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1-6 パーティを組む

俺とパーティを組んでみるかい、というタルガットからの提案を、アルマは二つ返事で了承した。


タルガットは銀級の冒険者。マルテのことがなかったとしても、願ってもない相手だ。

前回ギルドで会ったときは、素材採取に必要な道具を揃えるのを手伝ってもらった。その時にも色々とアルマの知らない知識を教えてくれた。

道具のことだけでなく、素材の探し方や戦闘のコツなど、教えてもらいたいことはいくらでもある。


「でも、私なんか、足手まといでしょう?」

「気にすんな。これも何かの縁だ。後輩を育てるのも、先輩冒険者の義務ってやつさ。」

『ヘタレが偉そうに。』

「マルテちゃん黙って。ありがとうございます!」

「問題はジョーガサキだけど・・・まあ、自分とこの組合員を育ててやるってのに、ダメとは言わねえだろ。」


そんなわけでその後二人は冒険者ギルドに向かった。

アルマは依頼達成の報告が遅れたということでネチネチと嫌味を言われたが、意外にもパーティ活動についてはすんなりと受け入れられた。相変わらず嫌そうな顔ではあったが。


「生活協同組合の方は、急ぎの依頼はあと2件だけですから、それさえ受けていただけるのでしたら構いませんよ。ただし、今後も5日に1件から2件は依頼を受けていただきたいので、その日はパーティでの活動を休みにしていただけると助かります。長期の不在時は事前にご連絡ください。」


二人は、ジョーガサキのあっさりとした様子に若干の不安を覚えたが、とりあえず了承を得たということで納得した。そして、パーティとしての活動は3日後からとすることを決めると、それぞれの家路についた。

アルマは2日間で急ぎの依頼とやらを終わらせなければならない。


翌日、アルマが受けた依頼は下水溝内の魔物の調査と罠の設置だった。狭いし、臭いし、暗いしで大変だったが、詳細な地図があったので迷うことはなかった。ワリクという大型のネズミがでると聞いていたが、ランタンの灯りを嫌ったのか、襲ってくることはなかった。


翌々日の依頼は、町の東側を流れる川周辺の雑草刈り。放置しておくとこの雑草を餌にする巨大なミミズのような魔物が繁殖してしまうのだという。雑草を刈った後は、逆に魔物が嫌がる益草の種を蒔いておく。


こうした依頼の一つひとつが、アルマにとっては新鮮で楽しかった。マルテは戦闘がなかったため不満そうだし、体力的にはきついのだが。


そして、さらに翌日。いよいよ今日がタルガットと組む初めての日となる。アルマは意気揚々と冒険者ギルドへ向かう。

そこでタルガットと落ち合い、一緒に依頼を選ぶ予定だ。


道中の露店で、ロルヤという、つぶした豆とひき肉をまぜ衣をつけた揚げ物を見つけたので購入。冒険者ギルドの前でつまみながらタルガットを待つ。

すると、ほどなくしてタルガットが眠そうな顔でやってきた。


「タルガットさん、おはようございます!おひとつ、いかがですか?」

「おはよう嬢ちゃん。ありがとう、いただくよ。」

『ヘッポコ冒険者は食べるものも貧相だな、おい。』

「マルテちゃんも食べられたらいいのにね。食べる?」

『変なもの押し付けんな!』


それぞれにロルヤを頬張りながら、冒険者ギルドへ。まずは依頼を見繕うために掲示板へと向かう。


「今日はまあ、初日ってことで、これなんかどうだい?」


と、タルガットが指さしたのはラスゴー迷宮3層の魔物からとれる素材採取の依頼だった。


「め、迷宮・・・!」

「なんだ嬢ちゃん、迷宮は行ったことなかったか?」

「いえ、あります。が、嫌な思い出が・・・・。」

「そんじゃあ、その嫌な思い出を払拭しに行こう。」

「そうですね・・・はい、お願いします!」


二人は依頼書を持って受付へと向かう。

朝の受付も比較的人が多いが、まだまばらで、夕方ほどではない。そして、ジョーガサキの受付は、当然のように空いていて、ジョーガサキ本人はいつも通りの鉄面皮・・・ではなく、なぜか悪魔のような笑みを浮かべて冒険者を見ていた。


「おいジョーガサキ。その呪いをかけられそうな笑みを止めろ。」

「おはようございます、タルガット・バーリンさん。愛想よくしろとおっしゃったのはあなたでしょう。」

「愛想をふりまいてたんだ・・・。」と、アルマ。

「ち・・・俺が悪かったよ。ジョーガサキには必要ない助言だった。」

「そうですか。では止めます。それはそうと、お二人にお願いがあるのですが。」


肩を竦めるタルガットの言葉を受け、いつも通りの嫌そうな顔に戻ったジョーガサキが言う。

ジョーガサキからのお願い。嫌な予感しかしない。身を固くしてアルマが尋ねる。


「お願いですか?」

「大したことではないです。お二人ともこちらへ。」


ジョーガサキに呼ばれて、おずおずと近づいてきたのは、獣人の少女達だった。すらりとして背が高いが、まだどこか幼さが残る顔立ち。背格好も顔立ちもよく似ているが、唯一髪の毛だけが違う。


「こちら、シャムスさん。こちらはランダさんです。」


ジョーガサキの紹介に、二人は頭を下げる。

輝くような金色の髪を短く切り揃えた、勝気そうな少女の名は、シャムス。

しっとりと濡れたような銀色の髪を長く伸ばした、利発そうな少女の名は、ランダ。


「二人はつい最近なりたての冒険者です。そして、冒険者生活協同組合の組合員でもあります。」

「えええ、そうなんですか?あ、はじめまして、アルマ・フォノンです。」

「タルガット・バーリンだ。」

「「よろしくお願いします。」」


しゃべるタイミングも声色もそっくりの二人が言う。


「見ての通り、双子です。実はこのお二人をタルガット・バーリンさんのパーティに入れていただけないかと思いまして。」

「へ?」


思いがけないお願いに、アルマはタルガットを見る。そのタルガットは目を細めて、ジョーガサキを見据える。


「やけに素直にパーティを認めたなと思ったら、そういうことか。」

「はて、そういうこととは、どういうことでしょう?」

「とぼけんな。この二人を組合に引き入れるために、俺を餌にしたんだろ。」

「え?ど、どういうことですか?」


理解が追い付かず、アルマが問う。


「いま組合に入ってくれたら、銀級冒険者のパーティメンバーになれますよとか言ったんだろ。」

「正確には、『生活協同組合に入っていただけたら、タルガットさんのパーティに入れてもらえるようお願いしてあげますよ』ですね。」

「お前なあ・・・。俺が断ったらどうすんだよ。」

「問題ありませんよ。『お願い』はもうしましたから。」

「ちっ・・・嬢ちゃんは、どう思う?」

「わ、私ですか?私はまあ・・・いいんじゃないかと。二人とも、いい子そうですし。」


タルガットは少し思案して、次に獣人の少女達に問う。


「お前らは、俺のパーティでいいのか?」

「「はい!ぜひ、お願いしたいです!」」


その答えを聞いて、タルガットは頭をガシガシと搔いて、ため息を一つ。


「こういうのは俺のガラじゃねえんだけどな・・・。ジョーガサキ、これは貸しだからな。」


こうして、タルガットとアルマ、シャムス、ランダという4人のパーティがこの日、結成されることとなった。


ようやくパーティっぽくなってきました。

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