第160話 プルートー到着と寂しさを覚える聖女?
ちょっと私事が忙しくなってきたので暫く毎日更新が出来なくなりそうです。
可能な限りは頑張ります。
予定通りに翌日の昼過ぎに次の街へ到着した。此処で一日休んで次の街までは大凡で五日、更に同じくらいで最後の街に辿り着いて、そこから目的地である大帝都アルディージャを目指して数日で入城だ。そこまで行けばもう何一つとして危険はない。取り合えず門で昨日、森で戦って捕まえたガルガード王国の騎士の捕縛を頼んで領主に使いを走らせ、その後を追う様に私達も領主邸に向かった。
この街の名はプルートーと言い、アトランティカ大国でも有数の大都市である。まぁ、この先の街は全部が同レベルと言える大きさらしいが、それでもデカい、一体、何万人が住んでいるのだろう?と思う。領主邸に向かっている最中で騎士の一団と擦れ違う、恐らくは私達が倒したガルガード王国の騎士を此処まで引き連れに行ったのだと思う。
「ようこそお出で下さいました。パリス様、カトレア様、そしてユーチャ、久しぶりだ。元気だったかい?」
「はい、お久しぶりです。フレイドル伯爵」
「お変わりない様で安心致しました。叔父様」
「はい、お父さま。私は何時も通りですよー。お母さまはどうしたんですか?」
「ユーチャが帰って来たと聞いて早速、厨房に行ってしまったよ。好きなお菓子を作ってくれている最中だろう」
「楽しみですー」とユーチャさんはニコニコだ。つーか、ここってユーチャさんの両親が治める領地だったのか、びっくりだわ。教えておいて欲しかった。因みに家族構成は父母と兄一人に妹二人だそうだ。正式な当主は母で旦那さんはカトレアさんの父親の弟だとの事、フレイドル伯爵家はアトランティカ大国の家政婦の総元締めで教育機関も置かれており領主邸はメイドさんが一杯である。
少し時間を置いて皆で仲良くおやつを頂く、今の所は私達が襲われた以外、この領地では何一つとして異変は無いそうだ。大帝都アルディージャについても特に変わった事があったという報告は届いていないと聞いた。現状はまだ大丈夫か、だけど甘く見てる訳にはいかない。絶対にこっちを狙って仕掛けて来るのは目に見えている。昨日の今日だから直ぐ様に事件がとは考えられないけど油断は出来ない。
今日は街中をウロウロせずにフレイドル伯爵邸でのんびりだ。パリス君とカトレアさん、ユーチャさんの昔話を色々と聞いた。今更だけど私は三人が同い年だとばかり考えていたがユーチャさんが15歳、パリス君が14歳、カトレアさんが13歳だった。カトレアさんの婚約者であるショルテ君は14歳、七賢人の一角であるシュランツ伯爵家次男でかなり有能な人材との事、フレイドル伯爵家はやはり家督は長女が継いで表向きは旦那になる人が当主をやってる様に見せるそうだ。
何でかというとこの世界は基本が男尊女卑だから、実は女性当主というのはフレイドル家だけの特権のようだ。前世だと女性差別がーとうるさそうな環境と言える。今は異世界だからそんなの特にどうともしないけどね。気に入らない奴が立ち塞がればぶちのめす、邪魔してくれば叩きのめす、よっぽどならばもう最後の手段と殺ってしまう、男が尊重される以前に此処は【LV】とステータス【技能】がある世界、強さが全てなのである。
私とセアラ、ナハトの力ならば殆んどがどうにか出来てしまう、そこまで強くなってもまだまだ目標には届かないのだから厳しい。残された日数は六月も中程になった今、あと九ヶ月しかない、四月に旅を始めて二ヶ月と少し、この期間で揃って【LV80】まで上がれた事も普通ではないだろうけどこの先は更に厳しくなっていくだろう。それでも頑張るしかない訳だ。目標は【LV100】だからね。必死に経験値を稼ぐのみだ。でもSS級の絶望ならまだしもS級の天災では何匹を殺せば【LV】が上昇するか分からない。頑張らねば、そんな間もパリス君達の昔話は続いていく。
「初めて会ったのは僕が6歳、ショルテが6歳、カトレア嬢が5歳、ユーチャが7歳の時だったっけ」
「そうですね。懐かしいですわ、パリス様の【恩恵】である【未来予知】で私達を知っておられたからか最初から随分と馴れ馴れしくて随分と距離感に戸惑いましたわ」
「私は疑われる事もなくお傍付きになれたので特に気にする事もなかったですー。ショルテ様は凄くパリス様をライバル視して何時も競い合ってたのが懐かしいですねー」
「ははは、今だにそうだよね。大帝都アルディージャの〖迷宮〗で誰が一番【LV】を早く上げるか競争したりしたよね。現在は僕とショルテが同じ、ユーチャが次でカトレア嬢の順かまだまだ頑張らないといけないけどね」
「歴史や算術、貴族としての教養から時と場合によっては指揮をする必要に駆られる戦学までに至る座学ではユーチャが体を動かす馬術に身を護る最低限の護身術、〘魔導〙を扱う授業では私が一番でしたものね」
「10歳から5年間、通っていた学校時代ですねー。パリス様とカトレア様は個人教師が付いての専門授業でしたけど、私はミストラル院の寮住まいでしたけど、ほんの少し前なのに感慨深いですー」
色々とあるものだ。テレスターレ聖国では6か7歳頃から各都市の学校で学んでいたがアトランティカ大国では10歳から15歳が学生期間で高位貴族の子息、子女は高名な教師をつけて教えさせるみたいだ。国毎にやっぱり子供への教育方法は違うモノだと知らされる。そう考えるとセアラなんて6歳から神殿入りだったからなー、浮きに浮いていただろう。その分、早くに多くを学べたのも確かだけれど、年相応に楽しく遊んだ経験があまりないだろう。友達だってどれだけ一緒に居られたか怪しいモノだ。
全部が終わったらセアラと一緒に一年くらいの間、楽しくのんびりするかなーと未来に思いを馳せる。今が大変なのだからこの先に夢くらい見てもいいだろうと思う。その日を迎えられるかどうかが問題だがどうにか出来ると信じるのみだ。その後もパリス君、カトレアさん、ユーチャさんの昔――と、言っても数年内な話は続く。なんだかんだ言っても仲は良いよなー、この三人。
「でもカトレア様がパリス様の婚約者になるのは意外でしたねー。元々、王家はそのつもりで聖女の素質を持つカトレア様を近付けたのは予想出来ましたけど、最初は全然、意識していませんでしたし、好みでもなかったですし、聖女になんてなる気は無かったですよね?ホントに何があったんですかー?」
「………些細な事よ。気にしないで、それに今は婚約者ではないわ」
「は、は、ははははは……」
ユーチャさんが不思議そうに見る前でカトレアさんはツンとしてそっぽを向く。パリス君は乾いた笑いをするだけだ、うん、二人の間って最初はそんな感じだったのか、今はどう見てもカトレアさんがパリス君に惚れ抜いてるけどね。パリス君は何とも言えない表情だな、カトレアさんを好きは好きだったけど、自分に未来はない筈だったから必要以上に好まれないような態度をずっと続けていた心算だったのだろう。
それがどうしてかベタ惚れで婚約者になっちゃったから予想外だし、自分自身の未来が変化したのも想定外、こうなっては責任を取らないとだけどカトレアさんがお怒りでそれを鎮める所から始めないといけない。本当にもう、パリス君本人に悪気は全くなく申し訳ないし心からカトレアさんを想っての行動だった訳だが、裏目に出てしまったのが何とも残念無念だろう。
兎も角、二人の問題は両者の間で片を付けて欲しい。私やセアラでは力になれんからなー、私等に色恋はサッパリなのだ。何とか頑張って愛情を取り戻して欲しいと思う。いや、それはもう十分にあるのか、デレてたのが怒りでツンになってしまっているだけだ。一度は落としたのだもう一度だけなんとか頑張れとしか言えない。そもそも何が琴線に触れたのか分からないからね。そんな感じで幼馴染な三人が昔話をしながらユーチャさんのお母さんが作ってくれたお菓子をつまむ。
中々に美味しい、一口で食べられるミニサイズなボールケーキの様な品だ。あ、なんだかたこ焼きを思い出す。でもタコが無いから作れないなー。その内にまた海に行く機会があったら探してみよう。イカもいいなーと欲しいものリストに追加、海の幸は元日本人の心の支えである。今は無理だけどその内に必ずと考える。それから一旦、夫々の客室に案内されてゆっくり過ごす。
セアラが私を抱いてベッドに腰掛けてボーとしている。ナハトはゴロゴロとご機嫌に傍を転がって暫くすると「スカー」と眠り始めた。うん、狐猫な私よりも寝てる気がするぞ。黙って私を優しく撫でるセアラ、心境が複雑になってるって感じかな?パリス君やカトレアさん、ユーチャさんの昔話を聞いて自分の歩んできた道と比べてしまったんだろう。彼等、彼女等もそれはそれで苦労はあっただろうがずっと支えてくれる、側に居てくれる誰かが一緒だったけどセアラにはそんな人は存在しなかった。
「ミィミ」(セアラ)
「……あ、はい、ハクア、どうかしましたか?」
声を掛けても直ぐに反応せず、ちょっと時間を置いてから返事が来た。自分でも内心を上手く消化する事が出来てないんだろう。何時も通りの顔をしてると本人は思っているだろうが、微妙に歪んでる。そんなセアラにスリスリと体を擦り付ける。むむ?またお胸が成長してないか?会ったばかりの頃はペッタンコだったのに大きくなり出すと凄いスピードだ。ちくせう、巨乳は敵だー!と考えてしまうが相手は大事なセアラだ。我慢する。言葉を続ける。
「ミミィミィミィミ?」(羨ましかった?)
私が言うとハッとした様にピタリと体を撫でていたセアラの手が止まった。やっぱり自覚してなかったんだなーとその顔を見上げる。セアラはなんだか罪を暴かれた罪人みたいな表情になってしまった。ちょっと他人の家族とか友人関係に嫉妬してしまうくらいで大袈裟だな。その程度、友達や親がいない子なら誰でも目の当たりにすれば抱いてしまうもんだろう。気にするなとその顔を前脚でプニプニして慰める。
「ハクア…私は……」
「ミィミィミミ、ミィミィミミ、ミィミミィミィミミィミミィミミミィィミィミィミミィミィミィミィミミィィィミミミィミィミィミィミィミミィィミミィミミィミミィミィミィィミミ」(気にしない、気にしない、セアラは今まで他の親子の団欒とか昔からの友人達が語り合う場面とか縁が無かったんだから見ちゃうとどうしたって動揺してしまうのは仕方ないって)
セアラが家族という集まりの触れ合いを見るのはオッちゃん聖王様一家以来の事かな。あの時はまだリーレンさんにセリアーナお婆ちゃん大聖女様を始めて皆が居たし輪の中にセアラも入れてたから気にならなかったんだろうが、今回はパリス君とカトレアさん、ユーチャさん、その両親の話を聞くだけで終わったからなー。どうしても疎外感と寂しさの様な物を感じてしまっても仕方があるまい。
「ミィミミィミ。ミィミミィミィミィミ、ミィミミィミィミィミミィミィミィミミィミ、ミィミミ?ミィミィ」(大丈夫だよ。私はずっと一緒だから、セアラを一人にはしないって約束するから、だからね?安心して)
「……はい、絶対ですよ?私から離れないで下さいね。ハクア」
ギュッと抱き締めてくるセアラに「……ミィ」(……うん)と返事を返して心の内で「ごめんね」と謝る。私ってば嘘吐きだ。ずっと一緒になんて不可能で、セアラを助けて目的を遂げさせる、それだけが私の願いだ。つい先日、自称:神様(仮)に言われた様に魂そのものが限界に近い。私はもう長くない。安静にしてればまだまだ持つだろうが時間が無いから二の次だ。私は自分の命をホントに軽く見てると思う。
セアラには申し訳ないけどその日が来るまではどうあろうと全力で護り切って彼女の未来だけは繋ぐと決意する。ワサワサと毛皮を撫でられて、セアラの雰囲気と表情も普段通りの戻った。良かったと安心してされるがままにする。その後は夕飯までこれからの事を話し合いつつこの間、獲得した武具をちょっと整理しておく。何かというとガルガード王国の騎士が持っていた装備だ。倒した者の特権として奪い取っておいた。中の上ってランクの武器と防具だ。率いていた隊長は更に豪華な剣と鎧だったが売り払うのも何だ。〘魔導袋〙と〘空間収納〙に【無限収納】に暫くは死蔵だなと考える。
片付けと簡単なお手入れが終わった頃に夕ご飯とお呼びが来た。私達は傭兵だから晩餐とかにお呼ばれする筈は無く部屋で静かにと思っていたがパリス君とカトレアさん、ユーチャさんのお招きで一緒にお食事となった。ユーチャさんが私の料理の腕を話したんだろうなー、貴族がお料理というのもなんだがフレイドル伯爵家の女性は調理が趣味らしい。セアラもお菓子作りはすっかり得意なので話に参加して色々と喋ってる。
ユーチャさんのお母さんに頼まれて調理道具からレシピ集、元々はユーチャさんにプレゼントする為に準備していた品々を売る事にする。臨時収入だな、ユーチャさんが「師匠ー、私より先にお母さまへー!」と嘆いているが安心するが良い、ちゃんと後で上げるからと宥める。しかし、私が会ってきた中で貴族らしい貴族ってあんまりいないなーと考える。
ノブレスオブリージュを示してる尊い貴族ってのもそう面識ないし、爵位を笠に好き放題に平民から搾取するのもそんなに居なかった、ガマガエル神殿長とかこの類だけどね。しかし、どっちにも属さないやたらと人間味のある色物ってタイプの貴族に遭遇する事が多いなーと思う。まぁ、悪い事ではない、親しみやすくて大変に結構だ。賑やかとは言えないが静かとも言えない、皆の語り合いが途絶えない楽しい夕食となった。
食べ終わって食休みが済んだらお風呂である。今度こそ私とセアラ、ナハトは後で良いよ?なのだが、ユーチャさんに引っ張られてご一緒させて貰う事になった。そういえばこの三人と二匹でお風呂って初めてな気がする。私とナハトは変わらずメイドさんの手によって泡だらけの毛玉にされる。ナハトが嫌がったら問題だったがすっかり慣れて落ち着いた。綺麗にして貰うとお湯にプカプカ浮き出した。私も極楽、極楽と浸かる。
同じ様に洗って貰って湯舟に浸かっているセアラ、カトレアさん、ユーチャさんに目を向ける。どの子も美少女だなーと思う。美しさではカトレアさん≧セアラ>ユーチャさんかな?愛嬌、親しみ易さではユーチャさん>セアラ>カトレアさん、肌の白さはセアラ>カトレアさん≧ユーチャさんで胸の大きさはユーチャさん>セアラ>カトレアさんと言った所だ。No.1は選べないなー、どの子にも夫々の良さがある。
甲乙つけがたい、何とも選択できないものだ。それでもどうしても選べと言われたらセアラしか居ないけどね。そんな事を考えながら私達はぬくぬくのお風呂を心ゆくまで満喫した。どちらかというと無口なカトレアさんと何を話せばいいのか分からないセアラの間を取り持つ感じでユーチャさんが話題を振る。中々に良い面子になったモノだ。私はこの時間をゆったり楽しんだ。
狐猫の小話
旅が始まって予定していた行程は残り僅かとなりました。
後は敵側の最後のあがきですねー。
実質的に脅威となる相手はあと一人です。




