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狐猫と旅する  作者: 風緑
13/166

第013話 聖女そして大聖女?


 門を抜けて街に入る。

 大通りの道はむっちゃ広かった。

 馬車が三台所か四台でも行き交えそうだ。


 人は道の端を馬車は真ん中を走っている。道端にはマンション見たいな建物が並んでいる。

 多分、アレが平民の家なのだろう。

 此方に気付いて「聖女様ーッ!」と声を掛ける人々も多い。


 上からコッソリ覗いてみるとお〇らし聖女様はその声に対してにこやかに手を振って応えていた。

 チャンと聖女モードに戻っているようだ。


 門の前ではあの後も少し一悶着があった。


「はぁ、友誼を結ばれたと、しかし聖女様。ファトラは利発で可愛らしいとは言え魔物です。従魔の首輪と従魔証が無ければ結界を超えられません」

「だ、だだ、だだだ、だだ、だい、だいじょう、大丈夫です。こ、こ、こ、ここっこのファ、ファ、ファ、ファトラはい、い、いさ、一切、一切のあく、あくひ、悪意がござ、ございません。け、けっか、けっか、結界はぬへ、抜け、抜けられまひゅ」

 迎えの騎士さんはそんな挙動不審になってる聖女様とまだー?と言う感じでくぁっと欠伸をする私を見比べる。

 疑うと言うより何でこんなになってるんだろうと言う雰囲気だ。


「おい、ちっこいの試しに通れるか見せてやってくれ。それでアイツも納得するだろう」

 ガレスさんにそう言われた。

 うん?良いの?お〇らし聖女様の視界に入っちゃうよ?

 まぁ、やれと言うんだから良いんだろう。

 何のかんの言ってももう何日も一緒に居るのだ少しは耐性も付いているだろう。


 ピョンと屋根から飛び降りて地面にスタっと着地する。

 地面は石かと思っていたがコンクリートに近い様だ。

 程々のすべらかさとざらつきがある。


 後ろから「ひうぅっ!」「聖女様っ?!」と言う声が聞こえた気がしたが振り返らない。

 キニシタラダメダー。


 テクテクと歩く何の抵抗もない。

 お、門を潜る直前でトプンと水に入る様な感触があったがそれだけだ。


「ミャー、ミャーミャー」(ねー、これでいいのー)

 振り返ってみるとあんぐり口を開いた迎えの騎士さんとまた耐えられなかったのか、ギリギリ耐えたのかと言う感じでリーレンさんに支えられているお〇らし聖女様の姿があった。

 取り合えず私は問題なく街に入る事が出来るようだった。


 そして話は冒頭に戻る。

 人々はお〇らし聖女様に歓声を上げるがそんな中には私に対する言葉もあった。


「何、あの子、ファトラ?」

「きれー、しろーい」

「可愛いー」

「欲しい」

 ふっふっふ、私の愛らしさにやられる人続出の様だ。

 もっと褒めて良いのよ?

 私は褒められて伸びる子。

 でも、最後に欲しいと言ったのはどこのどいつだ。

 私はモノじゃないので上げません。

 誰のモノにもなりません。


 野生の誇りを失わないのだ。

 自己判定の誇りだけどな。


 馬車は走って行く。

 入る前に街を覆う外壁を見たけど果てが見えなかった。

 どんだけ広いんだこの街と思った。


 後、頻繁にすれ違う馬車。

 見るからにすっごくボロい。


 ガッタン、ガッタン揺れてる。

 屋根もなく幌だし、乗ったら絶対にバウン、バウンして寝てなんて居られない。

 絶対にサスペンションとか無いんだろうなぁ。


 まあ、聖女様が乗る馬車だし?特別性なんだろうけど何だか凄い格差を見た気がした。

 進んでいた馬車が止まる。

 凄い建物の前で止まる。

 すんごいデッカイ建物の前だ。

 見るからに神殿って建物だった。


 そして止まった馬車からリーレンさんとお〇らし聖女様が降りてくる。


「では護衛の任務は此処までとなります。ありがとうございました。聖女様」

「此方こそ、ありがとうございました。貴方達が居なければ秘草の採取も無事に帰る事も出来ませんでした。皆様が全員無事で本当に何よりでした。心より感謝します」

「はは、全員が無事なのは俺達よりこのちっこいののお陰ですがね。聖女様も早く慣れればよろしいですが」

「ぜ、ぜぜ、ぜん、ぜんひょ、善処、いた、い、い、いた、いたしま、致します」

 うわぁ、ちゃんとした聖女モードだったのに私を意識した途端これだよ。

 ホント、慣れるのは何時になるやら…。


「それでは我等は聖都に戻ります。また次の機会があれば是非。リーレン、聖女様の専属護衛任せた」

「はっ!命に代えましても」

 そう言ってリーレンさんは左胸の前に右手を置く。

 ガレスさんも同じポーズをとる。

 アレが騎士の礼のポーズなんだろう。


「ちっこいのはどうする?俺達と来るか?聖女様と一緒か?」

 私は「ミッ!」と鳴いて馬車から飛び降りる。

 お〇らし聖女様がフラッとしてリーレンさんが支える。

 うん、ホント、お願いだから早く慣れて?

 私は何にもしないんだから、本当だよ?


「そうか、ちょっと寂しくなるな」

 言いながらガレスさんは私の頭をまたグワングワンと撫でる。

 うう、このクラクラする感覚も最後かも知れないのかとちょっと感慨に耽る。


「そうだ。リーレン、おい、アレ」

「はい」

 ガレスさんが騎士さんの一人に言って袋を手渡す。


「これは?」

「ちっこいのが狩ったホーンラビットの残りだよ。夕飯にはコイツを食わせてやってくれ」

 おお、私の晩御飯だ。

 そう言えばこの付近には獲物が少ないんだった。

 夜中にでも狩場を探しにコッソリ出かけよう。


 私がそんな事を考えてる間にリーレンさんは「分かりました」と袋を受け取っていた。


 そして「では」と言ってガレスさん達は去って行った。

 仲良くなった人との別れか、母狐猫、兄弟姉妹との別れとも違うモノ。

 また会えるかも知れないモノでもやっぱりちょっとだけ寂しかった。


 スタスタと短い階段を登っていく。

 リーレンさんとお〇らし聖女様に着いて、だが―


 リーレンさんは普通だ。

 私のご飯を持ってる以外、普段通りだ。

 お〇らし聖女様はダメだ右手と右足が同時に動きギックン、ギックンとロボットの様な動きになっている。


 私は離れようかとしたしかしリーレンさんに止められた。


「門番と大聖女様にお知らせする必要があります。着いて来てください」

 ならば後ろにと下がると―


「背後はダメです。後ろからのプレッシャーは半端ないので…」

 と、止められた。

 ならば前はと歩くと―


「前はもっとダメです。視界に入るとそのままお倒れになる危険が…」

 ならどうしろと?と見上げると―


「私を間に挟んで左側にそれが最善です。ホンの少しの間だけです。聖女様には耐えて頂きます」

 そう言われて私はリーレンさんの左側を歩く事になった。


「聖女さま、暫く、暫くの間だけの辛抱です。大丈夫です。開門して頂き大聖女さまにご挨拶すれば離れて貰えます。それまでの辛抱です」

 重ねて元気づけるようにリーレンさんが言うが当のお〇らし聖女様はと言うと。


「は、はは、ははは、はは、はい、はいぃぃぃぃっ!」

 ………ダメかもしれない。

 私はそう思った。


「せ、せ、せ、せい、せいひょ、聖女、だ、だだ、だい、だだだ、だい、第一、第一位、セ、セセ、セア、セアア、セアラ・シャ、シ、シシャシャシャ、シャリ、シャリス。ひ、ひ、ひ、ひそ、ひそ、秘草、さ、ささ、さ、さい、さいひゅ、さあい、採取の、のの、のののの、のの、のに、に、任より、き、きき、きか、きかかかか、帰還いた、いたた、いたたたたし、致しまま、まし、ましし、ました。か、かかか、かい、かいも、かい、かいも、開門をねが、ねがい、ねがが、願いましゅ」

「………」

「………」

 ダメダメだった。

 門番さん呆然としている。

 私ははぁと溜息を付いている。

 リーレンさんは天を仰いでいる。


「聖女様の専属護衛騎士リーレン・メスラだ。秘草採取の任より聖女様と共に帰還した。此方のファトラの幼生は聖女さまが森で御友誼を結ばれたモノだ。危険はない。開門を頼む」

「は、はっ!開門!開門っ!」

 リーレンさんの言葉にやっと正気を取り戻したように門番さんが叫び神殿の門が開いていく。

 開いた門の中にお〇らし聖女様はギックン、ギックンと右手、右足を同時に動かして歩き、そんな彼女に合わせて私とリーレンさんも歩く。


 何故か痛ましそうにこちらを見る門番さんの目が背中に痛かった。

 私何にも悪い事してないよ?!

 お〇らし聖女様がオカシイだけなんだからね!


 あ、でもそう言えばお〇らし聖女様って今、自分の名前を言ってたよね。

 確かセ、セセ、セラ、セララ、セラスとか何とか…うん、分からん。

 まだはっきりするまではお〇らし聖女様のまんまで!


 門を抜けた先は中庭だった。

 庭園のようになっていた。

 中央には周りを見渡しながらお茶を飲めるような屋根付きの席が置かれていた其処から右側に豪奢な建物、左側にそれよりちょっと貧相な建物、そして正面に一番豪華な神殿が立っていた。

 また門番さんが立ってるが今度はお〇らし聖女様に何も言わせず、リーレンさんが声を掛けて扉を開けてもらう。

 中に入る。


 室内もまた豪勢だった。

 並ぶ幾つもの椅子、奥には豪華な礼拝堂、神様の像が飾られ私にも解る様な目もくら豪華な品々が周りに置かれている。

 ん?んんんん?でも、あの像、何処かで見覚えが…あ、私に神託を授けたアストラーデって神様の像だ。

 つまり此処はアストラーデ神の神殿って事か、何という偶然。


 私が呆然としてる間にリーレンさんとお〇らし聖女様は奥に進んで行く。

 その先にはもうかなりお歳を召した老婆が一人とまだ四十代か五十代に見える恰幅の良い男性と三十代くらいに見える神経質そうな男性の三人が居た。


 此処までくれば見える範囲なら離れていても大丈夫だろうなーと、思い。

 自由気ままな狐猫ちゃんですよーという体を装いフラフラと部屋の隅の方に行く。


 あからさまにホッとした様子を見せるお〇らし聖女様。

 むう、こっちは早く仲良くなりたいと思ってるのにその態度、拗ねるぞと思う。

 気晴らしに椅子にゲシゲシと猫キックを入れる。

 本気でやったら壊れそうなので手加減してるけどな。


「聖女第一位セアラ・シャリス、唯今、秘草採取の任より帰還いたしました。大聖女セリアーナ様、神殿長ロズベルト様、神官長ユリシーズ様」

 おお、ちゃんと聖女モードに入れてるじゃないか、見直したぞお〇らし聖女様。

 しかし名前はセアラ・シャリスかこれからは名前で呼んであげよう。

 これでお〇らし聖女様呼びは卒業だね。


 だけどどう呼ぼう。

 セアラさんはちょっと違う。

 今世的には年上だけど前世足したらずっと年下だし、見た目十代前半だもんね。

 セアラちゃんも違う気がする。

 うん、本人が友誼を結んだとか言ってたから呼び捨てでセアラでいいや、そうしよう。


 私が【思考超加速】でそんな事を考えてる間に前の五人の話が次に進む。


「お帰りなさい。聖女セアラ、だけど予定より数日早い帰還ね。何かありましたか?」

「はい、ダスド帝国の手の者と思われる集団に襲われました。安全を考え採取を中断、帰還する旨となりました」

「何と、それで怪我人や死傷者は?」

「幸い居りません。私の恩恵ギフトとそ、そ、そそそ、その、そのそそのののその、あ、あ、あ、あ、あち、あち、あちら、あち、あちらにい、い、いいい、い居る。ファ、ファ、ファ、ファト、ファトラがて、ててひ、敵をげ、げげげ、げき、げきた、げきた、撃退して、してく、く、くくれ、くれたので」

 うわ、私が係わるとまた聖女モードが崩れてお〇らし聖女モードになっちゃったよ。

 目の前の三人は???状態になりリーレンさんが補足に入る。


「我等が窮地に陥った時にあのファトラが襲来、敵を一網打尽にして下さったのです。ただ聖女様の恩恵ギフト【神眼】にはあのファトラが凄まじい存在に視えるらしくどうしても動揺してしまうようで…」

「ふん、魔物等に助けられるとはな。聖国の騎士の質も落ちたモノだ」

 吐き捨てるように言って此方を忌々し気に睨む恰幅の良いロズベルトと呼ばれたおっちゃん。

 何?私、喧嘩売られてる?なら買うよ、買っちゃうよとシュッ、シュッと猫パンチを繰り出す。


「ロズベルト様、言い過ぎです」

「いえ、聖女様、仰られるとおりです。我等に力が足りませんでした」

 無念そうにリーレンさんが言い、セアラが慰めるようにその手を取る。

 そうだー、リーレンさん達は頑張ってたー、そのガマガエル見たいなロズベルトっておっさんをぶっ飛ばせーと言って見るが「ミャーミャー」鳴いてるようにしか聞こえないだろう。


「それはそうと秘草採取はどうでしたか?」

 と、神経質そうなユリシーズと言う男が発言し話を変える。


「はい、それは此方に。リーレン」

「はい」

 返事をしてリーレンさんが魔導袋から何か草を一杯取り出す。

 秘草と言うから少ないかと思ってたけど大分あるなぁと思う。

 だが、ユリシーズと言う男は眉をひそめた。


「……これだけですか?」

「え…ですが、例年通りならこれで十分な量の薬が…」

「例年通りならです。例外が起これば足りない。…はぁ、今年は薬の価格を上げるしかありませんね」

「そ、そんな、それでは薬を買えない平民の方たちがお待ち下さい。足りないと言うのであればまた私が取りに…」

「はぁ、何を仰っているのやら、秘草は今の時期にしか取れません。それも聖女が手ずから摘むしかない。今から再度の採取に向かって間に合うとお思いか?加えて国に護衛の騎士を出して貰うにも金が掛かる。教会も慈善活動はしますが慈善事業ではないのです。お分かりですね」

 言われて悔し気に黙るセアラ。

 何かムカつくコイツと思った。

 言ってる事は正しいかもだが金、金ってそんなに金が好きなら聖職者やってんじゃねーよと思う。


 ええい、この教会は碌な男が居らんのかっ!

 私必殺の狐猫プニパンチと狐猫プニキックが唸りを上げるぞっ!


 等と思っていると「お止めなさい」と言うお婆ちゃん大聖女セリアーナの声が響いた。


「ユリシーズ、薬は例年通りの額で販売なさい。代わりにこれまでの在庫を安く販売するように」

「は、しかし、古い物は効能が落ち…」

「症状が軽い者はそれでも治ります。問題ありません。重篤な者のみに今年の分を販売すれば十分に足りる筈です」

「………はい、畏まりました」

 いいぞー、良く言ったお婆ちゃん大聖女っ!素敵っ!カッコイイッ!


「ミャーー、ミャミャー」

 と鳴きながらそう言うとお婆ちゃん大聖女セリアーナは「ふふっ」とこっちを向いて笑った。

 あれ?私の声が聞こえてる?いや、まさかねそう思いながら話を聞き続ける。


「それからロズベルト、結果的に救ったのはそのファトラですがそれまで数の不利に耐え聖女セアラを護ったのは間違いなく騎士の功績です。貶めるモノではありません」

「………はい、申し訳ございません」

 ふふん、いい気味じゃー、見事過ぎる大聖女様。

 やり込められた二人の顔でご飯が食べられそうだ。

 すると一瞬、忌々し気にロズベルトが此方を睨んだ気がした。

 お、やんのかコラ、私の狐猫爪パンチは鋭いぞと言っておく。

 だが、それも僅かな間、ロズベルトは大聖女様セリアーナに頭を下げた後、元の位置に戻った。


「それでは聖女セアラ」

「は、はい」

「危険な任務になってしまいごめんなさいね。貴方が無事に戻って来てくれて本当に嬉しいわ。秘草採取の任は完了とします。お疲れさまでした」

「大聖女様、いえ、いえ、こちらこそ力及ばず。まだまだ自分の力不足を痛感しました。これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

「ええ、貴方が次の大聖女なのだからまだまだ倒れてはダメよ。私もその日まで決して倒れないから」

「はい、はいっ!」

 セリアーナがセアラを抱きしめながら優しく語り掛ける。

 セアラも目に涙を浮かべながらそれに応えている。


 いい雰囲気だなーと思う。

 まるで祖母と孫のようだ。

 絆の様な物が伝わって来る。


「リーレンもセアラの護衛ご苦労様でした。でも貴方も大事な身なのだからセアラだけでなく自分の身も守らないとダメよ」

「それは―」

「ダメよ?」

「…絶対とは言えませんがお言葉、肝に命じます」

「もう頑固ねぇ」

 そう言って歳なのに何処か可愛くクスリと笑いポンと手を打った。


「じゃあ、難しい話はコレで終わりね。最後に今回の任務達成のご褒美の話をしましょうか?」

「ご、ご褒美ですか?い、いえ、求めるモノは何も…」

「じゃあ、あのファトラちゃんの扱いにしましょうか」

「へ?」

「ミャ?」

 突然、私に飛んだ話に私とセアラの声が重なる。


「あの子は貴方を助けて心配して着いて来てくれたのでしょう?ならお世話を考えないと」

 マズイ、いや、私にとっては不味くないがセアラにとっては非常にマズイ提案がされそうになってる気配がヒシヒシと感じられた。


「い、い、い、いい、いいい、いいえ、いえ、いえ、あ、あ、ああ、あの、ああ、あの子はわわわ、わたわたたわたわた、私をしん、し、し、し、しんしんぱ、しんぴゅ、しんぴゃいし、し、しして、して、してと言う、い、い、い、言う、言うかじ、じ、じ、じぶ、じぶん、自分のは、はん、はん、はんだだだ、判断でこ、こ、こっこっこっこ、こう、行動して、してし、し、してく、く、く、くれくれて、くれてい、い、い、いる、いるのあ、あ、あって…」

 うん、予想通りにお〇らし聖女モードになってしまった。

 言ってることが訳分らない。


「大聖女様っ!聖女が魔物を従属させるなど過去に例が無い事ですぞっ!」

 ロズベルトが怒声を上げる。

 従属とは失礼な、私は何にも縛られない。

 自由で野生なのだ、気に入らないモノは許さないし気に入ったモノは護るその程度だ。


 因みに今のお気に入りはセアラとリーレンさん、セリアーナお婆ちゃんだ。

 ロズベルトとユリシーズは気に入らない、その内に狐猫パンチ、狐猫キックの刑だ。

 後は母狐猫の仇、奴等は絶許である。

 会ったが最後である。


「じゅ、じゅ、じゅ、じゅう、じゅうぞ、じゅう、従属な、な、など、などとん、とんでも、とんでもない、こ、こっこっこっここのこの、この子はじ、じ、じ、じゆ、自由、自由です。わ、わわわ、わわた、わたわた、わた、私、私とはゆ、ゆゆ、ゆう、ゆうう、ゆ、友誼、をむ、む、む、むす、むすん、結んだ、の、の、の、ので、あ、あ、あ、あっ、あってけ、け、け、けっし、決して、決してそのような…」

「ああ、なら良いじゃない」

 其処で嬉しそうにセリアーナお婆ちゃんは手をポンと打った。


「友誼を結んだと言うなら親友という事よね。友情を深めるのは良い事だわ。このファトラちゃんの寝室は聖女セアラの部屋にしましょう」

「え?」

「ミャー…」(何となくそんな気がした…)

 私が声を上げる向こうでセアラはセリアーナお婆ちゃんの言葉に完全にフリーズ固まっている。


「し、しかしこんな、こんな事っ!」

「それにファトラは魔物とは言っても『ファーレンハイトの愛し子』各国でテレスターレ聖国でも捕らえる事、殺す事は厳禁だわ。それを従属もさせず友誼を結ぶなど蔑まれる所か誇る事である筈よ」

 え、『ファーレンハイトの愛し子』って狐猫、ファトラの事だったの?

 私はてっきり転生者の事だとばかり思ってたわー、勘違い、勘違い。


「じゃあ、ユリシーズ。神官の子に聖女セアラの部屋にその子の寝床を作る様に言って上げて」

「…畏まりました」

「それとリーレン、聖女セアラは立ったまま気絶しちゃったみたいだっから寝室に運んであげてね」

「…はい、畏まりました」

「ミィ…」

 うん、ごめん。

 セアラ、私にはどうする事もできないよ。

 せめて一日でも早く、私に慣れるように頑張ってくれと心からのエールを運ばれていくセアラに送るのだった。

狐猫の小話

街の結界は G級の下位レッサー、F級の中位ミドル、E級の高位グレーター、D級の災害ハザード、C級の災厄カラミティ、B級の災禍ルイン、A級の破滅ディザスター、S級の天災カタストロフ迄の魔物なら耐えます。

SS級の絶望ディスピア、SSS級の終焉アポカリプス、EX級の神話ミソロジーには壊されます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 巨大な都市、政教一致のトップは多少生臭くないと務まらないのかも。 そう考えると必ずしも悪とはいえないおじさんたち。 まあ保留でしょうか。 それにしても自称に邪神が入るような女神様。 信仰さ…
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