137話 美しき猟犬達 (7)
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明日は用事で更新お休みしますが、明後日また再開しますのでよろしくお願いします。
深夜からぱらぱらと小雨に変わり、重い雲は明けの光に地平のほうへ追いやられた。
からりと乾いた爽快な風が吹き、まるで今日の幸福を約束するかのような鮮やかな空がひろがっている。
客人達の朝食は、各自にあてがわれた豪華な寝室にそれぞれ運ばれる。光王国の貴族はたいてい朝食は自室でとり、昼は客人あるいは家族の意向に合わせ、夜はともに夕食の席を囲むのが一般的であった。
令嬢の部屋へ「お泊り♪」と突撃した一名を除いて、今朝、ラフィエナ達四名の朝食は運ばれなかった。
令嬢が何かを指示したのではない。赤恥をかかされた令嬢の御心を慮った侍女達が、勝手に嫌がらせを始めたのだ。
予想通りの展開なので支障はない。四名はそれぞれのんびりした後で部屋を出ると、ちょうどそこにアルセリーヴェンがレティーシャを引き連れてやって来た。
「おはようございます、お姉様方!」
「おはようございます…皆様」
「おはよう、あなた方」
「今朝も可愛らしいですね、お二人とも」
精霊族の〝少女〟は幸せそうに微笑み返し、令嬢もはにかみ笑顔を返してくるが、侍女達の反応は残念だった。
己の主への忠誠心が苦手意識や恐怖心を克服するのは良いことだが、方向性がいけない。
ラフィエナ達は親切なので、将来彼女らが困らないようにと、朝食の件をあっさり暴露した。
「むしろ何故、わたし達がレティーシャ様には黙っていてあげると思えたのでしょう?」
「どなたのご提案かは存じませんが、国賓の意味がわかっているのでしょうか?」
「我々が抗議を行う場合、その相手はエスタローザ光王国となり、責を追うのはご令嬢となるのですよ? 侯爵ご夫妻の代理人としてわたくしどもをもてなされているのですから」
「まあ、お食事に妙なものを入れられて、食べ物が無駄になるより遥かによろしいのでしょうけれど」
侍女達は真っ赤になり、怒りと屈辱で小さく震え始めた。自分達をダシにして、また主が愚弄されたと思ったのだ。
(こんなに丁寧に説明してあげても理解できないなんて。つくづく残念な方々だこと)
(まあ、このご令嬢のお眼鏡にかなって良い目を見ているぐらいですから、この程度なのは仕方ないでしょう)
一方、レティーシャは表面上だけは蒼白になり、両手を胸の前で組んだ。
「も、」
「ああ、謝罪は不要です」
ラフィエナが即座に遮り、出鼻をくじかれた令嬢は「え?」と目をしばたたく。
「今朝の件はなかったことにいたしますので。あなたもそのように」
「え、で、ですが……」
「それがあなたのためです。そうでなければ、侍女の監督不行き届きの責めをあなたが負わねばならなくなります。侍女が勝手な悪意で客人を貶めるような行為を、主人たるあなたに無断で行った、これは社交界であなたの評判を地の底まで落とすでしょう。少しでも名誉を回復したければ、関係者と疑わしき全員を拘束して尋問を行い、しかるべき処罰を与える必要があります」
「そんな!」
「ですから、なかったことにするのです。謝罪も要りません。――ほかの方がこのような温情を見せるとは限りませんよ。今後はお気を付けなさい」
「……は、い……」
ここまで説明して、ようやく侍女達の顔色が悪くなった。自分達のせいで、主が泥を被るところだったのだと、やっと理解できたようだ。
(……辺境伯達の前で、堂々とこのお嬢さんを〝姫君〟と呼んでいたらしいですし。優れた容姿と人気を持つお嬢様、その侍女として仕えることを許されている自分という存在に酔っていたのでしょうね)
令嬢の見せる夢に酔い、自分達も特別であると勘違いをしてしまった典型の侍女だ。主が何でも許されているから、自分達もこの程度は許されると馬鹿な思い込みを抱いてしまった。
位の高い主の威光をふりかざし、侍女や侍従、腹心の部下が傲慢に振る舞う、それはこの種族の社会でよくあることなのだろうが、相手が何者かをよく考えねば。
「あの……では、お食事は……」
「食べましたよ?」
携帯食を、とは言わなかった。
どんより重苦しくなった廊下をぞろぞろ歩いていると、向こうから男どもが賑やかにやってきた。
「やあ、待ちきれなくてお迎えにあがってしまいましたよ!」
「今朝も皆さんお美しいですね!」
同じ客とはいえ、女性の泊まっている棟まで踏み込むのは本来マナー違反である。しかし夜ではなく朝、そしてこの館の主人と気安い親戚という点で、ぎりぎり許される範囲か。
傍若無人な男どものおかげで窒息しそうな空気が吹き飛ばされ、今回ばかりは侍女達も「助かった…」と息を吐いた。
だが、これは序の口に過ぎなかった。
◇
「お……お父様!? どうなさったの!?」
「…………ぁ……」
ぞろぞろと団体で歩いていると、さらに向こうを、不気味な塊が徘徊していた。
豚頭侯爵である。夜着を羽織り、何名かの使用人が周りを囲んで、何やら尋常ではない様子である。
「お嬢様!」
「あなた達、何があったの、お父様はいったい……」
「そ、それがよくわからないのですが、突然わめいて暴れられたかと思うと、お部屋を飛び出されて……」
「お戻りくださいとお願いしているのですが、要領を得ないことばかりを呟かれて」
「……」
げっそりと濃く描かれたクマ、生気のないうつろな瞳、半開きの口から唾液の筋が流れている。
まるで病人――いや、死屍鬼だ。もとから近寄りたくないおぞましさを醸し出しているのに、それが数倍になって、これでは使用人達も触れることさえできなかったろう。
「お、お父様……どうなさったの……?」
「……ぁ……ゆ……めが……」
「?」
「……ゆめ……を……」
ぶつぶつ奇妙な呟きを繰り返すさまに、その場の誰もが肌を粟立たせた。
いや、例外がいる。
「夢、と仰いましたね」
「――ラフィエナ様?」
「侯爵。何か悪い夢でもご覧になったのですか?」
ラフィエナは尋ねた。
――侯爵の向こうに、白髪の多く交じった執事の姿がある。
「仰る通り、恐ろしい夢をご覧になられたようです。半時以上前にお食事をとられ、しばらくは落ち着いておられましたが……徐々に、恐ろしさがよみがえったご様子で……」
「まあ、そうなの」
ラフィエナは微笑んだ。
「どのような夢をご覧になったのか、教えてくださいな」
「あ……あ、ぁ、あぁああぁあ……!!」
「お、お父様!?」
「わ、わ、わ、儂は、儂は、儂が、あぁあぁあ――……」
そうしてこの日、最もおぞましい光景が繰り広げられた。
半狂乱になった侯爵は頭をかきむしり、己の悪夢の内容を片っ端から垂れ流し始めた。
かどわかした娘。目を付けた娘。買った娘。若く美しいそれらを寝室に引きずり込み、時に従僕に押さえつけさせ――
恐ろしいのは、夢の中で、侯爵がその娘達本人になっていたところだ。
魔物のごとき自分自身にさんざん辱められ、痛めつけられ、ボロ雑巾のように放り出された後は、妻の手によって死ぬまで鞭打たれ、切り刻まれ、やがて袋詰めになって――……
耳が腐りそうな、胃の中身がせりあがってきそうな内容に、周りにいた面々の顔が盛大に引きつってゆく。
これは何かの呪いか。それとも病か。
それとも。
「わ……わ、私は、しょ、所用を思い出した! これで失礼するっ!」
「わた、私も、家人が心配するといけないので、これでっ」
真っ青になった男どもは、沈みかけの船から飛び出すように慌てて逃げ帰っていった。
単に侯爵の様子に怖気づいただけの者もいれば、この異常な出来事の原因に思い当たって恐怖した者もいる。
最終的にその場に残ったのは二名だけだった。
ラフィエナ達は「あら?」と首をかしげた。むしろ二名も残るとは。
「あなた方は急なご用事などないのかしら?」
「……ありませんよ」
「…………私もありません」
エヴィネリーツェに笑われ真っ赤になっていた二十歳程度の青年と、カルミーナに踏まれて本望な三十代男の二人だった。
妙な取り合わせが残ったものだ。しかもどうやら、おののいてはいるが、居合わせた者として見届けるべきと判断し、この短時間で覚悟を決めたらしい。
(これは、あなた方が?)
さらに、声には出さず視線で問いかけてきた。……令嬢の取り巻き用として集められたに過ぎない男ども、そのはずだったが、もしや女に溺れてさえいなければ有能なタイプだったか。
侯爵の狂乱はその後も一時ほど続いた。その間、女性の使用人の半数は恐怖のあまり倒れ、男の使用人は倒れることも逃げることもできず、ひたすらその場で耐えながら待ち続けるしかなかった。
ちなみにレティーシャは早々に失神し、「あ」と倒れて自室に運ばれている。
この世の悪夢を濃縮した時間が過ぎ去り、再び静けさが戻った。うつろなまなざしの男は、数十年ほども老け込んだように見える。
「……侯爵夫人はどうされている?」
しばし間をあけ、どうやらおさまったと見て取り、カルミーナのお気に入りが執事に尋ねた。
「旦那様の看病のお疲れが出た様子で、臥せっておいでです」
「そうか……」
エヴィネリーツェのお気に入りが一瞬だけ女達を見やり、しかし何も言わず視線を前に戻した。
(……なかなかよろしいですね?)
(ええ、そのようです)
(我々がお膳立てせずとも、夫妻に関してはこの二人が収拾を付けてくれそうね)
彼らはラフィエナ達の期待を裏切らぬ働きを見せた。
「緊急時だ、この場は一時、私が取り仕切る」
「は…」
「侯爵を部屋へお連れし、部屋に二人、廊下にも二人配置せよ。女性ではなく必ず男を。――それから先ほどの〝夢〟に関して、詳しい話を聞かせてもらいたい」
「私も同席させてもらおう」
客人二人の要望に、執事は神妙に頷く。
ラフィエナ達はこの場を彼らに任せ、客室へ戻ることにした。彼らの口を封じようとする者の気配はないが、念のために結界を張ってやると、彼らは躊躇わず感謝を告げた。意外に出来の良い男達だった。
◇
「…………」
「あ……姫様! お目覚めになられましたか……!」
「……わたくし、どうしたの……?」
「お、……お倒れに、なられまして……」
侍女は涙ぐみ、ハンカチで目もとをぬぐう。
窓の外はすっかり暗くなっていた。
「お夕食は、いかがなさいますか?」
「……いいえ。いらないわ……」
寝台の上で、レティーシャはか細い声をもらし、顔を両手で覆った。
さもあらん。あのような恐ろしいことがあったのだから。
だが侍女は、つとめて明るい声を出した。
「姫様、こちらをご覧くださいませ」
「……こ、これは……!」
「はい! つい先ほど届いたのです」
侍女の手にあるのは、一通の手紙。その封蝋は、見慣れた王太子のものだった。
「お返事をくださったのね……!」
「ええ、ええ、そうですとも!」
感激に潤む声音に、侍女も涙がぶり返しそうになったが、ぐっとこらえた。
「では、御用がありましたらお呼びくださいませ」
「わかったわ、ありがとう!」
気を利かせた侍女が部屋を辞し、上半身を起こしたレティーシャは、ふふ、と笑んだ。
――ちなみに。レティーシャは、気を失ってなどいなかった。
あの場から自然に抜け出すには、失神するのが一番だったのだ。
寝台に横たえられ、侍女達が「おいたわしい……」と涙ぐむのを聞きながら、「困ったわ……これからどうしましょう。お父様ったら、あんなふうになってしまうなんて」と今後の対策を考えていた。
(あの方々が、何か酷いことをなさったに違いないわ。お父様も、きっとお母様も)
けれどようやく、王子様からお返事が来た。しばらく途中で握り潰されていたようだけれど、やりとりが再開できるなら。
(謹慎はいつ頃解かれるのかしら? 王子様、わたくし、あなたにお願いがたくさんあるの……)
ふふ、と幸せそうな笑みを浮かべ、レティーシャは封をひらいた。
そして、見慣れた便箋に目を落とし。
「…………」
読んだ後、しばし沈黙した。
「…………」
もう一度、読んでみた。
…………。
首をかしげた。
おかしい。
もう一度、読んでみた。
「…………」
変わらない。
見間違いかと思ったが、変わらない。
何度読んでも、変わらない。
――親愛なるレティーシャへ――
返事が遅くなってすまない。本当はもっと早くにあなたに告げるべきだったのに、弱い私をどうか許してくれ。
私があなたとこのようなやりとりを交わすのは、これが最後になるだろう。
何故ならば私は、運命の相手に出逢ってしまったのだ。
私がその麗しい姫君に初めてお会いしたのは(略)
嗚呼、彼女はなんて美しい方なのだろうか!
白く透き通りそうな肌、蠱惑的な瞳、奏でる楽の音のごとき声、やわらかな髪から覗く尖った耳の先の愛らしささえ、私の視線と心を捕えて離さぬのだ!
私にはあなたがいるというのに、高鳴る鼓動をおさえることは叶わず、ただ彼女の美しさの前に(以下延々賛美が続く)
もはや私は麗しの精霊の姫君の、哀れな虜囚に過ぎない。
このような愚かな男の存在など、どうか忘れて欲しい。
そしてあなたが、私などよりも素晴らしい男に出逢い、幸せになってくれるであろうことを心から信じている。
――かつてあなたの騎士であった愚かな男より――
(…………)
レティーシャは、無表情のまま沈黙していた。
(……どうしましょう)
そうして、首をかしげた。
次に、反対のほうに首をかしげた。
さらに、反対へ首をかしげた。
……どうしましょう。
おかしいわ。
なんなのかしら。
なんなのかしら。
おかしいわ。
へんだわ。
王子さまったら。
どうなさったのかしら。
おかしいわ。
(…………)
レティーシャは無言のまま、手紙を二つに折り、四つ折りにし、さらに折り、また折り、もう一度折り、……限界まで折ると、半分ほどインクの残っている壺の中に押し込んだ。
(そうね、それがいいわ)
ふんわり微笑み、ペンを手に取ると、文机から通常の便箋の半分ほどの紙を取り出す。
尖ったペン先を、ぐっしょり黒く染まった手紙の成れの果てにぐさぐさと突き刺し、小さな道具を手もとで確認しながら、可愛らしい筆跡でさらさらと書きあげた。
「うふふ……」
窓を開け、先ほどの小さな道具にちょんと唇をつけ、ふうと吹けば、音もなく羽ばたきながら伝書鳥が舞い降りた。
調教と魔術の拘束によって、レティーシャが指定した相手のもとへ何があろうと必ず届ける。
紙をくるくるとまるめ、筒の中にしっかりはめこみ、筒から伸びた紐で鳥の身体にくくりつける。その上からさらに、羽の邪魔にならぬよう薄い防水布を巻いて、何があろうと濡れない、落とさない対策を施す。
(急いで、ちゃんと届けてね?)
レティーシャはとても、とても清らかに、微笑んだ。
◆ ◆ ◆
昼も夜も関係なく、鳥が舞い降りてくる。
とうに日付が変わり、夜明けは、あとどれほどで訪れるのだろう
あの鳥が放たれたのは、いつ頃のことなのだろうか。
「………」
カシムは、震えた。
足もとから小刻みな震えが全身に浸透し、どうしても抑えられない。
これほどの恐怖を覚えたためしは、かつてなかった。
あの鳥が目指しているのは、ほかでもない自分だと確信して。
予想に違わず、鳥はカシムの眼前まで降りてきた。硬直して動く様子のない男を、どこか不思議そうに見ている。
カシムはぎこちない動きで右腕をゆっくり上げると、鳥はどこかホッとしたようにその腕へ趾を絡めた。賢い鳥は防具のはめられていない腕に爪を立てぬよう、角度と力を加減してくれている。
カシムは無言のまま喘いだ。
「……カシム?」
静寂の中、低く涼しげな声がやけに響き、びくりと肩が小さくはねた。
震えが止まらない。瞼をきつく閉じ、壊れそうなほどの勢いで鼓動が耳を打つ。
――これが、あの姫君からの密書だとすれば。
まず、宛先に指定した者以外が先に開けようとすれば、紙に仕込まれた魔術によって発火し、あっという間に読めなくなる。正しい者が一度開ければ、別の者に渡しても問題ない。
さらに中身は暗号文になっているはずだ。文章をあらかじめ設定してある別の文字や記号に置き換え、意味のない文字も随所に挟む。法則を記憶している者もいれば、道具を用いて暗号文を作成する者もおり、あの姫君は後者だった。握りこぶしの中におさまる棒状の小さな道具で、いくつか穴が開いており、穴の横には本来の文字、穴の中には置き換え用の文字が見える。
文字ごとに回転する仕組みになっており、「何月は何番目の輪を何回まわす」と決まっていて……
だからこれを、どうすればいい。
素知らぬ顔で、そのまま渡すか。
――いいや、駄目だ。そんな小細工、通じない相手しかいないではないか。
「カシム……」
カリムの声は、「下手な真似は駄目だ」と言っているように聴こえた。
カシムは観念し、のろのろと鳥の腹にくくりつけられた布を、紐を外し、筒を取り出す。
そうして中身をひらけば、予想に違わぬものがそこにあった。
ざっと読んで、恐怖がいや増す。――これを、読みあげていいのだろうか。解読したら完全に裏切者だ。帝国からは永遠に追放され、命を狙われるだろう。裏切り行為に出た間者など、裏稼業でもまともにやっていけなくなる。
では、帝国に戻りたいか? 奴隷に戻りたいか?
否、だ。
身に染みついた過去が、帝国への恐怖を訴えてくる。しかし、今この時、この場の支配者に逆らうことと比較すれば――
(…………)
解読はせず、カシムはわななく唇を噛み、手紙を持つ手を差し出した。それが精一杯だった。
銀虹の髪の、幽玄の美貌を持つ精霊族が歩み寄り、それを受け取ると、そのまま瀬名に手渡した。
瀬名は紙に視線を落とし、何も尋ねない。
その視線の動きからカシムは悟った。
(読んでいる)
解読器を手に入れたか。それとも、その場で解読できるのか。
黒曜石の双眸が、ゆらりと琥珀の輝きを帯びて男を見据え、まともに呼吸もできなくなる。
瀬名は文面をカシムのほうに向け、人差し指で、ある単語を示した。
「カシム。――こいつの名前は誰で、どこに住んでいる?」
問う声音は、怯える幼子に語りかけるかのよう。
カリムが息を呑むのが聴こえた。
もしや〝狩り〟の目的は。あの地へ〝猟犬〟どもを送り込み、レティーシャを追い込んだ目的は。
自分が今ここにいる理由は、この魔女の本当の獲物は、これだったのか。
(初めから、探していたんだ……奴を……)
精霊族の王子に、呪いをかけた呪術士を。
王太子は王太子やめたほうがいいレベルのポンコツです。
王子達は呪いのおかげで瀬名に会えたようなものですが、それはそれこれはこれ。
殺されかけた恨みは忘れてません。