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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第050話 駄々っ狐猫の釣り?


 ピコーンと音が鳴り、『LVが3UPしました』と出るが、あんまり嬉しくない。

 周りの皆が何が起こったか分からないと言う顔をしている。


 突然、神官の一人がセアラを襲い、私が防いで攻防を行い、最後には殺した。


 事実の詳細を知ってるのは私だけで他の人には分からない。

 どう収拾付けよう?と、悩んでいたら――


「ハクアッ!!」

 ――と、セアラが飛びついてきた。

 ちょっとビックリした。

 絵面的には押し潰されそうなこっちだが、ステータスのお陰で安心だ。


 セアラから飛びついてくるのは初めてだ。


「ミィ、ミミミィ?ミィィ、ミミミミィィミィミィミィミ?ミィミミィ?」(ちょ、大丈夫?セアラ、私は皆の前で人を殺しちゃったのよ?恐くない?)


 するとキョトンとした顔で言った。


「ハクア、三度目です。私が助けられたのは恩には報います。ハクアに罪はありません。事情を全て語って下さい」

「ミ、ミミィ、ミィミ――」(え、ええと、じゃあ――)

 それから私は分かっている事を全部、話した。


 早速調査が始まった。

 指揮はセアラ、行動はリーレンさんが、補佐は真犯人が死んで晴れて無実となって謹慎解除になったオーレルさん。

 一番に遺体から検分、すると出るわ出るわの違法薬物の山、何処にこんなに隠してたって量。


 これだけでもかなりの重罪らしい、自室には何も無かった流石にA級暗殺者と【鑑定】で出る訳だ証拠や依頼主に繋がるモノは残さなかったようだ。

 代わりに犯人役にされる筈だったオーレルさんの部屋から違法薬物が少し、どうやら元々、オーレルさんが自分の右腕としてハイドを連れて来たそうだがオーレルさんに記憶は無い。

 何かの薬か暗示で操られて居たっぽい。


 昼過ぎにセアラの【月光】を受けて状態異常が回復、私達が去った後に色々な違和感に気付いて自分が連れて来たハイドって誰だ?になって聞きに行って気付いたらリーレンさんに取り押さえられていたそうだ。

 危ないなぁと思う。

 下手したら其処で死んでる。


 オーレルさんは最後に囮として使われたけど、セアラも本当に危なかった。

 私が【検索】さんのお陰でハイドに疑問を持ってた。

 【亜空間機動】が在ったから助かったので本当にまたギリギリ、この数ヶ月で3度も死に掛けてる。


 前世の私なら恐くて引き籠る自信がある。

 うん?引き籠る?何かを思い出しそうになった。

 でも自称:神様(仮)も思い出すなと言っていた。


 気にしない、忘れる。

 でもセアラは本当に運が悪過ぎる。

 ダスド帝国の騎士も噂では、水晶大亀アルケイロンは100%、ガマガエル神殿長の性だから今回もそうな気がするけどさ。

 

 己っ!ガマガエル神殿長めっ!帰ったら【呪怨視攻撃】で干物じゃっ!と思う。

 実際に伯爵で神殿長なガマガエルを殺ったらお尋ね者な賞金首になりそうだけど、証拠が無いから妄想だけだその程度は許して欲しい。

 何?証拠が出たらやるのかと?決まっている、法に裁いて貰う。


 そっちの方がガマガエル神殿長には辛いだろうからだ。

 一瞬で楽にする方が良い事もあるのだ。

 世の中って難しい。


 兎も角、セアラは助かったし私も突然、人を殺す危険な魔物扱いされなかった。

 リーレンさんにも「また貴方に聖女様を救って頂きましたね。感謝します」と、ご褒美に撫で撫でされた。

 ヘブンした。


 毒問題に暗殺者とヤバイ問題も片付いた。

 コレで明日は海の街ララトイヤを満喫だと思っていた。

 私だけが――


「ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!ミィッ!」(やだっ!やだっ!やだっ!やだっ!やだっ!やだっ!やだっ!やだっ!やだっ!)

 ジタバタと私は暴れていた。

 オロオロするセアラと呆れ顔のリーレンさん。


 大神殿と王都の神殿に引き継ぐと言っても事後調査も完全ではなく、聖女暗殺未遂にララトイヤ神殿は揺れている。

 オーレルさんが陣頭指揮を執っているがまだ来たばかりの新参だ。

 まだまだな聖女一位な自分でも手伝える事があるとセアラは今日も一日、神殿に籠ると言った。


 リーレンさんも納得、私だけ愕然、そして駄々っ子モード発動だ。

 元16、17歳な高校生が11歳の少女に我儘は恥ずかしい?

 違う、私は生後7ヶ月な狐猫、前世は関係ない。


 そして海が、海の幸が私を呼んでいるのだ。

 獲れるか、獲れないかではない、挑戦する事に意義がある!

 狐猫の本能なのだ。


 結果が一匹のジタバタである。

 情けないとか、みっともないと思わないで欲しい。

 日本人には海の幸なのだ。


「はぁ、しかたがありません、聖女様。午後からは街に出ましょう。少しは気分転換も必要です」

 おお、リーレンさんが折れてくれた。

 でもセアラはまだ「ですが…」と渋ってる。


 此処は必殺の下からウルウルお目目でお願いの御見上げポーズ。

 セアラが「うっ…」と引いて「はぁ」としょうがない息を吐いた。

 勝ったと私は万歳した。


 ご機嫌で街を歩く。

 歩くと言っても前と同じでセアラの手の平の中だけど、リーレンさんとシルバー、ズィルバーも着いて来る。

 そう言えば美味しいアッポーとニンジーを買って上げる約束をしていた。


 危うく果たせない所だった。

 【鑑定】で品質の良い物を選んで大量に仕入れる。

 一本と一個だけ二頭に与える。


 美味しいか、シルバー、ズィルバー今日はコレから海へ行く。

 生まれて初めてだろう、デカくて青くて凄いぞと伝える。

 そしてまた海に向かって歩く。


 到着。


「ミイーーーーーッ!!」(海だーーーーーっ!!)

 叫ぶ、近付くにつれて漂っていたけどこの風に紛れる潮の香り、照り付ける太陽、青い海、懐かしい。

 うん?懐かしい?そんなに私は海に来たっけ?と考える。


 それよりも魚を得る方法だ。

 買うのはダメ、狩り一本、野生の掟これ絶対。

 【技能】連打、環境破壊良くない、却下。


 キョロキョロと周囲を見回し眺めているとキュピーンと頭の中を閃光が走った。

 思い…だしたっ…。

 更に見回し此処だ!という店を発見。


「ミィィイ」(あの店)

 ビシッと指差す。


「え、あの店ですか?」

 頷く。

 向かってくれるセアラ。


「ごめんください」

「へい、らっしゃい!おや、随分とめんこい子が来たな」

 完全に潮に焼けた海のおっちゃんって感じの店員さんが相手してくれるが私の目は商品に向いてる。


 竿だ、釣りだ、釣り竿だ。

 やはりと思った、そして【鑑定】と己の真眼で商品を選び抜く。


「ミィミミィミィミィミミィミィミミ」(コレとソレとアレとソレとコレ)

「え、あ、今、ハクア、この子が指差した商品を…」

 セアラが私の意思を汲みとって店員さんに頼んでくれる。


「は?いや、買ってくれるなら良いけど…コレは全部が大型魚用の竿と糸、仕掛けだぞ?船にでも乗るのか?」

「え?!」

「ミィミィミ、ミミミィミミィミミィミ」(問題ない、其処の波止場で使うから)


 船に乗るのかと言われて驚くセアラだが直ぐ其処の波止場で使うと聞いて安堵。

 店員さんはそんな所で釣るのにこんな装備は…と疑問気だが私が釣りをするには必要なのだ。

 そして狐猫のお手々と尻尾で器用に準備して餌を付けて――


「ミィーーーーーミィミミミィミィ!」(ローーーーーングショットッ!)

 ヒューンと遠投されて目的地に到達。

 ホールインワンだ。


 後は待つのみ。


「釣れるんでしょうか?」

「分かりません。ですが、規格外ですからね。この子は」

 二人が話しているが私にはもう聞こえない。


 今の私は大いなる母なる海の一欠片、大自然の一部。

 それは何も考えない、何も感じない、無の境地。


「お、なんだ?なんだ?」

綿猫ファトラが釣りしてるぞ」

「どうやって教えたんだ?」

「釣れるのか?」

「いや、竿と糸がオカシイ、あんなのを使う魚此処には…」


 5分経過…10分経過…30分経過…1時間経過…2時間経過…3時間


「あの…ハクア、流石にそろそろ…」

 待つのに飽きて魔導をポンポン撃っていたセアラが微動だにしない私に声を掛けた瞬間っ!


「ミィィ!!」(来たっ!!)

「え?」

 ガクンと竿がしなり糸が持って行かれる。

 物凄い引きだ。


 流石は異世界の魚。

 でもマズイ、こっちの重さが軽すぎる。

 このままじゃあ、ポーンと飛ばされる。


 其処でハッとする。


 【空間魔導】【空間固定】ガッチリと自分を固めて飛ばないようにする。

 コレで安心。

 さぁ、尋常に勝負だ。


 30分後――


「ミィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!」(おうりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!)


 釣り上げた。

 馬鹿デッカイ。

 牛さん並だ。


 後、マグロだ。

 頭が凄い硬そうになってるけど、マグロの魚の魔物だ。

 素早く締めて血を抜き解体していく。


「な、何だと…」

「こんな所で粉砕鮪クラッシャートゥナを?」

「オカシイ、俺は夢でも見てるのか?」


 ギャラリーが何か言ってるが無視だ。

 これでも前世では何故か大魚を釣り上げる事で有名だったのだ。

 女太公望等と言われた。

 その才能は転生しても有効だったようだ。


「………釣っちゃいましたね」

「………ええ」

 セアラとリーレンさんが呆然と呟いている。


「ミィィミミィミィミミミ」(もう一匹行けるわね)

 言って私はまた竿を振るった。


「ミィィミミィィィィィィィィィミッ!!」(キャスティィィィィィィィグッ!!)

 狙った位置にまたジャストヒット。

 加えて今度は30分程で――


「ミィミミミミィミーーーーーミ!!!」(フィッシュオーーーーーン!!!)

 獲物がかかる。

 この手応え、また粉砕鮪クラッシャートゥナだ。

 

 格闘の末、先程よりデカいのを釣り上げた。

 今日はもう此処までだと思いながら、私は粉砕鮪クラッシャートゥナを解体していった。


「ミィミィ、ミィミィ、ミィミィミミミ」(まっぐろ、まっぐろ、美味しいさっかな)

 三度作詞作曲私。

 聞けば友人はきっと血の涙を流したであろう。


 釣果には大変に満足だ。

 久々の釣りを堪能したご機嫌で尻尾は全部がフリフリだ。

 一方でお疲れな感じのセアラとリーレンさん。


「ミィィミィミ?」(どうかした?)

 訊ねて見る。


「いえ、本当にハクアと居ると驚いてばかりで」

「ミィミ?」(そう?) 

 首を傾げるがリーレンさんも頷いている。

 ぬぅわぜだ?


 おかしい、と思うがセアラがクスリと笑っていった。


「ハクア、今度は私にも釣りを教えてくれますか?」

「ミィィィ」(勿論)


 今日の獲物を手に私達は帰路に着いた。


 さぁ、明日は次の街へ出発だ。

狐猫の小話

狐猫の意外な才能です。

普通は絶対に釣れません。

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― 新着の感想 ―
[一言] また伝説を残してしまった…! 吟遊詩人が酒場で歌って審議が盛んに議論されたところで、マスターがツナマヨを差し出して、 「そのネコちゃんが釣ったやつだよ」ってするんですね。
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