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狐猫と旅する  作者: 風緑
30/166

第030話 【忍耐】の代償、土下座とドナドナ?


 う、ううん、ん?んん?

 意識が浮上してくるそして何かがオカシイと感じる。

 知らない匂いだと思った。


 フカフカだが覚えのない毛布に包まれて私は眠っていたようだ。

 正面を見る。

 うん、知らない壁だ。


 どうやら私はペット?用のベッドらしき物に寝かされていたらしい。

 四方を板が囲んでる。

 そして上を見る。


 うん、知らない天井だ。

 ……………

 ちょっと待てっ!何故天井が見える?

 そう言えば我が家は?

 私が愛する狐猫をダメにする巣箱は?

 どうなったんだ?


 混乱する頭で必死に直前の状況を思い出そうとする。

 えーと、確か私達は任務でダビートに来て、スコート侯爵家に行って、ヴァン侯爵に色々言われて……思い出したらムカついてきた。

 今度会ったらやっぱり肉球パンチをお見舞いしよう、そうしよう。


 それでせめて任務に挑戦させてもらう事になって、行ったら水晶大亀アルケイロンが【狂乱草】で暴走して、セアラが一人残って、私が助けに行って、それから水晶大亀アルケイロンが外に出ちゃってダビートに被害が出て、セアラが街に大きな結界を張って護って、私が【忍耐】の能力で水晶大亀アルケイロンを気絶させて、そして落ちる所を誰かに助けて貰った。


 うん、大事件だったね。

 今更だがよく乗り越えられたと思う。

 100回に99回くらいは最悪の結果になった気がする。

 取ってて良かった【忍耐】だ。

 【忍耐】様だ。


 は、そう言えばセアラ!あんな結界を張るなんて絶対に無茶した。

 思い立って心配になった探そうと思って箱を出ようとする。

 出られない。

 ピョンと跳ぶが届かない。


 ひーこら言いながら爪を立てて登る。


 うう、ステータスが仕事してない。

 【忍耐】様の負荷がまだ続いてる?

 そう思いながら何とか箱を超えるとセアラが寝かされていた。

 目の前のベッドに横になって「スー、スー」と寝ている。


 セアラーーーーーッ!!とジャンピングした。

 体にのるつもりで、でも届かなかった。

 空中でワタワタした。

 ベッドの端っこ、足元の所にどうにか着地した。


 ステータスってやっぱり偉大だ。

 使えなくなって改めてそう思う。


 ポテポテと柔らかいベッドの上を歩く。

 セアラの体に乗って顔に近付く。

 顔色は良い、寝息も安定しえ見える。


 だけどちょっと衰弱して思える。

 長く寝ていたのかと思う。

 そう言えばだが私もお腹が空いてる。

 同じように長く寝ていたようだ。


 心配になった。

 必殺の肉球プニプニパンチを喰らわせる。


 ふっくらした柔らかいセアラの頬にプニプニの私の肉球が襲い掛かる。


 「…オー、レンレ…レンレ…レン…」

 うん?其処はプニプニ、プニィじゃないのか?そう思いながら連打した。

 プニプニの効果かセアラが薄らと目を開ける。


「ミィィ?ミィミィミ?ミミミィミミ?」(大丈夫?目が覚めた?苦しくない?)

 訊ねる。

 寝ぼけているのか、ボーとして焦点があってない。

 だが徐々にあって来る。

 セアラのちっぱいに座る私を見る。

 私もセアラを見る。


「ミィィ?」(起きた?)

 訊ねる。


「わ…」

 わ?私は首を傾げる。

 そう言えば先日も興奮してセアラにタックルして気絶させてしまった。


 私達の間にボディタッチはまだ早いのかも知れない。

 失敗した。

 そう思った所で、セアラが「ヤァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」と叫んだ。


 ヤってなんだ?イヤって、そんなに恐がらせたか?

 確かにS級の天災カタストロフな魔物の水晶大亀アルケイロンを殺せはしなかったが倒してしまった。

 恐がる理由はある。


 マジ、ゴメンナサイ。


 でもこんなに嫌がられるとは思わなかった。

 ちょっと傷付く。


 広いベッドの端っこまで行ってプルプルしながらセアラを見る。

 すると脅えさせたと思ったのかセアラが自分から近寄って撫で撫でしてくれた。

 幸福じゃーと思う。

 至福じゃーと思う。

 至高じゃーと思う。


 あれ?何時かもやったなこの流れと思った。

 兎も角、セアラのナデナデは優しく心地好い。

 リーレンさんには劣るがセリアーナお婆ちゃん大聖女様並だ。


 喉がゴロゴロだ。

 セアラの撫で撫では二度目だがこのままリーレンさんの高みを目指して欲しいと思う。


 そうしているとバタバタバタと走って来る足音が聞こえた。

 うん、このパターンも慣れたと思う。


 予想通りにリーレンさんが部屋に飛び込んできた。


「サー・シャアラッ!」

 シャアラ?セアラですよ?愛称?何時の間に二人はそんな関係に?私が知らないだけで洞窟内か外で重要イベントがあったのかも知れない。

 でも考えてみるとリーレンさんは今回はあんまり活躍できてない。

 セアラも私も大活躍だったのに、特にセアラ、ロビン君(邪神)から守ってくれた雄姿は忘れない。

 あ、思い出すと胸が――また、ダイビングしていい?でも空気を読もう。

 そうしよう。


「リーレンッ!」

 セアラがリーレンさんの名を呼び、泣きながらリーレンさんがセアラに抱き着く。

 セアラもリーレンさんを抱き留めて涙を流す。


 映画の感動シーンのようだ。

 ポップコーンとお気に入りだったメロンソーダが欲しい。

 もう手に入らないけど、兎も角、お邪魔虫にならないようにする。

 離れて美幼女と美少女が抱き合うシーンを眺める。


 だがしかし、待って欲しい。

 ちょっと困った事態が一つ。


 二人はお互いに話しながら泣いて抱き合っている。

 その話してる内容が分からない。


 リーレンと名を呼ぶセアラの声だけは解る。

 だが、他が一切、分からない。


 【翻訳】仕事しろと願う。

 反応が無い。

 【検索】さーん。

 無反応。

 【鑑定】、【五感強化】、【思考超加速】、【並列思考】。

 次々と念じる。

 何も変化なし。


 ヤバいと思った。

 【忍耐】の反動半端なかった。

 まさかここまで不便になるとは思わなかった。


 【技能】に頼り切っていた自分に愕然とした。

 そうこうして居る内にセアラとリーレンさんの感動の抱擁シーンは終わった。

 リーレンさんが部屋を出て行きセアラがカチコーンと固まってる私に不思議そうに声を掛ける。

 折角、セアラから声を掛けてくれたのに分からないとは無念だ。


 しかし、ええい、諦めるな私と思う。

 前世の私は確か優秀?だった…筈だ。

 全国模試でも100位以内50位以内の常連だった。


 そんな体は狐猫!

 頭脳は優秀女子高生!


 果たしてその実態はっ!


 只の無力な狐猫です。


 うん、やっぱり教えられるでもなく、只、会話されてるだけの異世界語を覚えるのはむつかしい。

 私は諦めた。


 ステータスと【技能】の復活を待とう。

 そしてご飯、時間的に御夕飯が運ばれてくる。


 セアラはお粥みたいな料理、私のもオーク肉をミンチにしてスープに浸した料理。

 良い匂いがする。


 食べる、美味しい。

 ホロホロだ。


 ガツガツ食べる。

 残してしまうかも?な量だったが全部を食べられた。

 どれだけ寝て、どんだけ飢えてたんだ私と思った。


 食べたら後は寝るだけだ、かなり眠った後みたいだけど寝られるんかな?と思う。

 ちょっとは運動―特訓せねばと思う。


 ダッシュ、ダッシュ、ダッシュと狭い部屋を走る。

 キック、キック、キックとベッドの足に蹴りを入れる。

 パンチ、パンチ、パンチと狐猫シャドーをする。


 爪立てや噛みつきは控えた。

 部屋の持ち主に悪い。


 そんな特訓を三時間ほど続けて眠くなって来たのでセアラの寝るベッドの端っこに登って眠る。

 あの箱の寝心地も悪くないがこっちの方が落ち着く。

 そして安心して寝た。


 翌朝、朝食後に私は部屋を駆けていた。

 それを面白そうに眺めるセアラ。


 私はもう【技能】とステータスが使えないだけで元気一杯だがセアラはまだまだの様だ。

 トイレぐらいは行けるが他は絶対安静、無茶で負ったダメージは大きい様だ。


 そこでドアがノックされた。

 何処か聞き覚えのある声がした。

 セアラの背筋がピーンと伸びて返事が返される。

 そして女の人―リーレンさんよりは年下だけどセアラよりは年上という少女が入って来る。


 しかも、美少女、超が付く美少女。

 加えて聖女様だ。

 真っ白に金糸の模様が入ったローブに『アストラーデの聖杖』、セリアーナお婆ちゃん大聖女様を除くと初めて会うセアラ以外の聖女様だ。


 セアラの隣に腰掛けて言葉を掛ける超美少女聖女様、するとボロボロと涙を流しながらセアラが頭を下げた。

 必死に何かを誤っているようだがまだ【翻訳】が仕事をしないので分からない。

 だが、しかし超美少女聖女様とはいえ会って早々に家のセアラを泣かすとは許せんっ!

 そう思っていると超美少女聖女様はセアラの頭を抱き、優しく頭を撫でながら何事か語り掛ける。


 安心させるように諭すように、セアラの瞳に溢れる涙が更に大きくなる。

 そこで振り返って開いたままの扉に何か言う超美少女聖女様すると其処にはヴァン侯爵が立っていた。

 現れ居ったな我が恐怖ロビン君(邪神)の親にして先日、セアラをボロクソに言ってくれた元凶めっ!


 其処になおれ我が肉球パンチの餌食にしてくれるっ!

 でもステータスが仕事してない今、立っていられると届かない。

 座っても難しい、土下座位してくれないと届かんと思ってるとマジでヴァン侯爵が土下座した。


 うぇぃ?!侯爵様の土下座?!ジャニーズDOGEZA?!いや、異世界だから異世界土下座?!この世界にもあるのね土下座って文化。

 そう混乱している私の横ではセアラが慌てて超美少女聖女様は当然、と言う顔でヴァン侯爵を見下ろしていた。

 大物だな超美少女聖女様、ならば私もと土下座するヴァン侯爵に近付き顔に肉球パンチを入れる。


 プニッ!


 むう、やはりステータスが仕事しないとダメージはない。

 ならば連打だと連続して肉球パンチを繰り出す。


 プニッ!プニッ!プニッ!プニッ!プニッ!


 慌てるセアラ、笑う超美少女聖女様、黙って受け止めるヴァン侯爵。

 ダメだ。

 これでは罰では無くご褒美ではないか、仕方ないとシャキーンと爪を出すと流石にそれはダメと超美少女聖女様が私を持ち上げ抱き締める。


 ううん?この抱かれ心地覚えがあるぞ?

 確か水晶大亀アルケイロンを倒して【空間機動】が切れて落下した時に抱き留められた感触だ。

 その後の子守歌の主でもある。

 道理で声にも聞き覚えがある筈だ。


 此処は恩人の顔を立てて許してやろう。

 感謝するのだな、ヴァン侯爵、顔に爪傷作られなくてと言っておく。


 そして土下座を止めて立ち上がったヴァン侯爵とセアラ、超美少女聖女様は暫く話した。

 内容は分からない、無念。

 何時まで続くんだろう、この状況。


 和解したセアラとヴァン侯爵は手を繋いだ後に離れた。

 超美少女聖女様はもう一度、セアラを抱きしめた後にヴァン侯爵と一緒に部屋を出て行った。


 兎も角、良かったと思えた。

 この日の騒動はそれだけだった。


 三日目。

 【技能】はまだ戻らない。


 ステータスと【技能】が使えない他はもう健康体だと思うのだが外出は許可されない。

 ちくせう。


 今日も今日とて狭い部屋を暴れまわって体を鍛える。

 少しでも強くなる為にだ。


 そんな私を微笑ましくみるセアラ。

 もうお〇らし聖女の面影は無いなと改めて思う。


 そうこうしてお昼ご飯の後、私はリーレンさんにお願いされた。

 リーレンさんは私が言葉を理解する事を知っているが、今は通じない事を知らない。

 困った、どうしよう。


 はっ?!私達はアイコンタクト出来た実績がある。

 通じろーと念を送る。

 リーレンさんも見返す。


 残念ながら伝わらなかった。

 あの一瞬は奇跡だったようだ。


 リーレンさんはダメですか…と、俯く。

 くぅ、そんな顔をされると私に否は無い。

 何よりリーレンさんの頼みだ、やぶさかではない。

 私に不利益が出る筈は無い……と、思う。


 首をブンブンと振って何度も頷く。

 良いのですか?的な事を言われた気がした。

 私は頷いた。


 リーレンさんに撫で撫でされた。

 やはりリーレンさんの撫で撫では至高だ。

 幸せを感じる。


 でも不安を感じた。

 立ち去るリーレンさんにそっと付いて行く。

 玄関は閉まってたので壁を登って窓から外を見る。


 そこにはリーレンさんと何かの業者らしい馬車を数台引き連れた男の人達がいた。

 なんだろう?と思った。

 その次の瞬間、馬車に私が狩ったオークと牛さんが積まれていく。


 え?!え?!えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!


 私はしがみ付いた窓枠から転げ落ちそうになった。

 何で?!何で?!何で?!

 私のご飯ー!お肉ー!


 叫んでみるが届かない。

 どうやらダビートの街は今、食糧難らしい、余裕があるなら回して欲しいと私にまでお鉢が回って来たのだ。


 うう、私の牛さん、オーク…。

 私の思いは届かないまま、牛さんとオークはドナドナされて行った。

狐猫の小話

ヴァン侯爵大反省です。

超美少女聖女は娘のシャルです。

父親に似なくて良かったねと言う子です。

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― 新着の感想 ―
[一言] うおっ…偏差値高すぎ… さすがの適応力とできるだけ修行するスタイルの一端を垣間見た気がします。
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