第023話 馬車は進みそして北東へ?
夜になった。
狩りのお時間だ。
食糧倉庫に残っていた私が狩った兎は殆んどがリーレンさんの【魔導袋】の中だが約半月の旅には全然足りない。
獲物を狩らねばならない。
私は夜の闇を走った。
しかしこう獲物を探しながら走っていると失敗したなと思う。
折角、持ってきてもらった狐猫をダメにする巣箱、使う機会が無い。
昼の移動時間は大体寝ていて夜に狩りと訓練。
完全に昼夜逆転の生活だ。
硬い馬車の屋根の上で寝てるとフワフワな狐猫をダメにする巣箱が恋しい。
街道上に獲物は居ない。
ならば外れた場所を探すしかない。
【探知】さんにも反応は無い。
【鑑定】と【検索】さんも色々と情報を送ってくれるけど今の所は役に立つ情報は無い。
まだまだだね。
【LV】上げを頑張らねばと思う。
やっと森が見えてきた。
【鑑定】にはジュラ大森林とある。
かなり大きい、果てが見えない。
森に入ると【鑑定】が辺りの木や草の名前と価値を出し、【検索】さんも『アノキハナニナニ、コノクサハナニナニ』を喋りまくる。
ほわーーーーーっ!ギブ、ギブッ!脳が、脳の処理が追い付かないっ!とゴロゴロ転がりまわると【並列意思】と【思考超加速】の【LV】が一つずつ上がった。
うん、ちょっと耐えられる位に楽になった、助かったと思った。
でも大量の情報を得た事からか【鑑定】と【検索】さんも【LV】が上がった。
情報が増えたまたほわーーーーーっ!になった。
うん、堂々巡りだコレと思った。
しょうがないと考えて【SP】を使った。
『技能【並列意思LV4】を【LV5】にするにはSP5が必要です。使用しました。技能【並列意思LV5】を【LV6】にするにはSP6が必要です。使用しました。技能【並列意思LV6】を【LV7】にするにはSP7が必要です。使用しました。技能【並列意思LV7】を【LV8】にするにはSP8が必要です。使用しました。技能【並列意思LV8】を【LV9】にするにはSP9が必要です。使用しました。技能【並列意思LV9】を【LV10】にするにはSP10が必要です。使用しました。【並列意思LV10】が【並列思考LV1】に進化しました』
ほわーーーーーっ!が収まった。
【技能】【並列意思】が【並列思考】になった。
何となく気分的には私の中に私が処理していた情報を分担してくれるもう一人の私が出来た感じだ。
それも黙って黙々とロボットの様にする感じなタイプ。
会話は出来ない。
そちらに【探知】さんと【鑑定】の処理を任せる。
頭が随分とスッキリした。
早くに上げておけば良かったと今更ながら後悔。
【検索】さんの相手をしながら森をテクテク歩く。
うん、薬草とか教えられても私は調合も調薬も出来ないから無理だなー。
ごめんね。
其処で【探知】さんに反応。
赤い点。
何かいる。
何だ―と走る。
木に寄りかかってオークが寝てた。
久々のオーク肉来たーと叫ぶ。
早速、爪をシャキーン!と準備する。
其処ではたと気付く。
うん【猛爪攻撃】とか【鋼牙攻撃】とかしたらダメじゃね?と―
【試練】を一個超えただけで只の肉球パンチでゴブリンを倒せる強さだったのだ。
それが今、倍以上になったステータスでオークを【技能】で攻撃すれば一発でミンチな可能性がある。
肉球パンチか肉球キックで倒そうと決める。
其処でまた思い出す。
そう言えば【技能】に【尻尾攻撃】ってあったなと、私な何故か尻尾が増えて二本ある。
覚えれば便利そうだ。
尻尾で倒そうと決める。
でも尻尾はフワフワのモコモコだ。
攻撃力何て在りそうに無い。
プニプニの肉球パンチや肉球キックも同じかもしれないが心配だ。
威力を高める事にする。
【空間機動】で【疾駆】して横っ飛びする。
そしてクルクル回転しながら寝ているオークの横っ面に尻尾ビンタを叩きこむ。
ズバーンッ!と凄い音がした。
オークが吹っ飛びバキッ、バキッと木をへし折って行く。
予想以上の威力だった。
驚いた。
ソーッとオークに近付く。
まだ何とか生きていたでも虫の息だ。
トドメとばかりに尻尾を振り下ろす。
ご臨終です。
お肉は美味しく頂きます。
ご冥福を祈ります。
そして爪でスッパリと首を落として血抜きする。
それじゃあ訓練だと気合を入れる。
吹っ飛んだオークが倒した木を【鋼牙攻撃】で砕いていく。
粉々にして行く。
次々にして行く。
程無く終わる。
私の身体能力のスペック予想以上に上がってるなーと思う。
次は夜空に向けて【猛爪攻撃】を連打だ。
空なら安全、何も壊さない。
延々と撃ち続ける。
何かが飛んでたらご愁傷様だが【探知】さんに反応ないからきっと大丈夫。
そしてそろろろ夜が明ける時間になった。
オークの死体の所に戻って来る。
さてどうしようと思う。
解体して運ぶかとも思ったが今の私なら丸ごと運べるんじゃねと思う。
試してみた。
軽々と行けた。
体長数センチ、体重数十か百グラム程度な狐猫が数百キロのオークを楽々と運ぶ。
有り得ない現象だ。
ステータスって凄い。
ステータスって偉大だ。
私はそう思った。
【空間機動】と【疾駆】でオークを運ぶ。
手前で降りて後は引き摺って行く。
野営地に到着する。
誰も居ない。
夜番すら居ない。
この付近は安全なのかサボってるだけなのか判断に悩む。
取り合えず休憩だ。
グルーミングして誰かが起きて来るのを待つ。
自慢のお毛毛だ何時も綺麗でいたい。
待っていると一番にリーレンさんが起きて来た。
起きて私を見て隣のオークの死体を見て驚き、また私を見た。
「貴方が狩ってきたのですか?」
「ミィミィー」(そうだよー)
と、返事をする。
するとリーレンさんがはぁと溜息を吐き。
「本当に貴方はドンドンとおそろ…いえ、こわ…いえ、きょう…いえ、兎も角、とんでもなくなっていきますね。聖女様の脅えようが解る気がします」
あっれー?何故かリーレンさんにまでそんな評価を?
私は基本的に人畜無害です。
許さんのは母狐猫の仇と襲ってくる奴くらい。
後はご飯に獲物を狩るくらいだ。
ほら安全でしょう?と首を傾げていると他の騎士達も起きて来た。
騎士達はオークの死体を見て驚いている。
「こんな所に豚戦士が出たのか?お前さんが殺ったのか?」
そうリーレンさんに尋ねるが彼女は「いいえ」と首を振る。
「倒したのはこのファトラの幼生体です。外見に反して大変に強力な個体です。何故か私と聖女様に懐き供をしてくれてますが聖女様はその余りの強さに脅えておいでです」
リーレンさんがそう言うと騎士達は揃って私を凝視した。
何?何?そんなに見つめちゃイヤンと体をくねらせると騎士達は一歩ズサッと後退った。
何故?ほらほら私は安心安全な狐猫ちゃんですよーとコロコロして見る。
更に一歩ズサッと引かれた。
ぬぅぅぅわぜだっ!!
兎も角、オークはリーレンさんの【魔導袋】に入った。
コレで数日分のご飯Getだぜっ!
旅は順調に進んだ。
魔物は全くでない。
安心して北東に向かっている。
そうして数日が過ぎた頃に私が馬車の屋根の上で昼間寝ている事に気付いてリーレンさんが其処に狐猫をダメにする巣箱を設置してくれた。
安眠の度合いが違う。
幸せじゃーと叫ぶ。
序でに食事の質も上がった。
初日の次の日の朝食迄はまだ酷かった。
適当に塩胡椒しただけの塩っ辛い兎肉。
マズイと思った。
イラッだった。
生の方がマシだとすら言えた。
尻尾がビシビシと地面を叩いた。
地面がひび割れた。
周囲が震度1か2ぐらい揺れた。
料理当番の騎士はそれを見てビビったらしい。
ヤバイと―
以降、料理はまだまだだが喰える程度にマシになった。
この調子で精進して欲しい。
断言して置くが決して私は脅してはいない。
偶然が重なった幸運だと言っておく。
そんなこんなで十日が過ぎた。
また夜になった。
私は狩りに出る。
因みに私達が住んでる神殿のある町アストラリオンと言うらしいとダビートの間の街道は聖都テレスターレを繋ぐ街道程に魔物との遭遇率が低い安全な街道とされているそうだ。
だから夜間の番も居なかった。
だが初日に私がオークを狩った。
次の日もオークを狩った。
次の日は牛を狩った。
そんな風に立て続いたのでヤバくないか?と夜番が立つようになった。
本当は【空間機動】と【疾駆】で遠くの森まで走ってるとは言えない。
そうして歩いているとリーレンさんが来た。
今夜の夜番は彼女らしい。
「今日も狩りに出かけるのですか?」
聞かれて私は「ミィミィミミミィ」(そうだよ)と答えた。
するとリーレンさんが申し訳なさそうに言った。
「申し上げにくいのですが私の【魔導袋】がそろそろ一杯になります。獲物は往復含めて既に十分な量が在ります。ですので狩りを控えて頂けると…」
そう言われると頷くしかない。
確かにこの十日間で私はオーク7匹に牛3匹を狩っている。
大きさから考えても十分な量だ。
【LV】も1つ上がった。
「ミィミー」(分かったー)
そう返事をしてリーレンさんに分かってもらい、獲物は狩ってこないと約束する。
でも森には出掛ける。
修行は別、後は何か襲って来る経験値の元。
【LV】上げ大事と思いながら森を歩く。
それがフラグだったのだろうか?
私は適当に道に落ちた枝を【鋼牙攻撃】で砕いて経験値を得ながらテクテク歩く。
何か襲って来るか、狩っても良心が痛まない敵出ないかなーと思いながら、【探知】さんに反応、接近する。
牛だった。
牛が寝ていた。
勿体ない。
牛はオークより美味しい。
リーレンさんの【魔導袋】のオークと牛を交換してもらえるならして欲しい程に美味しい。
だけど狩らないと約束した。
諦めるかと少し後ろ髪を引かれつつ移動しようとした。
【探知】さんに再び反応。
何かが走って来る。
狙いは牛さんの様だ。
しかし、美味しい牛さんは私のモノだ。
今は狩れなくても将来に狩る機会があるかも知れない。
だから今は守ると駆け出す。
牛が気配を察して飛び起きる。
私が間に入る。
襲ってきた物が立ちあがる。
全て同時だった。
私は目の前の敵を認識して毛を逆立てる。
読んで【記憶】した魔物についてと【鑑定】【検索】さんが目の前の敵についての情報を呼び起こす。
【鑑定】『死呼熊討伐難易度A級、破滅』
『ヘルベアー、ホノオヲマトイコウゲキシマス。ゴチュウイクダサイ。マスター』
【検索】さんからナイスな情報が齎される。
単純な爪と牙だけの攻撃なら【物理攻撃完全無効】でシャットアウトだったが炎を纏うなら【魔導攻撃】に分類されるかも知れない。
注意が必要だ。
牛が逃げていく。
狩りを邪魔された死呼熊の怒りは私に向く。
爪が振り下ろされる。
只の【物理攻撃】っぽいから受けても平気だけど此処は試しに力比べだと私も真っ向から爪で迎え撃つ。
バシィンッ!
音がして互いに弾かれる。
宙を飛んだ分だけ私の方が遠くに飛ばされてるが力比べは互角と見えた。
わはっ!私ってばA級の破滅と互角なほどにステータス高いのかと嬉しくなる。
その結果を見て死呼熊は私を敵と認識したらしい【猛爪攻撃】を放つ。
こっちもお返しの【猛爪攻撃】。
【猛爪攻撃】の【LV】は私の方が高いらしく死呼熊の【猛爪攻撃】を吹き飛ばし毛皮を傷つけた。
しかし―
(ちっ、浅いか)
舌打ちする。
打ち勝ったが距離もあったし、威力も殺された。
もっと接近して放つ必要がある。
【疾駆】と【空間機動】で接近すると構える。
其処で死呼熊の黒かった体毛が赤く染まった。
チリチリと熱を感じる。
これが【検索】さんが言ってた炎を纏った攻撃だろう。
(こっからが本番って訳ね)
私は全ての【技能】を持って駆け出した。
死呼熊の熱―炎を纏った爪が寸前を横切るが【思考超加速】された私には当たらない。
逆に私の【猛爪攻撃】が猛威を振るう。
近距離から放たれる【猛爪攻撃】は着実に死呼熊にダメージを与えていた。
このまま行けば少し時間は掛かるが勝てると確信する。
焦ったのか熊の動きが雑になる。
益々、私の【猛爪攻撃】が荒れ狂う。
そして致命的な隙が生じる。
振り下ろされた死呼熊の燃える爪を避け喉元にある傷に接近するこの距離で【猛爪攻撃】を放てば首を跳ねれる―だが、次の瞬間。
熊の纏った炎が爆発した。
わちゃちゃちゃちゃちゃーーーっ!と私は転げまわる。
何?何が起きた?と死呼熊を見ると【鑑定】が『死呼熊(限界突破状態)討伐難易度A級、破滅』となっていた。
(限界突破?【技能】に確か合ったけど、何?【解説】さん)
『イッテイジカンスベテノステータスガバイカシマス』
ヤバすぎる【技能】だ。
熱が上がって完全に炎を纏った状態になってるのも倍化したステータスの影響だろう。
退避、退避ーーーーーッ!!
と、一旦、体勢を立て直そうとするが死呼熊は逃がしてくれない。
先程までと比べ物にならない速度で追って来る。
(早っ?!)
既に爪の間合いの中だ。
全速力で迎撃の【猛爪攻撃】同時に【空間機動】と【疾駆】で間合いを開けようとするが死呼熊の降り降ろしった炎の爪が全てを吹き飛ばした。
私は宙をクルクルクルクルと回りながら吹き飛ばされている。
やはり炎を纏った爪の一撃は【物理攻撃完全無効】を突破してくる。
火傷の痛みが体を襲う、血も出ている。
クルクルクルクル回りながら飛ぶ私を死呼熊が追いかけて走る。
落下地点で一飲みにするつもりなのだろう。
大口を開けて待っている。
クルクルクルクル回りながら落ちていく。
(やってくれたな)
そう思いながらやはりクルクルクルクル大回転しながら落ちていく。
見える熊の開かれた顎。
(お返しだ)
そして突然ボフンと膨れ上がる私の体。
何故か自分の口より巨大化した私に驚き動きを止める死呼熊。
同時に制限時間に達したのか体から炎が消える。
ナイスタイミングだ。
(【大尻尾攻撃】)
凄まじいまでの遠心力が乗せられた巨大化した尻尾の一撃が死呼熊の脳天に叩き付けられた。
【尻尾攻撃】は結構、あっさり取れた。
けれどイマイチだった。
確かにオークとか一撃で倒せる【技能】になったが使い勝手は変わらなかった。
これなら【鋼牙攻撃】と【猛爪攻撃】の方が良い。
なら試しに強化してみるか?と思った。
幸い【SP】は余裕があるし【LV10】まで必要【SP】も54だった。
そして強化したら化けた。
まず尻尾を巨大化させられるようになった。
伸縮自在にも出来るようになった。
槍のようにして刺す攻撃も可能になった。
まるで尻尾を手の様に扱えるようになった。
オークとか牛とか咥えて引き摺らなくても尻尾で運べるようになった。
大当たりだったと思った。
そんな【大尻尾攻撃】が死呼熊の頭を叩き潰す。
グラリと揺れてズシンと死呼熊が倒れこむ。
近寄って爪で突いてみるがもう動く気配はない。
【限界突破】が切れてステータスが元に戻った死呼熊に大回転の遠心力が乗った【大尻尾攻撃】の威力は想像以上だったようだ。
そこでピコーンと音が鳴る。
『LV3UPしました』
と、表示が出る。
(おお、流石はA級、破滅の魔物。過去最高値の【LVUP】だ)
喜んで小躍りするが直ぐに痛みに顔をしかめる。
受けた傷は予想以上に深い様だ。
(またセアラに治してもらわないとダメかも)
そう思いながらグテーと伸びる。
楽勝かとも思ったがやはりA級の破滅一筋縄ではいかないと反省する。
それに体の大きさも昔に戦ったC級の災厄豪傑熊より小さかったし、纏うという炎も【限界突破】するまでは弱かった。
まだ幼い個体だったのだろう。
そして今日の修行は無理だと判断して野営地に帰還。
翌朝に怪我をしているのが知られやっぱりガクブルしながらもセアラは癒してくれた。
更に旅を続けて数日。
死呼熊程の大物には会わなかったが【技能】を上げつつジュラ大森林を駆けまわり、色々と襲って来る魔物を倒して【LV】を1つ上げた頃に私達は目的地のダビートに辿り着いたのだった。
狐猫の小話
死呼熊を【大尻尾攻撃】の一発で倒せたのは【忍耐】の効果が発動していたお陰です。
無ければ倒せませんでした。
【忍耐】の効果についてはまだ秘密です。




