VS猪
初めてのバトルです。
猪と対峙しました。
元の世界でうり坊なら見た事あるが、今の世界で見るのは初めてだ。(サドゥの記憶でなら見た事はあるが)
元の世界と違って相当大きいな、ニメートルくらい?ある。この世界じゃ普通くらいのサイズっていう記憶は言っている。これからが不安になるよね。
その猪は、こちらにはあまり興味はないのか、特に襲ってくる気配はない。こちらが先手を取れそうだ。
「光由、あの猪の目、狙えるか?」
「俺っちのコントロールを舐めるなよ、絶対に当ててやる」
光由は既に石を持ち、準備を済ませている。
「じゃ、合図したら頼むぞ」
「了解」
深呼吸をして、息を整える。戦った記憶があるとはいえ、俺としては初めての実戦、しかも接近戦だ。焦りはミスを生む、そこだけは気をつけなければ。不安もあるが、少し楽しみでもある。
サドゥ、『強化』は効果は続いているな?
(うん。解除も出来るけど、基本は効果は切れないと思ってていいよ。おそらく、パワーは二倍くらいにはなってると思うから。頑張れば大丈夫だよ。いざとなれば僕もいるしね)
頑張れば大丈夫とかいう無責任すぎる言葉を貰った。まぁ、やるしかないんだが。
サドゥに変わっての火の魔法は、今は極力使わない様にしている。俺が実戦慣れするのが目的だ。
「よし‥‥‥やれッ!」
「おっしゃ!」
俺は気配を殺して猪に近付く俺、ゆったりと投球動作に入る光由。
俺と光由は小学校時代からの親友だ。連携には自信がある。二人でいけば勝てない事はない。
光由が投球動作を終え、石は猪の目へと一直線に突き刺さった。強化で大体二倍になっているから。二百六十キロくらいか、流石のコントロールだ。
「ブギィィィ!!」
猪は目から血を流し、苦しみ暴れている。
「ナイスコントロールッ! 光由、あとはサポート頼むッ!」
「おっけぇ!」
光由の返事を聞くと、俺は足音を気にせず、暴れている猪へと突っ込んでいく。
猪は、興奮状態になっているのか鼻息荒く、片目で俺を睨んでくる。そして狙いを定めると、後ろ足を上げた。
猪の足が、地面を蹴るよりも前に、俺の足が地面を蹴り、猪に向かって飛ぶ。
「くらえぇぇぇ!」
充分に後ろに引いた拳を全体重かけて猪の鼻に叩き込む。
「ブギャアァァァ!」
猪の悲鳴が響く。結構うるさく、耳をふさいでしまう。
反動で後ろに飛んでいる状況な為、両手を使えないという状態は、受け身をとれず非常にヤバいが、俺にはこの能力が身についた!
「『硬化』ッ!」
俺の使えるようになった『硬化』は、イメージとしては十五×十五センチのサイズの硬い板を任意の所に貼り付ける感じだ。触れてるものにも付与する事が出来るが、そこまで持続はしないし、二つの所に付けたりはできない。古いものから解除されるのだから、使い勝手が悪い。
『硬化』を尻につけ、尻餅をついた際の痛みを無くす。
猪は尻餅をついた状態の俺を踏みつけようとしてくるが、その足に飛んできた石が突き刺さり、踏みつける事は叶わなかった。
その隙を見逃さず、横に転がり起きて、猪の側面に回り込み、サッカーのボレーシュートの感じで猪の後ろ足を蹴ると、猪の足はボギッと音を鳴らし折れる。
「ブギャギャアァァァ!!」
右の支えを失った猪は右方向へ倒れ込む。しばらく、暴れていたが、光由の投石を何度か受けると、次第に動かなくなっていった。
「ハァ、ハァ‥‥‥ハァ、やった、か?」
(そうみたいだね、やったじゃないか。初めての大物だよ)
サドゥに少し嬉しそうな声でそう言われ、徐々に嬉しさが込み上げる。
「よっっっしゃー!」
一度空に向かって、拳を上げてから腰の辺りに拳を下げて、ガッツポーズをつくる。
それから周りを見てみると、光由がよって来たので、光由とハイタッチをし、右拳を合わせる。
「ナイス、景章!」
「光由も、助かったぜ! 初めての大物だ!」
「これで猪肉だな! 食べるのが楽しみだぜ!」
そうして、ひとしきり喜び合った後、少し興奮が冷めてきた頃に、その音は聞こえてきた。
「おい光由ッ!この音って‥‥‥!」
そう光由に言うと、光由も耳に手を当て、耳を澄ます。
「これはまさか!」
「「川だよな!?」」
水が流れる音が微かに聞こえていた。しばらくはそこを拠点にすれば、飲水にも困らない。
「よし!猪の処理をしながら、川に行って飯だッ!」
「おー!」