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313話 (2)

あれ……?

三話で終わりそうにないです(汗)


『この先ずっと、願いをすべて叶え続けて欲しい』――



 通らないつもりで出した要望が、予想に反してすんなり通ってしまうと、小心者はびびるのである。

 落とし穴はどこらへんにあるのかな? そんなのないよと言われようが、足もと確認をせずにいられない。だからせっかく、破格の〝回数制限なし〟を獲得したのに、瀬名が叶えてもらった願い事は未だにひとつしかなかった。


 この国、エスタローザ光王国の、王位継承問題である。

 自分が一番関わりたくないところを、神様になんとかしてもらったとも言う。


 瀬名はこの森に骨をうずめる人生設計を立てた。ゆえに、国の中枢にいつまでもゴタつかれていると、辺境伯にしわ寄せが来て、この地で快適生活を送りたい瀬名も困るのである。

 無意味にゴタゴタを起こす元凶、トップは言うまでもなく国王だ。公私混同、コンプレックスの塊、精神的子供、辺境伯への嫌がらせ多数。

 次に、お花畑王子と脳筋王子と散財王子、略して三馬鹿王子だ。共通点は自分しか見えていないところ。どれか一匹でも玉座につけたら、勝ち得た平和が水の泡。

 次点で、保守派貴族。変化や大冒険を嫌い、目につく罪を犯さないので長く生き残り、縁の下の力持ち的に元凶を守る。


《マスターと話が合いそうな方々ですね》

「お黙り。私もちょっと思ったけどお黙り」


 もうあとがないと腹をくくった第一王妃とフェリシタ王女に、精霊族のマイエノーラが参戦して、ひとまず国王に静かになってもらったのはいつのことだったか。あれから「ずっとお忙しくてお疲れが溜まっていたのでしょうし、陛下には今後ゆっくり休んでいただきましょうホホホ…」「そうですわねお母様ウフフ…」みたいな感じに、着々と譲位の根回しを進めているらしい。王女の子飼いのラ・フォルマ子爵とマイエノーラがこっそり意気投合し、裏で無双していると風の噂だ。

 謎の食中毒から復活したお花畑王子は、愛しの美女(マイエノーラ)へ毎日元気に熱烈なポエムを捧げており、やらかしが極限突破した散財王子は、無期限の謹慎処分中。話題にあまりのぼらない脳筋王子は何をしていたかといえば、王宮の騒ぎを余所に、ひたすら鏡の前で己の筋肉にうっとりしていたそうな。

 比較マジックで、この脳筋王子が三王子の中で最も無害、かつ無難そうに見えてしまうのが、この国の王族男子の限界の証明であると言えよう。「筋肉は裏切らない」と己の側近の前で言い放ったらしいが、痛烈な嫌味と深読みしたら恥をかく、そんな人物。

 そこで、幼い第四王子に白羽の矢が立ちかけたが、幼すぎて将来兄の二の舞になるか、周囲の期待に潰されるか、賭けの要素が強過ぎた。


 で。

 いよいよ、本気で挑むことになったわけだ。

 〝フェリシタ女王陛下〟の即位を。


 ……なんで今までやらなかったの?

 喉もとまで出かかった素朴な疑問を、かろうじて呑み込んだ瀬名だった。


 これは他人目線の酷な問いかけである。当人達のやる気が不足していたのではなく、周りのせいなのだから。

 「慣例にそぐわない」「歴史と伝統をないがしろにする気か」と、建設的な解決策もないのに、とにかく批判だけはする輩が湧くのだ。国の将来よりも伝統第一、そのためには不良物件と明白な三王子で妥協するのも厭わない。そして大概、無視できない権力や財力を持っていた。


 そこで、神様方の出番である。


 神々は人の世に無意味な干渉をしない。万事神様が面倒を見てあげていたらキリがないし、人々の自立心が養われなくなる。それに、「その者こそ次の王に相応しい」と神託を下してしまったら、他の王族が我も我もとねだり始める。お告げを拒否したら、その者は〝神々に認められなかった〟烙印を押されたも同然という面倒くさい話に発展するのだ。

 なので、まずフェリシタ王女派の方々に、反対派へ向けてこんな感じに啖呵を切ってもらった。


『他国には女王を擁する国もあり、それのみを理由に神罰が下った例はない』

『数多の女神が存在するように、姫君の正当性の如何など論じるまでもなかろう』


 フェリシタ王女の聡明さは有名だ。反対派がかたくなに反対する理由は、彼女が王女であること、その一点でしかない。もちろん、聞く耳を持つ者はいなかった。

 余所は余所、うちはうち。建国時より姫に継承権はない、それが我が国の歴史であり伝統、前例がないから駄目なものは駄目。女が王位につくと他国に舐められて云々、我が国の瑕に云々。

 反対意見がほどよく出そろったところで、王国中の高位神官の夢の中に、女神様方がご登場。楽しく世間話に興じてもらった。


【どこぞの人の国で、女王誕生に対し、猛烈に不服を並べ立てる輩がいるとか】

【前例がないだの、国の栄光に陰りが差すだの、難癖をつけておるそうな】

【その者ら、もしやわたくし達女神に対し、思うところでもあるのか?】

【女神ごときの加護は不要とぬかす手合いやもしれんな】


 神官達は汗びっしょりで飛び起きた。一応、心臓の弱い方々は除外されていたが、「心の臓が暴れて耳がうるさいほどだった」とは、ある神殿筋からの体験談である。

 つまり、「あんたら遠回しにアタシらをコケにしてる?」的な方向へ持って行ってもらったわけだ。

 神殿から報告や問い合わせが殺到し、反対派の皆様は冷や汗を流しつつ蒼白に。

 急速に勢いを失って、全員が沈黙した。


 来年の春、光王国初の女王が誕生する。

 婚約者のライナスは王配に。王都と辺境を定期的に行き来する半婿入り生活が確定し、辺境に嫁は来ないことになった。

 もしフェリシタ女王に複数名の御子が生まれれば、そのうちの誰かがライナスの後継者となる。

 子ができずに辺境伯もライナスも命を落とした場合、なんとセーヴェル騎士団長が辺境伯になるそうだ。デマルシェリエの親戚も納得の上で、そのための手続きも済ませているとのことだが、彼女はデマルシェリエ家と血の繋がりはない。


 ARK(アーク)氏いわく、過去、辺境伯家は魔王との戦いで直系が全滅しており、その時も当時の騎士団長が辺境伯を継いでいる。軍隊と近い感覚で、トップが喪われた場合、次の指揮官が即座に決まる――いや、あらかじめ徹底的に決めてあるので、混乱が生じないらしい。

 王都はつねに安全だから、危機意識に乏しく、そのへんがグダグダなのだった。


(頑張り過ぎるんじゃないぞ~フェリシタ。ほどほどに手を抜きつつ、頑張ってる感を出すスキルを身につけるんだ!)


 心の中で声援を送りつつ、性悪さに定評のあるマイエノーラが相談役を続投すれば、スキル【頑張ってる感】は自然獲得できそうな予感もしたり。


 ところで精霊族は、前に王宮襲撃という大事件を起こしながら、報復の声がまったくあがっていない。むろん、中には苦々しく記憶している者もいるようだが、精霊族はどちらかといえば神々と同じ分類項になる。あれは天災に等しく、報復を叫ぶなど無謀の極み――そういう理屈で、雪辱を果たすより防災対策が肝要な案件、それが一般的な認識なのだった。

 瀬名が神様方からもらった〝願いごと無制限の権利〟のご利益が、いまいち薄……いや、そんなことはない。

 喉元過ぎればなんとやら。きっと女王の統治に、屁理屈まみれの不満を陰で囁く連中が出てくるだろうから、その時にまた神様方に世間話をお願いするとしよう。

 しっかり味をしめている瀬名だった。


【あの程度、いくらでも構わぬが】

【あの程度でよいのか?】

「ええもちろん、充分でございます。ろくなお礼もできず、心苦しいんですが」

【我らは取引を持ちかけたのではない。あとから対価を要求するのはただの詐欺であろう】


 まっとうだ。まっとうである。恩の押し売り業者に聞かせてやりたい。

 ところで、神々の姿がやたら鮮明で、声も明瞭、会話もスムーズだ。加護持ちのウォルドやゼルシカ、アスファなどから聞いた話とは、随分様子が違っている。

 周囲の結晶体、おそらくこれが何らかの装置の役目を果たしているのだと想像はつくが。

 まあ、突き詰めないほうが幸せな現実はたくさんあり、きっとそのひとつに過ぎないだろう。手もとのお茶のカップに目を落とし、瀬名は先日催した秋の大宴会に思考を移した。




◆  ◆  ◆




 神々は飲み食いを必要としない。けれど味や香りを楽しむ民の陽気が、神々にも伝わるそうな。だからお祭りや宴会も好きだという。

 参加させろと無茶ぶりをされなかったのは、瀬名としてはありがたい限りだった。招待客を厳選したはずなのに、あの人もこの人もと、結局はかなりの大人数になってしまったのだ。迷ったのは神殿勢だが、ゼルシカのアドバイスにより、彼らは呼ばないことにした。「神気の濃厚さが気になって、宴どころじゃなくなるさね」……。


 高位討伐者のパーティも複数招いた。〝魔法使い〟への興味が高じて、辺境に移住し、何かと力を貸してくれている連中だった。

 彼らは泣くほど喜んだり、狂喜に目を血走らせて瀬名に接近しようとしては、鉄壁の防御――灰狼や精霊族――に弾かれ、仲間から呆れられたり他人のフリをされていた。


《ハイ、もうひと皿いきますヨ~♪》

「ああ」


 精霊王子の次男エセルディウスは、Alpha(アルファ)とともに料理の腕前を惜しみなく披露した。豊富な食材があっという間に料理される過程は見事のひとことに尽きた。喋る雪ダルマがさりげに紛れている。酒の席だからいいのである、多分。


「ふふ……人生を粗末に扱うものではありませんよ? あなた方」


 繊細な美貌の三男ノクティスウェルが、何名かの酔っ払いを艶やかに微笑みつつ料理していたけれど、そうなった経緯は誰も知らない。


「わ~い!」

《ホリャ、こちょこちょっと!》

「きゃはははは!」


 Beta(ベータ)が灰狼のちびっこ達の遊び相手をつとめ、毛玉にモフモフじゃれつかれていた。その光景を、黒髪の魔女がぎりぎり羨ましげに睨んでいたなどという事実はない。


 辺境騎士団のテーブルにも灰狼が「はっはっは(略)」と乱入し、いい感じに盛り上がっていた。

 次の興行の相談をするドニ氏とナナシ、そこにどういうわけかカシムとカリム、ローランまで加わって、奇妙な連帯感めいた空気が流れていた。あのテーブルだけ、周りにぽっかりと空間が……。


「ちょ、でん……っ!?」

「…………」


 お忍びで上品なお嬢様が紛れ込んでおり、ライナスが慌てふためきつつ甲斐甲斐しく世話を焼いていた。そういう時、外野は口笛を吹いてはやしたてるか、男のほうに罵詈雑言をぶつけるのがマナーだ。辺境伯と討伐者ギルド長のユベールは、酒を酌み交わしつつ若者を生温かく見守り、助け船は出さなかった。

 ゼルシカが例の神殿に誘われなかった件について、「あたしも三十年ぐらい若けりゃあ」と旦那に愚痴り、お嬢様の護衛のラ・フォルマ子爵が、「母さん、もうトシなんですから」と……。


(はい? なんとおっしゃいました?)


 ゼルシカと結婚した英雄は、イシドール騎士団の団長。彼は高位貴族の出身。

 貴族には複数の爵位を持つ家があり……。


「親子!? 親子だったのか!?」

「そうですよ?」


 愕然と叫んだのはライナスだった。何ゆえに彼が知らないのだろう?

 ともあれ、ファインプレーだライナス君――瀬名は心の中で感謝し、ライナス氏に「頑張れ」と声援を送ったら、何故かうらめしそうに睨まれた。八つ当たりは勘弁願いたい。


≪子爵は暗部寄りです。最悪、王家を見限る日が来た場合、フェリシタ王女を脱出させよと、ゼルシカ殿や辺境伯からの密命を帯びております≫


 小鳥氏が念話でサラリと教えてくれた。

 なるほど、脱出か。とても意味深である。ライナス氏は知らないほうがいい。挙動が少しでもおかしくなったら、王女に見抜かれそうだ。


 諜報員な黒猫は、しれっとグレンの隣で酒を舐めていた。

 ウォルドは黙々と静かに飲んでいる。

 バルテスローグは豪快にごきゅごきゅ飲んで食べて飲んで飲んで食べて飲んで「あっ爺さんそれ俺の肉!!」「ちょ、アスファ乗り出さないでくれませんこと!?」「酒がこぼれますよ」「あれ、ラフィエナさんどこ行ったんだろ?」……。


 宴は賑やかに続いた。瀬名が精霊族の女達に拉致され、一時行方不明になったこともあった。

 その後、上座にあやしげな妖艶魔女が出現。ふるいつきたくなるような、しっとり色香を漂わせる長身の美魔女であった。

 宴会場の広場が一瞬にしてシーンとなった。

 漆黒の魔女は周囲を奈落に沈めそうな雰囲気を纏っているにもかかわらず、不思議と機嫌のよさが窺えた。おそらく、彼女の隣にいる、対照的な金髪美女のおかげだろう。

 彼女は不運にも、「セーヴェルさんも一緒じゃなきゃヤだ!!」「えええっ!?」と巻き込まれたのだ。


「あの、……恥ずかしいのですが……」


 己のドレス姿に恥じらう金髪美女。肩から手首までの布地をふくらませ、肘と手首のあたりで絞り、鍛えた二の腕を誤魔化すデザインだ。

 ローランが密かにグッと拳を握り、魔女への変わらぬ友情を心に誓っていた。

 魔女部門と騎士部門に分かれ、下僕の座を巡り、熾烈な勝ち抜き戦が開催される運びとなった。少々殺気立っているだけで、平和的なカードゲームである。

 騎士部門では安定のローランが優勝。景品は醜い男どもの罵詈雑言だ。

 魔女部門の結末は闇に葬られている。


「下僕の座? すなわち、わたしの下か」


 どこぞの精霊王子が黒い笑みをたたえ、優勝者へ傲然と言い放ったとか言わなかったとか。単なる風の噂である。


 一部を除き、基本的にみな酒に強い。翌日に響かないよう、度数を抑えた酒を出していたのもあり、相当飲んでいるにもかかわらず、いい感じにほろ酔いだった。

 加えて、大半がペース配分を心得ているプロ。主催者からのアナウンスがなくとも、自然とまったり落ち着いた空気が漂い始めた。

 そろそろいいかな――瀬名は緊張し、喉の渇きを覚えた。

 横からするりと、切り分けた果物の皿が寄越された。

 つい振り向いたが、素知らぬ風で盃を傾ける横顔があるだけだった。

 苦笑し、ひときれ口に運んだ。みずみずしく冷えた梨は甘く、緊張がとけて消える。

 自然に言葉が口を突いて出た。


「宴もたけなわ。――締めくくりに、昔語りをひとつ。興味があればお付き合いください。眠いようなら遠慮せず休んでね」


 客人には、全員が宿泊できる部屋を用意していた。人数が人数なので相部屋も多いけれど、快適さは約束できる。

 部屋に向かう者はいなかった。


「……昔々、ここではない遠い世界で……」


 記憶を辿りながら、瀬名の唇には笑みが浮かんでいた。

 訳せない言語、存在しない概念も多々あり、我ながらおとぎ話みたいになるなあと思いつつ、きっちりすべて語り終えた。どこにいて、どうやってこの世界に来たのかを。

 吐き出せて、とてもすっきりしていた。同時に、凄まじい緊張もよみがえった。

 拒絶はされないにしても、どんな反応があるか、怖いものは怖い。

 沈黙にひっそりおののいていたら。


「……ほらみろ!! 俺が勇者やんなくたっていいじゃねーか!? 師匠とアークが世界征服する気んなったら、俺なんぞ勝てねえだろ!?」

「こら待てい。世界征服なんぞせんわ、後が面倒くさい」

《全面同意いたします》

「支配したくなったら先に教えてくれよ、俺は敵対しねーから!! 世界の半分とかいらねえぜ!!」

「だから、やらんと言っているだろーが!? どこの魔王だ!? 支配と管理義務はセットなんだ、んな面倒なもんに誰が手ぇ出すか!!」


 広場がど、と沸いた。

 みんな大爆笑。

 少年のパーティメンバーだけが、恥ずかしそうに苦笑いだった。


(あのなあ。やるやらないじゃなく、あんたは半神イコール勇者なんだっての、まったく…………って。実はわかってて言ったろ?)


 そういうことだった。半分本気が入っていただろうけれど。

 目頭が熱くなったのは、酒のせいである。そういうことにしておく。

 隣の男まで爆笑していたのは、納得いかないけれど。




◆  ◆  ◆




「………………」


 ――余計なことまで思い出してしまった。

 瀬名は冷めかけたお茶を飲み、気を散らそうとした。

 が。


【〝彼〟とはちゃんと話し合えたのだろう?】

【どうなったか訊いてもよいか?】

【出歯亀はせんように気を付けたが】


「…………!!」


 よくないです。


(ノゾキ駄目ゼッタイ、その配慮はありがたいですけども!?)


 噴きかけた茶を強引に飲み込んだせいで、喉が痛くなった。

 畜生……。




◆  ◆  ◆




 誰が最初にその問いを投げかけたのか、もう定かではない。

 小鳥さんに尋ねれば判明するだろうが、犯人捜しをするつもりはなかった。

 知らない者もいたのだ。どういう経緯で、瀬名が精霊族と関わりを持ったのか。

 純粋に、素朴な疑問として口にした――精霊王子達は、どんなきっかけでセナ=トーヤを慕うようになったのか?

 とりわけ、長兄はセナ=トーヤを丁寧に扱っているようだが?


「…………」

「…………」

「うぉっと、こりゃいけねえ。――おひらきだ、お開き! 邪魔者は退散すんぜ!」


 ぽむ、とグレンが手を叩いて宣言した。


「異議なしっ!!」

「え、え?」

「すまん……失礼する……セナ、また明日な」

「あのでは、わたくし達も……」

「なんじゃい、もうちぃと続きを見てもよかろ?」

「よくねえに決まってんだろ!」

「あー……訊いたらまずかった……?」

「気にすんな。つうわけで解散すんぜ。向こうの隅に水桶あるから、自分の使った皿はちゃんと浸けとけよ。後で皿洗い担当が片付けっから」

「お、おう」

「瀬名、兄上と話したらいい。わたしはアルファと料理談義する」

《ハイヨ~♪》

「わたしはラザック殿やグレンと、もう少しカードゲームをしたいですね。なかなか強くて楽しめます」

「おお、いいぜ」

「え、あの、皆さん?」

「いい加減、腹ぁくくれや」


 グレンがぴしゃりと言い切った。


「俺らがいる時だけ、たまに冗談っぽく話題にしやがるけどな。おまえ、()()()ときっちり話し合ったことねえんじゃねえ?」

「――――」


 ぐうの音も出なかった。


「ほらな。いい機会だ、そのへん散歩にでも行って、徹底的に喋ってきやがれ。お互いぶちまけちまえ」


 そして、瀬名は追い立てられてしまった。――二人で。


(え? ………………えええええ!? どうしよう!? どうすりゃいいの!?)


 心の、心の準備時間をプリーズ!?

 瀬名は軽くパニックになった。




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