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7-9 伝えたいこと

ガラン・・・。

音を立てて、最後の鎧騎士が倒れる。


「・・・や、やったよ!みんな、私たちのチームワークの勝利だよ!」

『だっははは!見たか、これがあたしの実力だ!』


アルマが喜色を満面に浮かべて、他の面々を振り返る。

アルマの横に並ぶマルテは両腕を組んでふんぞり返っている。

だがアルマとマルテ以外の面々は、目を伏せてフルフルと震えていた。

と、シャムスが(おもむろ)に顔を上げて叫ぶ。


「なにがチームワークっすか!アルマは毎度毎度、なんで私の見せ場をつぶすんすか!」

「今回ばかりは私も言わせてもらいます。私とマイヤさんがどれほど苦労したかと・・・。」

「そうだ馬鹿アルマ!だいたい最初の無差別攻撃はなんだ、あたしたちを殺す気か!」

「え?え?それは相手の出鼻をくじこうと・・・てか、マルテちゃん人化したんだよ?すごくない?」

「すごいけど、それはそれっす!」

「ええええ?」

「マルテさんキレイです。けど、マルテさんも同罪です。」

「そうだ。むしろそんなことができるんなら最初からやればいいだろうが!」

『なっ!必殺技は最後に決まってるだろうが!』


なぜかケンカをはじめる面々。

タルガットとエリシュカは、呆れを含んだ笑いを顔に浮かべてそれを見つめていた。

その隣にいるエヴェリーナは、なぜか涙を瞳に浮かべていた。


アルマ達を止めたのは、鎧の騎士たちだった。

アルマたちによってバラバラにされたはずの鎧たちが再び動き出したのだ。

思わず身構えるアルマ達一行。

タルガットとエリシュカも即座にアルマたちの元に駆け寄って警戒する。


だが、鎧たちはすでに戦闘する意思はないようで、それぞれに剥がされたパーツを拾い集めはじめる。

どうやらそれらのパーツは一定の攻撃を受けると外れる仕様になっているらしく、鎧たちは何事もなかったかのように元の姿にもどっていく。


そして、すべての鎧が元通りの姿になると、壁沿いに並んでいた鎧たちも集まり、列をつくった。

それと同時に、試練を乗り越えた者を歓迎するかのように奥の壁に扉が出現する。


「どうやら、ここでの試験は合格ってことみてえだな。あの扉の奥に向かえってさ。」

「うふふ~。もしかして、もっと難しい試験がまってるのかしら~?」

「あり得るな。」

「え?ちょっと、タルガットさんにエリシュカさん?」

「ここで心配してもしょうがないっす。」

「そうね。行ってみましょう。」

「ああ、行こうぜ!」

『おし、あたしが先陣を切ってやろう!』

「いや、マルテちゃんはここまでだからね?私の魔力もたないから。」

『なに?あっ!』


発現していた人化マルテを槍に戻すと、アルマたちは整列する鎧たちの間を通って扉へと向かった。

タルガットとシャムスが扉を調べ、罠がないことを確認する。


「罠はねえな。アルマ。お前が開けろ。」

「はい!」


タルガットとシャムスが横で警戒の体制をとり、アルマが扉を開ける。

扉の先は、小さな小部屋になっていた。

アルマたちが入ったらそれだけで一杯になってしまうほどの小部屋だ。

小部屋の奥には小さな文机が置かれており、その机の上には、小さな箱が置かれていた。

さらに天井に付近には、巨大な魔石が浮いている。


「これって、迷宮核じゃないの~?そっか、迷宮が集める魔素を鎧たちの動力に変換してるのね~。」

「そ、そんなことができるのか?」

「できるんでしょうね。目の前にあるし~。」


エリシュカの指摘に、タルガットが驚きの声を上げる。

この魔石が鎧たちの魔力の原動力になっているらしい。


「・・・どうやら、試練はおしまいか?」

「んん~。あくまで第一段階は、てことみたいね~。」


エリシュカが机の上に置いてある箱を指さす。

アルマには、その形状に覚えがあった。


「これって・・・この磐座に入るのに使ったあの魔道具と一緒ですよね?」

「みたいね~。」

「次の試練への鍵を手に入れただけってことっすか?」

「ま、まじかよ・・・。」


アルマはゆっくりとした歩みで部屋に入り、机の上にあった小箱を手に取る。

小箱の下には、2通の手紙が置かれていた。

はるか昔に書かれたものであるはずなのに、なぜかその手紙はたった今認められたかのようだった。


「これは・・・どうやら私宛てみたいですね。そしてこちらはエヴェリーナさん宛てです。」

「おや?私に?」


エヴェリーナは手紙を受け取ると、その場で読み始める。


「・・・今更こんなことを。まったく、死んだ後も勝手な男。」

「何が書いてあったんですか?」

「槍の後継者が現れたら私は用済みだから、村から出て行けってさ。」

「ふぁっ!!」


思ってもみなかった内容に、アルマが素っ頓狂な声を上げる。


「でも・・・エヴェリーナさんがいなくなったら、村の結界が消えてしまうんですよね?」

「ああ、それならあの鎧たちが代わりをしてくれるらしいわね。それなら、ここを守護する必要はなくなるからね。変なところだけ用意周到だこと。」


ランダの問いに、エヴェリーナがため息をつきながら答える。

その様子を、アルマは複雑な思いで見つめていた。

アルマはマルテの人化を為すために、エヴェリーナからバリガンの母メルローサの記憶をもらった。

だがそれだけではない。エヴェリーナとバリガンの出会いや別れの記憶も見ているのだ。

だからこそ、村を出て自由になれというバリガンの気持ちもわかる。

しかしエヴェリーナからすれば、それはバリガンからもう必要ないと言われているように感じられるのかもしれない。


「エヴェリーナさん・・・。」

「アルマ、変な気を遣うんじゃないよ。お役御免になったところで、私には行きたいところも見たいものもない。結界をつくる必要もないってんなら、後はのんびり過ごすだけさね。」

「そうですか・・・。」

『・・・・。』

「それよりも、数百年越しに現れたバリガンの後継者の誕生をお祝いしなくちゃいけないね。ほら、こんなかび臭いところは出て、おいしいものを食べましょうか。」


アルマたちはそれ以上かける言葉もなく、試練の間を後にした。

だが、磐座を出たところでアルマたちを待ち構えていたのは、意外な男だった。


「ジョジョジョ、ジョーガサキさん?なんでこんなところに?」

「なぜなら、あなたたちがいつまで経っても戻ってこないからですよ。アルマ・フォノンさん。」

「いやいや、結界あったでしょ?普通はたどりつけないんですよ、ここ?」

「何度も言わせないでください。私は鑑定スキルを限界まであげてるんですよ。」

「ジョーガサキさんの鑑定スキル万能すぎない?」


アルマの声に答えるのは、いつもよりも不機嫌そうな、むしろ凶悪ともいえるオーラを漂わせる男。

ジョーガサキである。


「いやだって・・・、セーキョーの立ち上げ準備はどうなったんです?」

「・・・あの町には、生協は必要ないようです。」


どうやらジョーガサキの方でも問題が発生していたらしい。

そして、それがジョーガサキを不機嫌たらしめているようだった。

それに気づいた一同は、互いに顔を見合わせる。

エヴェリーナだけが、状況を理解できず、目を瞬かせていた。


お読みいただきありがとうございます!

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