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狐猫と旅する  作者: 風緑
53/166

第053話 頑張る狐猫と聖女の試練?


 オルギアを発ってからガー爺ちゃんが言った通りに襲撃が来た。

 黒ずくめの暗殺者だ。

 流石にこんな状況でセアラも馬車の屋根には居ない。

 馬車の中だ。


 一方で私は久々にシルバーとズィルバーの背中を堪能していた。

 おお、シルバーよ、寂しい思いをさせた、これからはずっと一緒だ約束する。

 ズィルバーも寂しかったか?ごめんな、お詫びにタップリ可愛がろう。


 等とやっていると【探知】さんに赤点、襲撃だ。


「ミィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!」

 すぐさま声を上げて合図、シルバーとズィルバーが止まり、リーレンさんが馬車から飛び出し、ガレスさん達が馬車を囲む。

 セアラの【光輝】と【祝福】が掛かる。

 此方の迎撃準備が十分に整って少ししてからやっと襲撃者の登場だ。


 だが、ガー爺ちゃんの元でスペシャルハードコースな特訓を受けた皆の敵では無い。

 今の所、私のする事は【探知】さんで襲撃を察知と馬達が怪我させられない様に守る位だ。

 セアラ達にどんな訓練したのか聞くが思い出したくないと教えてくれない。


 私はガー爺ちゃんに何度となく殴り飛ばされ地面に埋められその度に回復薬で回復されたと楽しく話した。

 優しく頭を撫でられた。

 拳聖と言われるガレスバーク様に殴られ過ぎて頭が壊れたのかと言われた。


 何故だ?

 兎も角、皆の特訓は不明だが、ステーテスのUPと【技能】の習得と【LV】の上昇はしている。

 心配はない。


 このまま行けばだが…。

 出来るだけ情報を得る為に相手は殺さずに生け捕る方向で行ってるが上手くはいかない。

 根性あると言うか執念と言うか、捕まるぐらいなら死を選ぶって奴ばかり、一度など自爆された。


 私が【超尻尾攻撃】で護った。

 危なかった。

 何故、そんな命を賭けて暗殺者なんてやってるんだろう?


 命を賭けるなら他にいい仕事が一杯あるだろうにと思う。

 元人間だけど本当に暗殺者は理解不能だ。

 考えている間に今回の襲撃も終わった。


 味方の犠牲者0、負傷者0、敵の犠牲者3、逃走7だ。

 だが、旅はまだ半分残っている。

 気を付けよう。


 そして全員無事に帰ろうと考える。

 夜になった。

 野営だ。


 皆が準備をして私は終わるのを待っている。

 其処でセアラがやって来て私の隣に座った。

 昔と言ってもホンの数ヶ月前だけど、その頃は考えられなかった距離だなぁと思いながらご機嫌でセアラに擦り寄る。


「ハクア、無茶してませんか?」

 私を撫でながらセアラが言う。


「ミ?」(え?)

 首を傾げる。

 無茶は…偶にするが、今はしていないと思う。

 そう伝える。


「でもずっと警戒をしています。ハクアにしか出来ないから、それは無茶ではありませんか?」

 返答に困る。

 【探知】さんの索敵は自分しか出来ない。

 常時展開が無茶と言うなら無茶だろう。


 だけど、ずっとやって来た事、今更だ。


「夜も熟睡してなく思えます。何時でも飛び出せる様に…」

 否定出来なかった。

 その通りだ。


 襲撃されるようになってから熟睡はしていない。

 眠りは浅い。

 でも…だけど…。


「皆も厳しい訓練を越えました。大丈夫です。もっと頼って下さい。大丈夫ですから」

 優しい囁きだ。

 甘い毒の様だ。


 よいのだろうか?と思う。

 構わないのだろうか?と悩む。

 思っていた以上に私は自分を追い込んでいたらしい。


 自分だけだからと考えて。

 私にしか守れないと思って。

 気付かず無茶をして居たのかと。


 確かに【LV10】になった【探知】さんの齎す情報量は範囲と共に膨大だ。

 【並列思考】の役割分担を見直して汚部屋な3番目以外は改善して1番目には【探知】さん専門、2番目には【鑑定】専門、4番目は【空間魔導】専門、5番目は【気力探知】【理力探知】【霊力探知】【魔力探知】担当、6番目は【水魔導】【土魔導】担当で7番目は空きだ。

 1番目と2番目は常に本体とリンク、必要な情報を送って貰う。


 それでも送られてくる情報は膨大、疲れがまったく無いとは言えない。

 だけど、ずっとやって来た事だからとワッセ、ワッセと情報整理をやってた。

 うん?しかし、良く考えれば当時は【思考超加速】を併用で行ってた。


 今は性能が上がり過ぎた【思考跳躍】になってから全てがスローになってしまうので普段は切っていた。

 コレを【疾風】―【閃駆】の様にコントロール出来るようになれば良いのでは?と考えた。

 上手く出来るようになるまで皆に迷惑を掛けるかもだが、常時使用で弊害が無くなれば負担は一気に減る。


 説明してみる。

 楽にする為の【技能】を習熟するからその間を皆に協力して欲しいと、セアラは笑顔で頷いた。

 そんなに心配させる状態だったのか?と思う。


 いや、本当に私が、私がと自分で抱え込み過ぎていた。

 反省しよう、信じてセアラをリーレンさん、ガレスさん達を頼ろうと、仲間の力を借りようと考える。

 皆、弱くなんかない。


 護られるだけの存在じゃないと認める。

 皆が互いを支え合える仲間だ。

 だからこそ誰一人、欠けずに行きたい。


 そしてそれはセアラも同じ思いだった。

 覚悟を口にする。


「明日からは私も、いえ、今夜からでも戦います」

 顔を上げてセアラの目を見る。

 本気だと思った。


「その為にも今から【試練】を受けてきます」

 驚いて本当に良いのかとリーレンさんを探す。

 近くに居た。


 頷いて「聖女様はもう大丈夫です。十分なお力をお持ちです」と言った。

 リーレンさんが許可したなら問題無い。

 さっき信じようと、支え合える仲間だと認めたばかりだ。


「では行ってきます」

 セアラが光に包まれ始める。


「ご無事を信じます」

 リーレンさんはそう言ってセアラを送り出す。

 私は何と言おう。


 頑張れ!なんか違う、セアラは何時も頑張ってる。

 気を付けて、違う、信じてない見たいな気がする。

 負けるな?違う、セアラは絶対に勝つ、確信してる。


 悩んでる間にセアラの姿が消えていく。

 私は叫んだ。


「ミィミミィミミミィミミ!」(悪夢なんかぶっ飛ばせ!)

「はい!」

 力強い返事と共にセアラが消えた。


 自称:神様(仮)は言ってた。

 第一の試練は自分の悪夢との戦いだと、私はセアラの悪夢が何か知らないまま言ってしまった。







『…試練に挑む者よ。良くぞ来た』

 やはり私は歓迎されて居ない様だ。

 【神眼】でも見えないが、名を失われた『試練の神』の声に棘を感じる。


 それでもと前を向く。

 ハクアのお陰で此処まで来れた。

 私は立ち止まらない。


『…その身でLVを上げ良くぞ、試練に挑む決断をした。汝の決意に敬意を表する』

 此処までは知っている。

 伝説では試練は10個。


 闇の試練、壁の試練、巨大な敵の試練、護りの試練、影の試練、恐怖の試練、救いの試練、封印の試練、迷宮の試練、王の試練だと言う。

 第一の試練、私の悪夢――闇、何だろう?と思う。


『…第一の試練は汝の悪夢と戦ってもらう。これは汝が闇が実体化したモノである。見事、打ち破って見せるが良い』


 『試練の神』の言葉と同時に私の数メートル先に黒い、真っ黒い何かが集まり形作り始める。

 それは段々と人型になって行った。


 その姿は――


「あ…」

 間違いなく、私にとって悪夢であり、闇だ。

 でも、それでも――この人は――


『…では試練を乗り越えて見せよ。さすれば汝には更なる力と技能が授けられるであろう。汝に光と闇の導きが在らんことを―』


 言葉が途切れる。

 目の前の人物が、剣など握った事ないだろう人が剣を手に襲い掛かって来る。


「お母さん」


 私はその女をそう呼んだ。


 剣が振り下ろされる。


「【大結界】」

 急ぎ、【大結界】を展開して防ぐ。

 ガン、ガンと【大結界】が叩かれるが子揺るぎもしない。


 だが、倒さなければ試練は超えられない。

 でも、この人がどれ程、私にとって――でも、それでも…


 ハクアの言葉が蘇る。


 『悪夢なんかぶっ飛ばせ!』


 覚悟を決める。

 【大結界】に穴を開ける。

 『アストラーデの聖杖』を突き出す。


「『火の礫よ、我が敵を撃ち抜け』【火弾ファイアショット】」

 火の弾がお母さんに突き刺さり爆発する。

 本来は此処までの威力はない筈だが高いステータスが威力を上げてくれる。


「貴方は、貴方は、確かに私を産んでくれた」

 火弾を連射しながら叫ぶ。


「国の〇〇の為に、多額の報酬で、私を産んだ」

 止まらない火の弾丸。


「でもそれだけだった。育ててはくれなかった。どれほど体調を崩して苦しんでも見向きもしなかった」

 涙が溢れる。


「〇の繋がらない子をもう、何時死んでも良いと放置した。救ってくれたのは大聖女様だった」

 火の弾と涙が止まらない。


「あの方が私のお義母さんだ。貴方じゃない、貴方じゃないっ!貴方なんかじゃないっ!」

 それでも――、それでも――、この人は――


『…見事』

 声が響いた。

 何時の間にかお母さんは消えていた。


 試練は終わっていた。

 ペタンとその場に座り込む。

 本物ではない、私の悪夢――闇が実体化したモノだ。


 それでも私は産みの母を手に掛けた。


『…汝は試練を乗り越えた。己が位階を一段引き上げた』


 『試練の神』の声は聞こえるが喜べない。

 私は只、涙を流ししゃくり上げた。


『…忌み子よ。何を泣く?』

 『試練の神』の言葉に時間を掛けて返答する。


「わ、わた、私は…私は確かに忌み子と、よば、呼ばれても仕方のないそ、そん、存在です。でも、でもそれでも聖女なのです。こん、こんな、こんな事を、親殺し等したくなかった…」

『………』

 『試練の神』が黙る気配がする。

 暫くしてから口を開いた。


『…忌み子よ。謝罪する。我は我の在り方からアストラーデの様に汝を認められぬが汝もこの星に生きる命、傷つけた事を謝罪する』

「あ…」

 『試練の神』の謝罪に心が少しだけ救われ軽くなった気がした。


『では試練を超えた汝には力と褒美を授ける。その力を持って世に変革と変動を齎してくれる事を切に願う』

 気配が消えた。

 『試練の神』は去ったようだ。


 ピコーン、ピコーンと音が鳴り目を向ける。


『試練の突破おめでとうございます。報酬が授与されます。【位階】が壱になります。【気力】【理力】【霊力】【魔力】【SP】にボーナスが入ります。また以下の中から二つの【技能】をお選びください。【技能】が付与されます』

 

 【技能】がズラッと並ぶ。

 だが、今は選ぶ気分に成れない。

 暫く、もう暫くこのままで居よう。


 こんな目で帰っては皆を心配させる。

 私は目の腫れが退くまで座っていた。







 遅いな…。

 セアラが試練に挑んで大分過ぎた。

 帰って来ない。


 リーレンさんも心配なのかソワソワしている。

 私は――信じてる。

 セアラは絶対に突破して帰って来ると!


 ごめんなさい、嘘です。

 すっごい心配です。

 セアラー、と泣きそうになる。


 それから十数分、やっと光が溢れてセアラが帰って来た。


「ごめんなさい、遅くなりました」

 いの一番にリーレンさんが飛びつく「お怪我はありませんか?」と全身チェック、リーレンさんは本当にセアラが好きだなぁ。


「欲しい【技能】が一杯で迷ってしまって、あ、ご飯よろしいですか?お腹がすきました」

 直ぐにセアラの夕飯が準備される。


「頂きます」

 食べ始めるセアラ、でも…なんだろう?なんかこう…変だ。


「ミイミ、ミィミィミミ?」(セアラ、大丈夫?)

「?私は怪我一つ無いですよ。大丈夫です。あ、それよりハクアが言ってくれた言葉のお陰で試練を突破できました。ありがとうございます」

「ミ、ミィ?ミィィミミミィミィミィ…」(そ、そう?それなら良かったけど…)


 上手く言えない、でも何かが…。

 試練がどんなだったかを皆に語るセアラ、妙に元気だ。

 でも敵――悪夢が何だったかは言わない。


 私にはセアラが何故か泣いてる様に見えた。

 夜、どうしても気になって我が狐猫をダメにする巣箱Mk-2でなくセアラの寝床に潜り込む。

 セアラは寝ながら泣いていた。


 寝言で「お母さん」と言ってる。

 セリアーナお婆ちゃん大聖女様の事かな?それとも産みの親?

 兎も角、肉球お手々と尻尾でセアラを撫でまわす。


 すると満足したのか笑って寝たまま私に抱き着く。

 ちょ、ギブ、ギブ、首は止めて、〇ぬ、また〇んじゃう。

 あれ?またって何だ?前にもあったっけ?と考えながら首のホールドは外す。


 でも抱き締めて離してくれない。

 まぁ、いいやとそのまま私はセアラの抱き枕になった。

 久々に熟睡して幸いに襲撃もなかった。


「ミィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!」

「来ました、聖女様」

「はい」


 私の声に馬車からセアラとリーレンさんが飛び出しガレスさん達が周囲を囲む。

 【光輝】と【祝福】が付与され少しして暗殺者が来る。

 今日は多いな、23人居る。


 だが此方もセアラが加わった。

 【魔導】が撃ち込まれる。


「『火の礫よ、我が敵を撃ち抜け』【火弾ファイアショット】」

 火の弾丸が敵の密集地に撃ち込まれる。

 数人が吹き飛ぶ。


 おお、派手だなと思う。

 遠距離攻撃が出来る味方は頼もしい。

 だが、数が多い、接近される。

 

「『風よ集え、我が武を覆え』【風打ウィンドアタック】」

 今度は『アストラーデの聖杖』に風を纏わせて殴り掛かる。

 中々、万能だ。


 セアラの参戦は予想以上に頼もしい。

 物の十数分で過去最大数の襲撃を退けた。

 私が手を出す必要もない。


「はぁ、はぁ…お、お役に立てたでしょうか?」

「十分です。ありがとうございます。聖女様」

 初めての実戦での攻撃参加に息を荒げるセアラをリーレンさんが労う。


 今回もこちらは犠牲者0負傷者0だ、更に敵は犠牲者6逃走者16捕縛1だ。

 念願の捕縛者だ。


 さて、どうやって情報を吐いて貰うかな?

狐猫の小話

セアラやリーレンさん達を鍛えたのはオリバーさんです。

ガレスバークお爺ちゃんほどでは無くてもスパルタでした。

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[一言] 涙を見せなくなったセアラ。強くなったから――とはとても言えません。
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