表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/155

3-2 新たなメンバーと迷宮へ

それは、タルガットと共に迷宮での狩りを終え、自宅に戻った後のこと。

夕食の支度をしているアルマ達の元へ、大家が現れたのだ。


「やあやあ、夜分にすみませんなあ。」

「あら!大家さん、どうしたんですか?」


アルマ達の住まいは借家で、大家が親戚ということでかなり安い家賃で借りていた。その後、大家は息子の代に移り、家賃は上げられたが。


「いやなに。実はお前さんとこに新しい住人がいるって聞いたもんでなあ。」

「あ、はい。彼女たちです。」


アルマは玄関扉の前から下がり、奥にいるシャムスとランダを紹介する。


「あ!すみません。ごあいさつにもいかず。」

「いやいや、それはいいけどな。その、爺さんに言われてたし、お前さんにはこの家をかなり安く貸してるわけでな。けど、そっちの二人、うちと関係ないからなあ。」

「え!あ、はあ・・・」

「よその家を貸してる住人への手前、あんまりここだけ特別ってわけにもいかんのよ。いや、けどあんまり無理言うのも忍びない。そんでな、一人頭300コルンってことにしたげるわ。」

「ええええ!」

「いやいや。以前のことはもういいから。今月から、900コルンで頼むわ。そんだけ言いに来たんよ。ほなら、10日後に家賃取りに来るから。」


用件だけ告げると大家は帰っていった。そしてアルマは。


「き、緊急事態です!緊急事態宣言を発令します!」

『どんまいリーダー』

「落ち着いてリーダー。」

「そ、そうですよリーダー。お水でも・・・」

「こんな時だけリーダー扱いはやめてください!これは、パーティ存亡の危機ですよ!」


アルマ達は現在、森への遠征時につくった借金を抱えており、生活必需品にすら困っている有様だ。家賃の分はもちろん考えていたが、倍以上となるととても払えない。ではどうするか。


「・・・で、黒雷蛇を狩りたいと?」


前日と同じく生協売店の飲食スペースにて。アルマはタルガットに頭を下げる。


「一生のお願いですタルガットさん!無理は承知ですが、他に手立てもなく。お願いしますううう!」

「おねがいしまーす。」

「お願いいたします。」

「シャムスちゃん、ランダちゃん、心がこもってないよ!」

「私たちはまあ、いざとなったら野宿でも・・・」

「野宿はダメ!絶対!許しませんよ!」

「しかしなあ。マイヤの奴も連れて行かなきゃいけない状況では無理があるぞ。」

「そこはもう、最終的にはタルガットさんの判断で構いません。ただ、狙うつもりで迷宮を進んでたら、それなりに素材もたまるでしょうし。ここはひとつ、強化期間くらいのつもりで!つもりで!」

「わ、わかったわかった。だが無理はしないぞ。」

「はい!よろしくお願いします!」


アルマの勢いに押されてタルガットが承諾したところで、エリシュカがやってきた。後ろにいるのが従妹のマイヤだろう。

アルマ達は立ち上がって迎えようとする。だがそれよりも早くマイヤが駆け出すとタルガットに抱き着いた。


「タルガット!!!会いたかったぞおおおお!」

「わ!馬鹿止めろマイヤ!」

「な、なんぞ?」

『まためんどくさそうなのが来たな・・・』


満面の笑みでタルガットに抱き着くマイヤと嫌がるタルガット。額に手を当て、ため息をつくエリシュカ。そして状況が呑み込めず、だがタルガットが微妙に嫌がっていた意味は分かってしまい、互いに顔を見合わせるアルマとシャムス、ランダ。

こうして、当面のパーティが一堂に会することとなった。


そして。


マイヤが満足してタルガットから離れるのを待ち、互いに自己紹介を済ませ、タルガットが当面の目的を伝える。


「黒雷蛇か!いいぜ、あたしに任せとけ!お前らも大船に乗った気でいろよな!」


マイヤは快活にそう言って笑った。どうやらエリシュカとは随分性格が異なるようだ。

顔立ちはエリシュカによく似た金髪碧眼の美人で、すらりとした体つき。だが見るからに勝気そうで、というかむしろ血気盛んという言葉が似合いそうだ。


「こ~ら。調子に乗るなよ~」

「大丈夫だって。冒険者になるために、ずっと修業してきたんだ!やれるやれる!」


エリシュカは不安そうではあったが、アルマ達にとってはありがたい。ともあれ、無理のない範囲で連携を試そうということになり、パーティ登録を行って迷宮に向かうことにした。

受付はもちろんジョーガサキだ。


「それでは、こちらがマイヤ・アールブルさんの冒険者証となります。ステータスをご確認ください。」


【名 前】 マイヤ・アールブル(エルフ族)

【年 齢】 25

【階 級】 銅級

【レベル】 22

【体 力】 177

【魔 力】 301

【スキル】 剣術Lv.4、弓術Lv.5、魔法Lv.7 (火Lv.3、水Lv.7、風Lv.5、土Lv.3、木Lv.5)、気配察知Lv.2、隠密Lv.2

【固 有】 聖盾、聖援

【称 号】 

【加 護】 エイルの加護


「おお、マイヤさん強い!」

「どうだ、タルガット!見たか!すごいだろ、頑張ったんだぞ褒めてくれ!」

「お、おう。」


マイヤは見た目はアルマと同年代のように見えたが、だいぶ年上だった。だが、長命のエルフとして考えれば、それほど年上というわけでもないのだろう。

マイヤは、ステータスをタルガットに褒めてもらいたくて仕方ないようだ。そういう仕草は、実に子供っぽい。

当のタルガットは、遠くから冒険者たちの「タルガットがまたハーレムメンバーを増やしている・・・」というやっかみの視線が気になって、それどころではなかったが。


「皆さん、これから迷宮ですか?」

「はい。あ、ジョーガサキさん、これから当分は迷宮に通おうと思ってますので、生協の指名依頼はお休みでお願いします!」

「分かりました。黒雷蛇を狙うおつもりですか?」

「おつもりです!報奨金のご用意をお願いします!」

「・・・くれぐれも、無理をなさらないように・・・。」


鼻息荒く宣言するアルマに何がしかの不安を感じたのか、ジョーガサキが顔をしかめる。

だがもちろん、当のアルマは気付かない。ジョーガサキの感情の機微に(さと)いシャムスだけがそれに気づいていた。


その後、「お前らのステータスも見せろよ」と騒ぐマイヤを適当にいなして、一行はギルドを出た。アルマは現在、変な称号が生えているのでジョーガサキには見せられないのだ。

もちろんそのことは、タルガットとエリシュカにも伝えている。

エリシュカは店番があるのでその場で別れ、ラスゴーの迷宮へと向かう。

初めてパーティを組んだ時と同じく、1階層はさっさと通り過ぎ、2階層へ。


「よし、それじゃあ、とりあえずマイヤがどの程度できるのか、見せてもらうぞ。」

「おお!任せろ!」


マイヤは自信たっぷりに答えると、なんの気負いもなくスタスタと先頭を歩き出した。

右手に長剣、左手には盾。そして皮の胸当と手甲、足甲。タルガットと同じスタイルのようだ。

と、角から突然現れる小鬼の群れ。

そのうちの一匹が手に持った剣で襲い掛かってくるが、マイヤは武器も防具も構えることなく叫ぶ。


「聖盾!」


すると空中に盾が現れ、小鬼の攻撃を防いだ。これがマイヤの固有スキルなのだろう。小鬼が体勢を崩したところで、マイヤが長剣をふるう。

ボグン!と音と立てて打ち据えられる小鬼。そこを狙って別の小鬼が飛びかかるが、空中に浮いていた盾が移動し、その小鬼の攻撃を防ぐ。そこにマイヤの一撃。同じく3匹目も打ち据えるが、いずれも致命傷ではない。

倒れ伏す小鬼たちに剣を打ち下ろすマイヤ。だが、彼女にとって長剣は重過ぎるのだろう。剣がぶれてうまく切れないようで、肉片が周囲に飛び散る。

結局、切るというより殴り殺すような形で小鬼たちを倒したときには、マイヤは全身に血しぶきを浴びていた。


「どうだ!タルガット、見ててくれたか?」

「お、おう・・・。ちょっ、近寄るな!」

「なんでだタルガット!ほめろ!ほれ!」

『なんだありゃ。馬鹿娘よりひどいな。』

「いや・・・でも、強いんじゃないかな・・・。」

「な、なんと表現したらいいんでしょうか。」

「猟奇っす・・・。」


とりあえず、マイヤの実力はわかったものの、今後の活動に一抹の不安を覚える一同だった。

そして、タルガットがマイヤに告げる。


「よし、マイヤ。お前はとりあえず支援な。」

「なんでだよ!」


お読みいただきありがとうございます!

ごブックマーク、ご評価、ご意見、ご感想、ご罵倒などいただけると嬉しいです。

頑張りますのでよろしくお願いいたします!


※誤字修正しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ