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VSゴブリン

「ギャギャギャー!」


「やべっ!」


 飛びかかってくるゴブリンを視認した瞬間に、呆然としている光由を力一杯押す。

 予期せぬ行為だったのだろう、結構後ろに行かせる事ができた。

 そしてゴブリンの方に向くと、ゴブリン達はすぐ目の前に迫っていた。


「クソがッ! 間に合え、『硬化』ッ!」


 右前腕を自分とゴブリンの間に入れ、硬くして防御する。二体のゴブリンの攻撃は防ぐ事が出来た。

 だが、光由の方を狙ったゴブリンが、俺に標的を変え、がら空きの右横腹に棍棒を横薙ぎで叩き込む。


「ぐがッ!?」


 痛みで一瞬、息ができなくなり、倒れ込む。苦しみが少しでも緩和するように悶えたいが、そんな事をする暇はない、左手で患部を抑えるだけで我慢する。すぐに歯を食いしばって立ち上がる。

 すると、一匹のゴブリンが飛びかかって棍棒を振り下ろしてきた。


「ギャー!」


「クソがァァァ!」


 左足で土を蹴り上げ、飛びかかったゴブリンに被せる。これで僅かながら怯んだはずだ。

 案の定、怯んだゴブリンの振り下ろしは一瞬勢いがなくなった。その隙を見逃す訳がない。


「だぁりゃあああ!」


 右側にステップ移動し、飛びかかってきたゴブリンの横っ面を全力の右拳で捉える。

 ゴブリンは、断末魔を上げることなく吹っ飛んでいき木に激突して、動かなくなった。これで一匹!

 残りの二匹は、左右から挟むように棍棒を振り下ろして来ていたので、それを前転して回避する。後ろから棍棒がぶつかり合う鈍い音が聞こえた。

 間隔を空けて、息を整える。ゴブリン達も、仲間が倒された事で警戒しているのか、近付いてこない。

 しばらくそのまま睨み合っていると、一匹のゴブリンの頭目掛けて、野球ボール程の石が飛んできて、ゴブリンを吹っ飛ばし、絶命させた。

 あの速さで、正確なコントロールはいつ見ても凄い。


「復帰がおせーぞ光由ィ!」


「黙っとけ! 戦いの記憶があるお前と違って、俺っちは初めてなんだからよ! あとこいつらキモいし! そりゃショックでかいっつーの!」


 光由が復帰したならこっちのものだ。数も有利になり、優勢になった事で痛みがひいたような気がする。


「よっしゃ! じゃ色々試しながら戦うとするか! 光由はもう休んでていいぞ!」


「俺っちまだ一球投げただけなんだけどな‥‥‥まぁ、お言葉に甘えて休ませてもらうよ」


 そう言うと光由は木にすがりながら座り込み、観戦モードに入る。

 それじゃ、やってみますかね。

 右足で、地面を蹴り上げ土をゴブリンに飛ばしながら接近する。これ便利。

 ただそれだけでは、さっきと変わらないので少し速度を緩めて、相手の攻撃を誘う。


「ギャギャー!」


 ゴブリンが棍棒を振り下ろすタイミングで右手を突き出し、『硬化』して、受ける。


「ギャ!?」


 戸惑うゴブリンに突くように蹴りを入れる。少し吹っ飛んだが、手加減したのでまだ動けるようだ。この戦法は特に武器持ちの対人戦で使えそうだな。

 果敢に飛びかかってくるゴブリンに、腕をムチのようにしならせて、脳天にチョップをする。

 時間をかけて立ち上がり、フラフラしているゴブリンに、トドメの喧嘩キックを叩き込んで一丁上がり。

 うん、中々いい体の動かし方だった。想像するのと、実戦でやるのはやっぱり違う。実際には体は想像通りには動いてくれないものだ。

 光由も観客気分なのか、「おー」とか言いながら拍手をしている。


(終わったようだね。それじゃ、ゴブリンの耳を切り取って退散しようか)


 サドゥが終わったのを確認し、語りかけてきたが、少し気になる事を言った。


「あら?俺らクエスト受けてないが大丈夫なのか?」


 この世界では、魔物を討伐すると、通常報酬が貰える。討伐した証明として、魔物の部位を持って行く必要がある。その為、魔物討伐のクエストは、魔物討伐の報酬とクエストの報酬の両方が得られるからオトクなのだ。

 だから、冒険者の基本は魔物討伐なのだ。仕事が無くなるという点から、基本的にはクエストを受けなければ報酬を貰えないはずなのだが‥‥‥。


(あぁ、ゴブリンは繁殖能力が高く、狩っても狩ってもあまり減らないから、そこまで厳しくないんだよ。ゴブリンにはメスは存在しないから、他種族のメスと子を拐って陵辱する、立派な害のある魔物だしね)

 

「ホントそれ聞いて思うんだが、メスがいないとか生物として欠陥だよな」


(たしかにね、ただ他種族と交わらないと繁殖出来ないのだからこそ、色々な種類のゴブリンが存在するんだ。羽の生えたゴブリンとかね。ゴブリンの種類はまだまだ全部は解明されてないんだから、興味は尽きないよね)


 この世界のゴブリンはすごく種類が多いらしい、少なくとも俺が読んでいた異世界モノでは、そんな特徴はなかった気がする。この世界ならでは、だな。


「その分、強さの判定がし辛いがな」


 今回のゴブリンはそこまで強くはなかったからいいものの、同じ見た目で強さが天と地ほど違うゴブリンもいるから、相手にしづらいのだ。


(そこは仕方ないところだね。冒険者の死因も、ゴブリンの仕業って物は珍しくないしね。じゃ、耳も取ったし、そろそろ戻ろうか)


「おう、そだな。おーい光由! 帰るぞー!」


 少し負傷もしたし、帰って早く休みたい。今まで感じなかった痛みが、少しずつ復活してきてるし。


「おう了解、そういえば景章、横腹大丈夫か?」


「そんな大丈夫じゃないから、帰って休もうぜ」


 初めて魔物を討伐した俺達は、被害は多少はあったものの、無事帰ることが出来た。


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