惰弱(だじゃく)
登場人物
・杠葉夏樹
・橘蒼
夏樹の幼馴染で親友。
夏樹の事が好き。
「僕ね中3の夏頃から、なっちゃんに置いて行かれる気がしてたんだ。」
蒼は、そう言うと黙り込んでしまった。
体調が悪い事も影響しているのか、今まで見たことのない蒼の雰囲気にゴクリと喉が鳴った。
俺が蒼を置いて行くとは、どう言う事なんだろうと考えていると。
「あの頃なっちゃんは僕が知らない間に志望校を決めてた事を知って凄く悲しかった、僕は自分の進路を決めかねていた時期だった事もあったから余計に、なっちゃんが先に行って僕から離れて行ってしまうんじゃないかと心配だった。」
そう話す蒼の顔は今まで見たことがない表情をしていた。
そんな顔するな……
俺も蒼と一緒だ、涼しい顔をしてなんでもこなす蒼は大人びていて、俺がどんなに頑張っても追いつけないと思っていた。
初めから、同じ高校には行けないと思い込んで蒼に直接ぶつかるのが怖かったんだ。
そう思ったとたんに俺の意志とは裏腹に目から涙が溢れ出て止めようと思っても無理だった。
そんな俺を見て、何故か蒼まで泣き出してしまった、泣きながら、これからはお互いに言いにくい事もちゃんと話をしようと約束をした。
我に返ると恥ずかしくなったが、蒼の病室が個室で良かったと心の底から思った。
この時、病室の前に人影があった事を俺は気付いていなかった。
時間も遅いし、もう帰ると背を向けると蒼に呼び止められた。
学校への行き帰りを一緒にするのはもうやめよう、そう言われて俺は後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を感じた。
さっき色んな話をして今まで通りに戻ったと思っていた、それなのに、そんな事を言われ俺は思わず蒼とはクラスが違うし、せめて朝だけでも一緒に行きたいと言葉が溢れた。
蒼は少し複雑そうな顔をしながら、それを決めるのは、なっちゃんと小暮さんだよ僕が決める事じゃないよ。
そう言われて、なんだか蒼に線を引かれた気がして分かったとしか言えなかった。
病室を出ると、なんとも言えない寂しさに後押しされた気になった。
成長の過程で大事な人との時間を失わなければならない事があるのか?
だいじなひと……
俺はこの時、初めて蒼を大事な人と認識した、幼馴染みで、親友で、俺にとって大事な人。
舞と付き合う事で、蒼との時間が少なくなるのは世間一般に見ても、よく有ることなんだろう。
でも、蒼との時間が減ることは嫌だと思ってしまう。
そんな事を考えながら家へと向かった。
普段そんなに頭をフル活用する事がない俺は久々に熱を出して2日間学校を休むことになった。
早く蒼と学校に行きたい、俺のなかで蒼へ対する思いが今までと違ったものへと変り始めている事に、この時の俺は気付いていなかった。
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
次回は27日(月)に更新予定です、よろしくおねがいします。




