第012話 旅の終着点、そして街?
森を歩く私。
マイナスイオンがたっぷりでイイ感じだね。
ご機嫌で歩く。
逆に前の方は微妙かも知れないが、五人の騎士さんに囲まれて歩くお〇らし聖女様。
警護は厳重である。
昨日の一件もあるしね。
流石に連日は無いと思いたい。
五人の位置は【探知】さんの範囲内だがそれより前はよく分からない。
おっと騎士さんが足を止めた。
何か出たかなとちょっとだけ近付く。
兎だった。
騎士さんが剣でアッサリ倒して何かを刺して血抜き。
手早く解体していく。
凄いもんだ。
道具も便利だなぁ、羨ましい。
あんまり近付くとまたお〇らし聖女様がバッタリしちゃうかもしれないから距離を空ける。
あー、でもそろそろお昼が近い。
私もお昼ご飯を採りに行かないと、そう思って【探知】さんに意識を割く。
うーん、近くには居ないなぁ。
五人を【探知】さんの範囲に入れたまま散策する。
昨日見たいな鶏は勘弁だが美味しい物は食べたい。
微妙な所だ。
お、【探知】さんに反応、さーて何かなー。
蜥蜴。
うーん、食えるのか?
いや、一度狩った事はある。
だが喰わなかった。
だって蜥蜴だよ。
質問:貴方は蜥蜴の丸焼き喰えますか?・〇・☓
私は☓だ。
でも他に居なかったらしょうがない。
狩っておこう。
スパンと斬っておいた。
と、其処で五人の所に反応が、また何か出たかな?
【疾駆】で近寄る。
オークだった。
まずい。
マズイよ。
リーレンさんとお〇らし聖女様がくっ殺されてしまうかもしれない!
慌てて近付くが五人は上手く連携して戦っていた。
一人がオークの注意を引きながら防御して残り四人が攻撃する。
お〇らし聖女様も皆に付与を掛けているのか五人が薄ら光って見えた。
十分程掛けて誰も傷つかずにオークを撃退していた。
しかし其処で反対方向に【探知】さんが反応。
おやと思って接近、二匹目のオークだった。
うん、向かわせたらダメだよね。
此処は私が狩っておこう。
何よりコレで蜥蜴を食わずに済む。
そんな訳でいただきまーすと【猛爪攻撃】ズンバラリンと切り裂いた。
オークは私のお昼ご飯になったウマウマである。
オークをちょっと解体してズルズルと引き摺りながら皆の後を着いて行く私。
オーク肉は夕ご飯用だ。
また都合よく狩れるか分からないからね。
テクテクと歩いてる内に夕暮れになってきた。
広場を見つけてまたポンポンと魔導袋からテントから竈から水の入った樽が取り出される。
ホント便利だなー。
テントが出されるとお〇らし聖女様とリーレンさんは中に入って行く。
それを見て私は男性騎士衆に近付く。
「おお、ちっこいのお疲れさん」
でかい手が私の頭に乗せられてグワングワンされる。
イヤじゃないけどもうちょっと優しく撫でて欲しい。
この私をちっこいの呼ばわりする男の人がお〇らし聖女様を除けば部隊で一番偉いリーダーらしい。
オーク討伐の時も敵の注意を集め盾役に徹しながら指示を出していた。
そんなリーダーさんに私は自分が狩ったオーク肉を差し出す。
「ん、おお、今度はオークかD級の災害でも厄介な奴なんだがC級の災厄を狩れるちっこいのからしたら雑魚か、よし、料理するように言っといてやる」
わーい、これで美味しい晩御飯ゲットだぜ。
何になるのか楽しみだ。
私の夕ご飯はトンテキになった。
他の皆はハンバーガー見たいにしてパンに挟んで食べている。
うん、塩胡椒がされて焼かれてるだけだけど肉汁が良い感じで美味しい。
自分で料理が出来れば完璧なんだけど出来ないからなー。
材料を準備して作ってもらう。
ギブアンドテイクなのだ。
決して野生を失ってはいない。
ないったらない。
そう自己弁護しつつ私は美味しい料理に舌鼓を打った。
翌日、皆の話では昼頃には森を抜ける事になるそうだ。
其処からは無事に残っていれば馬車と馬の旅。
馬車と騎士さん達が乗ってきた馬を護る為に三名がそこに残っていたそうだ。
襲撃者が同じ場所から入って来ていたのなら殺されている。
お〇らし聖女様は無事を祈っていた。
そういう雰囲気を見せると確かに聖女っぽい。
私の前では全然だけど、何にせよ死なれてると寝覚めが悪い。
私も無事を祈っておく。
翌朝、また準備を終えて出発。
私は昨日と同じように皆から遅れて歩く。
今日は早々に獲物に会えた毎度おなじみの兎だ。
首をチョンパして【空間機動】で木に引っかけて血抜きする。
自己流だし時間も掛かるけどしょうがない。
対して騎士さん達は注射器みたいな魔道具を取り出して突き刺してポンで終了。
吸いだした血はその辺りに捨てるだけ、羨ましい。
私も是非欲しいけど貰っても使えないだろうなぁ残念無念。
歩き続けて四時間。
そろそろお昼、もう森の出口は目前だ。
残っていた騎士さんが無事かどうか解る瞬間。
今居る五人は覚悟を決めた気配。
お〇らし聖女様は無事を信じてる。
私はどうだろう。
見知らぬ他人だ。
ちょっと後味が悪い位で終わりな気がする。
薄情だろうか?どうだろう、答えは出せない。
でも結果はもう直ぐ分かる。
森の出口に到着。
結果は分かった、幸いな事に皆無事。
馬車も勿論残ってた。
襲撃者は別の場所から森に入ったらしい。
良かった、良かった。
そして私の存在に驚く残ってた三人の騎士さん。
私に助けられて着いて来ると言ったので連れてきたと説明するリーダーさん。
そんな雑な説明で良いのかと思ったが感謝され撫でられて、抱き上げられて、もみくちゃにされた。
良かったらしい、寧ろもみくちゃにされる私を見て大丈夫かと顔色を変える人数名。
いや、この程度じゃ怒りませんよ?大丈夫ですよ?だからお〇らし聖女様また倒れる前に馬車の中に入ってね。
森を抜けて地平線を見て随分と遠くに来たなぁと感じる。
アドラスティア大樹海を抜けて、ダアト山脈を越えてそしてさっきまで居た森。
ザナドゥ森林と言うらしいを抜けて遂に入ったテレスターレ聖国。
長い旅だった。
母狐猫の仇の男もまさか私がこんな地まで来ているとは思うまい。
此処で存分に鍛える。
仇を討つために――そう思って私は決意を新たにした。
ポクポクと馬が街道を歩く。
馬達は少し光り輝いている。
お〇らし聖女様が付与を掛けているらしい。
これで本来は五日掛かる街までの道程を二日で踏破出来るらしい。
道中、騎士達は馬に乗り、リーレンさんはお〇らし聖女様と一緒に馬車の中、私はと言うと馬車の上だ。
馬車の屋根まで【空間機動】も使わずに一飛びで登れた時はちょっと驚いた。
周りも驚いていたけどしかし暇で平和な時間だこんなにのんびりするのは随分と久しぶりだ。
二日くらいなら偶には休憩と思ってゆっくりしても良いかもしれない。
それならついでに今のステータスを確認しようとステータス画面を展開する。
【名前】無し
【種族】ファトラ
【位階】壱
【LV】16 → 19
【気力】146 → 165
【理力】145 → 162
【霊力】177 → 200
【魔力】181 → 204
【SP】1371 → 1427
【技能】【牙攻撃LV7】【猛爪攻撃LV4】【隠形LV4】【記憶LV3】【探知LV3】【疾駆LV3】【空間機動LV4】【予測LV1】【並列意思LV2】【思考超加速LV3】【五感強化LV1】【翻訳LV10】
【LV】が19になった前回と同じなら20になれば試練だ。それまでに技能を覚えLVを上げ少しでも強くなるのだ。
ステータスも何時の間にかまた規定値以上に上がってる。
【霊力】【魔力】等もう200だ。【SP】に至っては50も増えている。
何かを上げるかと思うが現状は困っていない。
保留する。
暫くの間、ステータス画面を眺めた後、遠くの方に目を向けて眺めてみる。
何となく【望遠】を覚えられないかなーと言う心持だったがそう簡単には行かないらしい。
と、うっかり。
この二日はのんびりするんだった。
つい【技能】の習得を考えてしまった。
習慣ってコワイと思いながら休日、休日と考えてのびーと体を伸ばして自慢の白い毛並みをペロペロと舐める。
すっかり狐猫だなぁと思う。
しかし私って毛色と眼色を見るとアルビノっぽいよね。
だけど太陽さんさんの中、紫外線にも平然としている。
なんちゃってアルビノかな?と思う。
だけど本当、平和だわーと思う。
偶にならのんべんだらりも悪くない。
毎日だと絶対にダメだけどね。
あ、でも、御夕飯は狩りに行かねばならない。
この見渡す限り何も居ない。
【探知】さんにも反応がない平原で獲物って居るかな?と心配になる。
まぁ、良いや。
最悪、抜きだ。
一食抜いても死にはしない。
うーんと伸びをして昼寝をする事にする。
そう言えばこっちの世界に来てからあんまり雨に遭ってないなと思い出す。
転生四ヶ月目位だが雨の日は両手で数えて足りる位だ。
雨期とかあるんだろうかと考える。
そんな益体に無い事を考えながら私は何時の間にか寝入っていた。
狐猫も猫、猫は寝る子と思いながら意識は沈んだ。
目を覚ますと夕方だった。野営の準備が始められている。
運んでくれた馬達に飼葉と水が配られまた魔導袋からポンポンとテントが飛び出す。
今更ながらテントというより簡易居住区だよね。
かなり広々として中にはシャワー室みたいなのとトイレまで設置されていた。
下水の処理がどうなっているかは分からない。
きっとファンタジーな何かだろう。
お〇らし聖女様とリーレンさんは既にテントの中の様だ。
寝てたとは言え屋根の上の私を見てまた気絶やお〇らししなかったかなーと心配になる。
さて騎士の皆が夕飯の準備をしている間に私も夕飯を取ってきますか、一応、声だけは掛けておこうとリーダーさんの所に行って「ミィミミィ」と鳴く。
「うん?もしかして狩りに行くのか?だがこの辺りにはあまり獲物は居ないぞ?餌なら俺達の食事を分けてやるが…」
「ミ、ミゥ…ミィィ、ミイミィ」(う、ううむ…心惹かれるけど野生の掟に反するのでダメなのです)
若干、心惹かれたが振り切って首を振ると伝わったらしく「そうか、なら無理には言わねえよ。またデカい獲物を期待してるぜ。ちっこいの」うん、だからその撫で方はダメなのだ。
イヤじゃないけど脳が揺らされてグワングワンするのだ。
しかし「大きな獲物を期待する」と言われてしまった。
あんまり獲物が居ないんじゃ無理じゃないかなーと思う。
しかも運べるのは精々、数キロ位よ?
私の体の大きさから察して欲しい。
兎も角、許可は得た。
護衛の騎士さんも八人になったし大丈夫だよね。
そう思って私は夕闇の中を【疾駆】で走り獲物を探しに行った。
もうほぼ暗くなった。
獲物は居ない。
【探知】さんにも反応しない。
うーん、ホントに居ないなぁ。
まあ、街道沿いだしね。
魔物は駆除されてるかと思う。
ならばちょっと道をそれるしかない。
街道を離れ私は道なき道を走りだした。
暫く走ると【探知】さんに反応。
おお、やっと獲物だ。
何かな、何かなー、こうなったら兎で良いよ。
と、言うか兎が良い。
兎出ろと思いながら赤点に接触。
ゴブリンだった。
また貴様かーーーーッ!!!
喰えんから要らんのじゃーーーーッ!!!
私の肉球アッパーカットが吠える。
ゴブリンは夜空の星になった。
ふう、また詰まらぬモノを私のプニプニ肉球の餌食にしてしまった。
あー、こんな事なら何か【技能】が生えても良いのよ運営―じゃなくて神様さんよーと叫ぶとピコーンと音が鳴った。
『【技能】【剛力LV1】を獲得しました』
おおー、新【技能】キタコレー。
ピョンピョンと跳んで喜びを顕わにする。
この狙ったタイミング神様(仮)め、やはり見ているな。
きっとポテチ片手にコーラなど飲みながら観戦してるに違いない、許せん。
美味そうな物を私にも食わせろーと声を荒げる。
当然、返事は返ってこない。
はぁ、獲物探そう。
私はまた【疾駆】で走り出した。
結局、この夜は獲物は見つからなかった。
残念。
でも新しい【技能】を覚えたからそれで良しとしよう。
そして私はトボトボと野営地へと帰って行った。
「ミャー」(ただいまー)
と、言いながら野営地に入る。
「お、帰ったか」
焚火の前に座ったリーダーさんと正面に別の騎士さん。
新顔さんだな、馬と馬車の番をしていた人かと思い私用に敷かれていたタオルの上に乗る。
どうやら今の時間帯の夜番はこの二人見たいだ。
「その様子じゃあダメだったみたいだな」
「ミィ、ミミィ、ミミミィ…」(そうなの、何も居なかった、お腹空いた…)
そこに目の前へシチューみたいな物が入れられた皿が置かれる。
芳醇な香りに吸い寄せられるように近付く。
「ほら、食え」
「ミャ…ミャーミャミャ、ミャミャ、ミャミャミャミャー」(く…う、うう、ダ、ダメだからね。私は野生の狐猫、ギブアンドテイクはあっても施しは受けない)
必死に耐えて顔を背ける。
しかしお腹がキュルキュルと鳴る。
また必死に赤くなってるかどうか分からない顔を背ける。
耐えろ、耐えるんだ、私。
此処で折れては野生が廃る。
「大丈夫だ。これはちっこいのが今朝狩ったホーンラビットの残りだ。
「ミャァゥ?」(そうなの?)
「だからちっこいののだ。自分で狩ったモノの料理なら喰うんだろ?」
むう、それならばそれならば食べるのは問題ない。
フン、フンと顔を近づけて匂いを嗅ぎペロリと舐めて見る。
「ミギャ?!」(熱っ?!)
声を上げて跳び上がる。
そうだった。
私は狐猫だった。
猫舌だった。
慌ててフー、フーと息を吹きかけて冷ましに入る。
「わははははっ」
「プッ、クス、クス」
そんな私の様子をリーダーさんは声を上げて笑い新顔騎士さんは我慢するように声を押し殺して笑う。
くそう、笑われてしまった。
何時かなんかの形で仕返ししてやる。
そう思いながら私はホクホクのシチュー擬きを舐めて食べて美味しく頂いたのだった。
翌朝、まだ日が昇る何時もより早い時間から出発の準備に入る。
このまま行けば夕方頃には街に着くらしいが想定外を考えて早めに出るそうだ。
夜になると門が閉まって町に入れなくなるらしい。
また一足飛びで馬車の屋根の上に飛び。
お〇らし聖女様とリーレンさんが馬車の中、他の騎士の皆さんは馬の上で私達は出発する。
出発して二時間ほど、屋根の上でゴロゴロしていた私の【探知】さんに反応が現れる。
獲物っ!と思い私は【疾駆】する。
「あ、おい―」
何か男性騎士さんが声を上げるが無視だ。
貴重な獲物。
私のご飯。
どうか食べれる物であってくれと願いながら走る。
走りながら見る【五感強化】視界内に収まったのは―
兎だー。
やったー。
朝ごはーん。
兎・即・噛
と、ばかりにこちらに気付く間もなかった兎を葬り頂きまーすと食べ始める。
私のお腹がポンポコリンになる頃になって漸く馬車と馬が追い付いてきた。
追いついた所で一時駐車する馬車。
まだ結構、早いが昼食にするらしい、私はリーダーさんの元に食べ残しのまだ半分以上ある兎を咥えて持って行く―と、言うか引き摺って行く。
「成る程、獲物に気付いて走って行ったと、しかしこの距離で気付いてあの速度、やっぱり本当にちっこいのはとんでもないな…」
「ミャア?」(そうなの?)
イマイチ自分の強さが分からない私は首を傾げるだけだ。
兎は料理係の騎士さんに手渡される。
あの兎は今日の夕ご飯になっるっのっかなー、楽しみだなー、次はどんな料理だろうと尻尾をブンブン振る。
おっと、其処でリーレンさんとお〇らし聖女様が馬車から下車。
見つかったらまた気絶されるかもなので馬車の天井に退避。
ふう、これで一安心。
後は街に着くまでのんびりだ。
街に入る。
ある意味で今世初の晴れ舞台だ。
念入りにグルーミングをする。
お尻の穴も舐める。
と、言うか穴はあるけど使った記憶は無い。
アイドルはトイレに行かないと言う伝説が現実になった世界なのだろうか?此処は?
食べた物は廃棄物にすらならずに全てがエネルギーに回されているのかも知れない。
確証はないけどね。
だからお尻の穴を舐めるのも抵抗はない。
最初はあったけど今は無い。
使わないし、臭くないから、そして次に尻尾に移る。
尻尾は相変わらず大きくてフワフワだ。
私の全長の半分は占めてるんじゃなかろうか、そして生えてきていた二本目の尻尾、これも成長著しい。
見る者が見ればもう気付かれそうだ。
私の体って自分の体長より尻尾の成長の方が大事な訳?
その成長速度を体にも回して欲しいと切に願う。
兎も角、そんな感じで私が全身をピカピカに磨き上げる頃、街の門が薄らと見えてきたのだった。
街はデカかった。
予想を遥かに超えて大きかった。
中世ナーロッパを舐めていた。
これほどの街を築き上げるとは、やりおるなファンタジー世界。
巨大な開かれた門を見上げていると迎えの者らしい数人の騎士さん達が駆け寄ってきた。
「お帰りなさいませ、聖女さま。ガレス隊長、リーレン殿、ご無事で何よりです」
迎えの人がお〇らし聖女様とリーレンさん、リーダーさんに声を掛ける。
そうかリーダーさんはガレスって名前なのか、憶えておこう。
そして名前を呼ばれなかった他の七人の騎士さん。
君たちはまだ当分の間は顔だけ知ってる騎士さんのようだ。
機会があれば名前を教えて欲しい。
「ただいま戻りました。街に変化はありませんでしたか?」
お〇らし聖女様はまだ少女だけどこういう時はちゃんと聖女様してるね。
感心する。
私が視界にさえ入らなければ完璧だ。
「はい、結界は安定しており魔物の侵入もなく安全その物です。そちらは何かございましたか?予定より数日早いご帰還ですが…」
「ああ、それなんだが。数日前に秘草の採取中に襲撃を受けた。偽装はしていたが間違いなくダスド帝国の手の者だろう」
「なっ?!それで皆様はご無事だったのですか?」
「ああ、聖女様のお力と其処の馬車の屋根に居るちっこいののお陰でな」
そう言われて私は「ミャ!」と言いながら身を乗り出して迎えの騎士さんに手を振る。
「え?!あ?な…」
迎えの騎士さんは驚いて私の姿を呆然と見上げる。
その前ではお〇らし聖女様がビックゥンと体を震わせカタカタと震えだす。
うん、頑張ってお〇らし聖女様、此処で気絶とかお〇らしとか絶対にNGよ?
「こ、この幼体のファトラが?」
「ああ、見物だったぜ。十数人も居た敵を瞬く間に倒して除けたんだからな」
ガレスさんがその時を思い出してかニヤニヤしながら話す。
私としては背中がちょっとこそばゆい。
私、そんなに凄くないですよ。
不意を討っただけですし、あの騎士擬きが弱かっただけ、きっとそうだ。
そうに違いない。
「成る程…では、このファトラは聖女様を護る為に現れたと。ではこのファトラは聖女さまの従魔という事になるのでしょうか?」
「じゅ、じゅ、じゅ、じゅう、従ままま、従魔等とお、お、お、おおお、恐れ、恐れ多、恐れ多い。そ、そそそ、そう、そう、ゆ、ゆゆ、ゆう、友誼を、をを、を、友誼をむむ、むす、結んだだだ、結んだのです」
「せ、聖女様?」
突然、どもりまくり噛みまくりになったお〇らし聖女様に迎えの騎士さんが動揺する。
うん、頑張れお〇らし聖女様、さっきまでの威厳はどこ行った。
でも友誼を結んだというならせめて私を愛でられるようになろうね。
何か見てて気になるし、気の毒だし、可哀想になるから神託抜きにしてもほっとけない存在になりつつある。
はてさて、本当にこのお〇らし聖女様が私と対等に付き合えるようになる日は何時になるのか不安になった。
狐猫の小話
豚戦士もD級の災害ですが中にはC級の災厄に近い個体も居ます。大鶏もC級の災厄ですが大鶏が強いです。
この世界の魔物のランクは単純な強さだけでなく厄介さや迷惑度等と色々な基準から決められるので余りランクでの強さは当てになりません。