第029話 全力全開、狐猫と水晶大亀?
走る―奔る―趨る―疾る。
暗闇の中を駆ける。
暗くても狐猫のお目目と【技能】【夜目】で視界は良好。
一本道の洞窟を突き進む。
其処で人の姿が見える。
二人居た。
ん?二人と思った。
すれ違う、ノーザンさんとリーレンさんだ。
ノーザンさんはギョッと此方を見る。
見るとノーザンさんは右腕の手甲と肩当て、鎧の一部を失っていた。
多分、右腕を根元から失うような大怪我をしてセアラに癒して貰ったんだろう。
次にリーレンさんを見た。
リーレンさんは泣いていた。
リーレンさんを泣かせるとは…テキユルスマジッ!
そう心に決めてリーレンさんの涙が一杯の瞳を見て尋ねる。
(セアラは居ないの?)
通じろーと思いながら念を送る。
返事は直ぐに来た。
(聖女様はお一人でまだ奥に)
通じたーと喜んだ。
うんうん、アイコンタクトなんて私達って繋がってるーと思う。
もう会話は必要ない。
私は【疾駆】で走り抜けた。
再び―走る―奔る―趨る―疾る。
広間が見えたっ!セアラッ!!と、飛び込む。
目の前には巨大すぎる水晶大亀、その目の前には比べ物にならない小ささのセアラ。
まぁ、私は更にちっさいけどな。
ギリギリと弓を引き絞る様に水晶大亀の口に出来た水晶の矢が狙いを定める。
セアラは正面に立ち水晶大亀を見据えるがその身に纏う黄金の結界は既に弱々しい。
アレは貫かれるっ!
私は駆けだした。
矢が放たれた。
矢がセアラを貫く方が早い?!
ダメだ―イヤだ―セアラッ!!!
ピコーン
『【疾駆LV7】が【疾駆LV8】になりました』
神タイミングキターッ!
私の速度が上がる。
間に合った。
至近距離からの【猛爪攻撃】が水晶の矢を粉砕する。
そして私は背後にセアラを庇いながら水晶大亀を睨み、全身の毛を逆立て尻尾を膨らませて―
「ミィーーーーーッ!!フシャーーーーーッ!!」
―と、水晶大亀を威嚇した。
だが、やっぱり体格差がオカシイ。
象と蟻所かシロナガスクジラ対ミジンコレベルだ。
勝負になるかならないかじゃない。
戦いにすらならない気がする。
しかし、退く選択肢はない。
絶対にぶっ殺してやるっ!と思う。
うん?あれ?何故にぶっ殺してやるなんて発想が?
確かにセアラを殺そうとして、リーレンさんを泣かせ、オマケでノーザンさんにセアラが治したけど大怪我を負わせた。
難いし許せんとは思うけど殺してはならない、殺せる確率0%な相手をいきなりぶっ殺そうと考えた自分が不思議だ。
オカシイ。
だが過激な思考が止まらない。
殺せ―殺せ―殺せ―壊せ―壊せ―壊せ―滅せよ―滅せよ―滅せよ―粉砕せよ―粉砕せよ―粉砕せよ―
更に体の毛が逆立ち、尻尾が膨れ、ギリギリと歯が喰いしばられ、爪が地面に食い込む。
ヤバイ、絶対に正気じゃない。
【検索】さんヘルプミーと念じる。
『マスタージョウタイイジョウキョウランニオチイリツツアリマス。ゲンカイマデアトスウビョウ』
ノォォォォォォォォォッ!!!
そう言えばセアラとリーレンさんの無事に意識が行って【狂乱草】の事を忘れてた。
ヤバイ、予想以上にヤバい。
周囲に満ちるこの赤い煙が【狂乱草】?!
このままでは助けに来たセアラを自分が殺める危険がある。
対策を考えねばならない。
何か無いか、何か無いか、何か無いか………そうだっ!
思いつく。
はい、此処に先日めでたく【LV3】になった【並列思考】があります。
【並列思考LV3】の扉を開けます。
この鬱陶しい怨念じみた殺せ―壊せ―滅せよ―粉砕せよ―と叫ぶ狂乱さんを閉じ込めます。
ガチャリと鍵をかけます。
終了です。
ちょっと漏れ出して耳障りだけど我慢できるようになりました。
やったね!と喜ぶ。
『…マスターハキカクガイデス。ソンナ【ギノウ】ノツカイカタハアリマセン』
あっれー?オカシイ規格外等と言われてしまった。
出来たんだから良いじゃないかと思う。
しかし何だか【LV】UPのお陰か人間じみて来たね、【検索】さん。
ちょっと気になる言い方だったけどこれからも有益な情報を頼むぜと念じる。
ちょっとドタバタしたけどコレでも【思考超加速】のお陰で数秒。
さあ、セアラが逃げる時間を稼ぐ為にも頑張りますか、正直言って狂乱抜きでも大切な友達を殺されかけて私は怒ってるんだからなっ!と、私は水晶大亀に突っ込んだ。
「いけない、待ってーっ!」
セアラの止める声が聞こえたが止まらない。
止まる気はない。
そっちこそ早く逃げてと思う。
水晶大亀の気を引く為にも【猛爪攻撃】【猛爪攻撃】【猛爪攻撃】【猛爪攻撃】とその顔に向かって連打する。
ダメージは勿論ない。
多分、【LV】【技能】ステータス全てが絶望的な差だ。
だが、しかし私は覚えている!
水晶大亀は攻撃してきた私を煩わしく思ったのか、私に向けて攻撃を開始する。
吐き出される水晶の矢、【水晶息吹】。
それを次々と【鋼牙攻撃】【猛爪攻撃】【大尻尾攻撃】で撃ち落とす。
乱射される【水晶息吹】の一つがセアラに当たる軌道を取る。
おっと、そっちはダメよと【大尻尾攻撃】で尻尾を大きくして盾にする。
容易く貫けそうな尻尾に当たった【水晶息吹】は硬い鋼にでも当たった様に砕け散る。
ふっ、やはりなと思う。
【狂乱】状態はステータスが1.5倍になるが【物理攻撃】しか出来なくなるとあった。
【物理攻撃完全無効】を持つ私には無意味ッ!
効果が永続ならだけどね。
不安はあるがこっちの攻撃も向こうの攻撃も通用しない。
千日手だ。
だが時間稼ぎは十分に出来る。
その間にセアラには逃げて欲しいと思う。
すると―
「この場は任せますっ!頑張って下さいっ!」
セアラの言葉と同時に私の体が光りだす。
コレはアレだ。
セアラの【恩恵】の【光輝】だ。
確か掛けた対象のステータスが倍になると言ってた。
ちょっと動いてみると予想以上の速度が出た。
凄いと思う。
【猛爪攻撃】本体は切れないが背中の水晶――アムディの聖石は砕けた。
これならばと思って攻撃を続ける。
実際に私のステータスは約500、それが迷惑な狂乱で1.5倍、更にセアラの【恩恵】の【光輝】で2倍の倍率ドン。
楽に1000は超えている。
それでも背中の水晶を斬るのがやっと何だからS級の天災半端ないわー。
ホントにこんなのが居る世界で人類よく全滅しないなと思う。
セアラはやっと脱出してくれた。
これでもう何も問題ない。
本気の時間だ。
何?今までも本気だったろうって?
ちっち、心持ちの問題だよ。
本気の本気だ。
120%だ。
そのつもりで挑む。
それからも戦い続けた。
時間は大分過ぎた。
飛んでくる【水晶息吹】を【物理攻撃完全無効】に回数制限や制限時間、MPみたいなモノの消費があると怖いから避けられる時は避け、【猛爪攻撃】で切り裂き、【鋼牙攻撃】で噛み砕き、【大尻尾攻撃】で貫き、撃ち落として防ぐ。
そろそろリーレンさんとノーザンさんは山を下りた頃だろうか?
セアラは洞窟を出た頃だろうかと思う。
しかし、この戦いは何時まで続くんだろうと思う。
【狂乱】の状態異常が解けるまで?
煙はまだまだ漂っている。
晴れるまでは絶対に解けない。
加えて晴れて解けたとして大人しくなるだろうか?
ならない気がする。
やはり【聖歌】だ。
眠らせる必要がある。
その応援が来るまで頑張ってやろうじゃないかと気合を入れる。
1日でも2日でも3日でも一週間でも付き合ってやるっ!
そう思った時、水晶大亀の行動が変化した。
【水晶息吹】を放つのを止めて此方への巨体を生かした体当たり攻撃、亀の速度何て遅いと相場が決まって―馬鹿なっ?!早いっ!
全力回避、壁にその巨体に見合っただけの穴が開く。
ヤバイ、この攻撃は受けたらマズイ。
其処に今度は踏みつけ攻撃、それもダメと全速【疾駆】。
壁に埋め込まれたら下手をすれば身動きできなくなる。
埋まり方が悪ければ最悪で窒息死だ。
そんな阿呆な死に方はしたくない。
しかもステータスか巨体の歩幅の差かこちらに追いついてくる。
ドン亀なんて想像してすみません、許して下さいって感じだ。
そして続く攻撃。
突撃、回避、踏みつけ、回避、突撃、回避、踏みつけ、回避、踏みつけ、回避、踏みつけ、回避、突撃、回避――しまった、そっちはマズイッ!!!
水晶大亀は出口の洞窟へと突っ込んだ。
洞窟に突っ込んだ水晶大亀はそのまま自分の体より狭い通路を破壊しながら突き進んでいく。
そっちに行くなっ!戻れっ!戻れっ!と攻撃を繰り返すが止まらない。
くぅ、このドン亀、アホ亀、間抜け亀、お前のカーちゃんでーべそーっ!
悪口など言って見るが反応はない。
ちくせうっ!!
私はどうにかしよう、どうにかしようと足掻くがどうにも出来なかった。
水晶大亀は前進を続け、前進を続けて―ついに、凄まじい揺れと振動を岩山に起こして洞窟の出口を破壊し抜けて――外に出た。
洞窟を抜けた水晶大亀は既に目標を眼下のダビートに向けていた。
【水晶息吹】の第一射が放たれる。
止められない、迎撃できないっ!
ダビートに着弾。
散弾の様に降り注いだ【水晶息吹】は街の多くの建物を破壊する。
人にも犠牲が出た筈だ。
ダメだ、これ以上はやらせない。
【空間機動】で正面に回り込む。
放たれる【水晶息吹】の第二射。
必死になって【鋼牙攻撃】【猛爪攻撃】【大尻尾攻撃】で迎え撃つ。
だが、手が足りない。
第二射の射出が終わらない。
長い。
必死に迎撃するが撃ち落とせるのは一つの【技能】で1個か2個、多くて3個だ。
一方で一度に吐き出されるのは20以上、それが何十秒、一分近く続く。
とても全てを撃ち落とせない。
今のままでは――
仕方ない。
使い所だ。
覚悟を決める。
ステータス・オープンッ!
ウィンドウが開く。
【名前】無し
【種族】ファトラ
【位階】弐
【LV】21 → 25
【気力】377 → 425 → 637 → 1274
【理力】374 → 422 → 633 → 1266
【霊力】418 → 482 → 723 → 1446
【魔力】422 → 486 → 729 → 1458
【SP】1580 → 1596
【技能】【鋼牙攻撃LV3】【猛爪攻撃LV7】【大尻尾攻撃LV2】【隠形LV7】【記憶LV8】【探知LV7】【鑑定LV4】【検索LV4】【夜目LV6】【疾駆LV8】【剛力LV4】【鋼体LV4】【物理攻撃完全無効】【空間機動LV8】【予測LV6】【並列思考LV3】【思考超加速LV8】【五感強化LV7】【翻訳LV10】【忍耐】
(【技能】【鋼牙攻撃LV3】を【LV4】に【LV5】に【LV6】に【LV7】に【LV8】に【LV9】に【LV10】に、続いて【猛爪攻撃LV7】を【LV8】に【LV9】に【LV10】に更に【大尻尾攻撃LV2】を【LV3】に【LV4】に【LV5】に【LV6】に【LV7】に【LV8】に【LV9】に【LV10】にっ!)
『技能【鋼牙攻撃LV3】を【LV4】にするにはSP14が必要です。使用しました。技能【鋼牙攻撃LV4】を【LV5】にするにはSP15が必要です。使用しました。技能【鋼牙攻撃LV6】を【LV7】にするにはSP17が必要です。使用しました。技能【鋼牙攻撃LVLV7】を【LV8】にするにはSP18が必要です。使用しました。技能【鋼牙攻撃LV8】を【LV9】にするにはSP19が必要です。使用しました。技能【鋼牙攻撃LV9】を【LV10】にするにはSP20が必要です。使用しました。【鋼牙攻撃LV10】が【金鋼牙攻撃LV1】に進化しました。続けて技能【猛爪攻撃LV7】を【LV8】にするにはSP18が必要です。使用しました。技能【猛爪攻撃LV8】を【LV9】にするにはSP19が必要です。使用しました。技能【猛爪攻撃LV9】を【LV10】にするにはSP20が必要です。使用しました。【猛爪攻撃LV10】が【猛烈爪攻撃LV1】に進化しました。続いて技能【大尻尾攻撃LV2】を【LV3】にするにはSP13が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV3】を【LV4】にするにはSP14が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV4】を【LV5】にするにはSP15が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV5】を【LV6】にするにはSP16が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV6】を【LV7】にするにはSP17が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV7】を【LV8】にするにはSP18が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV8】を【LV9】にするにはSP19が必要です。使用しました。技能【大尻尾攻撃LV9】を【LV10】にするにはSP20が必要です。使用しました。【大尻尾攻撃LV10】が【超尻尾攻撃LV1】に進化しました』
攻撃の【技能】を一気に上げた。
コレで、コレでどうにかっ!
第三射が放たれた。
全速で飛び掛かる。
【金鋼牙攻撃】
全力で噛み付く。
1本所か一噛みの衝撃波で5本の【水晶息吹】の矢を砕く。
【猛烈爪攻撃】
両手で斬撃を放つ。
片方で5本、計10本を撃ち落とす。
残りは僅かだ。
【超尻尾攻撃】
残された【水晶息吹】を【大尻尾攻撃】より更に速く、鋭くなった二本の―いや、三本の尻尾が貫き落す。
全てを撃ち落とした。
アレ?アレレ?アレレレレ???
増えた?!また増えた?!またもや増えたのーーーーーっ!!
進化した技能を駆使し全ての【水晶息吹】の迎撃をしながら私は叫ぶ。
何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で増えるの?
このままじゃ体より尻尾の方がおっきくならない?!
これ以上増えたらどうなるの?
尻尾が重くて歩けなくならない?
それとも尻尾にくるまって転がって移動しろと?
うわーん、そんなのイヤだよーーーっ!
混乱して叫びながらも牙は爪は尻尾は【水晶息吹】を砕いていく。
第三射は全て防ぎきれた。
尻尾の件は私的に大問題だが今は別件とする。
でも、ああ、自称:神様(仮)これ以上は増えませんようにと祈る。
兎も角、行けると思った。
このままならば大丈夫と――しかし、私は――まだ、水晶大亀を――舐めていた。
「クォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーンッ!!」
叫びと共に唐突に第四射が放たれた。
先程までより速い。
先程までより多い。
先程までより長い。
延々と吐き出される第四射。
必死になって迎撃する。
だが、さっきと同じだ手が足りない、再び街への着弾を許してしまう。
また堂々巡りだ――そう思った瞬間、ダビートの北側を黄金の結界が覆った。
セアラだ。
セアラがやったと確信した。
結界は強固で、絶対の様で、完全に【水晶息吹】の侵入を防いでいた。
ならばっ!と、勢いを付けて私は突撃する。
水晶大亀の顔を目掛けて、突っ込んでいった。
うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
【空間機動】と【疾駆】で駆けながら強化した【攻撃技能】で【水晶息吹】の迎撃を行い、【物理攻撃完全無効】を信じ被弾しながら――水晶大亀の顔に―――
このままーーーっ!!
近付き、【水晶息吹】を放つ口に向かって―――
窒息しちゃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
【超尻尾攻撃】で巨大な丸い球となった私は水晶大亀の口を塞いだ。
んぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!!
水晶大亀の口に飛び込んだ私は爪を立てて必死に体を支えていた。
ゼロ距離から放たれる【水晶息吹】を水晶大亀の噛みつきを必死に耐える。
そうしていたら体が段々と熱くなってきた。
どんどんどんどん熱くなる。
やっぱり、【物理攻撃完全無効】も完璧じゃない?
限界がある?
このままオーバーヒートとかヒートエンドしちゃう?
だが、水晶大亀も苦しいのかドスンドスンと足元を踏み鳴らし暴れまわる。
くぅぅぅぅぅぅ、負けるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
耐える、まだ耐える、まだまだ耐える。
水晶大亀は暴れ吐き出そうと、追い出そうと、噛み砕こうと必死に荒れ狂う。
私の体の中に貯まる一方の熱も早く自由にさせろ、解き放てと騒ぐ。
うん?何だろうこの反応、自由にさせろ?解き放て?そう言えばこの熱の感覚ちょっとだけ覚えがある様な?
そう言えばと思い出す。
死呼熊に一撃を貰った時だ。
あの時も僅かに熱を感じた。
炎を纏った攻撃だったからその熱さだと思ってたが違う様だ。
そして確か【大回転ローリング大尻尾攻撃】を炸裂させたら熱は引いた。
もしかして…
もしかしたら…
何となく理解した。
悟った。
そして私はまだ耐える事にした。
水晶大亀は【水晶息吹】を噛み付き攻撃を止めなかった。
ずっと繰り返した。
私は耐えた。
耐え忍んだ。
そして経過した時間10分、もう限界だ、臨界だ。
私は水晶大亀の口から飛び出した。
さぁ、解放せよ。
そんな幻聴を聞いた気がした。
ああ、分かってるよ【忍耐】お終いにしよう。
私はそう言った。
今までで一番の激しさを持って【水晶息吹】が襲ってきた。
私は迎撃する。
でも熱の力を制御しきれない。
まだ上手く扱えない。
取りこぼす、でも大丈夫。
セアラが居る。
自慢の大事な大切な友達、彼女が張った結界がある。
だから私は前だけを見て力のコントロールを必死に行う。
激しく動き回る。
【水晶息吹】の矢を纏めて吹き飛ばす。
次々と落とす。
遂には全てを落とした。
水晶大亀はやっと私を脅威と思ったようだ。
巨大な一本の【水晶息吹】の矢を生み出し放つ。
しかし―――
邪魔ぁっ!!!
【金鋼牙攻撃】
一撃で噛み砕く。
今度は散弾の【水晶息吹】
しつこいっ!!!
【猛烈爪攻撃】
全てを吹き飛ばす。
初めて脅えたように水晶大亀が後退る。
お前はもう―――
ギュイン、ギュインと音を立てて私は回転する。
そして激しく回りながら水晶大亀の上に落ちていく。
眠れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!
耐え忍んだ【忍耐】の熱の全てを注ぎ込んだ――【超尻尾攻撃】
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
と、言う凄まじい音が響き北側だけに張られていた結界を越えてダビートの街を突風と衝撃波が襲う。
水晶大亀の背中の水晶は全てが砕け、甲羅だけを残し地中に埋まっていた。
私の一撃に完全に気を失ったのかもう動き出す気配はない。
一方で私も限界だ。
もう指一本動かせない。
【忍耐】を限界利用した反動か【技能】が次々に勝手に封印状態になって行く。
ステータスも封印状態になる。
【空間機動】が解けた私は落下して行く。
マズイ、この高さ…怪我する…朦朧とする意識でせめて上手く着地だけでもと思っていたら誰かが私の落下地点にやって来て受け止めてくれた。
誰?と思うがもう疲れて眠くてよく見えない。
そして誰かは歌い始めた。
朗々と高らかに、朗らかに、優しく、労わる様に…まるで子守唄だと思った。
歌を聞きながら私は眠った。
夢を見た。
母狐猫が居て、兄弟姉妹が居る。
顔も知らなかった父狐猫らしき姿もある。
セアラとリーレンさん、セリアーナお婆ちゃんも居た。
好きな皆が揃った幸せな夢だった。
狐猫の小話
【忍耐】敵からの攻撃に耐えれば耐えただけステータスが激増する【技能】です。
でも限界まで使用すると反動があります。
限界前までなら反動はありません。
今回は限界使用したので反動が来ます。




