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シリウス328はクロノロジーランウェイの中でHEIANと記されたエリアに勢いよく飛び込んだ。
目の前に白い光が満ちて一瞬、何も見えなくなる。この瞬間、英麻たちは平安時代に足を踏み入れたのだ。
やがて、川や山、他の建造物と共に、巨大な四角形が英麻の眼下に姿を現した。
四角形の中は数え切れないほどの細かい桝目でいくつも仕切られている。それはさながら精密機械の基盤のようだった。
平安京。
ごく最近、日本史の授業にも登場した古代の都である。
シリウス328は平安京のずっと北側の地点に向かって降下し始めた。そのまま音もなくすんなりと着地する。
そこは四方を雅やかな建物で囲まれたかなり広いスペースだった。あの細かい枡目の中に、さらにこんなにたくさんの建物があるなんて何だか不思議である。英麻はシリウス328からそおっと降りてみた。
悠久。
急にそんな言葉が浮かんできた。気の遠くなるほど長い時間が幾重にも積み重なっている。この場所にはそういう空気が流れていた。