表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐猫と旅する  作者: 風緑
26/166

第026話 私にとって邪神、目覚めたモノ?


 え?!

 私が欲しい?!

 無理です。

 ダメです。

 NGです。


 断固拒否です。

 もしもカッコいいオスの狐猫に「お前が欲しい」と言われるとOKしちゃうかもだけど人間はダメです。

 前世の話です。


 異種族恋愛無理、不可能、ケモナーなら他を当たって下さい。


 例えば一撃で確実にヘブンへ逝かせてくれる熊とか、熊とか、熊とか、熊を。


 等と盛大に現実逃避してみる。


 うん、ちょっと落ち着こう私。

 深呼吸だ。


 ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。

 違うそうじゃない。


 ええい、パニくるな私。


 等と脳内大混乱な私。

 因みに見た目はカチーンと固まり、尻尾はブワッと膨らんでいる。


「この子を渡せと?!」

 上がったセアラの強い声にやっと私の意識が現実に戻る。

 はっ?!今まで私は何を考えていた?

 いや、悪い夢を見たんだ。

 忘れよう。

 そうしよう。


 そして前を見る。

 此方を指差してニコニコ笑うロビン君。


 ウン、マジコワイ。


 意識がまたくらぁっと現実逃避しそうになる。

 だが耐える。

 何とか耐える。

 頑張れ私と念じる。

 そこに―


「うん、そうだよー」

 ―と、言うロビン君の声が聞こえた。


「見るからにー、フワフワのー、モコモコでー、可愛くてー、可愛くてー、可愛いよねー」

 うん、ロビン君よ、貴方は私にとってこう邪神的な何かですか?

 声を聞いてるだけで何だか、SAN値がガリガリと削られてます。


 ハッ、そう言えば私は確か女神兼悪魔兼邪神なアストラーデの言ってた7美徳な【忍耐】の【技能】を得ていた。

 ふおぉぉぉぉぉっ!今こそ発動せよ【忍耐】。

 私に耐え忍ぶ力を授けたまえー。


 だが、効果は発揮されなかった。


 ダメじゃん【忍耐】。

 ダメダメじゃん【忍耐】。

 仕事しろ【忍耐】。

 何の為のどんな効果なんだ【忍耐】。


 今だに謎な【技能】に八つ当たりする私。

 其処にまたロビン君の声が聞こえる。


「昔からさー、ファトラが欲しくてー、欲しくてー、欲しくてー、探してたんだけどー、見つからなくてさー」

 うん、ヤバイ。

 マジでヤバイ。

 このロビン君(邪神)は私の精神を破壊――いや、殺すナニカだ。

 浄化せねばなるまい。

 物理的に【猛爪攻撃】とかで、殺られる前に殺る。

 大丈夫、私の心の平和と平穏の為だ。

 きっと自称:神様(仮)も許してくれる。

 シャキーン!と爪が準備される。


「そしたらさー、聖女様がさー、ファトラを連れてるって聞いてさー、お父さまにお願いして晩餐に入れて貰ったんだー」

 そうか私があの究極なオークのお肉料理を堪能出来たのはロビン君(邪神)のお陰だったのか、大変美味しく頂いた。

 まさに勝手無い至高の一品だった。

 あの味わいの為なら命を賭ける価値すらあると思える品だった。

 喰えるのなら当分の間、滞在しても良いかなーとすら考えた。

 だが、それも諦めねばなるまい。

 このロビン君(邪神)を葬る為ならばっ!

 さあ、カウントダウンだ。

 お前の罪を数えろ。10…


「そしたらさー、図鑑でも見た事無い真っ白なファトラでー、尻尾も二本もあってー、我慢できなくてー、だからちょーだい?」

 9…

 8…

 7…

 6…

 5…


「代わりにー、【聖歌】を歌える聖女候補をー、紹介してあげるからさー、ねぇ、いいでしょー?」

 4…

 3…

 2…

 1…

 0!

 【猛爪攻―】


「ダメです」

「ミ!」

「え?!」

 今まさに【猛爪攻撃】がロビン君(邪神)に振り下ろされる寸前、響いたセアラの声に爪が止まった。

 ロビン君(邪神)はまさか断られると思ってなかったのかポカンと口を開けている。


「何でー?必要でしょうー?【聖歌】良い取引じゃないー?」

「そうですね。【聖歌】は必要です。ですが代わりにこの子を差し出して迄欲する物ではありません」

 話を聞きながら私はそっと爪を振り下ろそうとしたポーズから元のお座りモードに移行する。


「何よりこの子は私の大事な友人です。物ではありません。ですからそもそも差し上げるなど不可能です」

 私が視界内に居るのに堂々と言い放つセアラ。

 もうお〇らし聖女モードは卒業だねと思う。


「ロビン様、貴方がこの子と友誼を結んで私より優先されるようになれば自ずとこの子は私から離れ貴方に付いて行くでしょう。それを止めは致しません。ですからお願いはお聞き出来ません」

 最後にハッキリ言い切った。

 セアラ素敵ー、カッコいいー、愛してるーと叫んでみる。

 相変わらず「ミィミィミー、ミミミィー、ミィミー」としか言えないが、それはもうどうしようもない。

 狐猫だからね。


「きっとー、後悔するよー」

「絶対に有り得ないと答えます」

 最後にそう言い残してロビン君(邪神)はドアを開け去って行った。

 セアラも話が終わる迄ずっと聖女モードのままだった。


 ふっ、本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当に九死に一生を得たなロビン君(邪神)よ。

 だが次に会う時は覚悟しているが良い。

 その時こそ態度次第で我が裁きの爪が振り下ろされるであろうと言っておく。

 聞こえないけどね。


 そ・れ・よ・り・も・だ。


「ミィーーーーーッ!!!」

 私は喜びの声を上げてセアラのちっぱいに飛びつく。


「えっ?きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 セアラの悲鳴が上がるが気にしない。

 大興奮して、大喜びで、大歓喜でセアラに飛びつき体を擦り付ける。


「ミィミィミー、ミミミィー、ミィミー、ミィィ、ミィ、ミィッ、ミィィ、ミミミミミィミ、ミミミ、ミィミミィミミィミー」(嬉しかったー、嬉しかったー、嬉しかったよー、セアラが私を大事って言ってくれた。友達って言ってくれた。絶対に後悔しないって言ってくれた。ロビン君(邪神)から守ってくれたー)

 甘えに甘えて体をスリスリ、スリスリと擦り付ける。

 嬉しさが止まらず暴走状態だ。


「は、は、は、はな、は、はな、離れ、はな、離れて、離れて、く、く、くく、くだ、くだだ、くださ、くだひゃぃぃぃぃぃっ!!!」

 一方でセアラは私に飛びつかれまたもやお〇らし聖女モードだ。

 しかしそれにも気付かず私はセアラに引っ付く。


 結局、セアラがまた気絶して私がリーレンさんに引き剥がされるまでこの夜の騒ぎは止まらなかった。


 翌朝、8時前にスコート侯爵家の門の前に私達は揃って待っていた。

 メンバーは私、セアラ、リーレンさんにノーザンさんと部下の騎士4人の1匹と7人だ。


 後はヴァン侯爵が手配したという山師が来るのを待つだけだ。

 スコート侯爵家の人は誰も来ない。

 見送りすらない、予想通りだけど、そうしてると小柄なごっついおっちゃんが歩いてきた。


 人族ヒューマンと聞いていたけど見た感じはファンタジーの地人ドワーフだ。

 【鑑定】の結果は『ノース 47歳。山師。男性』だ。


「おう、待たせたか、悪かったな」

 中々に豪快なおっちゃんのようだ。

 ガレスさんを思い出す。


「いえ、此方こそご足労をおかけして申し訳ありません。洞窟までの案内をよろしくお願いします」

 皆を代表して挨拶し案内をお願いするセアラ。


「なーに、良いって事よ。どうせ毎日登る山だ。ついでだ、ついで」

 笑いながらノースさんは言う。

 そして「それじゃ、行くぞ」と言うノースさんの言葉を合図に私達は歩き始めた。


 ダビートのすぐ傍にそびえる数百メートルな高さの山、中で眠る魔物の名前をそのまま使ってアルケイロン。

 そもそもが水晶大亀アルケイロンが眠る上に土や砂、岩が積もって出来た山だと言われているそうだ。


 そんな長い時を生きてるという水晶大亀アルケイロン絶対にB級の災禍ルインじゃすまないと思う。

 山までの道は平坦だったけど登りだすとやっぱり足場が悪い、加えて坂道。

 セアラが遅れ出す。

 でも決して弱音は吐かず必死に付いてくる。


 やっぱり絶対にセアラは弱くないと思う。

 その後ろを支えるように歩きながら私は思った。


 洞窟の前に着いた。

 想像以上にデカい洞窟だ。


 私が知る一番デッカイ魔物、熊なんかでも3頭、4頭でも並んで通れそうだ。


「それじゃあ、案内は此処までだ」

「ありがとうございました」

 ノースさんがそう言い、セアラが礼を言う。


「そっちの騎士さんは知ってるようだが入ったらホンの数百メートルで水晶大亀アルケイロンが眠ってる。大丈夫…だと思うが気を付けてな。特に聖女の嬢ちゃん」

「分かりました。ご忠告感謝致します」

 そして中に入る準備が始まる。

 リーレンさんが【魔導袋】から【魔眠草】が一杯に詰まった軽い麻の袋を10袋取り出す。

 中身は乾燥した軽い草なのでセアラでも1袋を楽々と持てる。


 さて洞窟だと私は先陣を切って入ろうとしたらリーレンさんに持ち上げられた。


「貴方は此処で待機です」

「ミィィ?!」(なんで?!)

 叫ぶ。


「【魔眠草】は燃やすと魔物を眠らせる毒の煙を出す草です。解ってますね?」

「ミィミィ。ミィミ?」(知ってるよ。それが何?)

 何が言いたいんだろうと首を傾げる。


「貴方は魔物です」

「ミ!」(あ!)

 そうだった。

 うっかりしてた、私ってば魔物だった。

 眠りの毒を喰らう対象じゃないかと気付く。


「しかも貴方は【睡眠耐性】を持っていない幼体です。大量の【魔眠草】の煙を吸えば死ぬ危険すらある」

「ミィゥゥ、ミィィィミ?ミィゥ」(何それコワッ、でも大丈夫?心配だよ)

 確かに前世でも大量の睡眠薬で死んだり、自殺する人が居た。

 恐いと思ったでも心配だった目の前のリーレンさんを見て次にセアラを見る。

 すると安心させるように頭を撫でてくれる。


 くぅ、やはり撫で方No.1は今の所はリーレンさんだ。

 このツボを押さえた撫で方。

 才能か?経験か?

 このままではまた極楽に行ってしまうっ!


 寸前でナデナデが止まった。

 危なかった。


「それでは行ってきます。大丈夫、必ず戻ります」

 そう言ってリーレンさんは歩き出した。

 セアラを見る。

 手を振ってくれた。

 此方も肉球プニプニお手々を振る。


 そして皆が洞窟に入るのを私は見送った。


 洞窟の入り口に座りジーとセアラとリーレンさん、ノーザンさん、騎士さん達の無事を信じて待つ。

 そんな私を見つめるノースさん。

 暫く私を見つけた後ノースさんは「なあ、チビ」と呼んだ振り返ると其処には―地球のとまんま一緒な猫じゃらし。

 揺れるフサフサ本能が刺激される。


「遊んでやろうか?」

「ミィ」

 鳴いて私は揺れる猫じゃらしを追いかけた。


 スパーンと猫じゃらしを奪い取る。

 手に入れた猫じゃらしを噛み噛み蹴り蹴りする。


「やるな、次はこれだ」

 別の猫じゃらしが出て来る。


 尻尾を振り振り狙いを定めて―右と見せて上っ!

 奪った猫じゃらしをまた噛み噛み蹴り蹴りする。


「すげぇな、じゃあ、これだ」

 またまた取り出される一本。

 だけどまたもアッサリと取り上げる。


 ふっ、【技能】を使わずとも私のステータスを持ってすれば楽勝よと胸を張る。


「参った、参った。すげえステータスだな。何年目のファトラの幼生なんだ?」

「ミィ、ミミィゥ?ミミミミミィ」(多分、生後半年か五ヶ月くらいかな?、まだまだ、幼い狐猫だよ)

 そう言うとノースさんは不思議そうな顔で私を見る。


「そういや騎士の嬢ちゃんとも会話してる様子だったな。俺の言葉が分かるのか?」

「ミィィー」(分かるよー)

 返事をする。

 此方の言葉は通じないが意味は通じたらしい。

 驚くノースさん。


「驚きだな。噂以上に賢い。ならばステータスと【技能】の封印について知ってるか?」

「ミミィ?ミミミィ?」(封印?なにそれ?)

 首を傾げて訊ねるとノースさんは説明してくれた。

 何でもステータスと【技能】は自分の意志で封印、使えない状態に出来るらしい。

 【技能】の封印は得が無い。


 自分より弱い相手に指導したり、手加減して試合する程度だ。

 【技能】の【LV】UP経験値も入らなくなるしね。


 だがステータスは別だ。

 封印した状態で体を鍛えれば【気力】【理力】【霊力】【魔力】が上がりやすくなるという。


 訓練のハードモードだね。

 私はビックリした。

 そんな裏技が在ったのかと、コレは己に課すスパルタンな特訓をスパルタン・ハードへと上げるチャンスだと思った。


 早速実践する。

 ステータスと【技能】の一部を封印状態にしてノースさんが振るう猫じゃらしを追いかける。

 良い様に玩ばれる。

 ジャンピングする届かない、振るわれる追いつけない、クルクル回される、尻尾を追いかけての大回転になり目が回る。


 ステータスの無い私の体はこんなに貧弱かと思う。

 やっぱりステータスは偉大だ。

 神過ぎる。


 この貧弱狐猫ボディをあそこ迄にも強化する何て、そして玩ばれる私。

 己と思う。

 せめて一矢報いねばと思う。


 ちょっと休憩が入る。

 休んでゼィゼィ言ってた息が整う。

 遊びが再開する。


 猫じゃらしに振り回される。

 だが、ノースさんに油断が見える。

 此処だと言う隙を見つける。


 スパーンと猫じゃらしを奪う。


 ノースさんが「あちゃあ…」と言う。

 私はどうだっ!と胸を張り落ちた猫じゃらしを噛み噛み蹴り蹴りする。


「すげぇな」

 ノースさんが言う。


 そうだ私は凄いのだと威張る。

 目指すは私Tueeeーだからね。


「ミィィウ!」(もう一本!)

 と、言う。

 ノースさんが何処からともなく猫じゃらしを出す。

 また玩ばれる。

 今度は油断も隙も無い。


 私は一本の猫じゃらしに翻弄され続けた。


 皆が洞窟に入って結構な時間が過ぎた。

 遅いなと思い目の前で揺れる猫じゃらしから本能の欲求に抗い目を移す。

 その様子にノースさんも視線を洞窟に向けて「遅いな…」と呟く。


 水晶大亀アルケイロンから取るアムディの聖石はむっちゃ硬いそうだ。

 取るのは一人が頭一個分ぐらい、それでもかなりの価値、量だそうだ。


 【魔導具】作りに必要なのは爪の先程、本当にちょっぴりだ。

 でも出て来るのが本当に遅いなと思う。


 任務は失敗でも良いから無事に帰ってと願う。


 其処でノースさんが「む?」と声を上げる。

 どうかした?と見上げると耳に微かな物音。


 今の私は【技能】を殆んど封印している。

 急いで展開、【五感強化】に反応。


 鎧の音と走る足音だ。

 ガチャガチャ音がする。


 走って来る足音は4人分だ。

 7人ではない。


 イヤな予感がする。

 直ぐに洞窟の入り口にノーザンさんの部下4人の騎士さんが現れた。


 顔色は真っ青だ。

 そして私とノースさんを見て顔色を白くし、脇目も振らず駆け―逃げ出した。


「ミィィィゥ?」

「待ちやがれっ!」

 騎士達の行動に声を上げる私に外見と歳に似合わない速度で追いつき一番近い騎士さんを捕まえるノースさん。


「言え、何があった?」

「離せっ!離してくれっ!直ぐに、直ぐに逃げなければっ!!」

 ノースさんの言葉に返事することなく、必死に腕を振りほどき逃げよとする騎士さん。

 でも掴まれた手はビクともしない。


「言わないと腕をへし折る。もう一人の騎士の兄ちゃんと騎士の嬢ちゃん、聖女の嬢ちゃんはどうした」

 セアラとリーレンさん、ノーザンさんが居ない、今にも洞窟に飛び込みたいが耐えて私は騎士さんの言葉を待つ。

 ノースさんが本気だと悟った騎士さんはやっと語りだす。


「きょ、【狂乱草】だっ!」

「ミィ?」

「!!」

 騎士さん―いや、もう護衛対象を放って逃げたんだから騎士擬きだな―はそう叫んだ。

 意味が分からない私は首を傾げ、ノースさんはハッキリと動揺する。

 その隙をついて騎士擬きは腕を振り払う。


「目覚めつつあった水晶大亀アルケイロンを眠らせる為に【魔眠草】を巻いて火を点け【大結界】で覆った。だが暫くして異変が起きた。【魔眠草】の中に【狂乱草】が仕込まれていたっ!」

 騎士さんはジリジリと下がりながら叫び続ける。

 私は(狂乱草って何?)と【検索】さんに尋ねる。


『セイブツヲジョウタイイジョウキョウランニオトシイレルマソウデス。ステータスガ1.5バイニナリブツリコウゲキシカデキナクナリマス』

(生物を狂乱状態に?しかもステータスが1.5倍ってヤバ…アレ?そう言えば魔物じゃなくて生物って事はまさか…)

『ニンゲンモコウカハンイナイデス』

 最早、居てもたってもいられなかった。

 駆けだそうとするが其処に騎士擬きの最後の言葉が響いた。


「完全に目覚めた水晶大亀アルケイロンが【大結界】を破り【水晶吐息】を放ってきた。護衛騎士を庇ってノーザン隊長は吹き飛んだ。それを見て俺達は逃げ出したから聖女様と護衛騎士がどうなったかは分からない。兎に角、狂乱状態の水晶大亀アルケイロンが出てくればこの周囲は―ダビートは―終わりだ」

 私は絶句した。

 ノースさんも動きを止めて顔色を青くした。

 騎士擬きだけがジリジリと後ろに下がり距離を開けていく。


「お、俺達は悪くないっ!俺達の所為じゃないっ!全部、全部が無謀な挑戦をしたあの聖女の所為だっ!俺達はっ!俺達はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 そして騎士擬きは走り出し、岩山を駆け下りて行った。

 だが、最早、そんな事はどうでも良い。


「狂乱状態の水晶大亀アルケイロンが出て来るだと?そんな事になればここいらが、ダビートが本当に―」

 ノースさんの呟きを聞き終わるまでもなく、私は駆け出した。

 洞窟内に向かって―


「おいっ!待てチビッ!お前迄犠牲に、戻って来いっ!チビッ!」

 無視だ。

 【疾駆】を全開にして疾る。

 水晶大亀アルケイロンが眠る場所まで数百メートル程度だと言っていた。

 今の私なら一瞬だ。


 死別した母狐猫の姿が浮かぶ。

 捕らわれもうどこに居るか分からない兄弟姉妹の姿が浮かぶ。


 セアラ、リーレンさん、後はオマケで悪いけどノーザンさん。

 もう二度と、二度と大事なモノを失うモノかと私は駆けた。

狐猫の小話

アムディの聖石はスコート侯爵家が管理していて盗掘等されない様にその山の見張りをしてるのがノースさんの家系です。

猫好きで家は猫が一杯らしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公に対する噂話、気になりますね… [一言] 陰謀にしてはリスキーすぎる…!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ