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2-4 それぞれの思い

仕事忙しくて投稿が遅れました。。。ごめんなさい。

夜半を過ぎた野営地にて。

焚火に薪をくべ、火力の調整をするエリシュカの元に、眠そうに眼をこすりながらタルガットがやってくる。

この時間から朝まで、タルガットが魔物の襲撃に備えて警戒にあたるのだ。

初めての野営となるアルマたちの負担を軽くしようという判断で、この日は前半にエリシュカ、後半はタルガットが受け持つことになったのだ。


「今日はゆっくり眠らせてあげられそうね。良かったわ~。」

「ああ。明日からはそうもいかなくなるだろうし、眠れるときには寝てもらった方がいい。」

「ふふふ。やさしいのね。はいどうぞ~。」

「ん?お前これ、酒じゃねえか。」

「固いこと言わないの。だ~いじょうぶよ。ちょっとくらい。」


焚火の前に陣取るエリシュカの横に腰を下ろすタルガット。

パチパチと、薪が爆ぜる。

魔物の上げる咆哮が、遠くの方から幽かに聞こえる。


「それにしても、タルガットがハーレムパーティとはね~。あたしとのパーティは断ったくせに、妬けるわ~。」

「おいやめろ。あいつらは、たまたま一時的に組んだだけだよ。」

「ふ~ん。で、いずれまた孤高の英雄に戻るってわけ?」

「なんだそりゃ。わかってんだろ?俺は英雄にはなれないし、パーティを組むのも無理だって。」

「なるほど。そう言ってジョーガサキ君に絡みたかったんだ~。酒をあびるほど飲みながら。」

「は?なんでここであいつの名前が?」

「ジョーガサキ君に言われたから。『タルガット・バーリンさんが酒に誘ってきてウザいのでなんとかしてください』って~。」

「あいつ、戻ったら泣かす。」


タルガットはグビリと音を立てて、渡された水筒の酒をあおる。


「そんで~?たまたま組んだのには、どんな理由があったのかな~?」

「ん?」

「アルマちゃんはわかるわよ。ジョーガサキ君のお気に入りで、マルテの相棒。気になるわよね。君、ジョーガサキ君のこと大好きだし~?」

「誤解を招くような言い方すんなよ。」

「いやでも実際びっくりしたよ~。あんなに楽しそうにマルテと話せる子がいるなんて。」

「そうだな。俺も驚いた。ランダもそれなりだが、それもアルマがいるからだろうしな。」

「うんうん。で?シャムスちゃんとランダちゃんは?」

「あいつらは・・・本当にたまたまだよ。」

「はい嘘~。それならヘルッコやあたしの店に連れてこないでしょ~?」

「それは・・・。」

「ほれほれ、正直に言いなさい。」

「・・・あいつらは、アナハン孤児院の出なんだよ。」

「え?・・・ああ、そうか。あの時、生き残った子達なのか~・・・」


かつて魔物に襲撃されて滅んだ村があった。シャムスとランダはその村の生き残りだ。

そのことにエリシュカも気づいたのだろう。

しばし訪れる静寂。

その静寂に耐えられなくなったのか、タルガットは再び酒をあおろうと水筒を傾けるが、エリシュカが横から手を伸ばして水筒を奪い取る。


「な~んで、私に教えてくれなかったのかな~?ん~?」

「それは・・・あれだ。すまん。」

「んんん~?」

「・・・思い出させたくなかったんだよ。」


そう言って水筒を奪おうとするタルガットだが、エリシュカがするりとかわしたため、その手は空を切る。


「ば~か。」


その言葉は、何に対して言ったのか。

エリシュカは、タルガットを見ずにつぶやく。


「あれからもう、10年か~。」

「ああ、10年だ。」


と、エリシュカがタルガットの目を覗きこんで言う。


「あたしもあの子たちに魔法教えようかな?いいかな~?」

「そりゃかまわねえが・・・。」

「よし、じゃあそうしよう。ほんじゃ、明日に備えて、今日はもうお酒禁止ね。」

「ええ、まじか。こんな中途半端な・・・。」

「おやすみ~。」


えへへ、と笑って水筒をしまいエリシュカは立ち上がる。

水筒を名残惜しそうに見ていたタルガットは、しかしそれ以上抗議することもなく。

立ち去るエリシュカの背をしばし見つめた後、頭をガシガシとかくと、火に薪をくべる。

パチパチと、火の中で薪が爆ぜる音だけが、後に残った。


そして朝。


「おはよ~諸君。おきろ~!!」

「ふぁ!え、エリさん?襲撃ですか?」

「ちがいま~す。朝稽古のじかんで~す!」

「あ、朝稽古すか?」

「うふふ。今日からは、あたしが稽古をつけてあげましょ~。さささ、とっとと顔洗っといで~。」


妙に上機嫌なエリシュカに驚きつつ、寝ぼけた様子で互いに顔を見合わせる。

だが、元々は冒険者で、今も完全に引退したわけではないエリシュカに学べるはまたとない経験だ。すぐに準備を整える。

そして、タルガットも交えて朝稽古。型稽古と身体強化魔法などをエリシュカが指導した後は、二手に分かれて実戦形式での指導だ。

エリシュカは弓の他に杖も使えるということで、ランダに杖術の指導をしていた。


その後、タルガットが天幕を解体。女性陣は川の水で軽く体を拭いて、着替えたところで前日の夕食の残りにパンをつけて朝食とする。


「ちなみに、目的地とかあるんですかね?」

「サリムサクは、清浄な水と魔素が豊富で、昼夜の寒暖差が大きい地域に自生するって言われてるの。ラスゴーの森でその条件に合うのは、ここくらいかな~。小さな湖があって、泉もいくつか点在してる。この辺に拠点を置いて、山際を探索する感じね~。」

「なるほどー!」


アルマの質問に、植物に詳しいエリシュカが地図で示しながら説明する。


「食料の問題もあるし、長期の探索は厳しい。今日中にその拠点まで行ってしまいたい。飯を食ったらすぐに出発するぞー。」

「「おおー!」」


タルガットがまとめ、アルマとシャムスが応える。

食器を洗い、火の始末をして出発。

陣形は昨日と一緒だ。

荷物は、はぐれた時を想定して最低限の食料は各自で所持。

大きな荷物は、容量拡張と重量軽減の魔法がかけられた魔導バッグに入れてタルガットが背負う。

移動中は、エリシュカが食用・薬用・道具用に使える植物についての講義を行った。


森は教材の宝庫であり、タルガットとエリシュカの教えはすぐに使える実践的なものばかりだ。

アルマ達は一言も聞き漏らすまいと、必死に学んでいった。


一方で、出没する魔物は徐々に強くなり、数も増えていく。

タルガットだけでなく、エリシュカも参戦して対応しつつ進んでいく。


その中で特に苦しんでいたのは、ランダだった。

森の中での有効な魔法を見いだせず、魔力の配分すらできなくなっていたのだ。

だがランダは、そんな自分の状況を打ち明けられずにいた。

そんなタイミングで、再び魔物の襲撃があった。


現れたのは、黒狼と呼ばれる魔物。

ラスゴー洞窟に現れる灰狼の上位種。一頭であればアルマ達でも連携して倒せる魔物だが、それが数頭、突然、前方の岩陰から襲い掛かってきたのだ。


「アルマ、シャムス、下がれ!」


咄嗟に反応したのは、タルガットとエリシュカだった。

アルマとシャムスを下がらせ、対応にあたる。

だが、黒狼は前方にいるのですべてではなかった。

タルガットたちが前衛に立った時点で、横合いからも数頭が襲い掛かる。

狙いは、ランダだ。


「う・・・あ・・・」


迫りくる黒狼に、ランダは恐怖を覚え身を固くする。

魔力が尽きかけているうえに、有効な魔法が咄嗟に思いつかなかったのだ。


『アルマ!ランダが危ない!』


マルテが叫ぶ。

アルマは慌ててランダの元に駆け寄り、ランダをかばう様に立つ。

しかし、タルガットたちと分断されてしまう。


そこからは乱戦。

アルマは必死にランダを守った。

遠くで、シャムスの声が聞こえた。

だが、合流することはできない。

黒狼の攻撃をかわしつづけるのは無理だ。


「ランダちゃん走るよ!」


けん制しつつ、アルマとランダは深い森の中を必死に走り続けた。


お読みいただきありがとうございます!


週末はお休みでございます~!書き溜めます!

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