第032話 久々の森と狩り?
リーレンさんとメイドさんに見送られてダビートの街にでる。
被害から街は意気消沈してるかと思ったがそんな事は無かった。
寧ろお祭り騒ぎの様だ。
来た日―初日より人が多い。
今のダビートの街は一種のゴールドラッシュらしい。
岩山のあちこちに私が根こそぎ粉砕した水晶大亀の大水晶――アムディの聖石が転がっている。
それを求めてやって来た冒険者が沢山。
街の再建にやってきた人達も一杯だ。
誰もが逞しい。
街を出る前に何となく被害の大きかった北区を巡ってみる。
壊れた建物は撤去され新しい家が建てられていく。
トンカン、トンカンと音がする。
たった一週間で凄いと思う。
更にスコート侯爵家跡地にも行って見る。
民の家が優先と放置されていた。
それでも貴重品とまだ使えるモノ、大切な品、書籍の数々は回収され街の倉庫やスコート侯爵家が借りた家々に置かれているらしい。
そんな中で見つけてしまった。
もう駄目だと廃棄された木材の中に我が家――我が愛する狐猫をダメにする巣箱の残骸。
ノォォォォォォォォォッ!!!
やっぱり壊されていたぁ、己、水晶大亀め!と思うが、あの大亀は私が倒れている間にまた起きて動き出したが街を攻撃する事なく、洞窟に帰って行ったらしい。
そして聖女シャルを始めとした【聖歌】を歌える聖女候補の【聖歌】に眠らされ深い眠りに落ちたそうだ。
恨みはあるが水晶大亀も今回の一件は被害者と言える。
此処は寛大な心で許してやろうと思う。
決して勝ち目が無いからではないと言っておく。
断じて言っておく。
さて、誰も居ないスコート侯爵家跡地の裏庭に向かい其処から【空間機動】でダビートの街を出る。
目指すのは街から東にあると言う森だ。
私がダビートまでの道すがら獲物を狩っていたジュラ大森林の北端だそうだ。
其処に向かう。
この付近は水晶大亀の放つ気配に追われてかなり強い魔物か鈍感な魔物しか居ないと言っていた。
注意して森に入る。
射す木漏れ日、木々の匂い、踏みしめる草の感覚、やはり森は良いと思った。
そうしてご機嫌に歩いていると【探知】さんに反応、だが私自身の危機感知能力には無反応。
コイツはアレだなと思った。
本当に何で魔物はこんな腹の足しにもなりそうもないちっさな狐猫を狙うのかと思う。
絶対に何かがオカシイと考える。
そして現れるのを待つ。
多分、高レベルの【隠形】と【気配遮断】とか【無音】とか持って居そうな蛇が現れた。
しかもデッカい、すっごいデッカい、超デカい。
【鑑定】『超巨大蛇討伐難易度B級、災禍』
【検索】さんと呼びかける。
『モリノアンサツシャトイワレルダイジャデス。ウスイケハイトムオンニヨルイドウデテキヲハイゴカラマルノミシマス』
またもや良い情報をありがとう【検索】さん、ご褒美にキャンディーをあげよう。
見た事無いし、どうやったらあげられるか分からないけど、蛇は私が気付いてる事に気付いたが大丈夫と判断したのか大口開けて飲み込みに来た。
B級の災禍に見合ったかなりの速度だろう。
だがそこそこに高いステータスと【思考超加速】を持つ私には遅い。
【猛烈爪攻撃】開いた口に斬撃を飛ばす。
スッパリと斬れて三枚に下ろされていく。
その超巨体を切り裂いても【猛烈爪攻撃】は止まらない。
周囲の木々を切り裂いていく。
森にかなりの広場が出来てやっと【猛烈爪攻撃】は収まった。
やり過ぎたと思った。
うん、やはり自然破壊は良くない。
【猛烈爪攻撃】は控えようと決めた。
倒れた木々を【金綱牙攻撃】の経験値に変えながら【探知】さん、マジ感謝と思う。
無ければ私は早々に蛇系の魔物に喰われてた。
ご褒美を考えねばならない。
チョコレートだ。
だが、手に入れる手段と上げる術がない。
気持ちだけ贈っておく。
それにしてもあの切れた蛇は食えるのかねーと考えた。
『タイヘンビミデス』
おお、【検索】さん、またもや情報ありがとう。
御代わりのキャンディーだ。
喰えるのか、美味いのか、しかし、うーんと思う。
私は爬虫類も嫌いではない。
しかし食えるかと言えば微妙だ。
好き好んで蛇や蜥蜴を喰いたいとは思わない。
上げるのも悩む。
美味く喰えると知らないと困るだろう。
うーん、放置。
放置決定で、私は大蛇を忘れた。
超巨大蛇には会わなかった。
そう決めた。
さて、倒してしまった木々達よ。
貴方方の犠牲も無駄にはしない。
全てが貴重な【金綱牙攻撃】の経験値へとなってくれと噛む。
【鑑定】『オークラ木の倒木。ジュラ森林産。価値銅板8枚』
を次々と噛んで【鑑定】『オークラ木の倒木の破片。ジュラ森林産。価値銅貨3枚』に変えていく。
対抗するように【検索】さんも『オークラボク、カンソウガハヤクシナヤカデガンジョウケンザイニムイテマス』と伝えてくる。
よしよし面白い情報だ。
ご褒美のキャンディーだ。
二人――二【技能】で仲良く分けるんだと念を送る。
砕き終わって獲物の捜索を再開する。
さーて、次の獲物はー?と考える。
【探知】さんに反応。
【探知】さんの範囲も随分と広がった。
流石は【LV7】だと思う。
そして【探知】さんに引っかかったのはオークだった。
オーク肉キターッ!と思った。
同時に弱いオークが何でこんな危険地帯に?と頭を捻った。。
アレか、鈍感な魔物かと考えた。
しかし能々に見るとちょっと違った。
オークはオークだが鉄の鎧と斧で完全武装していた。
こうして見るとD級な災害で無くC級の災厄の魔物と思える。
偶にこうしてこの世界の魔物は武装している。
奪ったのか、作ったのか、魔物の武器商人とか居るのか分からないが兎に角、武装してる。
こういう奴は強くて頭も良いので注意が必要だ。
だが私の敵では無い。
尻尾を細く、鋭く変化させる。
【超尻尾攻撃】と放つ。
兜の隙間を通り脳を貫き一瞬で絶命させた。
倒れたオークを頭と貫いた尻尾ともう一本の尻尾を使い自分に向かって引き摺る。
其処でアレ?と思った。
水晶大亀と戦った時は【超尻尾攻撃】は尻尾が三本になってた。
だが、今は二本だ。
何かの間違いか【狂乱】若しくはセアラの【恩恵】の【光輝】による物かと思った。
確かめる為にオークの血でちょっとだけ汚れた尻尾を舐めて綺麗にしながら見てみる。
するとやっぱり生えてきていた三本目、ちっさいのが生えていた。
うわーん、また増えたー、また増えたよー、何で?!どうして?!と騒ぐ。
現実は変わらない。
どうしようもない。
増えたモノは減らせない。
ゴロゴロ、ジタバタしても何にもならない。
やはり水晶大亀との戦いの時は爆上がりしていたステータスの影響で一時的に使えるようになっていたのだろう。
諦めてまた狩りに出る。
二匹目のオークを発見。
今度は武装していない。
再び【超尻尾攻撃】で貫いて倒す。
【魔導袋】に仕舞う。
次を探す。
発見した。
牛さんだ!
猛牛だっ!
牛さんは美味しい。
滅多に食えないが、美味しい。
幸せの味だ。
喰えない頭の邪魔な角を【金綱牙攻撃】で二本粉砕する。
その衝撃波だけで脳をやられたのか猛牛は倒れる。
【魔導袋】に仕舞って角は更に細かく噛み砕くが【検索】さんから『ワイルドブルノツノハクスリノザイリョウニナリマス』と注意が入る。
失敗した。
次はやっぱり【超尻尾攻撃】で倒そうと決める。
そして時間は過ぎてお昼ご飯。
パクパク食べる。
お弁当は牛さんのお肉だった。
サイコロステーキだ。
弁当箱に保温機能があるのかヌクヌクだった。
幸せじゃーっ!!!
そして現在の成果を確認。
オーク三匹
牛さん一匹
大鶏一匹である。
大鶏は楽勝だった。
ステータスと【技能】が増えたのもあるが間違いなく前に会った奴より弱かった。
やはりアレは王大鶏だったか?と汗を流す。
よく当時の私がB級、災禍の魔物に勝てたなと思う。
あの王大鶏が自爆するような奴で本当に助かったと感じた。
そんな感じで【魔導袋】ももう直ぐ一杯、次の獲物が最後かなと探す。
そして【探知】に反応、駆ける。
見つけた。
うわ、デッカイ牛さんだ!
魔物についてで覚えはあるが一応【鑑定】。
【鑑定】『危険猛牛討伐難易度A級、破滅』
【検索】さーん。
『ワイルドブルノヘンイシュ、カゼヲマトッテトツゲキシテキマス。ヒジョウニビミ、ゼンシンツノマデタベラレマス』
牛さんで更に美味しく角迄食えると?
何だその素晴らしい牛さんは、A級、破滅が何だ、やってやると身構える。
「ブモォォォォォォォォォォォッ!!」
声と同時に高台から此方に向かって飛び降り突進して来る。
風を纏うと言う【検索】さんの言葉通りに緑色の風らしきものが前面を覆っている。
ええいっ!【猛烈爪攻撃】と放つが危険猛牛が纏う風が斬撃を拭き散らし周辺の木が切り倒される。
危険猛牛には傷一つ入っていない。
【猛烈爪攻撃】が効かなかった事に驚く私に危険猛牛が迫る。
【空間機動】【疾駆】慌てて回避する。
ならば風を纏っていない背後を攻撃すると木々をなぎ倒して危険猛牛直進するを追う。
だが、目の前で何と危険猛牛は180度回転して見せた。
てっきりUターンすると思っていた私は虚を突かれた。
至近距離に危険猛牛が迫る。
くっ!【金綱牙攻撃】ぶつかり合う突撃と噛みつきの衝撃波。
押し勝ったのは私だった。
危険猛牛の顔に傷がつく、しかし浅い。
加えて軽い私は危険猛牛の纏った風に巻き上げられて上空へと吹き飛ばされる。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…………
舞い上げられた私は悲鳴を上げて空を舞う。
そして落下が始まる。
クルクル、クルクルと回転しながら落下して――10点っ!キュピーンとポーズを決めて着地する。
あれ?前にもやったなこれと思っているとまた危険猛牛が突っ込んでくる。
「ブモォォォォォォォォォォォッ!!」
くぅ、流石はA級の破滅だ手強いと感じる。
風の属性魔導を纏っているから何時かの死呼熊と同じくこっちの【物理攻撃完全無効】を突破してくる。
それでもかなりのダメージを軽減してくれるから一発喰らって【忍耐】発動で勝利と言う手も考えたがやはり怪我はしたくない。
皆に心配させる。
ならばと作戦を考える。
考える。
考える。
よし、やってみようと思い付く。
ゆっくりと狙った場所に危険猛牛を誘導して行く。
慎重に、狙いがバレない様に確実に、そして着いた。
「ブモォォォォォォォォォォォッ!!」
危険猛牛がまた突進して来る。
其処に【猛烈爪攻撃】を二連放つ、弾かれてまた周囲の木が飛ぶ。
私の攻撃のダメージは無いが危険猛牛の怒りのボルテージは上がった気がする。
狙い通りだ。
私はピョンと上に跳んで危険猛牛の突撃を回避する。
危険猛牛は目の前の木々を砕いた後にまた直ぐに180度ターンを行おうとした。
「ブモォッ?!」
しかしその前に岩の壁があった。
木に隠されていた壁に突っ込む危険猛牛、岩壁に挟まれて180度ターンが出来ない。
ガリガリと岩壁を掘り進んでいく。
その背後に私が迫った。
【猛烈爪攻撃】【金綱牙攻撃】【超尻尾攻撃】
必殺の三連コンボ。
そして――
ピコーン
『LVが上がりました』
ふぃーーっ、苦戦したぁ。
安堵しながら危険猛牛が作ったばかりの洞窟を出る。
思った以上に苦労したやはりA級、破滅の魔物は伊達ではない。
自分はまだまだだと確信した。
そして【魔導袋】は一杯になった。
これからはスパルタンな特訓の時間だ。
周囲を見渡す。
其処には私と危険猛牛の戦いで出来た倒れた木の山。
ホントに自然破壊だなぁと思う。
取り合えず、頑張って全部を嚙み砕いて夕方までお空に向かって【猛烈爪攻撃】を連打した。
派手に暴れた結果か襲って来る魔物は居なかった。
夕方になって帰宅の時間だとなった。
ピョンピョンと【空間機動】で飛んでいく。
そしたら【探知】さんに反応があった。
なんだろう?と、一応、見に行く。
其処には私が倒した超巨大蛇を包み込む水色の不定形生物、コレはアレだ。
ファンタジー定番のアレだ。
転生したら〇〇だった件のアレだ。
そう思いながら鑑定する。
魔物についてでも知ってるけど、やっぱり【鑑定】『巨大水妖討伐難易度B級、災禍』だった。
【検索】さん。
『ソウジヤトヨバレルスライムノオオガタシュ、チチュウニヒソミマモノノシガイヲミツケルトアラワレショクス』
そうかー、きっと私が食べずに食べきれずに放置してきた獲物もこうして水妖が処理してくれたんだろうなと思った。
巨大水妖は超巨大蛇に夢中な様でこちらには見向きもしない。
ならば此方も放置でとピョンと飛ぶ。
害が無いなら放置だ、此方からは襲わない。
だが、次に響いた【検索】さんの言葉で私の足が変わった。
『ブツリコウゲキヲムコウ』
【空間機動】に【疾駆】を全速発動。
勝てんわ、ボケーーーーッ!!
何だ物理攻撃を無効って、こちとら物理攻撃しか持ってないのだ。
まぁ、私自身も【物理攻撃完全無効】を持ってるから他人の事は言えないけどな。
そして私は脱兎のごとく巨大水妖から逃げた。
早く魔導攻撃を覚えたいそう思った。
狐猫の小話
武装している魔物は迷宮生まれの魔物です。
この世界、王都や一部都市に迷宮があります。
偶に転移の罠等を踏んで何処かに飛ばされて地上でも発見されます。