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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第166話 出発と最後の襲撃


「じゃあ、気を付けてユーチャ、次はゆっくりしていきなさい」

「また好きな物を沢山、準備しておくわね」

「はい、楽しみにしていますねー。お父さま、お母さま」


 フレイドル伯爵邸の前でユーチャさんとご両親が別れを惜しんでいる。家族とゆっくりさせて上げられないのはちょっと可哀相だけどこんな事態だからなー、後日、機会がある事を祈ろう。そう言えばユーチャさんのお兄さんとか妹さんを見なかったな、何処でどうしてるんだろう?会って見たかったんだけど残念だ。パリス君とカトレアさんも挨拶を交わして揃って馬車に乗り込み出発、私とセアラはナハトの背中だけど、今、ここで巨大化はさせられないので歩いて付いて行く。⦅暗黒狼ヘルハウンド⦆と偽ってるからねー、この場で元の姿に戻したら知らない人は動揺しまくりで大騒ぎになるだろう。ユーチャさんのお父さん、お母さんなら平気な気もするけど見送りは他にも人が一杯居るからしょうがない。


 手を振ってくれる皆さんに手を振り返しながらテクテクと歩く、馬車と馬も街中なのでまだゆっくりだ。問題なくついて歩ける、そう言えばカトレアさんが来てからそんな余裕もなかったけどお忍び街中観光もしなくなったなー。パリス君もご機嫌を取るのに大変だ、まぁ、自業自得だから頑張れとしか言えない。そして門を潜って街の外へ、次が大帝都アルディージャに至る手前の最後の都市パルティアだ。この辺りはもう荒れている北西、東、南と違って平和な物だ。騎士団の巡回も行われているから危険はない。


 先日はちょっと襲われちゃったけどね、二度は無いと信じたい。でもあいつ等は本国に増援を頼んだと言ってたから次の可能性はあるなー、でもこの中をやって来るのはかなり大変だし、内通しているだろう者もそう何度も通過させる余裕はない筈だ。多分だけどあって一回、それさえ乗り切れば終わりだ。【探知】さんを全力使用で警戒する。私とセアラにナハトが守る中で危機はまず有り得ないけど油断はダメだからねー、しっかりと警戒しよう。


 一日目は何事も起こらずに終了、ご飯は何時も通り私とユーチャさんにセアラとモニカさんで作る。今日も今日で皆が満足してくれた、うん、良かった、良かった、明日の朝食も頑張ろう。後は寝るだけなんだけどまたカトレアさんに連れていかれた、よっぽど気に入られてしまったんだなー。まぁ、メンディー大森林の件があるからご機嫌取りは必要だ、大人しく抱かれて安眠、セアラにはナハトが就いてるから大丈夫だろう。そのまま私達は二日目に突入した。


 この日も事件は起こらず平穏に旅路は進んだ、まだプルートーが近いからだろう、明日から明後日頃が危なようだ、注意しておこう。朝昼晩は昨日と同じで問題はないけど、虫の報せというか、勘が騒めく。警戒を厳にしないといけない、何も起こらないのが一番だけどやっぱり事態は動きそうだ。だから対策の為にもセアラには伝え揃って周囲を注意して歩を進める様にする。他の皆にも私達の状況から予想が読み取られたのか残らず慎重に街道を行く。


 朝は変化なし、気配は全くせず、順調に馬車と馬にナハトが進む。昼を過ぎても異常なし、うーん、気の性だったのだろうか?でもやっぱりそれはない気がする。しかしポクポク、テクテクと歩き続けた結果、野営の時間になってしまった。あっれー?おかしいなー、私の勘が外れてしまった?そう言う事もあるかも知れないけど、そうそう、あるとは思えない。まだまだ油断は出来ない、幸い今日の夜番は私とセアラ、ナハトだ、何があっても対処は可能だろう。しかしナハトは相変わらずだな、ご飯を食べ終わって元気に駆け回っていたと思ったら何時の間にかまた「スピー」と引っ繰り返って寝ている。ホントにこのワンコは!野生を何処に置いてきたと言いたい、いや、今の私もあんまり他者の事を言えない気がするけどそれはそれでコレはコレだな、うん。


「襲撃が起こりませんね、ハクアの勘が外れるとは珍しいですね」

「ミィ、ミィミミィミィミィミミィミミミィミィミィ、ミィミミィミィミィミミィミミミー」(まぁ、悪い事だから外れてくれたら万々歳だけど、まだ嫌な予感が消えないのよねー)

「ならまだ様子見が必要ですね。私達も強くなりましたがまだまだ若輩ですし、油断していると足元をすくわれます。慎重にいきましょう」


 否定できないなー、確かにもうこの世界で上から数えた方が早いだろう有数と言って良い実力者にはなっているが策略を巡らせた対人戦となると経験不足というのは否めない。何をして来るか分からない相手というのは恐ろしい、ハミルトンもアレだったからなー、今回のガルガード王国の連中も手段は選ばないだろう。このままパリス君がアルディージャに到着してしまえばそのままサイバリス聖国との和平交渉は進んでしまう。なんとしても阻止したいと動くのは間違いない。


 だけど何をして来るかまでは想像も出来ないよなー、私の【探知】さんを潜り抜ける等、早々にやれる訳が無い。そう思っていたのも束の間、嗅いだことのない臭いがした。うん?これはどうしたんだろ?何処から漂ってくる?周囲一帯から?薬…毒かな?どんな効果がある?いや、そんな事を考えてる場合じゃないな、ヤバそうだから吹き飛ばすっきゃないと〘風魔導〙を使って漂ってるモノを散らしてしまう。嗅覚が劣るからかセアラはまだ気付いてないな「ハクア?」と不思議そうにこっちを見てる。ナハトも起きて鼻をグシグシと擦っている、よっぽど不快だった様だ。


「ミミィミィミミミィィミィ、ミィミミィミィ。ミィミミィミィミィミィ」(嫌な臭いが漂ってた多分、攻撃だと思う。注意して確実に敵がいる)


 そう言ってセアラの膝からピョンと飛び降りる。【探知】さんに反応はないけれど遠くない位置に間違いなく誰かが居る、それが何処か探さなければならない。風向きから見て北東かな?そこから流れて来たようだから遡ればきっと犯人が見つかる筈だ。でも全員で行くと他に伏兵が居た場合に対処できない、取り合えずは私一人で元を辿る。セアラとナハトはこの場に待機だ、何があるか分からないからな、保険である。両者に声を掛けて「気を付けて下さいね、ハクア」と送り出される。


 夜の闇を駆ける、この辺りは平原だから身を隠せる場所はない。直ぐに見つかるだろうと思ったが中々に離れた位置から風に乗せて飛ばしていた様だ。まだ何も視界に入らない、ホントにこれはどんな異常を引き起こすのか?こちらは【状態異常完全無効】で無効化できるけど他の者はそうはいかない、危険は犯せないから臭いを追いつつ風を起こして散らしていく。


 そして走る事、数十分そこで見つけた物を目にして何だコリャ?と私は首を傾げた。ちょっと強めの風を起こす〖魔導具〗の前に変な形の香炉が置いてある。【鑑定】の結果は〖安眠香〗と表示される。眠らせる薬だったのか、私達は無効化するから無意味だな。他の人には効果があっただろうけど吹き飛ばしたから多分、大丈夫、でも【探知】さんにこれを仕掛けた相手の反応が無いなー、絶対、近くに居る筈なんだけど…その気配が探れないというか、誰かが行ったのは確かなのに実行犯が何処にも見当たらないし、痕跡も察知も出来ない。


 おかしい、間違いなく人為的なのにやった当人が影も形もないとは……有り得ない、兎も角、先ずは〖安眠香〗と風を出してた〖魔導具〗を【空間収納ストレージ】に仕舞い込む。どれほど効果があるか分からないけど私達は平気だが、パリス君達には悪影響があるだろう、排除しなければならない。と、そこで妙な魔力の流れを【探知】さんが把握、これは…と目を向けるとドンドン圧が高まっていく、ヤベ、何か仕掛けられてたと慌てて地面を【鑑定】すると〖魔封石〗〘超大爆裂エクスプロージョン〙と表示された。


 〖魔封石〗って聞いた事があるぞ〘魔導〙を封じて使い捨てで発動させられる石だ。それが此処に埋められていた?しかも〘超大爆裂エクスプロージョン〙とは大盤振る舞いだな、超貴重品だろうに使ってしまうとは、こちらは【魔導攻撃完全無効】があるから全然、平気だけどと考えていたら一帯の足元をに〘魔導陣〙が光った。またこれも【探知】さんに反応はなかったなー、上手く潜り抜けられている気がする。今度は何が起きた?と急いで【鑑定】を使おうとして……発動しなかった。ヤバイ、これはステータスや【技能】を封印する類の〘魔導陣〙だ、完璧に罠に嵌ってしまった。逃げないといけない、だけど間に合うか?〘超大爆裂エクスプロージョン〙の規模が分からない。〘転移〙なら一瞬、元のステータスなら走ってもあっと言う間だったろうけど今の全速力は普通の1歳の綿猫ファトラである。


 ダメだ、間に合わない、こうなれば何処か遮蔽物に身を隠して防御に徹してどうにか命を護らなければならないけれど此処は平原だ、盾に出来る物が何一つとして存在していない。ちくせうっ!どうにかならないかと嘆いても、もう手段は無い、覚悟を決めて身構えた次の瞬間、解き放たれた〘超大爆裂エクスプロージョン〙の大爆発が巻き起こした閃光と爆風に私の姿は搔き消された。







 ハクアが調査に走ってから十数分、現状で変化はまだありません。一応の対策に野営地全体を【神域】で囲んだ、その後、問題は起きていないから大丈夫だと思うのですけれど、ちょっとだけ胸騒ぎがする。ハクアを信じてはいるけれど無事に帰って来るのを願うだけしか出来ないのは如何にも落ち着きません。狙われているのはパリス様達だから此方を優先しなければならないのは分かっていますけど、それでも私にはハクアの方が大事なのだ。


 更に時間が過ぎるが一向に変化がない、何かあったのだろうか?そう思い【神言通】を送ってみるが反応が無い、いや【技能】が届いていない、これは間違いなくハクアの身に異常があったと見るべきだ。今直ぐに動きたいけれどこちらにも異変が起きるかもしれない、だけどやっぱりハクアが心配だ。この場はナハトに任せて私はハクアの元へと思ったけれどそれは僅かに遅かったようだ。強化された聴覚に爆音が聞こえた、響いて来たのはハクアが向かった方向からだ、確実にあの子の身が襲われた。居ても立っても居られずに立ち上がって駆けだそうとした瞬間に足元に――野営地一帯に〘魔導陣〙の光が浮かび上がる。


 これは最初からこの場所に野営をすると予測されて仕掛けられていた?かなり用意周到に準備されていた様子、しかもこの陣は知っている〘封獄陣〙だ、一定範囲内のステータスと【技能】を封印する物で効果時間は込められた魔力に比例する。そんなに長く維持は出来ない筈ですけれどこの状況は危なすぎる。見ているとナハトの擬態も解けて元の大きさに戻っている。ダメだ、前の試練の時に痛感したけれど私はステータスと【技能】が封印されると貧弱極まりない、こんな所を襲われたら一溜まりもない。でもやっぱり予想通りに敵が来た、どのようにして【探知】を潜り抜けたか分からないけれど声を上げて三十人程の鎧に身を包んだ者が襲い掛かって来る。後方には魔導士も居るらしく〘魔導〙迄もが飛んでくる、相手側は〘封獄陣〙の影響を受けない様にしているらしい。圧倒的に不利な状況、これは非常に危険と言える。ハクアが凄く心配だけどこうなってしまってはその前に自分の身の安全が優先だ。


「ウォォォーーーーーン!!!」

「敵襲!敵襲です!!」


 ナハトが咆哮を上げて私も全力で叫ぶ、でも直ぐに動ける人がどれだけいるだろうか?〘封獄陣〙でステータスも【技能】も封じられてるから猶更だ。それでも抵抗しなければならない、こんな所で倒れる訳にはいかないから、今持てる全力で抗う。歳相応というか外見年齢相当の力しか出せないけれどそれでもだ。対してナハトは圧倒的、力を封じられても素の力が強い、次々と敵騎士を打ちのめしていたけどそれが脅威と映ったのかナハトに対して敵と〘魔導〙が集中しており、私の元にも三人の騎士と〘魔導〙の攻撃が襲い掛かって来る。〖聖杖〗と〖天鱗毛のローブ〗が無ければすぐさま倒されていただろう。


 それよりもパリス様が危ない、眠っている〖簡易宿泊所テント〗に残った敵兵が向かっている、普段ならどうとでもできるけれど今の私では一人を倒す事も出来ない。いけない、でもどうすれば?打つ手がない、必死に何とかしないとと思うけど考え付かない。マズイ、もう間に合わない…必死に攻撃を受けながら様子を視界の端に捉えていると何者かが襲撃者に飛び蹴りを放って体勢を崩させた。誰?と思ってよく見るとカトレア様だ、護衛騎士の方々よりも先に飛び出して来るとは、貴女も護られる立場でしょうと慌ててしまう。本来なら不意打ちだったから蹴り飛ばすくらいできたかも知れないが今は封印状態にされているのでよろめかせる程度が限界だろう。


「此処は通しませんっ!」


 声を張り上げて〖聖杖〗を構えるカトレア様、む、無茶をしないで下さい。襲い掛かって来たガルガード王国の騎士達が「邪魔するなぁぁぁっ!!!」と叫び剣を薙ぐ、カトレア様はどうにか受け止めるけどやっぱりステータスと【技能】が使えない状態なので大きく弾かれてたたらを踏む。吹き飛ばされて転ばなかっただけ凄いけど、そこを目掛けて突きが放たれる。ダメ!と思うけれども手が出せない、このままではカトレア様が殺されてしまうと焦るけれど私に助けに向かう余裕は無い、寧ろこっちもかなり危ない、ナハトが必死になって護ってくれているが、それで限界だ。


 カトレア様に凶刃が迫った所で今度は簡易宿泊所テントから誰かが飛び出して敵に体当たりしてよろめかせた。って、今度はパリス様!また何て無茶を、護衛対象の一番と二番が真っ先に出て来るとは相手にとっては正に子羊が狼の群れに飛び込んできたようなものだ。非常事態だ、如何にかしないと…でも、私に余裕は無くナハトもいっぱいいっぱい、ハクアは無事を信じたいけどどうなってるか分からない。取れる手段は無いかと悩んでいたら――


「パリス様!カトレア様!」

「パリス様!」

「聖女様!」


 ユーチャ様を始めとしてケベル様、カレッサ様、ローレン様、モニカ様達、味方の全員が駆けつける。形勢逆転といきたいけれど封印状態の上に数でも負けてるこっちが圧倒的に不利だ。だけど諦める訳にはいかない、敵は現在だと半々位に別れて私とナハト、パリス様ご一行を狙っている。全員を殺す気なのは間違いない。状況を引っ繰り返すにはどうすれば良いか、追い詰められた状況で私は必死になって考えを巡らせるのだった。

狐猫の小話

ステータス全封印の魔導陣なのに発動してしまう超大爆裂エクスプロージョン

これは特定の魔導は無効化しないように調整されている為です。

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