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Eternity is nothing.

作者: 伊月煌

「永遠なんてないっていうのはさ、どの時代のどの人間も知り得るごくごく当たり前のことなんだよ。」

哲学が好きだという彼女は時々こうして突拍子も無いことを口にする。

その日によって発言のテーマは違う。人の生死というまさに哲学の話から、今日の夜ご飯というどうでもいい、くだらない話まで。

どうやら今日は前者のようだ。

「平安時代を生きたご先祖様はこの世は諸行無常だとも、盛者必衰だとも言ったわけでしょ?すごいと思わない?あの時の権力者は自分が滅ぶことを知っていたわけだ。」

「盛者必衰を謳ったのは平家物語であって、平氏たちが自ら言ってたわけじゃ無いだろう?」

時々こういう的外れなことを言うのもいつものことだ。

勉強は自分なんかより出来るはずなのに。

「うるさいなぁ。君はすぐに揚げ足をとる。でも平家物語は世に広まった。きっとその後の権力者は否が応でも盛者必衰という言葉が頭に残ったはずだよ。」

それに、と彼女は続ける。

「終末論はいつの時代もどの宗教にも存在する。仏教にもキリスト教にもある。それは自分たちの人生が永遠のものじゃあないってことを知ってるわけでしょ。」

話の脈絡がないこともいつものことだ。

だから自分は決まってこう尋ねるのだ。

「……要は、何が言いたいわけ?」

「永遠なんてない。もしかしたら、永遠だと思っていることはこのあとすぐになくなってしまうかもしれない。」

だから、

「思い立ったが吉日ってね。」

「それ、意味違う。」

そう突っ込むと彼女はむす、とした。

「君は本当に……つまりね。思ったことは即行動に移さなきゃいけないなって思ったんだ。」

結局突拍子も無い話だった。

何がどうなってそんなありきたりな、わざわざ報告しなくてもいいような思考に落ち着いたのか。

しかし、自分はこの中身のない彼女の演説が意外と好きだったりするのだ。

「で?何か行動に移すことはあるのかい?」

「それがねえ、何にもないの。」

ほら。

このオチも読めてた。

「ああ、でも。」

君と、こうして話していたいとは思うかな。

自分は虚を突かれた。

予想だにしない言葉だった。

「……それ、は、光栄だ。」

「いろんなものを一緒に観に行きたいんだ。付き合ってくれる?」

断る理由はない。

彼女の演説のネタが増える、そう思うといろいろなところを観に行きたいと思えた。

自分は首を縦に振った。

「じゃあ、手始めに」


明日はどこに行こうか。


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