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6-4 新しい武器

「アルマ、左から回るっす!」

「了解!ぴかぴかどんどん、ぴかぴか!」

「させないわよ~。」

「アルマあぶない!聖盾!」

「今度はこっちがお留守だぜ!」

「どへええ!!」

「シノさんサポートを!」


ラスゴーの町に戻って3日目の早朝。

アルマたちは早くも朝稽古を再開していた。

今行っているのは、タルガット&エリシュカ対アルマたちによる集団戦だ。

オーゼイユ、ユグ島で経験を重ねたことでアルマたちの連携も洗練され、さすがにタルガットひとりでは対応しきれないほどになっていた。


とはいえ、タルガットとエリシュカが揃うとまったく相手にならないのだが。

金級にも届くといわれる二人との差はまだまだ大きい。

だが、学ぶべきものが多いという事は、即ちまだまだ成長できる余地があるということでもある。

アルマたちは、自分たちが着実に成長していることに手ごたえを感じていた。

だからと言って勝てるほど甘くはないのだが。


「ほれ。これで終わりだ。」


タルガットを抑えようとすればエリシュカに魔法でかく乱される。

かといって、エリシュカに狙いを絞れば、エリシュカに到達する前にタルガットに個別に撃破されるだけだ。

個々を二手に分かれて倒すには力量が足りない。

結局この日も、これといった決め手を欠いたまま個別に崩され、きっちり全員が被弾したところで集団戦は終わったのだった。


「マイヤとランダはだいぶ良くなってきたな。常に広く見ることを忘れるな。支援している間も常に次の動きを考えろ。」

「「はい!!」」

「アルマとシャムスはもう少し相互の連携が必要ね~。盾役と攻撃役と明確に分けるのもいいけど、二人ともどちらの役割もできるんだから、もっと柔軟に動けるようにね~。」

「「はい!」」


朝稽古のあとは、全員でアルマの家に立ち寄って身支度を整えた後、町の食堂へ移動して朝食。

以前、この町を離れる前は毎日行っていた習慣のようなものだ。

こうしてそのままの流れを改めてなぞってみると、自分たちの町に戻って来たのだという妙な感慨がある。


町の市場を通り、その途中にある食堂へ。

市場や食堂ではまだ時折アルマに対して誰何(すいか)するような視線を向けられることはあるが、直接「牛姫か」と聞かれるようなことはない。

髪を切ってまで行った変装は、どうやら功を奏しているようだった。


「王都か~。行かなきゃだめなのかしら~。」

「ジョーガサキさんと私はベリト絡みだから断れないって話しでしたけど・・・エリシュカさんはどうなんでしょうね?」アルマが答える。

「なんだよエリシュカ。王都に行きたくない理由でもあんのか?」

「ん~。まあちょっと苦手な奴がいるんだよね~。てか、マイヤもでしょ~?」

「げっ!そうか・・・あいつ王都にいるのか・・・。」


朝食をとりながら話題にのぼるのは、昨日クドラトから聞いた王都出向の件だ。

エリシュカはこの場で初めて聞いたらしく、難色を示していた。

どうやらエリシュカとマイヤが会いたくない存在が王都にいるらしい。


「タルガットは~?どうするの~?」

「俺か?クドラトのおっさんから直で頼まれちまったし、行くつもりだけど・・・。」

「そっか。それじゃあ私も行こうかな~。」

「エ、エリシュカはムリして行かなくてもいいんじゃないかな?」

「マイヤ~?そんなこと言って、何をたくらんでるのかな~?」

「な、なにも別に。」


タルガットにちらちらと視線を投げながら、頬を染めるマイヤ。

当のタルガットは苦笑いを浮かべていたが。


「エリシュカさんが来てくれるんなら心強いです!」

「私らじゃ、ジョーガサキさんを止められないっすからね。」

「そうね。道中、何があるかわからないし。」

『ああ。ワクワク担当もいるからな。』

「そうね。ワクワク担当とジョーガサキさんの二人がかりだものね。」

「うん、シャムスちゃんとランダちゃん、マルテちゃんも、あとで話し合おうか?」

「とにかく、王都に行くならもう少し装備を整えねえとな。ヘルッコのおっさんにちゃんと見てもらえよ?」タルガットが釘をさす。

「あ、はい。今日これからセーキョー村に向かうつもりです。」

「それなら防具も見直そうか~。今日じゃなくてもいいけど、また黒雷蛇でも仕留めてきたら安くでつくるわよ~。」

「おおお、それいいですね!」


とりあえず、今日のところはセーキョー村へ。

武器の調整をヘルッコに頼んだ後、早々に黒雷蛇に挑戦することが決まった。

黒雷蛇は以前、迷宮騒動のときに一度倒しているし、腕試しには丁度いい。


その後タルガットは森の様子を見に、エリシュカは長らく閉めていた道具屋に戻るという事で別行動。

アルマたちはその足でセーキョー村へと向かうことにした。

ヘルッコの鍛冶屋はかつての村人の住居を改装したもので、すぐにわかった。


「おう、来たか。そんじゃ金狐からだな。斧見せろ。」

「あ、はいっす。」


ヘルッコは相変わらずの有無を言わせぬ口調で指示を出す。

斧の状態を(あらた)めたヘルッコはそのまま何も言わずに奥に引っ込むと、新しい斧を持ってきた。

今まで使っていたものと違い、柄の部分が湾曲した形状になっている。


「ちょっとこいつを振ってみろ。」


言われるままに斧を振るシャムス。

これまで使っていた斧よりもやや重いのか、風を切る音が大きい。


「おお、これ使いやすいっす!」

「持ち手はどうだ?」

「え?ああ・・・特に気にはならなかったっすけど・・・。」

「ちょっと貸してみろ。」


ヘルッコはシャムスから斧を奪うと、何かの魔物の皮を持ち手に巻き付け、シャムスに握り心地を確かめさせる作業を始めた。


「おお!これくらいがちょうどいいっす!」

「そうか。皮は使ってるうちにヘタるから予備ももってけ。あと、柄の形状が変わってるから攻撃を受け流すときなんかは力のかかり具合が変わる。慣れるまでは気をつけろよ。」

「はいっす!」

「ほんじゃあ次は銀狐だな。これをつくってみた。持ってみろ。」


そういって次にヘルッコが持ち出したのは錫杖だった。

杖頭に双頭の蛇を模した輪が据えられており、さらにその輪にも別の輪がかけられている。

ランダがその錫杖をふるうと、チリチリと輪が音をたてる。


「これは・・・。すごいです。」

「お前さんが結界を張った場所で金剛石が取れるからな。ちまちまと採掘してようやくそれがつくれるくらいの材料が採れたからつくってみた。柄の部分までは無理だから、今はソゾギの芯材にしてあるが、ソゾギも魔力を通しやすいはずだ。杖は専門外だから使ってみて感想をまた教えろ。」

「はい!ありがとうございます!」

「次はのっぽの姉ちゃんか。お前は弓を用意してある。ついてこい。」

「いや、あたしは今はワンドで・・・。」

「弓が使えねえこともねえんだろ?両方使いこなせりゃ戦闘の幅が広がるじゃねえか。」


ヘルッコに連れられて建物の裏にまわると、そこは試し切りなどができる簡易修練場になっており、大小さまざまな弓が用意されていた。


「うおおお!なんだこれ、かっけええ!!!」


しぶしぶついていったマイヤだが、弓を見た瞬間に目の色が変わる。

マイヤが選んだのは、弓を構えた時に上端に当たる末弭(うらはず)が刃物状になった長弓だった。


「それは近接戦闘にも対処できるようにしたもんだが、その分、固く使いづらいぞ。」

「いやいい!あたしはこれにする!」

「馬鹿野郎、まずは使ってみて決めろ。」


実際に試し打ちしてみると、長弓だけに飛距離は出るが、扱うのは難しそうだ。

エルフとして鍛錬してきただけに的を大きく外すことはないが、精度は低い。


「まだお前さんには早えな、これは。」

「やだ、これがいい!どうせ弓は遠距離だけだ。中距離からはワンドで支援が主体になるし、近距離ではまたこいつが生きる。絶対使いこなして見せる、これをあたしに使わせてくれよ!」

「・・・はあ。しょうがねえな。だが、お前にあわせて調整はするからすぐには渡せねえぞ。」

「おおおお!ありがとうおっさん!」


こうして、アルマ以外の全員が新たな武器を手に入れることになったのだった。

だが、もちろんこれでは終わらない。


「料金はいつも通りジョーガサキに一括で請求しとくからな。さて、全員に武器が行きわたったところで、お前ら、手入れがひどすぎる。みっちり教えてやるからな。」

「「「「・・・・・。」」」」


アルマたちは、新たな借金を背負うことになったうえで、一日中装備の手入れをヘルッコに学ぶことになったのだった。


お読みいただきありがとうございます!

この章は、ちょっとゆっくり進行することになるかと思います。

温かく見守っていただければ幸いでございます!

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