帰るんでこのメンバーだけだ。
暗殺者対策はハーメルで危険人物が発見されたと街を出るのを一時封鎖で対処する。
ギャバンなら【恩恵】【薄影】で脱出しそうだが今の所は動きは無い、不気味だ。
正直、何時でも此方を狙えるだろうに動かない、動かれたら困るけど何を考えてるのか分からなくてコワイ。
兎に角、今は先を急ごう。
私は普段は他の馬に合わせて押さえているシルバーとズィルバーに全速力を出させた。
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
「聖女様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!ノッジュゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「リーン、しっかり摑まって!」
「おおおおお、コレは、このスピードは!」
馬車の屋根でセアラは大喜び、リーレンさんは悲鳴、ノッ君は何か嬉しそうに言ってる。
馬車の中はどうなってるんだろう?因みに御者さんは何か興奮してる、どうしたんだろ?
色々ちょっと気になったが私達は先を急いだ。
狐猫の小話
リーレンさんとノットレザンジュの出会いは2年前のリーレンさんが成人した時の夜会で初めて会いました。
その後で1年掛けて口説き落としました。
恋する男は頑張りました。




