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初めての狩り

 その後は、薪の上に火をサドゥの魔法で付けて食事をした。味の感想としては、正直どれも不味かったのだがきのみは多少甘かった。光由はそこまで不味がってなかったが。

 人格は食事の時点で元の俺に戻した。光由によると、声と目付きが少し変化してるらしい。

 今としては、光由に先に寝かせて、俺は近くに座り、木を背もたれ代わりにして見張りをしている。寝込みを襲われでもしたら面倒だからな。

 学ランを布団替わりにして寝ているが、少し寒そうだ。体調崩さないといいが。


「てか、まさか一晩で家が恋しくなるとはな‥‥‥飯は不味いわ風呂には入れんわで、自然って厳しいのな」


(まぁ、景章くんの世界は、生活がしっかりしてたからね。流石に野宿と比べると雲泥の差じゃないかな)


「まぁ、そりゃそうだが、しばらくこの状態を続けるのは精神的にもきそうだわ」


 既にげんなりしてるんだから、早く町でも見つけて宿にありつきたい所だ。現代人にとってはこの環境は地獄だぜ。

 ただ、明日から軽く狩りも始める予定である。体を動かす事になるし、汗が今日より酷くなるだろう。川でも見つかれば、汗も多少流せるが。


(明日からトレーニングもしないとね。もっと強くなるために)


「戦闘は全部サドゥに任せたいが、お前接近戦苦手だしな。そこは俺がやらざるをえないし仕方ないか」


(その分、僕は遠距離で戦えるから。2通りの戦い方が出来るのは、有利だよ)


「それもそうだな」


 明日からは多少筋トレも始めよう。

 さて、サドゥと話してたらいい時間たってきたし、光由と交代して寝るか。

 光由を蹴り起こして、学ランを布団にして眠りについた。





「おい景章、そろそろ朝だろ。起きろー」


 周りも薄暗くなってきた頃に、光由に起こされる。

 服に付いた汚れを払いながら、意識を覚醒させていく。


「んぁ、何も無かった?」


 あくびをしながら夜の様子を問う。


「特に何もなかったぜ。にしても、真っ暗な森はそうとう不気味だな。何か出ると思ったぜ」


「俺はもう既に幽霊に出くわしてるからな。何が出るかも分かったもんじゃないな」


(僕以外には幽霊ってのは珍しいはずだよ。幽霊なんてのは、そうそうなるもんじゃないって幽霊になってから知ったよ)


「幽霊はそうそう出ないらしいぜ。俺ら霊感ないから、大丈夫だろ」


「出ないってわかっても、不気味だわ。化物は出るわけだし」


 夜中の様子を思い出したのか、体をだいて身震いする光由。

 それもそうだ。見た目がグロテスクな奴も、この世界にはたくさんいるしな。まぁそれもおいおい倒しに行かなければいけないわけだが。

 朝飯のきのみを齧りながら、今日の予定を光由と共有する。


「今日から狩りを始めよう。鳥とか猪とか狙っていこう」


「そうか狩りか! いいね異世界って感じで。俺っちも楽しみになってきたぜ!」


 拳を上げて楽しみにしている光由には一つ確認しなければならないことがある。


「生き物の命を奪うんだが、そこら辺の抵抗感とか、大丈夫そうか?」


「そこの点なら、大丈夫だろー。割り切りは得意だからな。野球の試合でもよくあるし」

 

 悪い結果を引きずっても、パフォーマンスが悪くなるだけだよ、と目を逸らし、苦笑いで答える光由。そこを克服する為に努力したであろう事が窺える。


「それなら大丈夫か、それじゃ早速獲物を探すに、行くぞー!」


「おー!」


 二人で拳を振り上げて、場を盛り上げる。雰囲気って大事よ。

 唯一、足を踏み入れたことのない前の方向へと進む。道がないから進みにくいのは仕方がない。

 戻れない可能性も考慮し、荷物は全て持って行く。川があったら拠点を移したいし。

 おっ、早速丸い団子の様な鳥を発見。木の枝の上で羽を整えている。


「光由、あの鳥頼むわ」


「おっ、あの鳥か! しゃ、行くぜー!」


 そう言うやいなや、石を拾って右手に握る。そして鳥を正面に見据えると顔以外を全て右に向け、膝を曲げたまま、腿の部分が地面と平行になるくらいまで足を上げる。それと同時に、顔も体と同じく右に向け、その正面に石を握った右手を包む様にして左手を合わした状態の両手を持ってくる。

 そこで僅かに静止した後に、鳥の方に向かって左手を伸ばし、上げた足を振り下ろしながら体を回転させて右手に握った石を投げる。これがうちの次期エース、次宮光由の投球フォームだ。

 今回はストレートなので、人差し指と中指が投げる指、他の指は握った時にボールが落ちない様に支える指、と光由から聞いた。

 そして、流れる様な光由の投球(投石)から放たれた石は鳥のすぐ横を掠めるようにして消えていく。鳥は飛び去って行ってしまった。


「あー! くそ! 外したッ!」


 光由は、悔しそうに地団駄を踏む。珍しい事もあるものだ。


「珍しいな、光由がコントロールミスするなんて」


「少し躊躇したなー。うん! どんな感じかも分かったし、次は大丈夫だわ!」


 何かを吹っ切る様に頬を叩く光由。これなら次は大丈夫そうだ。

 

「もう大丈夫か? 良さそうだな。狩りを再開するぞ!」


「よっしゃー!」


 あ、返事が少し変わった。特に深い意味は無いんだろうな。




 五分程歩くと、さっきと同じ種類の鳥がいた。こいつも木の枝上にいるな。今度こそ光由はやってくれるだろ。


「光由」


 俺の呼びかけに無言で返し、先程と全く同じフォームで投石する。放たれた石は今度は鳥の頭に突き刺さる。


「「よしっ!」」


 光由とハイタッチし、初めての狩り成功を讃え合う。


「やったぜ景章! 見たか俺っちの投球!」


「流石だぜ光由! これからも頼るからな」


「これからは、コントロールミスはほぼ無いから安心しな!」


 光由が胸を張ってはしゃいでいる。初めての狩り成功が嬉しいのだろう。

 讃え合いもそこそこに、仕留めた獲物の元に向かう。


「バッグ無いから、持ち辛いよなー、これ。景章持ってくれよ」


「あぁ、いいよ。じゃ、奥に行こうぜ」


 鳥は大体、顔ぐらいの大きさなので持ち運びに支障はなさそうだ。かさばるけど。




 そして、そのまましばらく歩いた先に、立派な牙が反り立った。猪が立ちふさがった。

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