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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第036話 騎士の訓練とS級の脅威?


 リーレンさんとリフレイアさんの試合。

 最初はドキワク見ていたが段々と見ているこっちの顔色が悪くなっていくのが見ている人には分かると思う。


 正直、魔物についてを読んでこの世界の人類よく絶滅しないなと思った。

 S級の天災カタストロフ、SS級の絶望ディスピア、SSS級の終焉アポカリプス、EX級の神話ミソロジー何てのが居る世界で良く人類生きてられるなと思った。

 私は無意識に前世の記憶から人間って銃とか使わない剣何か中世的な武器だと弱いと思い込んでいた様だ。


 でもやっぱり強い人はいる、認識を改める。

 リフレイアさんマジ強い。


 正に赤子の手をひねるが正しい状況だ。

 リーレンさんとの腕の違いは圧倒的、其の差は致命的、絶望的過ぎる。


 それでも何かを得ようと立ち向かうリーレンさん。

 やっぱり水晶大亀アルケイロンの一件がリーレンさんを駆り立てているようだ。


 水晶大亀アルケイロンを足止めして結界を張り、人々を癒したセアラ。

 最終的に水晶大亀アルケイロンを倒して止めた私、対してリーレンさんは何も出来なかった。

 セアラの護衛騎士として思う所があるんだろう。


 必死に振るわれるリーレンさんの剣を避けずに合わせて、払い、受け流し、弾きながらリフレイアさんは相手をする。

 そして次々と注意が入る。


 足運びや重心の移動、力の入れ方と抜き方、【技能】の使い方などだ。

 特に痛いのがセアラの【恩恵ギフト】の力に頼り切っていると言う指摘だろう。


 曰く回復を当てにして捨て身になりがちな攻撃が多い、高まったステータスを当てにした動きが多い。

 言われて自覚を感じたのかリーレンさんなお表情が歪む。

 それでもと打ち込むリーレンさん、受け止めるリフレイアさん。


 試合と言うより完全に指導試合だ。

 リーレンさんはそんなに弱くない、C級の災厄カラミティでも弱いモノならソロで、強ければパーティーで倒せる実力はある。

 対してリフレイアさんはソロでもA級の破滅ディザスターを倒せそうだ。


 強い処じゃない、本気で強い。


 人間舐めてたわーと思う。

 流石は魔物が暴れる修羅の世界で生きる人々。


 でもリーレンさんも必死で喰いつく。

 何かを得ようと必死なようだ。


「…強い焦りを感じますね。何か貴方を駆り立てる事がありましたか?」

「!」

 それまでとは違う指摘にリーレンさんが動揺したがポツリと語りだす。


「……私は聖女様の盾である筈なのに先日の、水晶大亀アルケイロンとの戦いで何一つ出来なかった。護られただけだった」

 予想通りの言葉、リフレイアさんは黙って聞く、リーレンさんは汗だくで息も荒れて崩れそうになる膝を必死に支えながら立つ。

 一方でリフレイアさんは汗も流さず、息も佇まいも乱れない。

 人間辞めてない?と思う。


「だから少しでも強くならねばならないのです。これから先も聖女様の盾である為にっ!」

 叫んだ。

 リーレンさんが、それを聞いたリフレイアさんは「分かりました」と言って構えを変える。

 居合切りの様な構えだ。

 剣は直刀だし鞘にも納めないけど構えはまんまだ。


「これより一撃を放ちます。貴方の後ろの木は聖女セアラ、その心持ちで防いで下さい」

「!」

 リーレンさんが防御の構えを取る。

 リフレイアさんは前傾姿勢になる。


「行きます」

 その言葉と同時にリフレイアさんの姿が消えた。


 え?!


 と、気付いたらリーレンさんが立っていた位置に剣を振りぬいたリフレイアさんの姿、一方でリーレンさんの姿がない。

 いや、上空を舞っている。

 かなりの高さだ。

 落ちたら怪我する。


 危ないと思い、落下地点に【超尻尾攻撃】でクッションを作ろうとするがリフレイアさんがもう動いていた。

 リーレンさんの落下地点に立ち、ポスと完全に衝撃を殺してお姫様抱っこする。


「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」

 剣を握りしめたまま、荒く短い呼吸をする。

 自分が両断される幻視でも見たのかも知れない、顔色が真っ青だ。


「見事でした」

 そう言ってリフレイアさんはリーレンさんを地面に下ろす。

 腰が抜けているのかリーレンさんはその場に座ったままだ。


「木には一筋の傷も入ってません。貴方は護り切りました。護衛騎士リーレン」

「はっ、はっ、はっ、はい、ありがとうございました。護衛騎士リフレイア」

 やっと落ち着いて来たのかリフレイアさんにお礼を言うリーレンさん。

 リフレイアさんの口元も笑みの形に緩んでいる。


 今更ながらすんごいモノを見たと思った。

 まさか【思考超加速】と【五感強化】を持つ私の視界から消えるような一撃が放たれるとは、思わなかった。


 リフレイアさん想像以上にとんでもなかった。


 そして試合した二人の間に落ち着いた空気が流れ、私も終わったなーとさてそろそろ狩りに行く準備をするべと思っていた所で――


「あのー」


 と、声が響いた。

 ビックリして私は振り向き、リーレンさんとリフレイアさんもこっちを見る。


「自分も試合、良いですか?」

 ノーザンさんが立っていた。

 ノーザンさん何時から其処に?影が薄くて私は全然、気付かなかったよ。


 再び試合を頼まれたリフレイアさんは「…分かりました」と言ってまた剣を抜いた。

 さてさて今度はリフレイアさんとノーザンさんだ。

 リーレンさんと一緒にどんな試合になるのか見守る。


 リフレイアさんとノーザンさんの試合はやはり一方的になった。

 ビシバシノーザンさんに傷が刻まれていく。

 一方であれだけ激しく遣り合ったリーレンさんは傷所か痣一つ無しだ。

 この差は一体…うん、リフレイアさん。

 貴方は男の人が嫌いですか?と考える。


 飛ぶ叱責も容赦ない。

 やっぱ嫌いだろ、男の人と感じる。


 そんな私の耳にリーレンさんの呟きが届く。


「アレが頂点……」


 と、え?!と振り向く。

 リフレイアさんが頂点?護衛騎士最強って事?

 ビックリだが納得の強さだ。

 凄いと思う。


 ノーザンさんがとうとう、倒れ伏して試合が終わる。


 パタパタと走って二人の元に向かうリーレンさん。


「お疲れ様でした。護衛騎士リフレイア、騎士隊長」

 労うリーレンさんにリフレイアさんは「いえ、大丈夫です」と、相変わらず汗もかかず、息も様相も乱さず返事をする。

 ホントにこの人は半端ないわーと感じる。


 一方でノーザンさんは「ゼイ……ゼイ……」と、返事をする余力もない。

 ご愁傷さまだ。


「宜しければ明日もお願いして良いですか?護衛騎士リフレイア」

「ええ、護衛騎士リーレン」

 二人の間で明日の約束が交わされる。

 見てるだけでも勉強になるから此方もありがたい。


「……じ、自分もー……」

 そう言って屍状態のノーザンさんも手を挙げる。


「…分かりました」

 返事を返すが纏う空気がリーレンさんを相手する時と違う。

 やっぱり男の人、嫌いでしょ?と、私は思った。


 ホントに凄いもんを見たと思いながら私はジュラ大森林へ向かって空中を走っていた。

 人類の底力を見た気がした。

 加えて私は魔導のちゃんとした破壊力や攻撃力を知らない。


 剣だけの人間がアレなのだ。

 魔導が加わるとどれ程になるか知れない。


 水晶大亀アルケイロンの【水晶息吹】は物理攻撃だったから良かったがあの規模の【魔導攻撃】を人が扱えるならとんでもない。

 居ても少数だろうとは思うけど…油断は良くない。

 【魔導耐性】は今度、取っておこうと思う。


 序でに【強欲】と【回帰】というのも、だが不思議だ。

 地球じゃ確か嫉妬 ⇔ 忍耐で強欲 ⇔ 救恤だったがこの世界では強欲 ⇔ 忍耐 ⇔ 回帰らしい。

 他のもズレているんだろうか?

 そう思うが答えは出ない。

 また神殿に帰ったら本を漁ろうと思う。


 そんな事を考えながら私は森へ降りて行った。


 さて森に着いた、後にすることは狩りじゃー!と【探知】さんの示す赤点に向かって走り出す。

 あの時から私は方針をちょっと変えた。

 これまでは獲物と襲って来る魔物だけを狩っていたがアイツ、あの蟷螂を操っていた転生者を知ってからかなり無差別に魔物を狩っている。


 あの男はヤバイ。

 勘だがヤバイ。

 絶対に危険だと警鐘が鳴る。


 対策するにはどうするか?

 決まっている【LV】上げと【位階】上げだ。

 その為なら多少の無茶はする。


 大蜥蜴撃破ー、大蜘蛛撃破ー、デッカイワンコ撃破ー、超巨大蛇撃破ー、オーク発見撃破して確保ー。


 次々と撃破していくが【LV】は上がらない。

 中々に難しい。

 本来なら何年もかけて上げていく所を生後半年程で今の【LV】な方がオカシイかも知れない。


 A級の破滅ディザスターでも狩れれば上がると思うんだが…おっと、大きな赤い点、A級の破滅ディザスターかと気付かれない様にコッソリ接近する。


 発見。

 牛さんだーーーっ!

 危険デリシャス猛牛ワンダーブルだーーーっ!


『マスター、デンジャラスワイルドブルデス』


 そう【検索】さんのツッコミが入るが気にしない。

 あれは骨に角迄食えるデリシャスでワンダーな夢の牛さんなのだ。

 私が決めた。

 そう決めた。

 これから改名だ。


 まだ此方に気付いていない危険デリシャス猛牛ワンダーブルに【隠形】を駆使して接近、そして「こんばんは、そして死ねぇっ!」と首に【猛烈爪攻撃】を胸に【超尻尾攻撃】で倒す。


 不意を討てばA級の破滅ディザスターでも楽勝だ。

 儲け、儲けと思うとピコーンの音。


『LVが上がりました』

『【隠形LV8】が【LV9】になりました』


 やった、上がった。

 【技能】までと小躍りする。

 早速、危険デンジャラス猛牛ワイルドブルを借りたリーレンさんの【魔導袋】に仕舞う。


 しかし、私は油断していた、やり過ぎていた、それが近付くまで気付かなかった。


 【探知】さんにまた反応、デッカイ、またA級の破滅ディザスターか?と思った。

 次の瞬間、間合いが半分になった。

 速い。

 そして全身が悲鳴を上げ本能が逃げろと叫ぶ。


 私は【空間機動】と【疾駆】で駆け出した。

 でも相手の方が速い。

 追いつかれる。

 振り返る。


 見てしまった。

 知っていた。

 【鑑定】もしてしまった。


 それは――【鑑定】『黒雷虎ブラックサンダータイガー討伐難易度S級、天災カタストロフ


 本物のS級の天災カタストロフとの初遭遇だった。


 ヤバイ、やばい、ヤバい、逃げろ、にげろ、ニゲロ、速く。


 必死に走るが相手の方が速い。

 追いつかれる。


 だったらと上に向けて走る。

 【空間機動】で上空へ、だが一跳びで間合いが潰された。

 目の前に現れる黒い虎。

 黒雷虎ブラックサンダータイガー、それは間髪入れずに私へ【猛烈爪攻撃】を放った。


 吹き飛び地上に叩き落される私。

 【忍耐】様の熱量が上がる。

 ステータスが上がる。

 だけど、まだまだ届かない。


 【隠形】を使って隠れながら必死に逃げる。


『ブラックサンダータイガー、コクライヲマトイ、ハナチコウゲキシテキマス。イソギタイヒヲ』


 してる最中っ!【検索】さんに返事しながら走る。

 そこに360度を覆う円形の黒雷のドームが広がる。

 これが黒雷を放つという攻撃だろう。


 森の中を蛇行しながら逃げたのでは追いつかれると再び空中へ、夜の闇に純白の私の体は目立つ、【隠形】が効果を失う。

 見つかる。

 【検索】さんに現れる赤点。


 一瞬で間合いが詰まる。

 マズイ、防御と【超尻尾攻撃】で巨大化させた尻尾で全身を覆う。

 【猛烈爪攻撃】が効かなかった事から今度は既に黒雷虎ブラックサンダータイガーは全身に黒雷を纏っている。


 来るっ!

 そう覚悟した瞬間、私はまた吹っ飛んだ。


 地面を転がりながら防御態勢を解除、痛む体に鞭打ち走り出す。

 【忍耐】様の熱はもう三分の二位貯まっている。

 次を喰らえば限界状態だ、そうなれば戦えるかも知れないがその前に次の一撃で死ぬ可能性が高い。


 だから逃げる。

 走る。


 ピコーン


『【疾駆LV9】が【LV10】になりました』


 やった、上がった。

 あれ?でも進化無し?【疾走】→【疾駆】で打ち止め?

 戸惑いながらも走る。


 【忍耐】様の熱と【疾駆】のお陰でギリギリ同じくらいの速度になった。

 でも、まだ黒雷虎ブラックサンダータイガーが速い、追いつかれる。


 こうなれば【並列思考】の四番目、やってしまえ―と、命じる。

 走る黒雷虎ブラックサンダータイガーの前の空間がウニョーンと捩じれる。

 其処に突っ込みぶつかり、転がる黒雷虎ブラックサンダータイガー


 フハハハハ、まだまだマトモに仕えない【空間魔導】だがこの程度の嫌がらせは出来るのだ。

 しかし少し時間が稼げただけだ、次は恐らく引っ掛からない。


 何か無いかと考える。

 【疾駆】これで本当に最後なのかと思った時、ウィンドウが開いた。


『技能【疾駆LV10】を最終進化【疾風】にするにはSP50が必要です。使用しますか?』


 そう表示された。

 迷う時間は無い。

 はい。

 イエス。

 OK。

 直ぐやれ。

 風が呼んでるんだ、何時か聞いたあの声で―


 等と言って見る。

 そして―


『使用しました。【疾駆LV10】が【疾風】に進化しました』


 瞬間、速度がグンと上がった。

 後ろに見えていた黒雷虎ブラックサンダータイガーを示す【探知】さんの赤点が一瞬で消える。

 速い、あっという間にジュラ大森林を抜ける。

 速い、もう目の前が野営地だ。


 余りに速過ぎて呆然とする。


 コレ、最終進化と言ってたけど急に性能が上がり過ぎだろ、コントロールに苦労しそう。

 速度を落としていく。

 止まったのは丁度、野営地だった。


 だけど、本当に危なかった、助かった。

 S級の天災カタストロフ半端ないわーと思いながらフラフラと歩く。


 そして安心出来る野営地に入った所で私の意識は全身に走る痛みから途絶えた。

狐猫の小話

ノーザンさん、影が薄いですが結婚していて子供も居ます。

王都では家族が帰りを待ってます。

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