変遷〜episode蒼〜
〜登場人物〜
橘蒼
杠葉夏樹
・蒼の幼馴染で親友。
・蒼の想い人。
小暮舞
・夏樹の彼女
蒼、俺彼女できた。
なっちゃんのその一言で僕の世界から一瞬にして音と色が消えた。
なっちゃん、今何て言ったの?と聞き返したいけれど上手く声が出ない。
なっちゃんが何かを言っているのは分かるけど何を話しているのかが、理解が出来ない。
なんで?なんで?と言う言葉だけが僕の頭の中を駆け巡る………
落ち着け!落ち着け!と自分に言い聞かせて、やっと音が聞き取れるようになってきた。
きっと何かの間違いに違いない。
だって僕は、今までなっちゃんに近づく女の子達を誰にも気付かれないように排除してきたのだから。
なっちゃんの事を好きと言いながらも僕が少し甘い言葉を囁やけば、本当は橘君が好きだと手のひらを返す子や、少し牽制したら諦める中途半端な気持ちで近づく女の子達なんかに、なっちゃんを取られたくない。
そんな子達が、なっちゃんを幸せに出来るはずがない。
「‥‥い?」
そもそもいつ、なっちゃんに近づいたんだ?
「蒼、聞いてる?」
僕の顔を覗き込むように確認するなっちゃんに
「あ、うん聞いてるよ」
なんとか振り絞って出せたのが中途半端な返事だった。
お願いだから、もうそれ以上は何も言わないで欲しいと言う僕の願いとは、裏腹になっちゃんは話を続けた。
「俺の事を好きだと言ってくれた子なんだけど、入学式の時に話しかけてくれたグラスの子で、前に特進棟の階段で蒼と話をしてた子だから、すげぇ驚いた」
恥ずかしそうに言うなっちゃんを見ながら僕の頭の中は大量の、なんで?とどう言う事?で埋め尽くされる。
そしてもしかしてと僕の中に思いあたる人物が居る。
小暮舞あいつなのか、、、
僕はあの時に強めに牽制した、あの日だけでなく入学式の時もやんわりと言ったはずた。
階段で話した時に何か言いたげな顔をしていたけど、まさかこんなに早く行動に移すとは思わなかった。
もしかして僕の帰りが遅くなったあの日に、なっちゃんに近づいたのか?
パフェ食べただけの話しじゃなかったのか‥‥
思い返せばあの日、初めてなっちゃんと連絡が取れなかったし次の日の様子も変だった。
もう少し早く気付く事が出来ていればと思っていると足元が崩れそうな感覚に陥った。
蒼、本当に聞いてる?顔色が悪いけど大丈夫か?と僕に声をかけてくれるが、僕は大丈夫と言う事しかできなかった。
顔色が悪く見えてるのは、なっちゃんの気のせいだよと笑顔を作りつつ、この間まで彼女が欲しいと言ってたから驚いただけ。
《なっちゃん良かったね》
僕の気持ちとは正反対の言葉が口からこぼれ落ちた。
上手く笑顔を作って隠せているつもりだったけど少し顔に出ていたのかもしれない、一瞬なっちゃんが困ったような顔をした。
両親すら僕の僅かな気付かない事が多いのに、なっちゃんは本当に僅かな変化に気付いてくれる。
だけど、僕の心の奥底に隠した本当の気持ちなんて微塵も気付いてないんだろうな。
そんな事を考えていると、聞きたくない言葉が僕の耳へと飛び込んできた。
「蒼は、俺の親友だし1番に報告したかったんだ」
そう笑うなっちゃんの言葉に更なる追い打ちをかけられた。
僕がどんなに頑張っても親友以上には見てもらえない。
この気持を隠す事で『親友』と言う名目のもとに一緒に居られるならと思っていたのに、まさかこんなにも早く誰かの彼氏になるとは思っても居なかった。
僕にもう少し勇気があったら………
気持ちを伝える事が出来たなら………
なっちゃんが、好きだと伝える事が出来たなら……で
今とは違う結末になっていたかもしれない。
そう思うことすら、あとの祭かもしれない。
お願いだから僕から、なっちゃんを奪わないで………
そう思ったとたんに僕の目の前は徐々に光を失い、遠くでなっちゃんが僕の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたがけれど、次の瞬間に僕は意識を手放した。
いつも最後まで読んで頂きありがとうございます。
※今回のお話は以前Twitterの方で上げた物を修正加筆したものです。
次回は夏樹視点に戻ります。




