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5-5 2日目

『いくぞアルマ!』

「ほいきた!ぴかぴかどんどん、ぴかぴか!」

『ばーん!』

「いただきっす!」


今、アルマたちは島の奥、山の中腹にやって来ていた。

島の若者はあまり戦闘は得意でないということで、魔物の間引きをしてほしいと村人たちに頼まれたのだ。

エリシュカは村で作業。ランダもサラばあさんから巫女について話を聞きたいということで村に残っているので、アルマ、シャムス、マイヤ、タルガットの4人だ。


「アルマはもう大分、光の盾を使いこなせるようになってきたな。」

「えへへ。そうですかねえ?」

『お前だけの成果じゃねえぞこら、あたしを忘れんな!』

「もちろん、愛してるよマルテちゃん!」

『わ。ちょ、口を近づけるな気持ち悪い!』

「ここからは、アルマが盾役でいこうか。魔物の攻撃はいなすだけでいい。俺とシャムスのいる場所を意識しろよ?」

「はい!」

「タルガット、あたしは?」

「マイヤはまあ・・・そのままでいいんじゃないか?」

「なんだよそれ!もっとなんかあるだろう!」


いつもよりも戦力的には劣るのだが、現れる魔物は兎や狼など、ラスゴーでもさんざん相手にしてきた魔物がほとんど。

アルマたちにも余裕があるのか、いつもより明るい雰囲気だ。


マイヤはこの島に来てから、タルガットによく絡むようになった。

オーゼイユへの旅の間離れていたことと、今回の旅にはエリシュカも同行しているということで、彼女の中の何かに火がついたようだ。

だがそれが空回りしていることに、当人だけが気づいていない。


ウエラ・アウラについては、山中で昼食を食べているときにやっぱり現れた。

もちろん気づいたのは食後に食器を片付けているとき。

一応の対策として、パーティメンバーだけは印のついた食器を使うこととし、さらに互いに名前を呼びあうようにしていたのだが、無駄だった。

なぜか食器は印のついたものが食後にひとつ余っていたし、呼んだはずの名前を思い出すこともできない。

やはり現れているときには、どうしてもその存在に気づくことはできないようだった。

だが、ウエラ・アウラについてはすでにヌアザ神を通じてジョーガサキからの策を授かっている。ひとまずは気にしてもしょうがないと、アルマたちは気持ちを切り替えていた。


「右前方に魔物っす。おそらくこれは・・・イノシシっすね。」

「イノシシは珍しいな。いいかアルマ、正面から受けるなよ?」

「了解です!」

『おっしゃ、どんどんこい!』


アルマとの合唱魔法を使えるようになってから、マルテはすっかり戦闘狂だ。

これまでの音マネではなく、直接戦闘に関われるということが嬉しいらしい。

ただ逆に、戦闘がない時期が続くと不機嫌になるため、扱いにくさはこれまでとそう変わってはいないのだが。


あまり戦闘経験のない魔猪との戦闘だったが、アルマの盾さばきに若干の不慣れさがあったこと以外は、さほど苦労することもなく倒してしまう。


「よおし。これくらい狩っときゃ十分だろう。続きは明日だな。解体して、肉は持ち帰れるだけ持ち帰ろう。」

「「「はい!」」」


タルガットの指示でシャムスが手際よく解体。こういった作業は、いつの間にかシャムスの役割になっていた。

魔導鞄に詰めれるだけの肉を収めた一行は、来た道を戻っていく。

帰り際にはタオタオモナを見つけ次第捕獲。鞄には入らないので、こちらは前日エレナが見せてくれた要領で鋏を縛って、そのまま持ち帰る。


大量の獲物をぶら下げて村に戻ったところ、村の老人たちがわらわらと集まってくる。

皆、アルマたちが狩りに行ったことを知っているので、成果が気になるのだろう。

村人たちの出迎えを受けて、アルマが獲物を掲げて見せる。


「ただいま戻りました!」

「おお、姉ちゃんたち、今日も大漁だなあ。」

「肉もいっぱいとってきました!全部放出しますので、料理をお願いします。」

「こりゃ、今日も宴だな。」

「この調子じゃ、次の商船が来るまで酒が保たねえぞ。」

「細けえことは気にすんな。ほれ、準備すっぺ。」


あたあたと慌ただしく活気づく村の様子に、アルマたちも笑顔がこぼれる。

その場でタオタオモナを村人たちに渡していると、エレナがやってきた。


「皆さんお疲れ様です。お風呂を用意してありますよ。ぜひ使ってください。」

「おお、エレナさん気が利くっす!」

「んじゃ、あたしエリシュカ呼んでくるわ。」

「ああ、俺が呼んできてやるよ。お前らは先に行っとけ。」


タルガットがエリシュカを呼びに行き、アルマたちは村の共同調理場に残りの食材を置いた後、村長宅へ向かう。

その途中、果樹林越しに海の様子が見えた。

海の変化に最初に気づいたのはマイヤだった。


「見ろよ。もう潮が引き始めてる・・・。」

「わあ、ほんとだ!岩がにょっきり!」

「そう。大潮引きのときには、丸2日をかけて潮が引き続けるの。一番引くのは明日の晩。そしてまた2日かけて、元の潮位まで戻るんだ。」


エレナが少し誇らしげに説明をしてくれる。

島に興味を持ってもらえるのが嬉しいのだろう。


「自然の雄大さを感じるっすね。」

「今見えてる一番向こうの岩礁があるでしょ?あそこまで歩いていけるようになるよ。」

「ひょえええ!」

「大潮引きの神事ってのも、その時にやるんすか?」

「うん、そう。」

「こりゃあ、明日は早めに準備して、大潮引きに備えないとな!」


初めて目の当たりにする自然の神秘。その期待に胸を膨らませながら、アルマたちは村長宅へと向かった。


村長宅の風呂は、来客時に提供することを想定しているのか、かなり大きく、アルマたち全員で入ってもまったく問題ない。

さすがに大風呂を二つは用意できないので、タルガットは一人、空き家で体を拭くだけなのだが。


アルマたちが体を流していると、遅れてエリシュカ、さらにサラばあさんを支えてエレナとランダもやってきて、一気に賑やかになる。

サラは足だけを湯船につけ、他の面々は湯船につかって団らんの時間だ。


「サササ、サラさん、顔だけじゃなくて体も若い!」

「こら~、アルマ、失礼よ~。」

「あらあら。いいのよ。そういってもらえると嬉しいわ。」

「その女子力の秘訣をぜひお教えください!」

「それはあたしも聞きたいぞ!」

「あらあら・・・。」


ここ最近とみに女子力が気になるアルマとマイヤが激しく興味を示す。

それを見て目を丸くするサラだったが、嬉しそうな、寂しそうな、なんとも言えない表情で言う。


「一応、最後の巫女として、お勤めは果たしていたから。規律正しい生活のおかげかしらね。それと、もう一つはロートスの実かしらね。」

「ロートス?美容効果があるんですか?」

「うふふ。そうじゃないの。ロートスはたくさん食べると、眠くなっちゃうでしょう?実はそれだけじゃなくて、もうひとつあるの。」

「それは?なんだ?」


アルマとマイヤが食いつく。

だが、他の面々も気になるようで、聞き耳を立てていた。


「実はロートスはね、嫌なことを忘れさせる効果があるみたいなの。」

「嫌なことを・・・忘れる?」首をかしげるアルマ。

「つまりあれか、ストレスのない生活を送るのがいいんだな!」

「そういえば村の人も、あんまり苦労してるって感じじゃなかったっすよね・・・。」

「そう。それがロートスの本当の力。だけど、それはいいことばかりではないのかもしれないわね。」

「どういうことですか?」


問いかけるランダを、サラは真っすぐに見つめてほほ笑む。


「たとえどんなに嫌なことでも、覚えておいた方がいいこともあるってことよ。」


その言葉に、どれほどの歴史と思いが込められていたのか。

それをアルマたちには量ることはできない。

けれどその言葉は、強くアルマたちの心を打った。


「あらあら。なんだか余計なことを言っちゃったかしら。それじゃあお詫びに、ひとつ面白いことを教えてあげる。」


いたずらっぽく笑うサラに、ランダが反応する。


「なんでしょうか?」

「ウエラ・アウラはね。なぜか、お風呂にだけは現れないのよ。」

「え?なぜですか?」

「さあ、どうしてかしらね。・・・それじゃあ私はあがります。皆さんはごゆっくり。お食事も楽しんでくださいね?」


その後はゆっくりと湯船で疲れを洗い流し、さっぱりしたところで村の広場へと向かう。

すでに村の老人や子供たちが集まって、わいわいと騒ぎながら宴会の準備を進めていた。

そこに遅れて村の若者や商船の連中が戻ってきて、たちまち宴会に突入していく。

どうやら商船の連中は果樹林の方を手伝っていたようだ。

タルガットは船員たちに呼ばれ、酒の相手をすることにしたらしく、マイヤが少し寂しそうにしていた。


さすがに2日連続とあって、前日ほどの騒がしさはないが、前日には供されなかった肉料理もふるまわれ、誰もが楽しそうだった。

と、ランダがエレナに言う。


「もしお加減がよろしければ、サラさまともう少しお話がしたいのですけど。」

「全然問題ありませんよ。じゃあ、ちょっと料理を適当にもらっていきましょう。」


ランダは村の巫女という仕事について色々聞きたい様子で、エレナと連れ立って村長宅へと向かった。

一方のアルマは。


「アルマ・・・何してるんすか?」

「いや、この中にウエラ・アウラがいるかもでしょ?油断できないなと思って。」


キョロキョロしていた。


『お前はつくづく残念だな。』

「な、なんでよ!」

「アルマ、そんなじっくり見たところで、村人の顔も全部は覚えてねえんだから、見分けなんかつかねえだろ。」

「そ、そりゃそうだけどさ。なんか手掛かりくらい見つかるかもじゃん。」

「たいがいのことは、この村の人たちもさんざん試したって~。」

「やっぱそうなんすね。あ、エリシュカさん、ジョーガサキさんに言われたものは?」

「ばっちりできてるわよ~。果たしてあんなのでウエラ・アウラが捕まえられるのかわからないけど。まあ、結果は明日のお楽しみね~。」


こうして、島での2日目も比較的おだやかに過ぎていった。


お読みいただきありがとうございます!

さあ、お待ちかねの連休ですね!

お仕事ある方はご苦労様です!お休みの方はコロナに気を付けてお楽しみください!


連休中の更新はちょっとまだ不明ですがw

がんばって少しずつでも書き溜めたい。。。

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