二重人格になりました
「僕と『一体化』して欲しいんだ」
サドゥは、微笑みながら答えた。
一体化か‥‥‥どんな感じなのか、想像がしにくいな。
「その一体化? だっけ、それをしたらどうなるんだ?」
「そうだね、僕の記憶が完全に共有され、僕の力も一部は使える様になるね。そこがメリットじゃないかな」
サドゥは、サラサラそうな髪をかき上げながら説明をする。
生活方面で、八方塞がりだったのでいい提案なのだが、後々デメリットが発覚しても面倒だし聞いておくか。
「メリットって事はデメリットもあるのか?」
「まぁ、僕の人格が君に宿る事になるから、二重人格って感じになるかもね」
その程度なら別にいいか。どうせ光由と二人だけだと、生きていけるかも怪しいしな。
「分かった。じゃ、早速やろうぜ」
「決断が速いね。もう少し渋ると思ったけど、面倒が少なくて助かるよ」
サドゥは、そう言うと嬉しそうにニコッと笑う。
正直不安より、興味の方が大きい。
記憶が共有されるって事は、この世界の事は大体分かってくるだろうし、力が使えるってのにも興味は尽きない。
「じゃ、いくよ」
サドゥは、俺の胸辺りに手を添えて目を閉じる。
すると、その手がだんだんと入ってきた。いや、正確にはサドゥが入ってきた、って感覚だな。
三十秒程すると、サドゥの体は全て俺の中に入った。そして、サドゥの記憶が流れてきた。結局あのキノコは毒キノコか!
「なるほど、この世界はこうなってるのか。サドゥに変われば火の問題も解決するし、良さげだな」
(満足したかな? まぁ、あの状況からだと、充分すぎたよね)
「あぁ、だが一つだけ言いたい事がある」
(なんだい?)
「なんで、お前もこの森の出口知らねぇんだ!? 結局野宿生活は避けられねぇじゃんか!」
(仕方ないよね。僕も、何も考えずに移動してきたんだから。会えただけ奇跡だよ)
サドゥはおそらく苦笑いしているだろう。こいつもこいつで苦労してきたってのは、記憶が流れてきた時に分かったから責める気にはなれないが。
「で、一応目的としては、サドゥの妹の敵討ちと、冒険者として最高峰のLランクに最年少でなる。この2点でいいのか?」
この世界には冒険者という職業があり、階級が上からL、S、A〜Fという感じであるらしい。サドゥの冒険者としての階級は引き継がれるらしいので、今の俺はCランクになるらしい
(そうしてもらえると嬉しいよ。妹との約束だからね、なんとか叶えたいんだ。最年少Lランク到達者は二十二歳ということだから、あと五年間だね)
「俺自身はまだ弱いから、中々厳しそうな感じだな」
サドゥの力が一部流れてきたとはいえ、力強さは俺譲りだし、こいつ近接戦闘の経験ほぼないし。
(まぁ、僕の『強化』を使えばある程度は力は補えるから、マシにはなると思うよ)
「それでも、トレーニングくらいはしなくちゃな」
これから魔物と戦う日々が待ってると思うと、少しげんなりする。
「それよりもまずは、色々光由に伝えなきゃな‥‥‥」
この説明が一番面倒なまである。でもやらない訳にもいかない。光由も『強化』を使えば戦えるだろうし。
そんな事を思いながら、俺は集合場所へと戻っていく。