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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第101話 血雪の円卓会議の日(参)?


「急げっ!結界の再起動を急がせろっ!」




 ダスド帝国の工作員だった七人は異変に気付き駆けつけた俺達八人によって直ぐに倒されたが聖都の結界は破壊された。急いで修復の為の作業員を結界の間、最奥に通す。状況は最悪だ。東西南から⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆の群れが襲来、その数は五万近い、抱いてる人を含めると十万程になる。此方の五倍近い。だが聖女様のお陰でステータスは大きく上回っておりそれで何とか戦えている状況だ。剣聖リフレイアもちっこいのも全く同じ姿の人間三人に苦戦していると聞く。南の副騎士団長と飛空騎士団3000人はその同じ姿の三人に全滅させられたらしい。今、その三人は東――ちっこいのの方角に向かっている。【遠話】で危機を伝えようとしているそうだが何か結界が張られているようで届かないそうだ。何とか頑張って貰うしかない。




「これは――酷く破壊されている。どれ程急いでも5時間…いや、4時間は…」




 作業員、技術者が結界、最奥の間を見て絶望的な声を上げる。今から4時間か――恐ろしく長く厳しい時間になりそうだ。




「頼む。一分でも一秒でも良い。早く修復してくれ」


「………解りました。最善を尽くします」




 その言葉を最後に作業員と技術者は結界の再起動準備に入った。俺は部下たちに「お前等っ!俺達も行くぞっ!」と声を張り上げて外へと飛び出した。聖都テレスターレの惨状は悲惨の一言に尽きる状態だった。騎士、貴族、平民、女、子供と問わずに物言わぬ躯となって転がっている。怒りに剣と大盾を握る手に必要以上の力が篭る。其処に⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆が飛来した。【殺戮針攻撃】を大盾で弾く。間髪入れずに「やれっ!」と叫ぶ。家の隊に居る三人の〘魔導〙の使い手の〘魔導〙が火を噴き⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆を吹き飛ばす。俺を含めた五人はその三人を護る様に布陣し少しずつでも⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆を倒していく。




「ぐぁ?!」




 チュンと言う音がしたと思ったら隊員の一名が倒れた。奴等の銃撃だ。あの銃は危険だ。俺の大盾でも貫通される。俺達が知る普通の銃とは全く違う。片手持ちではなく両手持ちの長い銃身、弾の速度も威力も桁が違う。




「貴様ぁっ!」




 怒声を上げて俺は一人突撃した。放たれた銃弾を【予測】と【思考超加速】で回避する。そして全力で大盾を叩き付けた。【ビッグ盾打撃シールドバッシュ】吹き飛ばされた男はそのまま壁に叩き付けられて崩れ落ちた。もう一人、側に居た者も剣で切り捨てる。もう敵は居ないと確認して仲間の元に戻り倒れた部下の容態を聞くが黙って首を振られた。「そうか…」俺は呟き短く祈りを捧げる。一人減り七人となった部隊で⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆と敵兵を次々と倒していく。敵の銃は厄介だが⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆にちっこいのが気にしていた音を攻撃に使う能力が消えているのが幸いだろう。アレが残っていれば⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆はもっと危険になっていた。そこで「ズゥゥゥッン」と言う音が響いた。




「?」




 何の音だ?と思い振り返ると円卓会議が行われている筈の王城の塔の頂上に⦅女王クイーン殺戮蜂デッドリーホーネット⦆が鎮座していた。まさかあの様な魔物まで操れると言うのかと驚愕した。しかし、それ以上に俺は震えた。あそこには今、聖女様が居る。まだ結界が破壊されて何十分と過ぎていない。あの場に今も残られている筈だ。




「直ぐに戻るぞ」




 俺は即断した。部下達も頷いた。俺達は駆け出した。




『お久しぶりです。陛下、大聖女様』




 聖都中に声が響いた。この声は確か神殿長のロズベルト・ダーリントンだ。聖女様の暗殺を謀った者の筈だ。何故、その男の声が響いてくると考えた。




『ロズベルト!』


『ロズベルト神殿長…』




 次に聞こえてきたのは聖王陛下と大聖女様の声だ。これは円卓会議の間での会話の様だった。






『ロズベルト!貴様、国を売ったか!』




 聖王陛下の怒りの籠った声が聞こえた。国を売った?ロズベルトがダスド帝国にテレスターレ聖国を?この聖都の惨状は全てがあの男の仕業だと言うのか?俺はあまりの事に気が狂いそうになった。




『私が国を売る?違いますな陛下、私はこの国を正そうとしているのですよ。貴方が――いえ、貴方の父が歪ませてしまったこの国を!』




 一体、何を言っている!己の故国にこれだけの悲劇を巻き起こしておいて一体、何を言っているのだ!!!と俺は怒る。そして続いた言葉は完全に予想外の一言だった。






『セアラ・シャリス』


『!』


『お前の父母の名前を言って見ろ』




 ?それに何の意味がある?聖女様は平民の生まれで父母の名は俺も聞いた事が無い。只、それだけだ。聞く必要も無かった。本当にそれだけだ。俺とて聞かれない限り父母の名前など特に言ったりしない。其処に問題などある筈がないと俺は思った。だがそれは違った。




『わ、わた、私の、私の両親は―――』




 何故か響いた聖女様の声は酷く脅え震える声だった。聖女様にとって父と母はそれ程に恐ろしい存在であったのだろうかと俺は考えたが、それも違った。




『言えまい、答えられまい、何故ならお前は―――』


『ロズベルト!貴様っ!』


『ロズベルト、貴方は!』




 煮え滾る怒りのままに走る俺の耳に勝ち誇ったようなロズベルトの声とその先の言葉を止めようとするように声を上げる聖王陛下と大聖女様の声が響いた。だがその言葉は止まらなかった。




『親など存在しない『帰還死人イーヴィルス』なのだから』




 な……に………?ロズベルトの放った言葉は俺を――部下を――聖都中のテレスターレ聖国の騎士達を――凍り付かせた。其処から先も円卓会議の間での会話が都市中に響き渡った。ロズベルトの言ってる事が何故か真実だと理解できた。俺の――俺達の足は何時の間にか止まっていた。呆然として佇む。それは全てのテレスターレ聖国の騎士達に伝播していった。




「……隊長」




 部下の言葉に俺は振り返りハッとした。その不安そうな顔にでは無い。その身を包む光を見て思い出させられた。そうだ、ロズベルトの言葉は確かに真実かも知れない。だが、あの小さな聖女様と共に過ごした俺達が、俺達だけが知っている真実もある。俺は息を大きく吸い込み声を張り上げた。




「武器を取れぇっ!!!テレスターレ聖国の騎士達よぉっ!!!今、俺達の身を護る光は何だぁっ!!!あの幼い聖女が必死に掛けてくれた【恩恵ギフト】であろうっ!!!俺達は知っているっ!!!!!あの聖女がどれだけの苦難を乗り越えて来たのかっ!!!!!どれほどの悲しみに耐えてきたのかっ!!!!!決して諦めなかった事をっ!!!!!一度として逃げなかった事をっ!!!!!涙を見せなかった事をっ!!!!!俺達はずっと!!!ずっと傍で見てきた!!!!!俺達があの聖女が偽りのない《人》である事の証人だっ!!!!!護り抜けっ!!!!!あの未来への希望である聖女をっ!!!!!それが出来ずにして何の為の騎士かぁっ!!!!!!!!!!」




 力の限りに俺は叫んだ。部下たちの目に光が戻る。呼応するように周囲のテレスターレ聖国の騎士達も力を取り戻していく。消えそうになっていた火が激しく燃え上がった。テレスターレ聖国の猛反撃が始まる。だが、しかし、俺の咆哮はダスド帝国側の癇に障ったらしい。敵の狙いが俺達に集中する。でも既に俺達の覚悟は決まっている。




「走れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」




 再び俺達は駆け出した。あの小さな聖女様の元を目指して全力で走った。敵兵と⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆の攻撃が激しさを増す。一人、また一人と部下が倒れて行く、それでも俺は進む事を止めなかった。そして目的地である尖塔前に辿り着いた時、俺は一人になっていた。そこに「ギィィィィィィッ!!!と声を上げて⦅女王クイーン殺戮蜂デッドリーホーネット⦆が降って来た。諦めない、何があろうと、最後まで、絶対に!だがそれでも――(此処までか)と言う無念が去来する。初めて聖女様に会った日が回想される。『せ、聖女第一位、セアラ・シャリスです。どうかよろしくお願いいたします。ガレス様』息子と同じくらいの少女だ。流石に色々と無理、無茶があると思った。それでも護るべき護衛対象だと付き合った。だが、思い違いだと理解した。小さく弱い聖女はそれでも誰かを支え、助けようと何時も必死だった。俺達も何度その【恩恵ギフト】に救われたか知れない、俺達が護らないとと思う聖女は後ろに控える存在ではなく先頭に立ち俺達に進む道を示してくれる希望の光だった。あの聖女様の側に仕えるのは俺達の誉れだった。せめて最後に伝えたかった。貴方の護衛で居られたこの二年は感動と驚きと幸せと誇りに満ちた掛け替えの無い日々だったと――⦅女王クイーン殺戮蜂デッドリーホーネット⦆の一撃が襲い掛かる。もう抗う術は無い。それでも俺は――「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」と必死に声を上げて立ち向かった。意識が闇に飲まれたのは直ぐだった。最後に一言「聖女様―――どうか、どうか…」―――幸せにと願い俺は倒れた。




ガレス・ゴーダ、テレスターレ聖国騎士団中隊長、32歳。―――没。







 必死にハミルトン達の攻撃に耐える。こうなれば仕方がない【忍耐】様と【限界天元突破】に掛けると考えた。⦅女王クイーン殺戮蜂デッドリーホーネット⦆が突入した円卓会議の間、セアラ達が居る場所も心配だ。と、ゆーか、それが一番ではあるが聖都テレスターレ中が心配だ。どれ程の犠牲が生まれているか考えるだけで恐ろしい。溜まって来ていた【忍耐】様の熱を開放していく。押される一方だった戦況が少しずつ、少しずつ互角に向かって行く。


「ふーん、これは…」

「子猫ちゃんの【7美徳技能】かな?」

「厄介だね、一気に決めないと」


 確かにワンパンされれば終わりだがそれだけは絶対に有り得ないと断言できる。三対一で今迄何とか持てているのが証拠だ。でも直撃を貰えばヤバい。それだけは回避して何とかコツコツと―――って、それはダメだな。時間が掛かり過ぎる。何とか早くに両方を開放する手段を考えないと思って居るとフッとまた力が僅かに抜ける感覚があった。これは!また誰かが死んだ?くそっ!何で!何でこんなっ!私が怒りに震える。反対にハミルトン達の顔には終始、笑顔が浮かんでいる。もう此方は怒りで頭が沸騰しそうだ。つーか【限界天元突破】の条件、相手が大きな悪を成した罪人である。ってのはハミルトンには当てはまらんのかっ!コレだけの事をやってるというのにっ!其処で唐突にどこからともなく声が響いた。


『お久しぶりです。陛下、大聖女様』


 この声、ガマガエル神殿長?これは聖都テレスターレから響いて来てる?ハミルトン達から目を離さないままに何だコレはと考える。


『ロズベルト!』

『ロズベルト神殿長…』


 次に聞こえたのはオッちゃん聖王様とセリアーナお婆ちゃん大聖女様の声、これはどうやら円卓会議の間での話が外に流されてるんだな。ハミルトンの仕業か?何をするつもりなんだ?



『ロズベルト!貴様、国を売ったか!』

『私が国を売る?違いますな陛下、私はこの国を正そうとしているのですよ。貴方が――いえ、貴方の父が歪ませてしまったこの国を!』


 ガマガエル神殿長の言葉に私の背中を冷たいモノが流れた。まさか、まさかガマガエル神殿長の奴は―――。


『セアラ・シャリス』

『!』

『お前の父母の名前を言って見ろ』


 決定的な一言だった。確定だ。奴はガマガエル神殿長かハミルトンかダスド帝国か知らないが奴等はセアラの秘密を知った。それをこの場で、いや、もしかしたらテレスターレ聖国中に知らしめるつもりだ。止めなければと私は駆け出そうとする。


「おっと」

「行かせないよ?子猫ちゃん」

「子猫ちゃんは眠る時間だ。それも永遠にね」


 ハミルトン達が私の行く手を遮る。


「ミィィミミィミィ!」(邪魔するなぁっ!)


 私は怒りの声を上げてハミルトンに襲い掛かった。







「ヒヒーン」

「ブルルルル」


 シルバーとズィルバーの二頭は聖都テレスターレの惨状を理解すると自分達に与えられていた馬屋を破壊し脱出、同じ様に馬小屋に入れられていた馬達を開放し次々と脱出させて回っていた。王宮内ももう安全ではない、自分達も逃げなければと思うがあの小さな主人は戦い、その友人達は城に残っている。自分達だけが逃げ出す事は出来ない。


「ヒヒン」

「ヒーン」


 不安そうなズィルバーをシルバーはハムハムと嚙んで落ち着かせてやる。そんな二頭に⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆が狙いを定めて襲い掛かった。A級の破滅ディザスターに強化されたこの魔物にB級の災禍ルインの⦅戦闘馬バトルホース⦆は勝ち目はない。但し、それが普通の⦅戦闘馬バトルホース⦆ならばだ。


「「ヒヒーン」」


 ⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆が放った【殺戮針攻撃】を避けて二頭は何と宙を駆けあがった。規格外なハクアが主人と成り名を付けた影響か、二頭は何時の間にか⦅戦闘馬バトルホース⦆から⦅戦空馬ウォースカイホース⦆に進化していた。そのステータスは一万に近い、⦅殺戮蜂デッドリーホーネット⦆をシルバーとズィルバーは次々と撃破していく。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ダスド帝国の兵士にも容赦しない、踏み潰し、蹴り飛ばしと発見次第に撃破して行く。暴れ回る二頭を止められる者は今、この場には居なかった。だがたったの二頭、敵は遥かに多い、特に銃は恐ろしい、当たると凄まじい痛みが体を襲う。シルバーとズィルバーの体に着実に傷が増えて行った。そしてその時は遂に来た。


「くそっ!あのおかしな⦅戦闘馬バトルホース⦆めっ!」


 陰に隠れて銃を構えるダスド帝国兵、構えた銃の狙う先に居るのはズィルバーだ。その頭を狙って男は撃った。


「ヒヒン?!」


 シルバーは寸前にそれを察知した。全速力で走りズィルバーと銃弾の間に自身の体を晒す。ドンッ!―――黒い弾丸がシルバーに突き刺さった。


「ヒヒヒーン!」


 ズィルバーは落下していくシルバーを見て慌てた。だが直ぐに激しい怒りを覚えた。シルバーを撃った者を許さない。ズィルバーは駆け出した。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 向かって来るズィルバーを見て帝国兵は焦った、急いで次の弾を狙い定めて撃とうとするが照準がブレて狙いが定まらない。そしてズィルバーが一撃の元にダスド帝国兵を踏み潰した。


「ブルルルル…」

「ヒ、ヒーン、ヒン」


 落下して倒れていたが再び立ち上がろうとするシルバーを心配そうに見るズィルバー、だけど、もう分かっている。シルバーが銃弾を受けた場所は急所だ。もう長くない。そんなシルバーに寄り添うズィルバー、だがシルバーは最後の力を振り絞り立ち上がると別れを惜しむようにズィルバーに体を擦り付けた後に「行け」とその体を押した。自分は最後にまだやる事がある。ズィルバーは嫌がるような素振りを見せたがシルバーは再びズィルバーの体を押した。成らばせめて最後にとズィルバーはシルバーに体を擦り付けた。シルバーはズィルバーをハムハムと優しく噛んでやる。そしてシルバーは再び宙を駆けあがって行った。ズィルバーはその最後の雄姿を見送った。そして見えなくなるまでその場に佇んだ後、ゆっくりと歩き始めた。

狐猫の小話

何時の間にか進化してたシルバーとズィルバーです。

でも別れです、夫々、何処に向かったのか?


二人目の死者ガレスさん、自分の創作したキャラが死ぬのは辛いですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 銀馬夫婦も壮絶…あのまま草原で暮らしていればこうはならなかったのか?という考えがよぎったりしますが、きっと心触れ合える皆に会えたことは間違いじゃなかったと思いたいですね。
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