第001話 狐猫に転生?
楽しんで頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
目覚めると体が動かなかった。
うんんん???何だコレ???
目覚めたと言っても目が開けられない意識が浮上しただけだ。手も動かない、足も動かない。
しかも今になって何となく気付いたが私は水の中に居るらしい。
感触で分かる。
ヤバイ、溺れる死ぬと思うが何故か息ぐるしくない。
寧ろ守られていると安堵が心に広がって来る。
何だろうコレ?
何なんだろうコレは?
と、思っているとまた急速に意識が沈み眠くなってくる。
ホントに何なんだろうコレは?と思いながら私の意識は闇に呑み込まれた。
その後も偶に意識が浮上する事があったが現状は変わらなかった。
僅かに手足の様なモノの感触が出来て動かせるようになってきたのが変化と言えば変化だ。
其処で唐突に閃いた。
うん?この周りの水って羊水って奴じゃない?と
そうなるとこの状態はアレか!アレなのか俗に言う転生と言う奴なのかと!
するとヒャッホイとばかりにテンションが上がってきた。
実を言うと憧れていたのだこういう展開に、詰まらない学校生活……うん、何かよく思い出せないけど多分、学校生活。
そんな中で暇つぶしに呼んでいたネット小説。
異世界転生、剣と魔法の世界、後は悪役令嬢とか、聖女とか、勇者とか、俺Tueeeー、私また何かやっちゃいました?とかに憧れたのだ。
ヤッホー!私の時代キターーー!と狂喜乱舞する。
さあ、早く生まれ出ろ私の体。
そして幼少期からスパルタンな特訓をして世界最強になり無双するのだと考えながら私の意識はまた闇の中に沈んでいくのだった。
それから幾日か過ぎたある日、私の全身は激痛にさいなまれていた。
痛い、いたい、イタイ、いたたたたたたーーーーーっ!!!
体を押し潰しながら排出するような圧迫が襲う。
出産って痛いと聞くけど生まれる側もこんなに痛いのかっ!
そう思いながら痛みに必死で耐える。耐えて、耐えて、耐えた所で私はようやく外へと排出された。
肺の中に残っていた羊水をケホケホと咽て吐き出して私は産声を上げる。
「ミィーーーーー!」
あれ?何か違くない?此処はホギャー!じゃないの?ミィー!って何?まるで猫じゃんと思いながら体を動かしてみる。
うん、生まれて直ぐに這いずれる。
人間の赤ん坊なんてハイハイ出来るようになるまで何ヶ月も必要とする筈だ。
これはもしかしなくてもやっぱり…そう思いながら私は母らしき者の元へと気配を頼りに近付き毛に覆われた体から乳首を探し出して其処に吸い付いた。
うん、認めよう。
どうやら私は人では無く猫かそれに類する動物へと転生してしまったようだった。
私が生まれ落ちて約一週間の日々が過ぎていた。
と、言っても寝て起きて母乳を飲んで寝て起きて母乳を飲んでの繰り返しだったので正確な日時は分からないが、兎も角、この間に合った変化はと言うと私、眼が開きましたという事だ。
いやー、何も見えないって辛かった。
そして私は周囲の状況を確認していく。
母猫―いや、母狐?兎も角、顔は猫の様だが尻尾だけは長いフサフサの狐みたいになってる母親は私の十倍くらいおっきかった。
比較対象が無いのでよく分からないが前世の猫より一回りか二回りほどデカいかも知れない。
後は周りに居る兄弟姉妹達、いや、性別とか分からないけどどちらかには当てはまるでしょうと言うのが三匹、私を合わせて四匹の子供を産んだようだ。
そんな中で唯一、違う事がある。
他の皆は色が薄茶色の毛皮なのに私だけが真っ白、純白である。
これはアレか「連〇の白い奴め!」と恐れられるアレに成れと言う神の思し召しかと思いながらペチペチと猫パンチを繰り出し早速将来の為にスパルタンな特訓を開始する。
母狐―母猫?いや、もうめんどいから母狐猫でいいやは「何をしてるんだろうこの娘は?」と、言う顔で見てくるが気にしない。
私はこうなったら世界最強の狐猫になるのだ!
そうこうしている内に日は過ぎてもう私達、兄弟姉妹は母乳ではなく母狐猫が狩ってきた獲物を食べるようになっていた。
母が獲物を口に帰って来ると巣穴になっている倒木の穴の中から駆け出してすり寄る。
すると母狐猫は獲物を嚙みちぎりクチャクチャと細かくした後で口移しで食事を与えてくれる。
正直言って、うん、美味しくない。
いや、食べられない訳ではない。
狐猫の体になってるからか味覚が変化してるのか食べられるし不味くはない。
しかし、前世の美味しい食べ物を知ってる身としては血抜きもしてない、焼いてもいない、塩胡椒も振ってない生の肉など何とも言えない。
まあ、それでもお腹は空くので食べるけど、うう、味付けされた美味しい焼いたお肉が食べたいと思う今日この頃だった。
母狐猫が狩りに行ってる間は兄弟姉妹で遊ぶ。
もみくちゃになってそれこそ毛玉の様になって戯れる。
喧嘩紛いの事もする。
ふっ、だがスパルタンな特訓をしている私に敵う筈はあるまい。
一匹はアッサリと返り討ちにする。
二匹来てもまぁ、大丈夫だ。
三匹は…勘弁してください。
まだまだ修行が足りない様だスパルタンな特訓を増やす事にする。
世界最強への道は遠い。
そしてそんな生活が大体体感で一月以上過ぎた頃に私は遂にやってしまった。
もしかしたらあるかなー、でも、無かったら恥ずかしいなー、見てるのはどう見ても純粋無垢な動物だけだけどと思いながら私は遂に念じてしまった。
「鑑定」「能力値開示」「ステータス・オープン」と、そしてウィンドウが目の前に現れた。
【名前】無し
【種族】ファトラ
【位階】零
【LV】1
【気力】8
【理力】7
【霊力】11
【魔力】15
【SP】1513
【技能】【牙攻撃LV1】【爪攻撃LV1】【翻訳LV10】
おおおお、本当に表示されてしまった。
正にファンタジー、正に王道、と感動に浸り尻尾をブンブンと振ってみる。
あれ?猫って嬉しい時は尻尾をピーンと立てるもんだっけ?
兎も角、表示された内容を吟味していく。
【名前】が無しなのはしょうがない今世ではまだないし前世の名前も思い出せない。
微かに女子高生で学校が暇でネット小説やラノベをよく読んでたなーと思い出せるくらいだ。
次の種族これが私が今まで狐猫と呼んでいた自分達の種族の名前なのだろう。
ご丁寧に日本語なのが嬉しい、流石は異世界のご都合主義だ。
次の表記はよく分からない【位階】とある。位階確か地位や身分の序列を表す言葉だった気がするが…こちらでは何か違うのだろうか?
その下はお約束の【LV】である。
だがLVは1、どうやら私のスパルタンな特訓はLV上げの経験値には成ってなかった様だ。
更に下の【気力】【理力】【霊力】【魔力】と言うのがまた分からない。
こういうのは分かり易くHP、MPや攻撃力とか防御力じゃないんだろうかとツッコミを入れる。
しかし分からないのはしょうがない。
後々に知る機会もあるだろうと諦めて次の数値を見る。
【SP】1513とある。
これだけやたらと高いな、おいと目を疑う。
【SP】という事はスキルポイントという事だろうか?下に【技能】と言うのもあるし、ならばあんな便利魔法や超絶技能などが獲得できるか?と思って『創造魔法習得』とか『アイテムボックス習得』と念じてみるが何にも起きない。
神は居なかった様だ。
あ、転生させてくれたから居るのかな?
何にせよそんな簡単にお手軽超絶技能は手に入れることが出来なかった。
そして私がウィンドウにポンと肉球を触れるとステータス・ウィンドウは閉じた。
取り合えず、この日の収穫はそれだけだった。
狐猫の小話
ファトラは綿猫が正式名称です。
風緑が願う夢の動物である猫+狐のフワフワ尻尾です。
では、では、次もお楽しみ下さい。