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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第016話 狩りは大変、そして図書室通い?


 ふん、ふん、ふーん、鼻歌を歌いながら廊下を歩く。

 今は東館の階段を下りている所だ。


 三階に到着、まだ子供とそこそこなお嬢様っぽい人達が数名。

 うっ、先日のトラウマが!


 だが、しかし何時までも引き摺って負けていてはいけない。


「ミィミィ」

 と、鳴きながら手を振ってみる。


「可愛らしい」

「綺麗ね」


「ふんっ…」

「魔物が聖女の学び舎に住み着くなんて…」


「………」

「………」


 うーん、大体三種類の反応だな。

 好意的なのが三割。

 否定的なのも三割。

 我関せずと言ったのが残り四割。


 セアラに対する態度も似た感じだ。

 帰って早々、同じ学び舎の聖女候補より先に平民、貧民の西館に行ったのが証拠だ。


 仲の良い聖女候補の娘も居るけど本当に友達―親友と言えるような子は二人ぐらいの様だ。

 何だか不思議な感じだ。


 人柄から見てもっと慕われていても良さそうなのに、だが二人とも唯々諾々としている。

 私が知らされていない何かがあるのかも知れない。

 気にはなるが言い出されない限りは何も言わずに居ようと思う。


 私は所詮は魔物、今は人間ではない。

 出来ない事が多すぎる。


 だから必要になった時、力になれるようにしておこうと思う。


 この爪が牙が必要とされるまでは力を蓄える事にする。


 そして今日も特訓を開始する。


「ミィーーーー!」

 鳴きながら鉄鎧を着せられた案山子にタックル。

 衝撃にグワングワンしながら千鳥足で下がる。


 そして衝撃から回復したらまた「ミィーーーー!」と鳴いて突撃、フラフラと後ろに下がる。


 同じ案山子に攻撃魔法を当てる訓練をしている聖女候補から「何をしてるんだろう、この子は…」と言う視線を向けられるが気にしない。

 これは防御力を上げる訓練なのだ。


 実際に私は攻撃力は【猛爪攻撃】、速度は【疾駆】、機動性は【空間機動】で頭は【並列意思】【思考超加速】、索敵は【探知】で何とかなってる。

 穴は防御力。

 紙装甲の貧弱狐猫ボディ。

 直撃貰えば一発アウトな脆さだ。


 その対策に考えたのがこの自爆タックル特訓。

 最初の『試練』突破報酬で見た【技能】【剛体】を得られないかと試して居るのだ。

 今の所は結果が出ていないけど効果はあると信じたい。


 午前中はそれで終わり午後は狩りの時間だ。

 裏門に付けられた狐猫ドアから街へ出て外に向かう。

 街の門につき平然と外に出る。

 住人や冒険者、商人、傭兵、従魔と誰も本来は出入りに色々と手続きが必要だが野生で自由な私にそんなモノはない。


 ああ、またか…という瞳をする門番さんを後目に私は街を飛び出した。


 人目が無くなれば気にする事無く【疾駆】と【空間機動】で駆け抜ける。

 目指すのは東の森だ。


 何か多分、生態系を破壊していた蟻を私が駆除したからか徐々に元の姿に戻っているようである。

 まあ、まだ兎とか兎とか兎とか兎しか見ないけど、その内にオークとか期待したい。

 アレが狩れれば数日分の食糧になる。


 しかし何かが喰ってるのか蟻の死骸も大分ん減った。

 アシダカ軍曹でも仕事してくれてるのかな?


 ご苦労様ですと言っておく。

 さーて、うーさーぎー、うーさーぎー、兎は何処に居るー、と、言ってみたけどオークでも牛でも良いよ。

 いーなーいーかーなー…と、赤点だ。

 【探知】さんナイスお仕事。


 お、兎だラッキー。

 シュパンっと、ふっ、我が爪ながら切れ味が恐ろしい。


 あ、また反応、次は何かなーって、また兎かぁ。

 うん、贅沢を言ってはいけない。

 獲物無しで飢えたあの一日を私は忘れない。


 そして今度はガブリンチョ、ふっ、我が牙の鋭さを恐れよ。


 さて、二匹狩れたら上出来だ。

 帰るとすんべ。


 あれ?兎二匹どうやって持って帰ろう?

 咥えられるかな?


 んぎぎぎぎぎぎっ!

 大口開けて何とか咥えられたけどこの状態で【空間機動】で【疾駆】って無理、途中で落とす。


 はぁ、一匹残して後で取りにくるしかないかな。

 両手で持てれば楽なのに……ん?それ行けるんじゃね?

 こう右手の爪に刺して、こっち左手の爪に刺す。

 うん、これでOK、後は【空間機動】と【疾駆】で走って―うん、行ける、行ける。


 そう楽に思ってた時期もありました。


 ひい、ふぅ、と言いながら私は二匹の兎を爪に刺したまま引き摺りながら後ろ向きで街へと歩いていた。

 重くは無いんだけど後ろ向きと言うのがちょっと…大変だなぁと思いながら進んで行く。

 そしてやっと門まで辿り着く。


 やっと着いた。

 あともう少しだと気合を入れる。

 そこで―


「お、今日は二匹も狩ったのか」

 ―と、門番さんの一人が声を掛けてくる。


「ミィミィ」

 鳴いて私も返事を返す。

 この門番さんは私に対して余り良い顔をしない門番の中でも好意的な人だ。

 結構偉い人らしく他の人も文句を言えないらしい。


 何時もは一匹を咥えて軽快に走って行く私がずりずりと引き摺って遅く歩いて乗るを見て気にしたらしい。


「なぁ、運んでやろうか?」

 その言葉に私は「ミゥゥ」と鳴いて首を振る。

 獲物を狩って巣穴―家まで持って帰るそれまでが狩りだ。

 人の手を借りては自己判定の野生の掟に反する。


「そうか、なら頑張れよ」

 そう言って門番さんは手を振り私も「ミゥ」と鳴いてまた獲物を引き摺って行った。

 見えなくなるまで門番さんはこっちを見ていた。


 やっと神殿に帰りついた。

 兎を食糧庫に預けてもまだ夕飯まで時間がある。

 空いた時間をまた自爆タックル特訓に費やす。


 最近だが私は実はアホの子では無いかとふと思う事がある。

 アレな事とかコレな事とか、嫌、それ等は悪い夢だったな忘れよう。


 兎も角、鉄鎧にドーンとぶち当たる。

 またやってるよと聖女候補の子が見ているが気にしない。


 そしてフラフラ―として治ったらドーンと行く。

 正面からぶつかったら【突撃攻撃】とか覚えそうなので鉄鎧にぶつかる直前に体を横にしてドーンだ。

 鉄鎧で受け身を取る感じだろうか?


 その三度目、私はまたドーンしに行った。

 しかし響いたのはドンガラガッシャァンと言う音であった。


 聖女候補は呆然としてるし教師役の先生は目を点にしている。

 私も唖然としていた。


 魔法攻撃の標的様に頑丈に作られた鉄鎧がぶっ壊れていた。

 そもそもがおかしかったのだ。


 紙装甲というなら鉄鎧にドーンした時点で大怪我だ。

 それが暫くフラフラ―とする程度。

 私の体は思いの外、頑丈になっていたらしい。


 そしてピコーンと響く音『【技能】【剛体】を獲得しました』

 うん、予定通りだけどちょっと予想外だ。

 早速【SP】を割り振って【鋼体LV1】にした。


 世界はアホの子に存外優しいらしい。


 夕飯になった。

 夕ご飯はスープに浸かった兎肉を蒸した物だった。

 狐猫舌な私に合わせて冷スープ心遣いが嬉しい。

 大変美味しく頂いた。


 夕食後、私はコッソリと東館の三階にある図書室に向かう。

 此処の図書室は利用可能が18時までで以降は結界が張られ入れなくなる。

 しかーし、私は何故か結界を素通り出来る。

 本を読み放題だ。


 知ってからは入り浸っている。

 只、背表紙が無いので本の内容が外からだと分からない。

 司書さんが居れば教えてもらえるんだろうが聞けないし、取り合えず入って直ぐの棚の右下から読んでいった。


 初めての本は農業についてとあった。

 狩狐猫な私に農業をどうしろと?


 まぁ、何か役に立つかもと読んでみた。

 この世界では植物を育てる時に土に豊穣の魔石と言うのを砕いて混ぜるらしい。

 前世で言う肥料だね。


 因みに小麦や大麦、稲なんかも普通に栽培されてるようだ。

 ちょっとご飯が食べたくなった。


 後は地球と同じような野菜、果物が色々と載っていた。

 世界は違えども食べ物は似るらしい。


 でも豊穣の魔石も作り出せるのは森人エルフ蟲人インセクトロン水人オーケアニスの三種族だけらしい。

 特に森人エルフの物は高性能で高価と書いてあった。

 只、一部の草、薬草や霊草、秘草と言った植物には効果が無く、自然に生えてるモノを取るしかないらしい。

 この薬草何かの情報は役に立ちそうだ覚えておこう。

 図書館初日に得た情報はこんな物だった。


 二日目の本は畜産と酪農について

 この部分はそう言う本ばかりなのだろうか?


 まあ、それでも昨日と同じで役に立つ話も載ってるだろうと読み進める。


 この世界で飼育されてる動物は馬、牛、羊、山羊、ロバ等々と地球と同じなようだ。

 しかし一部、魔物も飼育されてるらしい。

 例えば私がしばらく前に戦った大鶏ゴーンコッコ、アレを鬼人オーガと言う種族は畜産しているらしい。

 他にも牙猪ファングボア猛牛ワイルドブル等、色々な魔物を育てているようだ。

 中々に荒々しそうな種族だ。


 後、私の種族ファトラについて書かれていた部分が在ったので抜粋する。

 狐の様な長いフワフワの尻尾をした猫型の魔獣。体高70~80㎝で体重30~38㎏の中型犬サイズ。魔物としてのクラスはC級の災厄カラミティ人には懐きにくいが幼い頃に捕らえると懐かせることが可能。

 頭も良く特に牧場等で牧羊犬代わりや害獣駆除に好まれる。5年ほどの幼体期を経てその後、幼体から成体までゆっくりと成長する。注意:人族に飼育されたファトラは発情期が訪れなくなり生殖しなくなる。その為に全滅危惧種となっている。


 5年ほどの幼体期を経てその後、幼体から成体までゆっくりと成長する。

 5年ほどの幼体期を経てその後、幼体から成体までゆっくりと成長する。


 大事な事なので二度言った。

 私は5年もこのままなのかとびっくりした。


 でも尻尾が増えるとは書いてなかった。

 何で増えたんだろう?私の尻尾。

 私自身についてちょっと知られた一日だった。

 序にこの日にピコーンと音がして【技能】【夜目LV1】なんてのが生えた。


 三日目の本は漁業についてだった。

 今更何も言うまい、そういう棚だったのだと思う。


 だが、今更になって変えるのもなんだ読み続ける。

 海、山、川、での漁についてだった。


 網漁、銛漁、釣竿による一本釣り漁と色々だ。

 大体、地球と同じ感じだが漁業に関しては完全に水人オーケアニスの独壇場らしい。

 そう言えば所々に人以外の亜人種と言うだろうかが書かれているが私は会った事がまだない。


 人種族だけである。

 そう思ってペラペラと読み進めていると世界地図らしきものが出てきた。

 この世界の大陸というか人々が住まう島々は全部で十数。


 大体*の形の頂点に大小はあれ島々が幾つか、そして中央に大きな大陸が一つと言う形らしい。

 そんな中で北の氷と僅かな緑の大陸に多くの水人オーケアニスが住みオケアノス海国という一大国家を開いているらしい。

 そして南の諸島群による獣人セリアンスロピィを中心とした亜人国家、ウリティア連合国家にも水人オーケアニスが住んで漁をして居るらしい。


 対して一番大きな中央大陸は人族ヒューマンが多く住み。

 過去に他種族を迫害した為に余り寄り付かれず人族ヒューマンだけの国家が八国もあるらしい。


 迫害とか人族ヒューマンダメだなと思ってしまう。

 しかしそう言えば自分達、狐猫ファトラ人族ヒューマンのお陰で全滅危惧種だったなと思う。

 ダメダメ過ぎるな人族ヒューマンと考える。

 でも自分も前世はそんな人族ヒューマンの一人だったのだ。

 気を付けようと思う。


 世界地図からこの世界の種族と情勢がちょっとだけ書かれていた。

 種族は全部で七つ、人族ヒューマン鬼人オーガ水人オーケアニス森人エルフ地人ドワーフ獣人セリアンスロピィ蟲人インセクトロンとあった。

 他の種族は大体、纏まった単一国家を築いてるのに対して人族ヒューマンだけが一番大きなゴルディシア大陸で内輪もめ見たいに争いを続けているらしい。

 何だかホントにダメダメだ。

 因みに人族ヒューマンの国家については一位から三位の国家だけ名前が書かれていた。

 残りは十把一絡げである。


 一番デカいのが西側をほぼ抑える私の生まれ故郷であるアドラスティア大樹海を有する、アトランティカ大国。

 二位が東側のほぼ半数を得ている、エイリーク共和国、三位が私が今居るテレスターレ聖国である、世界の中心という事になってるダアト山脈は一応、テレスターレ聖国の物らしい。

 標高は4192メートル、長さの基準も一緒かどうか分からないがこの世界もメートル法らしかった。


 四日目の本は料理についてだった。

 今までで一番、役に立たなかった本だ。


 取り合えず美味しそうな料理の数々が載っていた。

 私が料理をする機会があれば役に立つだろう。


 夕ご飯を食べたばかりなのにお腹が空いた気がする本だった。


 そして五日目、昨日である。

 建築物についてだった。


 うん、私が建物を建てる事は無い。

 精々、巣穴を作るぐらいだ。

 今は作って貰った快適な狐猫をダメにする巣箱があるしな。

 居住空間に不満はない。


 没だ。

 只、気になる記述はちょっとあった。

 この世界には幾つか誰が建てたか分からない建造物があるそうだ。


 私が神託を受けたダアト山脈山頂の円卓等はその最たる例だ。

 あそこは七年に一度、七人の大聖女が会し神から神託を授かる場所だそうだ。


 昔は七種族、人族ヒューマン鬼人オーガ水人オーケアニス森人エルフ地人ドワーフ獣人セリアンスロピィ蟲人インセクトロン夫々に大聖女が居たらしいが今は人族ヒューマンにしか残っていない者らしい。

 宗教自体は同一、三柱の大神、七柱の眷属神を崇めるモノが残ってるらしいが聖女崇拝は廃れたらしい。

 何故かは分からない。


 因みに大聖女を有する国が聖国らしい。

 今健在な聖国は三つだけ、残りは侵略、吸収合併され一位のアトランティカ大国に二人と二位のエイリーク共和国には一人、元聖国のダスド帝国に一人、計四人の大聖女が居るらしい。

 神託を授かる会合は今も行われているそうだ。


 セリアーナお婆ちゃん大聖女様が行くのかセアラが行くのか分からないが何時行くのか気になった。


 そして六日目、今日である。

 何時もの様に本を取り出す。

 タイトルは―


 角兎ホーンラビットについてとあった。

 ………私は一瞬、【夜目】【技能】が不具合を起こしたのかな?と思った。

 本は今まで読んできた中で一番分厚い。


 兎に対する何の執念がこの作者を駆り立てたのだろうと思った。

 取り合えず読んでみた。


 結果、ゴブリンと一緒で兎は狩っても狩っても湧いてくる事だけが分かった。

 クッソ役に立たなかった。


 明日こそは有益な本に当たる事を祈ろう。

狐猫の小話

人は7種族存在しますがハーフは存在しません。

異種族結婚はありますが生まれる子は母親の種族になります。

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