第017話 突然の任務、魔物図鑑?
朝である。
巣箱から顔を出す。
快適な狐猫をダメにする巣箱は今も好調だ。
絶賛、今の今までダメにされていた。
しかし慣れるモノ、後ろ髪を引かれながらも私は巣箱を後にした。
因みにセアラはまだ寝ている。
枕元に立つと「うーん」と寝返りを打った。
当初は私が同室で寝ると言う現実に気絶する感じで寝てたが慣れて来ただろうか?
多少は慣れてくれたと思いたい。
まだまだ起きてる時に近付くとお〇らし聖女モードに突入だけどね。
狐猫ドアから外に出て廊下を歩く。
早朝なのでまだ人気は無い。
ピョンピョンと階段を降りて行く。
向かう先は訓練場だ。
昨日までの鉄鎧にドーンで【鋼体】を覚えた私は絶好調だ。
因みに今のステータスはこんな感じだ。
【名前】無し
【種族】ファトラ
【位階】壱
【LV】19 → 20
【気力】165 → 169
【理力】162 → 166
【霊力】200 → 206
【魔力】204 → 210
【SP】1427 → 1475
【技能】【牙攻撃LV9】【猛爪攻撃LV5】【隠形LV5】【記憶LV5】【探知LV5】【夜目LV1】【疾駆LV5】【剛力LV2】【鋼体LV1】【空間機動LV6】【予測LV3】【並列意思LV3】【思考超加速LV5】【五感強化LV3】【翻訳LV10】
【SP】がまた知らない間に100も増えていた。
神殿内で小耳に挟んだ情報だが【SP】は善行を積むと増える事があるらしい。
善行か、積んだ覚えはないが多分、あのデッカイ黒蟻討伐の成果ではと思う。
他に思い当たる節は無い。
訓練場について伸びーと体を伸ばし更にコロコロして柔軟をする。
ふっ、久々にスパルタンな特訓が火を噴くぜと気合を入れて、狐猫シャドーをシュッシュッとする。
だが鍛えるのは【猛爪攻撃】ではない。
あんな物を此処で使えば大惨事だ。
鍛えるのはもうLV9で進化目前の【牙攻撃】これが上がれば接近戦が楽になる。
私は尻尾を振り振りして目標の木人形に噛みついた。
一撃で粉砕された。
あっれー?!こんなにモロイの?木人形。
このペースではこの場にある木人形全てをあっという間に粉砕してしまう。
そしたら多分、怒られる。
むう、鉄鎧の案山子に噛みつくか?
いや、鉄に噛みつくの良くない、体に悪そうだ。
しょうがないと嚙み砕いた木人形を更に細かく噛み砕く。
そんな感じで特訓した。
手加減したつもりだった。
配慮した気でいた。
しかし木人形は全て粉砕してしまった。
破片も噛んだので正に粉々だ。
どうしようと思った。
眠れる力よ目覚めよと祈った。
【回復魔法】フンと放った。
何も起こらなかった。
そうこうしてる間に準備の先生が来て発見された。
めっちゃ怒られた。
尻尾がションボリへにょんだ。
反省した。
そして朝ご飯になった。
昨日の兎肉の残りだ。
美味しかった。
復活した。
さてこれからどうしようと思った。
訓練場には今日はもう行けない。
また何か壊したら完全に出入り禁止にされるかも知れない。
当てもなく東館の中を歩く。
図書館には行けない。
狐猫が本を読む。
見つかったら面倒だ。
うーん、早めに狩りに行っちゃうかと思う。
と、其処で女神官さんが階段を登っていくのが見えた。
何となく気になった。
着いて行く。
四階を登り五階に入る。
目的地は間違いなくセアラの部屋だなと思う。
本来、聖女は大変忙しいそうだ。
セアラ以外の第二位から第六位の聖女が今だに帰ってこない。
会わないのが証拠だ。
基本的に色々と国の行事、任務を言い渡され国中を駆け巡るらしい。
只、前回セアラは襲われた。
襲ったのはダスド帝国という所の騎士らしい。
それで襲った理由、背後関係を調べる間、セアラには療養が言い渡された。
それがここ数日、神殿に籠っていた理由だ。
そんなセアラに用事、気になる。
コッソリ付いて行く。
コン、コンとセアラの部屋の扉が女神官さんに叩かれる。
「はい」
と、返事をしてセアラが出て来る。
そこで女神官さんが礼を取り要件を告げる。
「聖女様、神殿長ロズベルト様がお呼びです。15時に神殿長室へ参られる様にとの事です」
「今日のですか?急ですね。何の御用でしょうか?」
「存じません。では、お伝えしましたので御前を失礼します」
そう言って要件は済んだとばかりに女神官さんは来た道を帰っていく。
セアラは少し考えた後でリーレンさんに伝える為か部屋を出ていく。
気になるなと思う。
何の用だよ、あのガマガエル神殿長と考える。
こういう呼び出しの場合は普通は数日前、早くても前日らしい、当日と言うのは早すぎる。
考えるが情報が足りな過ぎる私が解る訳がない。
15時か、それまでには帰って来ようと思いながら私は森へ出掛けた。
お昼ご飯は久々に現地調達の生の兎肉を食べて残りを持って帰る。
ガジガジと色々と噛んで特訓したが【牙攻撃】は上がらなかった。
岩とかも噛んでみた。
粉々だった、中々に危険な噛みつきだ。
それでもやっぱり【LVUP】しなかった。
残念。
神殿に帰る。
お昼に現れなかったので料理人さんがちょっと心配したようだったが大丈夫だった。
食べ残しの兎を預ける、時間は14時15分、間に合った。
部屋に戻ると聖女の正装をしたセアラがいた。
私が戻って来たのを見てビクゥッとしている。
うん、ホントに何時になったら慣れるんだろうねと思う。
見てるとカタカタ脅えて震えていたので巣箱に入る。
狐猫をダメにする巣箱の効果は絶大だ。
私はうつらうつらしていた。
コンコンと扉がノックされ、リーレンさんが「聖女様、そろそろお時間です」の声にハッとする。
「分かりました」
そう言って席を立つ扉を開きリーレンさんに付いて歩き出す。
私は距離を空けて二人の後を追いかける。
神殿長室に辿り着く。
「聖女第一位セアラ・シャリスお召しにより参上致しました。神殿長ロズベルト様にお取り次を願います」
「分かりました」
門番が扉を叩き「聖女様がお見えになりました」と言う。
同時に通せという言葉が響き扉が開く。
開かれた扉が閉まる前に駆け寄って部屋に入る。
私が駆け込んだのを見て「ひぃう」と声を上げるが距離を空けたのでどうにか聖女モードを維持出来たようだ。
しかし見た感じ部屋は無駄なほど広い。
超巨大すぎるベッドとか何に使うんだって感じだ。
しかも、金銀財宝が部屋のあちこちに飾られ趣味の悪い成金趣味全開だ。
嫌悪感が増す。
「急な呼び出し悪かったな」
「い、い、い、いえ、そ、そそ、それでななな、なん、何の御用で、ででな、なな、なん何のご、ごご、ごよう、御用でしょうか?」
うん、やっぱりお〇らし聖女モードだ。
まだまだ時間は掛かりそうだ。
そう思っているとガマガエル神殿長が此方を忌々しそうに睨んだ。
お、何だやるのかとシュッシュッと狐猫パンチを打つがガマガエル神殿長はもうこっちを見ていなかった。
「それでは要件だ。聖女第一位セアラ・シャリス。第二級任務を与える。ダビートにてアムディの聖石の確保を命じる」
「な、大聖女様でなく大神殿長が第二級任務を?!それにアムディの聖石は今まで故郷でもある聖女第四位シャルが担当していた筈では…」
「聖女シャルは過労が祟って休養が必要なようだ。聖都には使いを出し三日後には護衛騎士が付くように手配してある」
聖都からこの街まで片道二週間ちょっとと聞いている。
かなり前もって計画されていたようだ断れない状況に既に追い込まれている。
それでもNO何て言ったらセアラの聖女人生終わりだろう。
「畏まりました。ご下命拝命します」
苦渋ながら任務を受けれ神殿長との面会は終わった。
そして二人と一匹で自室に戻る。
部屋の中に出ていてはセアラを脅えさせるので早速巣穴に潜り込む。
少し前までは巣穴にいてもお〇らし聖女モードだったのでやはりちょっとは慣れて成長してるのだろう。
「ごめんなさい、リーレンこんな事になって…」
「いえ、どうか謝らないで下さい。主の為に剣を振るうのは騎士の誉れです」
寝たふりをしながら二人の話を聞く。
聖石とやらを取るだけなら大変そうに思えないが何か裏がありそうだ。
何だろうと思う。
「こうなれば護衛に来てくれる騎士しだいですね。15、嫌せめて20人は欲しい所ですが…」
「そうですね。B級の災禍の魔物アルケイロン。その背に生えるアムディの聖石、私にもシャルの様にアルケイロンを眠らせる【聖歌】さえ歌えれば…」
その言葉に私は噴き出した。
B級の災禍の背中の石を取る?
C級の災厄でも超苦戦だったのに何その無理ゲーと思ってしまう。
「【聖歌】はダビートの秘伝です。教えを乞う事は不可能でしょう。何とか殺さずに無力化して採取するしかありません」
難易度がまた跳ね上がった。
殺さずに無力化って何それ、無茶振りにも程がある。
これはアレだ。
やはり試練をするっきゃねーと思う。
出発まで残り三日、ダビートに着くまでだ何日か分からないが頑張らねばなるまい。
夕ご飯はシンプルだが恐らく秘伝のスパイスとか使ってるに違いないっ!
バクバクと食べる。
嬉しそうに眺める料理人さん。
食べ終わってペロペロと皿まで舐めて満足する。
「ミャア」(ご馳走様でした)
「お粗末様でした。じゃあ、またな」
挨拶を交わす、さて、今の内に図書室だ。
図書館に入る。
昨日の続きの本をンションショと取り出す。
抜くのはまだ楽なのだ。
肉球に挟んで引っ張って床に落とすだけで良い。
だが戻す時は大変だ。
大変に高価らしい本を傷つけないように立てて軽く爪を立てて固定して小さな体でンションショと本棚に戻す。
重いとは感じないが傷つけないように慎重になる必要があり気疲れする。
さて今日の本は何かなーと見る。
魔物について(上巻)とあった。
おお、遂に求めていた類の本がキタコレーと小躍りする。
しかもナイスタイミング、これでアルケイロンについて知れれば儲けものである。
早速ページを開く。
角兎
G級の魔物で油断しなければ一般人でも倒せる下位。
色違いの亜種が沢山。
うん、昨日に散々読んだパス。
雑に読んで次の頁へ。
死兎
ランクが上がってE級、高位、角兎と大きさも体毛も変わらないから間違えられやすいが角の一突き、【爪攻撃】【牙攻撃】で一般人をよく殺す危険な兎。
これも昨日の本に書いてあった。
読み飛ばす。
死招兎
更にランクが上がってD級の災害。兎種で一番デカいらしい。体毛は黒、死兎と同じで狂暴。同じように角の【突撃攻撃】【爪攻撃】【牙攻撃】に注意とある。
これも昨日読んだ、パス。
地獄兎
ランクが跳ね上がって何とB級。
B級の魔物、災禍である。
体は一番小さいが【予知】【技能】を持ち【突撃攻撃】【爪攻撃】【牙攻撃】を放ってくるとある。
会いたくない兎だ。
一応、発見されてる中では最後の兎だ。
次からが本格的な魔物図鑑だろう。
小鬼
ランクはF級、中位である。
一般人でもキチンと武装すれば1対1で勝てるそうだ。
複数になると危険。
洞窟に住み兎と一緒で幾らでも何処からともなく沸いてくるそうだ。
武装した小鬼闘士、小鬼戦士、魔導を使う小鬼魔導士になると脅威度がD級の高位になるらしい。
ホントに一杯居るらしい。
世界中各地に居る。
只、人を攫って繁殖という事はしないらしい。
18禁な展開は無いらしい。
ちょっと安心した。
中鬼
ちょっと大型の小鬼。
子供位の小鬼がこれになるとちょっと背の低い大人位になるらしい。
ほぼ武装しており魔導を使う個体も居る。
脅威度はD級の災害。
数が居れば危険だが、1対多なら大体、何とかなるらしい。
大鬼
更にデカくなった小鬼。
もう傭兵や冒険者、騎士でないと対処が難しい。
ランクはC級の災厄。
鬼王
最大級の小鬼、体付きは中鬼並みに縮むが装備が豪奢になり多数の小鬼、中鬼、大鬼を従えるそうだ。
個体としてはB級の災禍、群れとしての脅威は時にA級の破滅に匹敵。
騎士団や傭兵団、冒険者パーティーの出動案件である。
豚戦士
くっ殺さんの代表格オークである。
討伐ランクはC級の災厄に近いD級、災害。
分厚い肉で中々、斬れずに倒すのに苦労するそうだ。
私の場合は【猛爪攻撃】で一発だったが…。
兎も角、普通は個人で倒すのは大変とある。
肉は食用になるが油は注意が必要らしく人によってはお腹を壊す様だ。
私は全然、大丈夫だったけどな。
そもそも何故かおトイレ行かないし?ホントにどうなってんだ?私の体。
因みに劣化豚戦士と言うオークの幼体も居るらしい。
こちらの討伐難度は下がってE級な高位
猪戦士
オークの進化体だそうだ。
毛の無い豚戦士だったのが剛毛と牙を持ち更に一回りデカくなった強敵らしい。
数は少ないらしく滅多に遭遇しないそうだが現れれば小さな街なら壊滅もありえるとか、ランクはA級で破滅。
牙猪
デカい牙を持った猪、正に猪突猛進でそれしか出来ない。
肉は美味しい。等級はE級の高位。
猛牛
巨大な牛の魔物。
その大きな角を生かした【突進攻撃】の破壊力は凄まじい。
障害物を蹴散らしながら獲物と定めた者を執拗に追うらしい。
討伐難度はC級の災厄
大鶏
大きな鶏の魔物。
飛ぶ事は出来ないが巨大な硬い嘴を前にした【突進攻撃】、強力極まりない蹴り攻撃、また羽根を飛ばしてくる【羽根攻撃】を行う。
脅威度はC級の災厄だが稀に進化した王大鶏と呼ばれる立派な鶏冠を持った変異種も確認される。
その場合の討伐難度はB級の災禍になる。
読んでいてあれ?と思った。
自分が遭遇した大鶏、思い出すと立派な鶏冠が付いていた。
もしかしてあれって王大鶏だった?と汗を流す。
そっかぁ、私は既にB級の魔物と戦っていたのかぁと考える。
いや、いや、油断は禁物。
勘違いでアレは普通の大鶏かも知れない。
加えて今回の任務は討伐ではなく行動不能だ。
難度は更に高いと考え浮かんだ油断を打ち消して本を読み進める。
黒犬
黒い犬の魔物。各地に生息しており従魔として人気がある魔物。
普通の犬を超える高い嗅覚や聴覚【五感強化】を有し追跡や捜索等にも重宝される。
討伐難度はE級の高位。
黒狼
漆黒の狼の魔物。黒犬より扱いが難しく、従属させられれば従魔士として一人前と言われる。
【火息吹】を放つが稀に【氷息吹】を放つ変異種の白狼が存在する。
ランクはD級の災害。
暗黒狼
大樹海や大森林の奥地の身に生息すると言われる。
闇色の犬の魔物。高い【五感強化】と遠距離への【炎弾】、【爪攻撃】、【牙攻撃】と多彩な技能を持つ。
従属させられればその者は超一流と言える。ランクはC級で災厄。
地獄狼
森人の住まうウノ大樹海にのみ生息すると言われる最強の犬系魔物。
暗闇を思わせる毛色は正に地獄を連想させる。
保有技能は【五感超強化】【鋼牙攻撃】【猛爪攻撃】【豪炎息吹】と言われている。
変異種として純白の毛色で【氷河息吹】を放つ氷獄狼も居るとされる。
森人はこの狼を従属させる術を持ち国の最大防衛力の一つとしているとされる。
脅威度はB級の災禍かA級の破滅と思われる。
色々な魔物の情報が載っていた。
会った事のある物、無い物様々だ。
会った事があるモノは後は―
闇蜘蛛
蜘蛛型の魔物、森に潜み獲物を狙い徘徊するタイプと巣を張って待ち構えるタイプが居る。
【毒牙攻撃】を持つ。
脅威度はE級の高位。
飛竜
竜型の魔物でその亜種。
基本群れで行動し、山脈の上などに巣を作る。
飛行する為に倒しづらく魔法耐性も高いので討伐には大型弩砲が用いられる。
単体の討伐難度はB級の災禍、群れはA級の破滅になる。
ワイバーン(仮)さんはやっぱり飛竜だったようだ。
しかしランク評価が高いなおい。
私はバッタバッタ打ち落してたけどB級の災禍にA級の破滅って、まぁ、私は【空間機動】で飛べるしね。
そのお陰だろうと思っておく。
後は知ってる魔物の情報は載って無かった。
蜥蜴とか鷲とか大蛇とか魚とかアルケイロンの情報も、残りは下巻かな?
そう思いながら本を片付けて部屋へと戻った。
残り三日、それまでにアルケイロンに関する情報だけは得ようと私は巣箱で眠りについた。
狐猫の小話
従魔士が普通に従属させられるのは大体C級の災厄までです。
B級の災禍やA級の破滅を従属させれば奇跡レベルです。
人類以外は出来ますが秘伝です。