第054話 大暴走二度目と落ちた雷?
「……む……!」
「起きたか」
黒ずくめの前に立つのはガレスさん、周りを囲むのは騎士さん達だ。
私とセアラ、リーレンさんは離れて待機。
一応、気絶している内に武装解除はさせたけど何をするか分からないからね。
暗殺者って絶対に頭がオカシイと思うし、少し身じろぎして逃げられないと悟ると突然、力が抜けてカクンとした。
あ、毒だ、口の中の何処かに毒仕込んでやがったなコイツ!
慌てるがセアラが冷静に「【月光】」と言う。
すぐさま回復する暗殺者、こっちが指示を出す前に【恩恵】使うとか、またちょっと雰囲気が変わった感じだ。
暗殺者は呆然、コレで自死の心配はない。
舌を噛み切って死ぬとか言うのがあるがアレは嘘だ。
あんなので人は死なない。
私も前世で転んで舌を噛み切ったが病院で縫い合わされて終わりである。
真実とはそんなモノだ。
さて、睨みつけて来るが怖くも何ともないぞ、お前は最早、何も出来ない芋虫だ。
キリキリ情報を吐くのだ。
「お前は何処から来た?」
「………」
「人数は?」
「………」
「目的は聖女様か?」
「………」
「依頼主は?」
「………」
何も言わない。
こうなったらアレか、やっぱりアレだな。
私とセアラ、リーレンさんは馬車の中へ、女子供は見ちゃいけない。
拷問だ。
ゴーモンだ。
容赦なしである。
同情はしない。
殺しに来たんだからね。
三時間程で吐いた。
ソーと覗くと脱がされた靴と何本もの鳥の羽、足を散々に擽られたらしい。
嫌、手ぬるいと言っちゃいけない、笑わせ続けると言うのは立派な拷問だ。
一番つらい死に方の一つが笑い死にと言うくらいである。
痛みに耐える訓練は出来ても擽りとか快楽に耐えられる様には人間出来てない。
お陰で暗殺者は涙と鼻水、涎で顔が凄い事になってる。
ざまあみろだ。
そして得た情報、目的はセアラの暗殺、組織の構成員は50人越えだが来たのは一部、残りは今回の襲撃で逃げた16人だけ、残念ながら依頼主は不明、来たのはテレスターレ聖国の東の方、それよりヤバいのが次の目的、今回の襲撃が失敗したら次の街ハサンの領主の娘を攫い脅迫してセアラを殺させようと言う作戦、マズイ、どうしよう?
こうなったらアレだ。
最終手段だ。
禁じ手である。
封印されし我が暴風、竜巻である。
この事態だ、前回の様な罰は喰らうまい。
セアラに話す「仕方ないですね」リーレンさんと御者の騎士さんは真っ青。
ピョンと馬車の屋根に、セアラが着いて来る。
うん?「前回は怖いだけでしたが、私も思い切り風を感じたいのです。ハクアが護ってくれるでしょう?」
まあ、良いけどねと【超尻尾攻撃】でセアラを固定。
「聖女様!危ないです!」
リーレンさんが叫んでるが時間が惜しい。
無視だ。
「ミィミ、ミミィ」(セアラ、お願い)
「はい、【光輝】」
シルバーとズィルバーが光りを纏う。
さぁ、今再び野生のリミッターは外された!駆けよ、シルバー、ズィルバーよ。
今こそその力を見せる時っ!!!
竜巻となれ!我が愛馬達っ!!!
一騎、否、真二騎当千だっ!!!
「「ヒヒィィィィィーーーーーーーーン!!!」」
ズガラッ!!!ズガラッ!!!ズガラッ!!!ズガラッ!!!ズガラッ!!!ズガラッ!!!
全速力で駆けだす二頭。
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
「聖女様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
セアラは今回、嬉しそうな悲鳴だ。
リーレンさんと御者さんは前と同じ。
「ま、またか、おいっ!待てっ!ちっこいのっ!」
「待て、ちょっと待て、他の方法をっ!」
「ダ、ダメだ!もう、止まらないっ!」
大爆走二度目である。
これはしょうがない。
暗殺者より先にハサンに着く為だ。
「ミミィ!ミィミミ、ミミィミミィミ、ミィミミミィミミミィミィ!!!」(駆けよ!シルバー、ズィルバー最早、我等を止める者無しっ!!!)
「凄いです!速いです!気持ち良いです!」
「「ヒッヒーーーーーーーーーン!!!」」
セアラもシルバーとズィルバーも大変に嬉しそうだ。
一方で馬車の中からはもう何も聞こえない。
うん、前回も大丈夫だった、きっと無事だ。
そして私達はハサンまで一気に辿り着いた。
ハサンの門の検問を聖女の権限で速攻、突破、馬車の屋根の上のままだが「緊急です」で押し切った。
何で聖女様が馬車の屋根に?と多くの人に不思議そうな顔をされたが今は気にしない、きっと直ぐに忘れてくれる。
領主邸に到着、慌てて出迎えに来てくれる領主さん。
「聖女様?!ご到着はまだ数日後と伺っておりましたが…何故?」
「緊急の為に先行しました。突然不躾で申し訳御座いませんがご令嬢はご在宅でしょうか?」
「娘ですか?今は部屋に居る筈ですが…何か御用が?」
「いえ、居られるのなら良いのです」
【探知】さんでも確認、街中に暗殺者の反応なし、どうやら無事に追い越せたようだ。
安堵する、これで後はハサンに進入してくれば一網打尽にするだけだ。
「でも、凄かったです!ハクア、正に風になったようで、この感動は忘れられません!」
「ミィミミィミミィミ?ミィミミィ!ミィミーミミィミミーミ!」(分かってくれる?凄いでしょ!シルバーとズィルバーは!)
私とセアラの目はキラキラだ。
シルバーとズィルバーも全力で走れて満足なのか艶々している。
興奮する私とセアラに突如、冷気が吹き寄せる。
ガチンと固まる。
これはアレだ。
絶対零度な冷たさだ。
全てが凍る。
因みに絶対零度が温度の最低ではない。
それ以下もある。
ガン〇スターのバ〇タービームはマイナス一億度だ。(←それはアニメだ)
まぁ、絶対零度より低温の量子気体を作ったとか何かで読んだから実際にあるだろう、多分。
兎も角、私とセアラは固まった。
「あーーーーーなーーーーーたーーーーーたーーーーーちーーーーー」
響く声の主に向かってギギギと首が動く。
リーレンさんだ、めっちゃ怒っていらっしゃる。
「其処に座りなさい」
冷たい声にサッとセアラが正座、私もお座り。
揃ってガクガクと震える。
「お説教ですっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!」
リーレンさんの雷が落ちた。
私とセアラはしこたま怒られた。
うう、他に方法が無かったんだから良いじゃないかと思いながらハサンの領主邸の廊下を一匹で歩く。
セアラとリーレンさんと領主家族は晩餐だ。
私も夕飯抜きだけは回避した、リーレンさんもそこまで鬼じゃなかった。
いや、怒ってるリーレンさんはマジ恐かった。
間違いなく鬼だった。
もう怒らせまい―――多分。
でも置いてきたガレスさん達は大丈夫かな?
うん、信じよう。
無事に合流できると、その時の為にもこっちも始末を付けないとな。
しかし、やっぱり【思考跳躍】の常時使用はキツイ。
【検索】さんに通訳して貰ってるけど、周りはスロー、私は早送りみたいで凄い色々と苦労する。
コントロール出来るようになるかな?
他の方法を考えるべきか?
うーん、あ、例えばまだ使ってない【並列思考】の七番目に【思考跳躍】を起動して、残りの【並列思考】三番目を除いたのを経由して作業させれば………出来た。
やった、これで【探知】さんも【鑑定】も楽になる。
私はやはりアホの子ではなかった。
いや、気付くの遅かったからダメか?
何にせよ、七番目の【並列思考】よ、君の任務は他の【並列思考】の処理サポートだ。
ご褒美はとんがりととんがってるとんがりコーンだ。
等とやっていたら【探知】さんに反応、3人だ。
数が違うから例の連中じゃない。
様子を見に行くかと【亜空間機動】で飛び立った。
「なぁ、本当にやるのか?」
「当たり前だろう、前金で金板1枚、成功報酬で50枚だ」
「…だがあの蠍のハイドが殺られたって噂だ。それで前金と成功報酬が上がったと…」
「噂だろ、それに標的の聖女は弱いって話だ。隙を見てグサリだ」
「…しかし、依頼主は不明だ。本当に成功報酬が払われるのか?」
ハサンの宿の一室、【探知】さんを頼りに目標の3人組の部屋の天井裏に【亜空間機動】で潜み話を聞く。
うーん、こいつ等も依頼主は知らないか、まぁ、小物っぽいしね。
「前金はもう貰ってんだ。大丈夫だろ、それより護衛の騎士対策だ。準備は?」
「一応、魔物をけしかける魔草は買ってある。だが確かにこの辺りの魔物は強いが行けるか?」
むう、有益な情報は聞き出せそうにない。
セアラを殺す作戦とか聞いててムカつくしもう良いか片付けよう。
【亜空間機動】で三人の上空へ、そして―【超尻尾攻撃】を丁度、三本三人に振り下ろす。
「ぷっ?!」
「ぎゃ?!」
「げっ?!」
纏めて気絶。
此処で本邦初公開!【空間魔導LV4】【空間収納】、【魔導袋】や【収納】の魔導版だ。
しかも色々と微調整が出来て便利!有り難い。
グルグルと紐を出して縛って、紙に『聖女暗殺目的者』と書いてペタンと張り付けて終了、すっかり尻尾が手の代わりになる様になった。
その内に本当に料理も尻尾で作れるようになるかもだ。
しかし金板50枚とは恐らく日本円だと5億円だ。
よっぽどの金持ちだな。
やはりガマガエル神殿長な気がして来るな。
そう思いながら私は領主邸に帰って行った。
帰り道、領主邸の貸された部屋のバルコニーから夜空を見上げてるセアラを発見、私も同じ部屋だ。
そのまま隣に降り立つ。
「ミィミィィミィ?」(何してるの?)
「あ、ハクア」
声を掛けられてやっと気付いたようで顔を向ける。
「へへ、今日は一杯、怒られちゃいましたね」
「ミィミミー、ミィミィミミィミィミミミ」(そうだねー、リーレンさん怖かった)
笑いながら話す。
何だか楽しそうだ。
私も楽しい。
「リーレンに怒られたのは初めてです」
「ミィミミィミミミィミミィ」(セアラは良い子だからね)
リーレンさんはセアラが大好きだからなー、大暴走は心配だったのだろう。
「本当に今は毎日が楽しくて、嬉しくて、幸せで、こんな―――――の私が享受して良いのか…」
「ミ?」(え?)
その言葉は小さく、小さく呟かれた。
でも【五感大強化】された私の耳は拾ってしまった。
どういう意味だと思う。
其処に少し肌寒い風が吹いた。
この国、赤道直下なのに春夏秋と比較的、温暖で冬は厳しいと言う。
ファンタジーだ。
もう秋も中頃、昼は暖かいが夜はちょっとだけ寒い。
「そろそろ部屋に入りましょう。ハクア」
「ミ、ミィ」(あ、うん)
セアラは笑っている。
でも、さっき聞いた言葉と一瞬、見せた表情が心から離れない。
『こんなヒトモドキの私が』
確かにそう呟いたセアラが酷く孤独に見えた。
私がその意味を知るのはまだ先だ。
狐猫の小話
擽りは拷問です。
本当に容赦ないです。
実際にも行われます。




