表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐猫と旅する  作者: 風緑
25/166

第025話 秘密の暴露、狙われた私?


「さて、それでは聖女さまが何故、ダビートにいらしたか理由をお聞きしても?」

 食事が終わりお茶を飲みながら最初に口火を切ったのはヴァン侯爵だった。


(何?そもそもそこから知らないの?)

 そう思い私は口をあんぐり開ける。


 セアラとリーレンさん、ノーザンさんの三人も驚いた様子で目を瞬かせる。


「神殿長ロズベルト様からお聞きには成って無いのでしょうか?」

 どうにかそれだけの言葉を絞り出すとヴァン侯爵はお茶を飲みながら「いえ、何も」と答えた。

 何だか白々しい態度だなと感じた。

 本当は知っているが知らない振りをしている。

 そんな感じだ。


「そうですか…では順を追って説明致します。私は約二週間と少し前に神殿長ロズベルト様より第二級任務ダビートにてアムディの聖石の確保を命じられました。そして前もって聖都テレスターレを出発していたノーザン様を含めた5人の騎士の方々と合流、アストラリオンより13日の道程を経てダビートに参りました。どうか任務への協力を【聖歌】を歌えるこの地に居る聖女候補の力をお貸し下さい」

 そう言って頭を下げた。

 必死さが込められた言葉だった。


 その言葉にヴァン侯爵は不思議そうな顔をしながら「ふむ、しかしアムディの聖石の確保は我が娘である聖女第三位―おっと、今は第四位でしたな。である聖女シャルの仕事ではありませんか?」


 え?と思った。

 侯爵家の令嬢なんかが聖女やってるの?

 いや、でも侯爵がセアラに頭を下げる位だから身分的にはおいしいのか?

 だけどハードワークな仕事だよね、聖女って、貴族の令嬢がそんな――って、そうか、そう繋がるのかと思い浮かぶ。


「その…聖女シャルは過労によって休養が必要と判断されたと、その為に代理で私が派遣されたのです。ですから、どうか、どうか【聖歌】を歌える聖女候補のお力を…」

「どうやら聖女様は私が――スコート侯爵家が何も知らないと思っておいでの様だ」

「え?」

「ミ?」

 突然、言われた言葉の意味が分からず、セアラが上げた声と私が上げた声が重なる。


「良いですか?たったの一年と二ヶ月。一年と二ヶ月前だ。それまで平民で6歳で神殿に聖女候補生として入り、養子縁組が可能になった10歳と同時にシャリス公爵家に養子に入り、全ての順位を超えて貴方が時期大聖女候補一位となったのは」

「!そ、それは…」

「!」

 ビックリの情報に固まる。

 セアラってセリアーナお婆ちゃん大聖女様の孫じゃなくて養子だったのか、それもたった一年二ヶ月前からの、そりゃ甘えなれない訳だと思う。

 しかもたった四年だけ聖女候補生として学んだだけでその後は全部をすっ飛ばして時期大聖女候補一位とか色々と疑われても仕方がない。


 いや、セリアーナお婆ちゃん大聖女様のやる事だからちゃんと理由と訳があると信じるけどそれまで大聖女を目指してた人達からすれば突然、ポッとでの新人に攫われた形だ。

 面白い訳がない。

 セアラは本当に針の筵に居たんだろうなと想像できる。


「貴方は【恩恵ギフト】を三つも持ちその才能があるのは認める。だが、他の全てが足りない」

 ヴァン侯爵は何処か怒りを滲ませたように言葉を突き付けてくる。

 だが、それは此方もだ。

 沸々と怒りが燃え滾って来る。


 足りないって何だと思う。

 セアラはまだ幼いからか遅くまで起きてるのは苦手だが何時も何か出来る事を頑張っている。

 それは勉強だったり、訓練だったり、聖女としての儀式進行だったり、子供達の相手だったり、大人との交流だったり色々だ。

 だから足りない物なんて断じてないと言ってやりたかった。


 けれど言えない、私は「ミィミィ」としか鳴けない。

 悔しかった。

 しかし、それを口にしてくれる人が居た。


「そんな事はありませんっ!聖女様は常に誰かの為に頑張っておいでですっ!日々、努力を重ねて…」

「ほうその努力とやらが実を結ぶのは何時だ?」

 私が言いたかった事を言ってくれようとしてリーレンさんの言葉に被せるようにヴァン侯爵は言った。


「一年後か?二年後か?五年後か?まさか十年後や五十年後等と言うまいな」

 セアラが細かく震える。

 リーレンさんが強く拳を握りしめる。

 私の噛み締めた口がギシリと音を立てる。


「残念だが人は其処まで待てない。今もA級の破滅ディザスター、S級の天災カタストロフ、SS級の絶望ディスピア、SSS級の終焉アポカリプスの魔物に脅える人々が居る。我等に必要なのは貴方の様にただ守られるだけの弱い聖女ではない」

「聖女様は弱く等はっ!」

 リーレンさんがまた声を上げようとする。

 しかし、遮ってまたヴァン侯爵はイタイ真実を突き付けてくる。


「ならば何故まだ【LV】が8なのだ?」

 その一言に口を塞がれてしまう。

 知っていたが確かにセアラの【LV】は低かった。


 リーレンさんだって【LV】32、私も生後半年経たずに【LV】25だというのにだ。

 セアラの【LV】は今更ながらやはり低いのだと分からされた。


「護衛騎士よ、そなたが11歳の時には【LV】は幾つだった?もう第一の試練を超えられる程だったのではないか?」

 ヴァン侯爵の言葉に遂にリーレンも口を噤む。

 それは正解を言い当てていたのだろう。


「加えてステータスも著しく低く、体も頑丈ではない。扱える【技能】も【恩恵ギフト】を除けば聖女の基礎である【幸運】【治療】【加護】【障壁】だけであると聞く」

「ち、【治療】と【加護】は【恩恵ギフト】で代用が、残りは善行で【SP】を貯めて【幸運】は【祝福LV5】、【障壁】は【大結界】まで強化を…」

 何とか言い返そうかと子細い声を上げたセアラだがヴァン侯爵は鼻で笑った。


「【幸運】を【祝福】に?運が上がるだけと言われる【技能】など気休めにすぎん。【大結界】とて護るしかできない【技能】よ。まぁ、守られるだけの聖女にはお似合いか」

 あんまりにあんまりだ。

 飛び掛かってやろうかと私はかなり本気で考えだしていた。


 肉球パンチの一発でも喰らわせないと気が済まん。


「そして最後に貴方方に見せるモノがある」

 ヴァン侯爵がそう言うとガリーさんがトレーに何か紙の束を乗せて持ってくる。

 セアラが紙を手に取る。

 便箋みたいだ。

 手紙?と思う。

 読んだセアラの顔色が更に悪くなった。


 様子を見てリーレンさんもまた手紙を手に取り読んで顔色を変えて「こ、これは…」と声を上げる。

 何だ?と思って近付くが机の下からでは見えない。

 困っているとヴァン侯爵が手紙について話した。


「娘の、聖女シャルの貴方方への評価だ。娘を始めとして他の聖女様方に多大な迷惑を掛けているようだな」

「そんな、い、いえ、こんな事はっ!寧ろ聖女様は自ら率先して厳しい任務に当たり先日とて…」

「護衛騎士、ならばそなたは我が娘が嘘を書いてると?」

「………」

 言われるとリーレンさんは黙った。

 その通りだとか、偽造されてると言いたいだろうが証拠がない。

 そしてヴァン侯爵はこの手紙を信じている。

 八方塞がりだ。


 最早打つ手がない。


「話は終わりだ。スコート侯爵家が貴方方の為に【聖歌】を歌える聖女候補に頼む事は無い。せめて今日は泊り明日にはアストラリオンに帰られよ」

 席を立とうとするヴァン侯爵。

 こんなので終わりかと悔しく思う。

 悩殺ポーズなんぞ出す暇も余裕も意味も無かった。

 私は役立たずだ。


 俯き項垂れる。


 其処へ縋る様な声が響いた。


「ならば、ならばせめて任務に挑戦させて下さい」

 セアラが言った。

 リーレンさんがセアラを見る。

 私も見上げる。


 ヴァン侯爵はジッと自分の瞳を見つめてくるセアラに初めてやっと真面にセアラの顔を見たという風に眺めて呟いた。


「せめて挑戦とは?」

「任務を受けた以上は何もせぬままに帰る訳には参りません。もしも【聖歌】を歌える聖女候補のお力をお借り出来ない時には薬で魔眠草で眠らせようと準備してきております。試させて下さい」

 セアラが只、真っ直ぐにヴァン侯爵を見ながら訴える。

 ヴァン侯爵は少し考える素振りを見せた後に―


「そうかどうしてもと言うならば止はせぬ。山師には伝えておく。明日の朝、挑戦してみるといい、無駄だと思うがな」

 許可がでた。

 ちょっと予想外だ。

 てっきり無駄だから止めろと言われるとばかり思ってた。


 そして今度こそヴァン侯爵は部屋を出て行った。

 奥さんのディア侯爵夫人も出ていく。

 続いて長男のロビン君も立ち上がるが何故か私をジーと見てくる。


 何だろうと思いながらこっちも見返す。

 ジーと暫く見つめ合う。


 ホントに何なん?私は今は狐猫よ?

 人間の男の子にはときめかないよ?


 そうこうして居ると突然ニコリと笑った後にロビン君は去って行った。

 一体、何だったんだろ?


 私が呆然としてるとメイドさんが「では、皆さま。此方へ」と退出を案内される。


 そこで私はふと思い出した。

 あ、ヴァン侯爵に肉球パンチお見舞いするの忘れてた。


 二人と一匹部屋に戻った。

 セアラはヴァン侯爵に言われた事が堪えているのか私が視界内に居ても無反応だ。

 ちょっと嬉しいけど嬉しくない。


 知った情報が色々と重すぎる。

 私も処理しきれず頭の中がグルグルする。


 リーレンさんもボーとしてる。

 偶にセアラに声を掛けようとするが何を言って良いか分からず黙る。


 空気が重い。

 むっちゃ重い。

 お通夜って感じに重い。


 あーーーーーっ!

 ダメだーーーーーっ!!


 こんな空気は似合わない。

 何時も元気で前向きに明るく、楽しく、天気よく。

 見よっ!私の散々練習した悩殺ポーズの数々をっ!


 ピョンとベッドを飛び降りセアラとリーレンさんの二人の間で次々にシュタッ!シュタッ!キュピーン!とポーズを決めていく。

 そしてトドメに下から見上げる瞳ウルウルのお願いポーズ。


 そしたら二人はちょっと笑った。

 突然、何をしてるんだコイツはと言う感じで、うん、空元気も元気、作り笑顔も笑顔、きっとホンモノにも出来る。

 そう思う。


 空気がちょっとだけ和んだ。


 少し時間が過ぎたらガリーさんが明日の予定を伝えに来た。

 水晶大亀アルケイロンの住む山に出発するのは明日の朝8時、街のすぐ傍にある岩山で到着までホンの30分程度。

 確かに街に入った時にデカい岩の裏山が在った。

 アレがそうだったのかと納得する。

 更に水晶大亀アルケイロンが潜む洞窟まで登るのに30分程度、合計で1時間な短い移動だ。

 只、鬼と言うか蛇と言うかが確実に待つ危険極まりない移動だけどね。

 話が終わってガリーさんは戻って行った。


 夜も更けて来た。

 そろそろ22時だ。


 まだまだ幼いセアラは眠そうだ。

 私もちっこい狐猫なので眠い。


「そろそろ寝ましょうか」

 リーレンさんが言い私とセアラが頷く。


 さて寝るべと狐猫をダメにする巣箱に向かう。


 そこでコンコンとドアをノックする音が響いた。

 こんな深夜に誰?と警戒し身構える。

 リーレンさんは剣をセアラは杖を手にする。


「こんばんはー、まだ起きてるー?」

 男の声だ。

 いや、男の子かな?

 微妙な声だ。

 でも想像は付いた。


「…どなたですか?」

 恐らく私と同じで想像は付いてるだろうけど一応、尋ねるリーレンさん。


「晩餐で会ったよねー、僕だよ、僕ー、スコート侯爵家嫡男のロビンー」

 予想通りだった。

 警戒しつつ扉越しで会話する。


「…何の御用でしょうか?」

「聖女様にねー、いーお話持ってきたんだー、【聖歌】についてだよー、入れてくれるかなー?」

「「「!!!」」」

 私達の全員が眼を合わせる。

 【聖歌】と言われれば否とは言えない。


「…どうぞ」

 今度はセアラが声を出す。

 返事を聞いて「ありがとー」と言いながらロビン君が入って来る。


 そして私を見てニコリと笑った。

 背筋がゾクリとした。


「…それで【聖歌】についてですか?歌って頂ける聖女候補の方をご紹介して頂けるのですか?」

「そうだよー、僕ー、聖女様に一つお願いがあってさー、叶えてくれるならー、紹介してあげるー」

 何だか話してるのはセアラとロビン君だけどその視線は私に向いたままだ。

 ちょっと怖い。

 やっぱり怖い。

 すっごい怖い。


 生理的に無理って感じだろうか?

 なんだかGやMを発見してしまった気分だ。

 うっ、思い出すと鳥肌がっ!刺された手の平の痛みがっ!


「…それでお願いとは何でしょうか?私に出来る事なら叶えます」

 するとロビン君はすっと手を挙げた。

 一点を指差す。

 それは視線の真っ正面。


 私?!


 驚きと背筋を走る悪寒に尻尾がブワッと膨れる。


「その子をー、僕にちょーだい」

 無邪気な笑顔で悪びれる様子すらなくロビン君はそう言った。

狐猫の小話

聖女セアラの秘密、少し公開です。

この子にはまだまだ秘密が一杯です。

真実を知るのは王と公爵、他数名です。

ヴァン侯爵も知らされていません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ