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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第033話 蠢く者、鎮魂際?


 ダビートの街に帰って家に戻って【魔導袋】をリーレンさんに返すと大変に驚かれた。

 どうやら危険デンジャラス猛牛ワイルドブルは私の予想以上に珍しく貴重な様だった。


 そして食べかけのオークと牛さん、苦労して狩った危険デンジャラス猛牛ワイルドブルの3匹を残して残りはダビートの街に卸された。


 そんな狩りの日々を過ごして三日目、私は巨大な蟷螂の魔物に襲われていた。


 くぅぅぅっ!

 強いっ!


【鑑定】『殺戮蟷螂キラーマンティス討伐難易度B級、災禍ルイン


『キョダイナカマキリノマモノ、ソノカマハミスリルスラリョウダンスルトイワレマス。カラダハゼイジャク』


 【検索】さんに胴体を狙えとアドバイスされるが狙う隙が無い。

 この蟷螂って私よりも戦い慣れしている感じだ。

 自分の弱点を知っていて狙わせない様に戦っている。


 しかも【物理攻撃完全無効】を持ってる私のお毛毛を僅かに切り裂いてきた。

 そうは見えないけど何かの属性を纏ってる?

 討伐難易度はB級の災禍ルインとあるがコイツはA級、破滅ディザスタークラスだ。


 【空間機動】で空中戦を仕掛けても羽根を開いて飛んでくる。

 【疾駆】でも速度で上回れない。


 何て強さと思う。

 同時に何か変だと感じる。


 蟷螂から人の意思の様な、操られているような気がする。

 ええいっ!考えるなと攻撃する。


 使えるのは【猛烈爪攻撃】のみ【金綱牙攻撃】は接近出来ない。

 速度がほぼ互角だからだ。


 【超尻尾攻撃】ダメ。

 尻尾が切られるかも知れない。


 撃ち合うしかないっ!

 必死で【猛烈爪攻撃】を連打する。

 蟷螂は斬撃を飛ばさない。

 その固く、鋭く、速い鎌で飛んでくる斬撃を次々と砕き迫って来る。

 やっぱり早い、ギリギリまで粘って【猛烈爪攻撃】を連打したが接近を許した。


 距離を開く為に【空間機動】で逃げようとする。

 しかし【空間機動】で出来た足場を先読みしたように攻撃して破壊される。


 しまった、落ちる。

 地面に落下、其処に落下の速度を上乗せして鎌を刺しに来る蟷螂。

 後ろに向けて回転しながら躱す私、だが完全には避け切れずに僅かに切られる。


 こうなったらと早く、速く、鋭く、短く、ボクシングのジャブの様に【猛烈爪攻撃】を連打する。

 だが、鎌を盾の様にして此方ににじり寄って来る。

 此方は動かずに【猛烈爪攻撃】を連打。

 蟷螂は少しずつ近付く、散弾の様な【猛烈爪攻撃】を完全には防げず、多少はダメージを与えられているが急所には当たらない。


 致命傷には程遠い。

 私が撃つ、撃つ、撃つ、蟷螂が近付く、近付く、近付く、そして鎌の間合いに入る直前、かかったと私は笑った。


 ボコりと持ち上がる蟷螂の背後の土、其処から飛び出す二本の尻尾、それは地中を進ませた【超尻尾攻撃】。

 私の尻尾は脆弱と言われた蟷螂の体を捻り上げて真っ二つにした。


 はぁ、しんどかったぁと息を吐く。

 尻尾がシュルシュルと元に戻って行く。


 喰えもしない昆虫の魔物なんて、迷惑なだけなのに何て強さだったんだと思う。

 強かったから【LV】が上がる程に経験値も貰えるか?と思ったけどそれもない。


 散々だと思った瞬間にそれは聞こえた。


「あーあ、やられちゃった。ゲームオーバーだね。今の僕の最高傑作の筈だったのに…」

「ミ!ミィィィ、ミィ?」(え!何なの、誰?)

 突然に響いた蟷螂の頭からの人の声に思わず私は声を上げてしまう。

 それが致命的な失敗だった。


「おやぁ?君はもしかして言葉が分かるの?戦ってる時から違和感はあったけど…中身はもしかして…人?」

 ビクッとした。

 言い当てられた。

 初めてだ、そんな事を思いつくということは――


「ミィミィィ?」(あなたも転生者?)

「はは、ミィミィとしか聞こえないや。話が出来ないと不便だねぇ。でも多分だけど合ってるよ」

 肯定した。

 きっと間違いないコイツは私と同じだ転生者だ。


「ミィィゥゥゥ」(何がしたかったの?)

「何を言ってるのか分からないからもういいや、そろそろ…間…れ、見た…だ…、ま…ね、猫……ん」

 そして声は途切れボンと言う音と共に蟷螂の頭から煙が昇った。

 ビクッとして警戒した私だが【探知】さんに反応が無いと分かると恐る恐る近付いて蟷螂の頭に触れた後、爪で其処を割いた。

 すると丸い機械的なボールが出てきた。

 コレで蟷螂を操っていた?

 そんな技術地球には無かった筈だと思った。


 なんだか凄く疲れた。

 受けた傷も僅かだが痛む、安全第一だ。

 今日は帰ろうと思った。

 【空間機動】を展開してピョンと飛び乗る。

 そしてダビートの街に家に帰って行く。


 この時にもしも、もしも私が――丸い機械的なボールを【魔導袋】に入れておけばあんな事は起こらなかったのでは?と思わない日は無かった。


「ミィミ」(ただいま)

 時間が経つにつれて妙に怠くなっていくのを我慢してどうにか帰宅する。

 中に入ると直ぐにリーレンさんとメイドさん達が出迎えてくれた。


「お帰りなさい、今日は早いですね。何か――いえ、怪我をされてますね。癒しましょう」

「ミィィィ」(ありがとう)

 お礼を言って傷薬を掛けてもらうがリーレンさんが眉をひそめる。


「これは―毒がかかってますね。弱い様なので普通の解毒剤で十分でしょうが」

 おおう、あの蟷螂って毒攻撃を使ってたのか、耐性を持ってない。

 切れる訳だと思う。


 しかし、本当に何が狙いだったんだろうと思う。

 私が遭遇した初の転生者。

 あの付近に狙いがあった?

 それとも強化した蟷螂の性能実験?

 分からない、全く分からない。


 分かってるのは一つ、向こうは間違いなく人間だろう事だけだ。

 それだけで敵とは言わないがあんな蟷螂をけしかけて来る相手だ味方じゃない。


 気を付けよう。

 そしてまだまだまだまだ強くなろう。

 そう私は心に誓った。







「ふん、ふん、ふーん」

 僕はご機嫌に鼻歌を歌う。

 新しい玩具が見つかった。


 これまで4人を見つけた。

 2人はアッサリと壊れた。

 残る2人ももう少しという所で5人目を見つけた。


 しかも人間じゃなかった笑える。

 更に今の最高傑作を壊して見せた、楽しい。

 壊しがいがあると言うモノだ。


 超える壁は高ければ高い程に良い。

 そうすれば神のお情けで位階が上がって神に近付く。

 そしてきっと目的に届く。


「ふーん、ふーん、ふー…」

「随分とご機嫌のようだな。ハミルトン」

 おっと、スポンサー様のお出ましだ。

 金払いは良いが口やかましいのが玉に瑕だ。

 まあ、その金だって殆んどが僕のお陰なんだけど、それをちゃんと理解してるのかな?


「いーえ、ご機嫌斜めです。今しがた操って調査に向かわせた実験機を子猫に壊されましたから」

 半分本当で半分嘘だ。

 ご機嫌斜めは嘘、そういう態度でないとスポンサー様は怒るからだ。

 実験機を壊されたのは本当、アレには笑った次はもっと強いのを創ろう。


「子猫?」

 おっと、間違えたらしい。

 スポンサー様が首を傾げている。

 確かあの生物は……。


「ファトラでしたか、真っ白な。見事にやられました」

 そう言うとスポンサー様は顔を真っ赤にして怒り出した。

 ああ、やはりダメだ。

 ダメすぎる。

 余りにもダメ過ぎる。


 やはり一刻も早く〇〇に捧げねば、託さねば、委ねねばと思う。


「貴様の生み出した【昆魔】はあんな魔物の幼生体にも劣るのかっ!」

「いえ、いえ、性能実験は見たでしょう?A級の破滅ディザスターですら倒しました。あのファトラが異常ですね」

 諭すように言ってやるとスポンサー様は黙った。

 自分の目で見た事を思い出したのだろう。

 まったく…と、思う。


「それでダビートの街の様子は?」

「ほぼ無傷ですね。やはりあのお転婆な聖女様に逃げられたのが痛かったですね」

 言ってやるとダンッ!と傍のテーブルを殴った。

 ああ、また怒った。

 自分を管理出来ない。

 これだからダメなのだ。


「貴様の【鉄機兵】が――」

「【鉄機兵】は命令に従うだけの存在です。出した者の責任ですね」

 本来それは違うのだが、今の自分にはまだそれが出来ない。

 届かない、もっと位階を上げねばと思う。

 そして必ず〇〇を――。


「だがそれでは【人造聖石】は――」

「アムディの聖石の代わりにするのは難しくなりましたね。別の用途でも考えますか」

 気軽にそう言って話はそろそろ終わりだと思い、目の前に浮かんだディスプレイにキーボードで文字を打ち込んでいく。

 此処まで来るのに30年掛かった。

 心は変わらない。

 一刻も早く○○に――と思う。


「ならば今後も貴様の知識と【機械】とやら、我が家の為に捧げてもらうぞ。ハミルトン」

「ええ、貴方が僕を保護し続けてくれる限りはロズベルト・ダーリントン伯爵」

 嘘だ。

 僕が働くのは何時だって○○の為だけだ。

 ああ、もっと、もっと早くと思いながら僕はキーボードを叩き続けた。







 そして日々が更に過ぎて10日後。


「復帰します」

 セアラが宣言して家の広間に正装で杖を持って立っていた。

 お医者さんからも「もう大丈夫」とお墨付きを貰った。

 リーレンさんがセアラを抱きしめ、メイドさん達が拍手し、私が肉球をポフポフする。


 そしてお祝いじゃーとばかりに昨日、狩ったばかりの2頭目の危険デンジャラス猛牛ワイルドブルを出す。

 皆の目が驚きで点になった。


 この家だけでは食べきれないし勿体無いとスコート侯爵家の主従全員に声が掛かり、どうせならと街の者も参加出来るようになり街を巻き込んでの大宴会になった。

 危険デンジャラス猛牛ワイルドブルは足りそうにないのでこの際だともう1頭も出した。

 大歓声が響いた。


 私は皆から「凄い」「可愛い」「美味い」と褒められ撫でられ大歓迎だ。

 セアラも住人の皆から感謝され、お礼を言われて真っ赤だった。


 朝が過ぎて昼が過ぎて夜になって水晶大亀アルケイロンの犠牲者の鎮魂際をやろうとなった。

 セアラとシャルさんが前に出て鎮魂歌を歌う。


 寂しくて悲しい、でも安らぎを与える優しい歌だ。


 皆が黙って聞き入った。

 身近な人を失ったのか泣いてる人も居た。


 セアラも泣いていた。

 いや、皆が見ている。

 セアラは泣いてない。


 只、心を込めて歌っている。

 それが私には泣いて見えた。


 セアラはまだ自分を許せずに責めている。

 自分が無理に任務に挑戦しなければ誰も死ななかったと、そう思っている。

 でも私は違うと思う。

 きっとあのガマガエル神殿長だ、その時には別の手を使ったに違いない。

 そうなれば水晶大亀アルケイロンと戦った私は居ない、結界を張って大勢を癒したセアラも居ない、ダビートの街は壊滅も有り得た。

 だからこれは奇跡的な最小限の犠牲なのだと思う。


 だけど、それでもセアラは自分を責め続けるだろう。

 私に出来る事と言ったら一時の喧騒で忘れさせるぐらいだ。

 等とちょっとしんみりしてると誰かに抱き上げられた。


「あなーたはー、のーんでまーすかー?」

 セアラだった、でも様子がオカシイ、いやそれよりもセアラが自分から私を抱き上げる?異常事態だ。

 普段ならお〇らし聖女モードな筈だ。

 しかも飲んでますか?って、なんだ?私は狐猫なので水かミルクしか飲みません。

 って、この臭いっ!酒かっ!酒を飲まされたのかっ!こんな子供に酒を飲ますとは誰だ?!肉球パンチの餌食にしてくれるっ!


「わたーしはねー、さびーしかーったん、でーすよー」

 そう言ってギュウと私を抱きしめるセアラ。

 ちょ、セアラ、ギブ、ギブ!【物理攻撃完全無効】を持って居てもこう首が極まると私、窒息して死んじゃいます。

 抱き締められて手が動かせないので尻尾でピシピシして伝えるが伝わらない。


「あなーたはー、まいーにちー狩りーに行ってーわたーし、ひとーりだけお部屋でー、さびーしかーったん、でーすよー」

 うん、うん、分かった。

 分かったから私を助けよう。

 死ぬマジ死ぬ。

 ヘルプ、ヘルプ、ミー。


「あなーたはー、わたーしのきもーちをーわかーって、ないーんですー」

 う、うう、ヤ、ヤバ、意識が――。


「ありがとう」

 最後にそう聞こえた気がしてチーンと言う音と共に私の意識は落ちた。

狐猫の小話

初の二人目転生者です。

スゲーヤバい奴ですが、恐らく数千、数万年後の地球人類はハミルトン見たいになってます。

全ては〇〇の為に!

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― 新着の感想 ―
[一言] マジモンのやべーやつでタマヒュンですわ。 何を信仰してるのかものすごく気になります。 個人的には変なものは拾わないほうがいいと思いますね…
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