青白い男
「はぁ〜‥‥‥マジか〜、参ったなこれ」
進めど進めど、周囲は木ばかり。気が滅入ってくる。
薄暗く、肌寒さも相まって不気味な森である。
ここまで採れたのも食えるかどうかも分からない、怪しい木の実やキノコだけ。
元の世界では、色鮮やかなキノコには、大体毒がある、なんて事を聞いた覚えがあるが、飢えで死ぬより毒で死ぬ方が幾分楽な気もする。最後の手段だな。
「あいつが取れなかったのが痛かったな〜」
思い出すだけで舌打ちが漏れる。
あいつとは、丸っとした鳥の事だ。途中で木の上にいるのを発見し、とっさに足元の石を投げたが、かすりもせず逃げられた。
「次宮呼んでくる方が良かったなこりゃ」
後悔しても遅いが、そもそも火をつけられるかも曖昧なので、取ったとして食えたかどうかは微妙だ。
文句を垂れながら歩いていると、何やら視線を感じる。振り返っても、誰もいない。
やめろよ一人になった瞬間変なの来るの‥‥‥
顔を前に戻すと、目の前に青白い男がいた。
「うっわ!! 出やがった!!」
後ろに逃げようとするも、足が動かない。やばいやばい!!
よく見ると口が動いている気もするが、どうでもいい。やべぇ! 手を伸ばして来やがった!!
「や、やへろぉ!」
足は依然として動かない。も、もはやここまでか‥‥‥
そして青白い男は俺に手を触れた。その途端に、頭の中に何かが流れ込んでくる。
「‥‥‥ふぅ、これで言葉が通じるようになったかな? 舞島景章くん?」
得意気なのが少し頭にくるが、何故こいつが俺の名前を知ってんだ? 怪しいし、次の言葉を待ってみるか。
「‥‥‥」
「あれ? 分からないのかな? おかしいな、これで理論上は言語が違っても会話できるはずなんだけど‥‥‥」
青白い男は少し困った感じで悩みながら、呟いている。
言語が違っても会話ができる? それは、さっき流れてきたモノに関係しているんだろうが‥‥‥。考えつくのは、この国の言語を教えてくれたって事か? 翻訳魔法ってモノか?‥‥‥いや、俺はこいつの名前を知っている。その点から、翻訳の魔法じゃないだろうな。
「おい、サドゥだったか? 俺に何をしたんだ?」
「なんだ聞こえてるんじゃないか。そうだね、ちょっとだけ記憶を共有しただけだよ」
記憶の交換? さっき流れてきたのは、サドゥの記憶って事か。だから、さっきまで感じていた恐怖が少し薄れてるのか。
「取り敢えずは分かった。で、俺に何をしてほしいんだ?」
こんな事をするって事は、何か目的があるのだろう。
そう問うと、サドゥは少し微笑みを浮かべて答える。
「君には、僕と『一体化』して欲しいんだ」