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6-2 急転直下

「さあさあ、皆さん、たくさん食べてね!あ、マルテさん?は食べられないのね。ごめんなさいね。」

『いや、気にすんな。』


明るい声で言うローザにとまどいながらも、起きだしてきた借家の住人シャムス、ランダ、マイヤは用意された朝食に手を付ける。

恐る恐る口をつけてみれば、さすがに長年主婦として培ってきただけあって美味しい。

料理店などとはまるで違うが、安心できる味なのだ。


食事する手が止まらないのを見て、ローザの顔がさらにほころぶ。

そんなローザにアルマが尋ねる。


「それで、なんでラスゴーに?薬はちゃんと届くようにジョーガサキさんに手配をお願いしてたはずなんだけど。」

「ええ、ええ。確かに届きましたよ。ジョーガサキさんご自身が持ってこられました。」

「ふえ?ジョーガサキさんが?」

「アルマたちがしばらく町を離れることになったことをご説明にいらっしゃったの。それでね、良ければラスゴーに来ないかってお誘いいただいたよ。」

「えええええ!」

「病気の方も、一度大きな町で診ていただいた方がいいからって。移動は牛6号さん?に任せれば負担も少ないだろうって。あの牛すごいわねえ。」

「ああ・・・牛6号なら納得っすね・・・。」

「あれはもう牛の領域をちょっと超えてるからな。もうすぐ聖牛に存在進化するかもだな。」

「ですが、お体の方は問題ないのですか?」

「心配してくれてありがとうランダさん。それがねえ、ラスゴーの町の治療院で診ていただいたときはあんまりだったのだけど、ジョーガサキさんが作ってくれたお薬を飲んだらすっかり良くなっちゃって。」

「えええええ!ジョーガサキさんがお薬?」


予想外の情報が多すぎて、アルマはもう驚くことしかできない。


「そうなのよ。お仕事も用意してくださって。本当にありがたいわぁ。」

「まってまってお母さん。ラスゴーで働いてるの?」

「正確には町の近くだけどね。ロランも一緒よ。」

「ロランというと、アルマの弟さんっすか?」

「ロランも来てるの?てか、お母さんは何してるの?」

「なにって、ジョーガサキさんのお宅で住み込みの・・・家政婦?」

「「「「えええええ!」」」」


アルマのみならず、ランダたちも驚きの声をあげる。

だが、ローザはニコニコと笑顔を崩さぬまま続ける。


「本当に良い人ねえジョーガサキさん。それでアルマはいつこっちに来るのかしら?」

「いつってなに?どういうこと?」

「あらやだ。家政婦とはいえ家族を引き取ろうって言うんだからあれでしょ?結婚するんでしょう?」

「はあああああ!!」

「・・・おお、なるほど、そういうことっすか。」

「さすがワクワク担当。人生かけてんな。」

「うふふ。ごちですリーダー。」

『ぶはははは!良かったなアルマ。女子力あがってんな!』

「いやいやいやいや。ちがうからね!そんなことないから。」

「いやあ、アルマにその気がなくたって、ジョーガサキさんにはその気があるってことじゃないんすか?」

「えええ!いやいやだって。えええ・・・」

「アルマ、お母さんは賛成ですからね。」

「いやないから。ないからね!」

「そうなの?あ、そうだ。もうひとつアルマに聞きたいことがあったのよ。」

「な、なんでしょうか?」

「牛姫ってなに?」

「「「「ぶはー!!!」」」」

『ぶはははは!!ローザ。アルマはもう牛姫から鹿姫に進化したぞ。』

「あらそうなの?鹿姫?」


朝から思いがけない展開にはなりつつも、ローザとパーティメンバーとの面会は円満に終わった。

だが、思わぬ爆弾を落とされた形となったアルマの心は大荒れだ。

とにかくジョーガサキから事情を聞くべく、迷宮内のセーキョー村へと向かうことにした。


買い物を済ませたらジョーガサキ亭に戻るというローザとは途中で別れ、アルマ一行は迷宮へと向かう。

途中、以前にランダが張った結界の状態を確認した後、従業員通路を通ってセーキョー村へ。

セーキョー村は驚くほどにぎわっていた。


「これ、全部組合員なのか?」

「そうみたいっすね・・・。」


マイヤとシャムスが驚きの声をあげる。

見たところ、ずいぶんと若い冒険者が多い。

どうやらセーキョー村は若手の研修施設のような役割を担っているようだった。

アルマが牛姫だと気づく冒険者もいないので、その点では安心だ。

と、そこでアルマに声がかけられる。


「おう、小娘ども。もどったのか。」


声の主は、以前シャムスとランダの武具をつくってくれた鍛冶師ヘルッコだった。


「ヘルッコさん!お久しぶりです!」

「しばらく顔出せなくて申し訳ないっす・・・。」


アルマとシャムスが慌てて挨拶をすると、ヘルッコは気にしてないとでも言うように掌をヒラヒラさせる。

だが、見た目はドワーフのヘルッコがやると、それはそれで妙な威圧感があるのだ。


「いやいい。町を離れることも、離れた理由も聞いてたからな。」

「鍛冶師のヘルッコさんが、なぜセーキョー村に?」

「ああ、若え奴らはいい武器を持てねえし、すぐ武器をダメにするからな。それに村の開拓にも色々と金具や工具が必要になる。セーキョー専属鍛冶師ってことで、しばらくはここに詰めてんだ。」

「ほえええ、そんなことになってたんですねえ。」

「そんで、そっちは?新しくメンバーが増えたのか?」

「あ、ああ、マイヤ・アールブルだ。よろしくなおっさん。」

「武器は?弓か?」

「あ、あたしはその、今は支援だ。杖を使ってる。」

「見せてみろ。」

「ああ・・・これだ。」

「ほぉ、迷宮産か。だが、弓も使えるんだろう?」

「そ、そりゃまあ、エルフだしな。」

「お前ら近いうち、顔出せ。のっぽの姉ちゃんの武器を見繕ってやろう。あとランダの言ってた錫杖?てのも試しに作ってみたのがある。シャムスの斧もマルテもどうせ大した手入れはしてねえだろ。見てやる。」

「わあ、ありがとうございます!」

「おう。近いうちに必ず来いよ。儂は基本的にここにいるからな。」


言いたいことを言ってヘルッコは去っていく。

だがアルマたちにとっては願ったりなので、文句はない。


その後、アルマたちはおっさん幽霊ジナイダたちの供養塔に立ち寄り、献花を済ませた後、セーキョー村の生協出張所へ向かう。

だが、そこにジョーガサキの姿はなく、受付にいるのは新人職員のルスラナだった。


「ルスラナさん。こんにちは!」

「アルマ・フォノンさん、みなさん、お久しぶりです。戻って来られたという報告は聞いておりましたよ。」

「そ、そっすか・・・。てか、ルスラナさん?」

「ずいぶんと・・・その、お疲れのようですが?」

「・・・ええ。皆さんがオーゼイユで派手に暴れた件で、私は上流の川をせき止める役目を負わされましたから。その後も、ジョーガサキさんが皆さんのいた島に駆り出されたりで、穴埋めが大変でしたので。」

「「「「すすす、すみませんでした!!!」」」」


思わぬところで迷惑をかけていたと知り、恐縮するアルマたち。

だがルスラナも嫌味をぶつけたことで溜飲がさがったのだろう。

そこからは普通の対応に戻る。


「それで、皆さんが来られたのはジョーガサキさんに面会するためですか?」

「は、はい。」

「生憎ですが、ジョーガサキさんは今ギルドマスターに呼び出されて町に戻っております。おそらくその件で、皆さんも呼び出しを受けることになると思います。」

「ふえ?何かあるんですか?」

「ジョーガサキさんは、王都から呼び出しを受けたようです。そして、ジョーガサキさんを王都に送り届けるための護衛について、皆さんに指名依頼が出されることになるかと。」

「「「「えええええ!!」」」」


ラスゴーに戻ってきたばかりなのに目まぐるしく変わる状況に、アルマたちは驚きの声をあげることしかできなかった。


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