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5-8 大潮引きの夜

「いないって、いつからですか?」

「わからない。タオタオモナの駆除にだいぶめどがついたから、今家に戻ったら・・・。たぶん、洞窟に向かったんじゃないかと・・・。」

「そうでしょうね・・・タルガットさん、私、ちょっと行ってきます。」

「案内するわ。」


ランダとエレナが動こうとするのをタルガットが止める。


「まてまて。洞窟の辺りがどうなってるのかもわからねえのに二人じゃ危険だ。村の方はもう船のやつらに任せても問題ないだろうから、俺たちも行こう。」

「そうね~、それがいいかも。」

「ちょっとまってろ、話を通してくるから。」


タルガットが村の若者と船長に話をし、了解を得る。

エレナの案内のもと、全員で海岸へ走る。だがその道中にも次々とタオタオモナが現れ、進行を妨げる。


「こんなこと・・・大潮の時にもここまで陸にあがってくることはなかったのに。」

「全部は相手にしてられねえ。エリ、アルマ、マイヤ、魔法で蹴散らしてくれ!」

「は~い。」

「了解です!」

「あたしにまかせろ!」


3人にサカナのシノさんも加わり、交互に魔法を撃って道を拓く。

なかなか進めないが、村に押し寄せる数を減らすためにも、ある程度は削った方がいい。

アルマたちは焦る心を抑えつつ、進んでいった。


途中からは手数が増え、進行速度も上がる。

ウエラ・アウラだ。

エレナは気づかなかったが、アルマたちは即座にそのことを理解した。

そういう認識で見れば、当たり前のように最前線に加わっているあの少年がそうだろうと察しが付く。

一度きちんとウエラ・アウラと対面したことで耐性ができつつあるのかもしれない。

とはいえ、ともすれば認識が揺らぐので確証はもてないのだが。


そして。

ようやく港が見えてきた。


「僕が手伝えるのはここまで。どうか。どうかサラばあちゃんをよろしく。」


ふと、そんな声が聞こえた気がした。

不意に魔物の群れの圧力が増す。そこでアルマたちは、ウエラ・アウラが離れたことに気づく。

だが、彼がいようといまいとやることに変わりはない。


「マルテちゃん、いくよ!ぴかぴかどんどん、ぴかぴか!」

『どどーん!』


アルマの放った特大の光刃がタオタオモナの群れを蹴散らす。

その空隙を、一同は一気に駆け抜ける。


暗がりの中。

エレナが持つ松明の明かりだけが辺りを照らす。


港は完全に潮が引いて陸になってしまっていた。

アルマたちが乗ってきた船は、片側の舷が数か所縄で固定され倒れないようにされていた。

(かわら)もこうなることを想定して強度をあげているようだ。

そして、顔を出した海底には、まだところどころにタオタオモナの姿があった。


「こっちです、みなさん!」


エレナの誘導でさらに進む。島の奥にある山の方向へ海岸沿いに進む形だ。

普段は海底となっている岩場を、タオタオモナを排除しながら進むと、前方に大きな洞窟が見えてきた。あれがご神体のある洞窟だろう。


「誰か倒れてるっす!」

「ばあちゃん!」


洞窟の手前、やや高い岩の上に倒れている人影が見える。

おそらくここまで来たものの、タオタオモナの襲撃から逃れるために岩に登ったところで力尽きたのだろう。


「ランダとマイヤはエレナと一緒にサラさんの元へ!残りは周辺のタオタオモナの相手だ!」


即座にタルガットが指示を飛ばす。

しかし、そこで洞窟から新手が現れる。

馬のような上半身と、魚のような下半身を持つ魔物。

ケルプだ。


「キュィイイイイ!!」


ケルプの(たてがみ)が光を放つ。


「水弾が来るぞ!マイヤ、サラさんとエレナさんを守れ!」

「せ、聖盾!」


直後、無数の水弾がアルマたちを襲う。

あたりかまわず放たれる無数の水弾に周辺のタオタオモナが巻き込まれるが、お構いなしだ。


「ちょ、ちょっとなにあれ~。オーゼイユの時の奴より全然強いんだけど~。」

「文句は後だ!なんでもいいから足を止めろ!」

「わかってるわよ~。」


タルガットの指示のもと、アルマとシャムスはケルプを包囲すべく広がる。

エリシュカと、ネズミの雪さんが遠距離攻撃でケルプの動きを制限する。

オーゼイユで「三ツ足の(きん)()」がとった戦法だ。

だが、その時と比べて手数が足りないうえ、ケルプの速さも手数も段違いで抑えきれない。


「エリ!足がとまってねえぞ!」

「精一杯やってます~!」

「このままじゃ埒が明かねえ。アルマ、シャムス、エリの合図で遠距離攻撃!即座に俺が突っ込む!」

「「はい!!」」


タルガットが叫ぶ。そこでアルマがふと思いつく。


「マルテちゃん、あれできないかな?」

『ああん?あれってどれだ?』

「あのお馬さんがやってるやつ。いっぺんにたくさんの魔法撃ってるでしょ。」

『ほほう。いいだろう、やってみよう。アルマが「ぴかぴかぴかぴか、ぴかぴか」つったらあたしが「どどどーん」だ。』

「私ぴかぴかすぎない?」

『お前はぴかぴかすぎるくらいがいいんだ。輝いてるぜアルマ。』

「微妙に馬鹿にされてる気がする!」

「まじめにやれアルマ!」


最後はタルガットに怒られたものの、魔法発動に向けてイメージを高めるアルマ。

そして、縦横に走り回るケルプを巧みにタルガットたちの真ん中に誘導していたエリシュカが叫ぶ。


「今よ~!」

「ぴかぴかぴかぴか、ぴかぴか!」

『どどどーん!』

「ごうり、ごうら、ごうごうと(たぎ)れ。その根源たる力は不撓(ふとう)不羈(ふき)なる業火よ、敵を滅ぼせ。」


その瞬間、無数の光の欠片と火の玉、弓矢、針がケルプを襲う。

突然の飽和攻撃に逃げ場を失ったケルプが足を止め、その瞬間を見逃さずタルガットが突っ込む。


「おらああ!!」


タルガットはケルプとの距離を瞬く間に詰め、即座にその首を落として見せた。


「やった!」

『ぶははは!見たか魚馬野郎!!』


アルマとマルテが喜びの声を上げる。

だが、他のメンバーはそうではなかった。


「やったじゃないっすよアルマ!」

「こっちまで飛んできたぞ、馬鹿アルマ!」

「ええええ!私、怒られてる!」


シャムスとマイヤが怒りの声を上げる。

慌ててアルマが見渡すと、エリシュカもランダも、タルガットでさえも冷たい視線をアルマに向けていた。

アルマの放った無数の光の刃は、ケルプも真っ青の無差別攻撃となって他のメンバーを襲っていたのだ。


「・・・ケ、ケガがなくて何よりです・・・。」

『ん?・・・悪いのはアルマだぞ?』


こうして。

アルマとマルテの新技は、できた瞬間に禁止されてしまったのだった。


お読みいただきありがとうございます!

後数話で5章も終わります。

皆さんの心に残る章にできるよう、がんばっていきます。


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