第031話 回復、そしてこれまで?
目覚めてから四日目。
まだステータスと【技能】は戻らない。
出された朝ご飯を食べながら心配になる。
このままステータスと【技能】が戻らなければ狩りに行けない。
私が狩った獲物は後、どれだけ残っているだろう?
大量にドナドナされて行った。
後僅かな気がする。
オーク1体でも数週間、或いは1月喰えるかもだがそれまでにステータスと【技能】が戻らなければ私の狩り――野生生活は終わりだ。
部屋からコッソリ出て知ったが此処は宿屋とかではなく普通に一軒家だった。
スコート侯爵家が私とセアラ、リーレンさんと数人のメイドさんと料理人のお姉さんの為に借りてくれているらしい。
領主邸は水晶大亀の【水晶息吹】でほぼ壊滅だからだ。
はっ?!そうなると部屋に設置していた我が家―私が愛する狐猫をダメにする巣箱も犠牲に?
己、水晶大亀め!
やはり最後のトドメは手加減を考えた【超尻尾攻撃】ではなく【金綱牙攻撃】か【猛烈爪攻撃】にするべきだった。
我が家の仇、ユルスマジ。
そんな事を考えながらも訓練を続ける。
家の廊下を走ったり、太い柱を蹴り蹴りしたり、狐猫シャドーをシュッ!シュッ!したりと忙しい。
せめて【技能】が無くても兎位は狩れる様になろうと頑張る。
どうやって【技能】無しで兎が居る場所まで行くかは考えない。
気にしてはダメなのだ。
疲れたらセアラのベッドの足元隅っこで眠る。
まだベッドな住人のセアラは羨ましそうに私を見る。
そんな目をしてもダメです。
病人、怪我人、疲労者は絶対安静。
動いてはダメなのです。
健康が大事、無理は禁物と言っておく。
私もかなり無茶したけどね。
お昼ご飯を食べてまた家の中を走り回る。
メイドさんが私を暖かい目で見る。
ステータスと【技能】が使えないだけで体は絶好調だ。
早くお外の空気とお日様と風に当たりたい。
そんな事を考えていた午後過ぎ、13時か14時過ぎ位だろうか?
多分、私が水晶大亀を倒した時間帯だ。
ピコーンと音が響いた。
おお?!と思う。
『ステータスと【技能】のクールタイムが終了しました』
告知にやったと思う私の前にステータス・ウィンドウが勝手に表示される。
【名前】無し
【種族】ファトラ
【位階】弐
【LV】25 → 25
【気力】425 → 525
【理力】422 → 522
【霊力】482 → 582
【魔力】486 → 586
【SP】1288 → 1788
【技能】【金綱牙攻撃LV1】【猛烈爪攻撃LV1】【超尻尾攻撃LV1】【隠形LV7】【記憶LV8】【探知LV7】【鑑定LV4】【検索LV4】【夜目LV6】【疾駆LV8】【剛力LV4】【鋼体LV5】【物理攻撃完全無効】【空間機動LV8】【予測LV6】【並列思考LV3】【思考超加速LV8】【五感強化LV7】【翻訳LV10】【忍耐】
めっちゃ増えている。
ステータスは全部が100も増えてる。
【SP】に至っては500だ。
使った以上に帰って来た。
今回の一件は大きな善行と判断されたようだ。
ステータスが100も増えた理由は分からないが激闘を乗り越えた結果とコツコツ訓練の成果と考えよう。
そうしよう。
ピョンと跳んでみた。
軽く跳ねたつもりだった。
天井にぶつかる寸前だった。
見ていたメイドさんが目を丸くした。
ビュンビュンと廊下を走る。
【疾駆】も使わずこの速さ、凄いと思う。
完璧だ。
『マスター、ゴカイフクヲオイワイシマス』
おお、【検索】さん、君も復活か!心の友よ。
ヒシッと抱き着く。
【検索】さんは実体が無いので目の前の柱だけどね。
「どうやら完全に回復されたようですね」
おお、リーレンさんの言葉が分かる。
【翻訳】今まで転生特典にしてはショボいと思っていてゴメンね。
これからは感謝するよ。
大事にするよと思う。
「ミ!」(うん!)
元気よくリーレンさんに返事をする。
するとリーレンさんはちょっと苦笑しながら―
「トタトタと走り回る貴方も可愛かったですが、こうして規格外に戻った貴方を見ると不思議と安心しますね」
リーレンさんにまで規格外と言われた?
【検索】さんに続いて二度目だよ。
あ、そういえば【狂乱】を閉じ込めていた【並列思考】どうなったかなと精神を潜らせる感じで見てみる。
うん、すっごい汚部屋な雰囲気が流れ出てくる。
開けばまた【狂乱】状態になりそうだ。
これは封印だなとそっ閉じする。
「今日は無理ですが明日は狩りに行かれますか?今、ダビートの街は食料が不足して居るので皆が助かると思います」
「ミィゥ?!ミィ、ミィ!」(いいの?!行く、行く!)
喜んで請け負う。
ブン、ブン、と頷く。
それから暫くの間、リーレンさんに撫で撫でされた。
全身をくまなく。
リーレンさんは何か私のモフモフに飢えていたらしい。
究極じゃーっ!
至高じゃーっ!
天国じゃーっ!
あーーーーっ!
私はヘブンしてしまった。
それからメイドさん達にも代わる代わる撫でられ、抱き締められた。
どうやら先程までの私は彼女等から見て触ると怪我をさせてしまいそうな程に弱々しく映っていたらしい。
まあ、本当に小っちゃい狐猫だからね。
しょうがなね。
私の必死の特訓は楽しく遊んでるようにしか見えなかったらしい。
しかしメイドさん達、撫で撫でのレベルはまだまだだな。
リーレンさんは無理でもセアラやセリアーナお婆ちゃん大聖女様を目指すがよいと言っておく。
それから色々と話を聞いたり、覚えてる事を思い出したりして事態を大体把握。
意味が分からなくても覚えていれば【翻訳】をしてくれるらしい、優秀だ。
今まで雑に扱ってホントにゴメン。
私とセアラが寝ていたのは三日間、一週間前だ。
熟睡だったらしい、と、言うか気絶。
医者にも見せられて互いに【技能】の無茶な使用が祟っての疲労と副作用と判断されたそうだ。
セアラはリーレンさんがこの家に運んだ
中央広場に設置された緊急対策支部に居て必死に街の真ん中にある水晶大亀の大水晶から力を吸い上げて街の北側全部を覆う結界を張ったセアラを心配気に見ていたそうだ。
そこに私の【忍耐】攻撃に耐えれば耐える程にエネルギーが貯まり攻撃力が上がると言う能力を限界―臨界まで貯め込んだ【超尻尾攻撃】が炸裂。
結界に覆われて居なかった場所から街へと吹き込んだ突風と衝撃波に倒れたセアラを急遽スコート侯爵家が借り上げたこの家に運んだそうだ。
一方で私を助けたのは超美少女聖女改め聖女シャルさん。
シャル・スコート侯爵令嬢、何とあのヴァン侯爵の娘さんだ。
父親に似なくて良かったなと思う。
歳は16歳らしい、【LV】もかなりお高め、そんな彼女は任務で赴いていた街で任務が終わると同時にロズベルト神殿長から休暇を取る様に言われ閉じ込められたらしい。
だが、しかし、折角休めるのなら実家に帰ると護衛騎士と共に脱出、自ら馬に乗ってダビートの街を目指したそうだ。
行動力あるなと思う。
そして街に着いたら水晶大亀が暴れてる。
急いで【聖歌】で鎮めようと岩山を登る。
その辿り着いた先で私が水晶大亀へと放った最後の一撃を見る。
衝撃波と突風から【結界】で自分と護衛騎士を護り落ちて来た私を受け止める。
まだ【狂乱】の影響が見えた私を【聖歌】で眠らせたらしい。
それからセアラが純白のファトラの幼生を最近、連れてると噂で知ってたシャルさんは私を連れて街に戻りリーレンさんに預けてくれたらしい。
私を受け取ったリーレンさんはセアラと同じ部屋に寝かせてくれて今に至るという訳だ。
そして起きてからの二日目、聖女シャルが部屋にやって来た話だ。
◇
「起きているかしら?聖女セアラ?」
「は、はいっ!」
返事と共にセアラの背筋がピンと伸びる。
なんでも聖女シャルはセアラのマナーの先生だったそうだ、今でも声を聞くだけで背筋が伸びる程に厳しく指導されたらしい。
空いたままの扉に護衛の騎士を残して聖女シャルは部屋に入ってセアラのベッドの横にある椅子に腰かけた。
そしてセアラの様子を見て呟く。
「回復にはまだまだ掛かりそうね。聖女セアラは大切な身なのだから無茶をしてはダメよ?……そう言っても貴方はしてしまうのだろうけど…」
優し気にそう言う聖女シャルにセアラはポロポロと涙を零しながら必死に謝りだした。
「申し訳ございません。申し訳ございません。本当に、本当にどのようにお詫びをすれば良いか、私が無謀にも任務に挑戦した結果、ダビートの街に大きな被害を、住人にも犠牲者が…全て、全てが私の責任です。罰はどのようにもお受けします。せめてどうかリーレンやノーザン様、他の騎士の皆様には何の咎もなく。全て私が――」
「聖女セアラ」
滂沱の涙を流し、必死に謝罪するセアラの頭を抱きその髪を撫でながら聖女シャルは言った。
「貴方が謝罪する事などありません。罰などありません。真に咎められる人物は他に居ます」
「しかし、亡くなった方達が、家族を失った方達が、住む家を無くした方達が…」
抱き締められなお泣きながらセアラが言う。
だが、聖女シャルはピシャリとその言葉を遮る。
「家はまた建てれば良いのです。亡くなった者は確かに84名居ますがあの【狂乱】した水晶大亀が暴れてたったこれだけの犠牲者数で済んだのは貴方の功績です。誉れ称賛されこそすれ蔑まれる事はありません」
其処で扉を振り返り「そうですわよね。お父様」と言った。
扉には何時の間にかヴァン侯爵が立っていた。
ゆっくりと部屋に入って来る。
セアラの顔色は悪い、先日の件が尾を引いているのだろう。
だけど予想に反してヴァン侯爵はその場に正座して頭を地面に擦り付けた。
土下座、最大級の謝罪行為だ。
間違っても侯爵が聖女とはいえ――にする行動ではない。
「ヴァ、ヴァン侯爵、お顔を、お顔をお上げださいっ!」
大慌てで声を掛けるが、ヴァン侯爵は土下座を止めない。
「いや、聖女様を傷付け挙句にダビートの街を民の多くを救われたのだ。この程度はさせて頂けなければ気が済まん」
「当然です。娘の手紙の真偽を見分けられないとは…私はハッキリ書きました。今は弱くとも民を誰も見捨てずに身を張って決して逃げずに立ち向かう聖女セアラは必ず歴史に名を残す偉大な大聖女様になると」
べたぼめだった。
セアラが赤くなる。
そこで私の肉球パンチがヴァン侯爵に炸裂する。
プニィッ!と、効かないと分かると連打する。
プニッ!プニッ!プニッ!プニッ!プニッ!と襲う。
ダメだと分かると爪を出す。
だが、それは聖女シャルに止められる。
「痛かったですか?」
「ああ、中々に真に響いた」
そう言ってセアラに手を伸ばす。
「聖女様、この御恩には必ず報います。どうか一日も早い回復を」
「はい、はい、ありがとうございます」
差し出された手を両手で握るセアラ」
ヴァン侯爵との和解はこういて成立した。
「じゃあ、そろそろ行くわ。忙しいしね。全く、あの神殿長はどうしてくれようかしら?」
「それは私の役目だな。精々、償ってもらうさ」
そう言う二人の笑顔は怖い。
やっぱり親子だなぁと感じた。
◇
そう言って去ってった二人だが以来来ていない。
忙しいのだろう。
兎も角、会話が思い出せ、和解が成ったのは良かったと思う。
それよりも明日の狩りだ。
楽しみだなぁと心が逸る。
だが、それを羨ましそうに見るセアラ。
けどダメなのです。
病人は安静に世界の常識。
楽しみでちょっと寝つきが悪かった。
起きると何時もより遅い時間だった。
セアラはベッドの上で本を読んいる。
スコート侯爵家跡地から回収された物だ。
セアラの朝は基本的に早い、何かが無い限りは6時に起きて体術と杖術の訓練だ。
先生はリーレンさんだ。
廊下に出て広間に入る。
もう体を動かしてきた後らしい、水を飲んでいる。
私を見てちょっと驚く。
「もう出るのですか?」
「ミィィィ、ミィ」(行くよー、バンバン狩る)
元気に返事をする。
久々の狩りだドキワクが止まらない。
「そうですかお昼はどうします?帰ってこられます?」
うーん、久々に現地調達かなぁと首を振る。
「分かりました。ではお弁当を準備してもらいましょう。少し待って下さい」
おお、美味しいご飯は大歓迎です。でもどうやって運ぼう?と思う。
するとリーリアさんは自分の【魔導袋】を外して外して私の首に掛けた。
「使って下さい。運ぶのは大変でしょう」
と、大変助かると思った。
入れたい物に近付けて入れと念じるだけで良いと言われた。
出す時は表示される内容一覧から入れた物を選んで出ろと念じるだけだ。
試しに傍にあるモノでやってみた完璧だった。
そこでリーレンさんが顔色を変えた。
「まさか…文字も読めます?」と言った。
「ミィィゥゥ」(知らない)
私は言った。
首を振った。
決して可愛いぬいぐるみ、大きな可愛いぬいぐるみ、可愛い○○、とても可愛い〇など見てない。
無いったらない。
リーレンさんの可愛い一面はどうにか守られた。
料理人さんがお弁当を作ってくれて準備は万端だ。
飲み水も居れてくれた。
準備は完璧だ。
私は家を出た。
さあ、久々の狩りだ。
狐猫の小話
リーレンさんは可愛いモノ好きです。
そして一応、貴族なので婚約者がいます。
18歳で結婚予定でしたがセアラの護衛騎士を続けたくて20歳まで伸ばして貰いました。




