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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第005話 樹海を抜けて?


 今日も森を歩く。

 流石に大樹海と言うだけあって途方もなく広い。

 果てが見えない。


 そう言えば転生してから地平線を見た事ないなあと思い出す。

 前世でもよく考えたら都会育ちで見た記憶が写真でしかなかったけど…


 そうして何処か現実逃避しながら自分の通ってきた道を振り返る。

 オークにゴブリン、デカい蛇に蜥蜴と蜘蛛―デーモンスパイダーだったけかの死体が山程。


 奥へ進めば進むほど次から次へと襲ってくるようになった。

 オークはまだ良い、食えるから、だが他のはダメだ。

 流石に食べられない。

 蛇は鶏肉に近いと聞いた事があるけどちょっと食べようとは思わない。


 そんな感じで次から次へと倒してるからLV上げも捗る、捗る。

 今や最早LV9だ。

 後1つで10の大台である。


 歩きながらのスパルタンな特訓も忘れない。

 何だか固めな黒い木の枝を噛み噛みしながら【空間機動】でピョンピョンと移動する。

 森を抜けた先にあると言う山越えにはこの【技能】が非常に役に立つであろう。


 暫く進むとまた蜘蛛―デーモンスパイダーに出会う。

 だが、今度のは巣を張っていて襲って来る気配がない。


 うん、襲ってこないのならこちらから攻撃はしませんよと見逃す事にする。

 私は基本的には人畜無害な平和主義者です。

 世界が私に対してハードモードなだけですと言っておく。


 そうして進んでいると今度はまたゴブリンに出会った。

 しかも三匹の集団。

 18禁なゲームにもよく出て来るアレなモンスターだ。

 私は知ってるだけでやった事無いけど…ホントだよ?


 そんな三匹の内の二匹は定番の棍棒を一匹は槍を持っていた。

 先端に付いてるのは兎の頭に付いてる角だろうか?

 随分と器用に加工したモノだ。

 自慢気に振り回している。


 そのゴブリンとバッタリ目が合った。

 丁度良い獲物を見つけたとばかりに槍を手に近付いてくる。

 囃し立てるように騒ぐもう二匹。


 はい【猛爪攻撃】と放ち槍の間合い外からぶった切る。

 ドサリと倒れる槍を持っていたゴブリン。


 残っていた二匹のゴブリンは顔色を変えて慌てて逃げて行った。

 うーん、ゴブリンは害獣だよな。

 追って仕留めるべきか、でもこんな樹海の奥深くに居るのでは人里の迷惑にもなるまいと考えて見逃す事にする。

 別に面倒になった訳ではない。

 ないったらない。


 ゴブリンを逃がして暫く歩くと【危機感知】に反応があった。

 慌てて振り向くと一度遭遇した大蛇が這い寄って来る最中だった。

 この蛇は厄介だった最初の時も【危機感知】が反応を示すまで私は接近に気付かなかったのだ。

 【危機感知】様様である。

 大口を開けて私を飲み込もうとした瞬間に【猛爪攻撃】で仕留めた。


 次に会ったのは上から襲ってきた昔、一度だけ襲われた鷲の様な鳥だ。

 だが、今は【空間機動】がある。

 ヒョイと躱して【空間機動】で移動して【牙攻撃】で噛み付いて終わった。

 あ、鳥肉って転生してから初めて食べる。


 どうなんだろ、美味しいのかな?

 と、思いつつ爪で羽をむしって身に嚙り付く。

 うーん、ちょっと微妙。

 やはり猛禽類だからかな?

 前世の鶏って偉大だったんだなぁとしみじみ感じた。 


 牛が出た牛だ。

 ミノタウロスとかではない。

 バッファローみたいなデカい角を持った四本足の牛だ。


 牛は美味しい。

 ロース、カルビ、サーロイン、ハラミ、タン大体どこでも食える。

 そして何より美味しい――筈だ。

 魔物だからちょっと不安だけど。

 残念なのは食べきれない事だな。

 この体に対してはデカすぎる。

 時間的に今日最後の狩りだろうけどさっき鳥を食べたし余り食べれそうにない。

 ちょっと食べて残りは明日の朝ご飯にしよう。

 そう思って爪を構える。


「ブモォォォォォッ!!!」

 と、言いながら牛が突っ込んでくる。

 何故、魔物はこうも好戦的なのか、こちとら見るからに無害な小さい狐猫玉なのに…。

 兎も角、コレで安全の為に討伐は決定。

 ピョンと跳んで【空間機動】を発動。

 牛の突進を避けて背中に降り立つ。

 体の構造上背中には手が出せない筈だ。

 そしてそこから【猛爪攻撃】ゼロ距離射撃。


 牛の頭が吹っ飛んだ。

 だくだくと血が流れていき血の海が出来上がる。

 うん、ちょっとグロイ、私がやった事だけどね。


 そんな訳で血抜き?が終わる迄の間、暫く待つ。

 そうして待望の実食タイム。


 ハムハムと牛に嚙り付き肉を貪る。


 うーまーいーぞー!!


 感動した。

 狐猫生に感謝した。

 バクバクと一心不乱に食べる。


 でもやっぱりデカすぎる。

 一割も食べられずお腹がポンポコリンになる。


 ふう、ごちそうさまでした。

 残りはまた明日の朝だ。

 でも大分の量が残るなー、【技能】で【アイテムボックス】とかあったら良いのにと心底思う。

 夜も近い、取り合えず近くに寝床を探しに私は歩き出した。


 そう言えば私って肉しか喰ってないけど大丈夫なんだろうか?

 こう、栄養バランス的に、前世では猫が食べる草で猫草とかあった記憶がある。

 うーん、でも、体は求めていない。

 多分、私は肉食動物。

 だからきっと大丈夫。

 そう思うことにした。


 夜になる。

 奥の方に来て一番困ったのがこの時間帯だ。


 寝る場所がない。

 木は杉の様な木だが真っ黒でそこにはうろどころか身をひそめられる穴一つない。

 しかも下に茂みもほぼない。

 こうなると身を隠して寝られるのは木の葉の中だけになる。

 木に登って眠る。

 ハンモックでも在ればよいがそんなモノは無い。


 不安定な中で木の枝にぶら下がって寝るしかない。

 何度落っこちかけて【空間機動】で助かったか分からない。

 そんな不安定な中で熟睡出来る訳もなく、私は寝不足な体に鞭打って進んで行くしかないのであった。


 朝になった。

 森を歩いた。

 熊さんに出会った。

 クマである。

 ベアーである。

 寝不足だが私に隈は無い。

 昨日の食べ残しの牛さんが熊に喰われていた。


 あーーーーー、私の牛ーーーーーっ!!!


 しかし森と言えば熊なのにそう言えば初めて出会った。

 しかもちっさい腹の足しにもなりそうにない自分に対して既に威嚇、攻撃態勢だ。


 やるっきゃない。

 熊の爪が振り下ろされる。

 全力で回避、地面が大きくえぐれていた。

 私の【猛爪攻撃】程ではないがかなりLVの高い【爪攻撃】だ。

 回避様に【猛爪攻撃】を放つ。

 血飛沫が舞うが一撃では倒れない。

 【猛爪攻撃】の一撃で倒せなかった魔物は初めてだ。

 再び熊の【爪攻撃】、【空間機動】を使って逃げる。

 逃げながら必死に【猛爪攻撃】を連打する。

 次々にヒットするが距離を空けている為か致命打にはならない。

 更に怒り狂って【爪攻撃】を乱発する熊。

 手に負えなくて逃げるか?と、一瞬考える。

 【空間機動】を使えば楽勝で逃げられる。


 でも襲われた、やり返した、此処までやったのだ。

 今更逃げると言うのも女が廃る。

 何よりご飯の牛を喰われた食い物の恨み。

 許すまじ。


 やってやると私は駆け出す。

 走る私に向かって熊の【爪攻撃】が迫る。

 直前で直角に曲がり更に【空間機動】で駆け上がる。


 真横に熊の首。

 私は至近距離から出来る限り間隔を狭め束ねた【猛爪攻撃】を放った。


 熊の首が飛んだ。

 シュタっと着地を決める。

 フッ、勝利のポーズ決め!


 そしてピコーンと音が鳴る。

 LVUPの合図だ。

 それよりも今は息を整えるのが忙しい。


 角兎を必死で狩った時以来の苦戦らしい苦戦だった。

 一撃でも貰えば私などプチィとばかりに死んでいた。

 まぁ、どの魔物でも一撃貰えばゲームオーバーな事実は変わらないけど熊は余波だけでもその危険があった。


 それでも勝った。

 狩ってやった。


 ふふふ、これはやはり成長したと喜んで良いのではないかと思う。

 母狐猫でも今の熊には苦戦しただろう。

 あの偉大なる母狐猫だ負けたとは思わない。

 母よ私は強くなったと誇らしく声を上げる。


「ミィミィ」

 としか聞こえないが、それでも誇る。


 そして私はステータス画面を開いた。


【名前】無し



【種族】ファトラ



【位階】零



【LV】9 → 10



【気力】28 → 30



【理力】27 → 29



【霊力】38 → 41



【魔力】42 → 45



【SP】1364 → 1365



【技能】【牙攻撃LV5】【猛爪攻撃LV2】【隠形LV2】【危機感知LV2】【疾走LV2】【空間機動LV2】【翻訳LV10】


 随分と上がった。

 【気力】も【理力】も【霊力】も【魔力】も何時だったか全部に+3されていた。

 何故だかは分からないがスパルタンな特訓の成果だと考えておこう。


 と、其処で画面の端が何か点滅してるのが眼に入った。

 何だろう?そう思い触れてみると更に画面が現れた。


『LVが一定値に達しました。位階を上げる試練に望めます。試練を望みますか? ・はい ・いいえ』


 は?

 何が何だか分からず私の目は点になった。

 試練ってなんだ?位階と言うのはステータス画面に表示されてる【位階】だろうけど、それを上げる試練?

 だが幾ら待ってもそれ以上の説明がされる事が無い。


 私は二択を迷う。

 試練と言うくらいだ、簡単な物ではないだろう。

 下手をすれば今の熊より厄介な可能性が高い。


 しかし、強くなる為なら、強くなれるなら受けるべきだと勘が告げている。

 だが失敗すればどうなるかも分からない。

 死ぬのかも知れない、死なずに済むのかも知れない。


 迷う。

 迷って、迷って私は選択した。


 ・はい


 次の瞬間、私は光に包まれて消えた。


 光が収まると私は広々とした空間にポツンと佇んでいた。

 地平線と言うのも妙かもだが果てが見えない。


 どこだ此処?ついさっきまで森の中だったのに今は見渡す限り平面の地。

 床の材質も分からない。

 木の板?石?コンクリート?ペシペシと叩いているがよく分からない。

 何となく滑り止めされたタイルと言うのが近い気がする。


『試練に挑む者よ。良くぞ来た』

 声が聞こえてきた。

 キョロキョロと辺りを見回すが誰も居ない。

 声だけが響いてくる。


『その幼き身でLVを上げ良くぞ。試練に挑む決断をした。汝の決意に敬意を表する』

 うん、やはり声だけの様だ。

 姿は見えない。


 神とかそういった類の存在なんだろうかと思いながら私は黙って話を聞くことにする。


『第一の試練は汝の悪夢と戦ってもらう。これは汝が闇が実体化したモノである。見事、打ち破って見せるが良い』


 その言葉と同時に私の数メートル先に黒い、真っ黒い何かが集まり形作り始める。

 それは段々と人型になって行った。


 そして忘れるまでもない。

 そいつは私が復讐を誓った奴。

 母狐猫の仇。

 兄弟姉妹達を攫った男。


 その姿だった。


 私の全身の毛が逆立ち尻尾が膨れ上がる。

 知らず、「シャーッ!」という声まで漏れ出す。


『では試練を乗り越えて見せよ。さすれば汝には更なる力と技能が授けられるであろう。汝に光と闇の導きが在らんことを―』

 言葉が途切れる。


 男は私の記憶通りの姿でニヤツキながらハルバードを構える。


 忘れられない怒りと共に私は地を蹴った。

狐猫の小話

アドラスティア大樹海はもっと凶悪な魔物がうようよ居ます。

狐猫が通っている川の側のルートが川での漁、移動、運搬に使われ定期的に特に危険な魔物が駆除されている為、安全なだけです。

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