表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

化物と状況の推測

 ゴブリン? が茂みの中にいた。

 よくゲームとかアニメとかで見る魔物だが、リアルで見てみると、とても気持ちが悪い見た目だ。

 ゴブリン? の周りが歪んで見えるのは、鼻先ににぎりっぺされたような臭いのせいか。すぐさま口呼吸にチェンジだ。


「お、おい景章‥‥‥なんだよ、あいつ」


 震えた声を出して、光由が話しかけてくるが、答える余裕はない。

 なんでこんな生物がいるのかを考える。答えは一つしか出なかった。


「‥‥‥異世界?」


 認めがたい単語が自分の口から漏れた。認めたくない故に、更に深く考え込む。


「景章、何ボッ〜としてんだ! 逃げるぞ!」


「えっ、なっ、ちょまっ‥‥‥」


 光由に腕を掴まれ、強制的にゴブリン? から逃げる事になった。

 幸い、ゴブリン? は気づく事もなく離れることが出来た。案外鈍いんだな。




 逃げては来たものの、まだ変わらずに森の中。少しばかり広い場所で、二人で座り込み、息を整えていると、光由が口を開く。


「なんだよ‥‥‥あの緑チビ」


「多分、ゴブリンとか言うのじゃないかと思う。」


「ゴブリィン? ゴブリンってあれ? あのファンタジックなヤツ?」


「それそれ」


「んじゃ何? 俺っちと景章は、異世界にでも来ちまったって事?」


「そうなるのかな?」


 そもそも、目が覚めたら森の中でしたって状況からありえないのだから、少しはありえない事を疑うのが真実に近くなるのでは、と思う。

 でも異世界か。正直、俺にも異世界に行ってみたいとは思った事はあるものの、言うだけなのと実際に来てみるのとでは大きな差がある。

 もし仮にここが異世界だとして、どんな生物がいるかとか文化とかの、この世界の知識が一つもない。よく知りもしない会社に入らされて、研修もなしに業務につかされるみたいなものだ。しかも側に経験者は誰もいないときた。

 知識がないというのは、非常に面倒な事だ。これをすればいい、という判断も出来ないからどうしても手探りになる。

 ‥‥‥なんか考えるのも面倒になってきたな。まぁ、なるようになるだろ。


「思ったんだが景章、ここが異世界だとすると、魔法も使える可能性があるって事だよな?」


 魔法。魔力を使って不思議現象を起こすアレだ。確かに使ってみたいとは思うが、ホントに使えるのかね?


「まぁ、異世界でゴブリンって言ったら、剣と魔法のファンタジーだよな。使えるんじゃね?」


 光由は目を輝かせて立ち上がり、前方に右手を突き出し、手のひらを開いて叫んだ。


「ファイアーボール!」


「‥‥‥何も出ねぇな」


「‥‥‥」


 意気揚々とやったのに失敗、これ程恥ずかしい事もない。

 羞恥からか、光由の顔がほんのり赤くなっている気がする。面白半分で提案してみようか。


「魔法といえば、呪文の詠唱とかもあるよな。やってみたら?」


 光由は、ハッ! として、少し考え込んでからブツブツと呟きだした。


「赤き精霊よ、我が魔力に呼応し力を貸せ‥‥‥ファイアーボール!」


「‥‥‥やっぱ何にも起きないな」


「使い方とか‥‥‥分かる?」


 もう半泣きだった。


「分かるわけないだろ」


「やっぱり?」


 そんなくだらない雑談をしていると、グ〜ッというマヌケな音がした。そういえばその問題もあったな。


「食料、手分けして探すか〜」


「そだな、じゃ俺っちは向こう行ってくるわ」


「はいよ、学ランを近くの木にかけとくから、それ目印に集合な、迷うなよ」


「りょうか〜い。じゃそっちも頼んだぜ」


 俺から見て右の方向を指差してそちらに歩を進める光由。


「じゃ、俺はあっちか」


 そう呟きながら学ランを側の木にかけて、俺も西の木々の中へと入って行く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ