第八話 絡まりくるくる
一部内容を改訂致しました。ついでにサブタイも。
ここはあらゆるものが辿り着けない。
不可侵領域。
地球の最深部―核−。
そんな星の中心に、彼女はいる。
少女はそこで微睡んでいた。
ここに、最早地球の核は無く、少女が孵化する為の寝床。
地球は、卵の殼であり産まれいづるは、雛である少女だ。
知らないのは、地球と少女以外の全て…。
卵が割られたらどうなるか?
まだ誰もわからない。
いや、過敏な動物達は気付いているかも知れない。
生い茂る植物や、共生する小さな小さな彼等は、悟り諦めたかも知れない。
だとしても、人は無理だろう。
その瞬間に人類は
●●●のだから。
微睡みは終わる。
「さぁ…起きよう…」
■■■
始めに観測された『ソレ』は、南極の到達不能極基地からだ。
「嘘だろ?」
基地の誰もがそう呟くしかなかった。
それほど異常な光景が、彼等の前にある。
近代利器を使い、漸く極僅かな人数が、行くこと事を赦された極寒の大陸。
未だ、限られた人間でなくば、行くことさえ出来ぬそれが南極…。
見渡す限りの氷海。
固く凍った大地。
侵入を拒む氷の塊。
しかし、今はどうだろう?
鉄臭い泥々とした肉汁と、黄色い脂の海。
骨によく似た石のような柱が乱立し、氷の大地は消え、悍ましい内臓にしか見えない物体が占拠し、そこからは人間の手足や頭が見え隠れしている。
(この世の地獄だ…)
隊員達は、成す術がない。
絶対的な死。
この地に来るからには、皆ある程度は覚悟してはいた…いたのだ。
しかし、眼前の地獄に対してはしてるはずがなく…、食い入る様に見つめるしかなかった。
《ギャッギャッ!ギャッ!》
突然、基地の外から凄まじい怪音が響く。
一人の隊員がスコープで、怪音の方向伺うと、氷の大地は隙間なく『赤ん坊』に埋め尽くされていた!
「ヒィっっ!?」
あまりの気色の悪さと恐怖で、女性隊員が短い悲鳴をあげる。
すると怪音は止み、代わりに数多の視線が隊員達を襲う。
互いに外せなくなる視線。
静止したような時間。
それは、永遠にも等しい時間。
「まいた たね め を だした」
どこからか言葉が聞こえる。
「たくさん たくさん まい たね」
いや…どこからではない。
「よい つち に たね まいた」
『赤ん坊』達が発しているのだ。
「たくさん の ばしょ にたくさん の たね まいた」
いや、『赤ん坊』の姿をしたなにかが喋っているのだろう。
「わたし は め を だした」
声が揃う。
《ほしのすべてにわたしがなるの》
高らかに紡がれる、終わりの言葉。
合図の言葉と共に、『赤ん坊』達は一塊になると、肉体が互いに融合しあい、やがて氷山より巨大な一人の赤ん坊に変じた。
『顔だけの赤ん坊』に。
すぅっと口が開き、
『赤ん坊』はこう言った。
「たね は め を だした さぁ つぎは はな ひらき さく こと だ」
言葉の終わりを待たず、『赤ん坊』に真っ二つに割れ、中からさらに巨大な『蔓』が幾つも幾つも
飛び出てくる。
奇妙な『蔓』からは、なぜか石榴の様な液体が滴り、芳香は酒に似たものだった。
芳香に引き寄せられた隊員が、基地から外に出ていく。
危険だと本能は警鐘するが、酩酊した頭には理解出来ない。
全ての隊員が出てきたのを確認した『蔓』は、器用に己を絡ませ、そのまま…隊員達を『喰った』。
表現が少し変わっただけですが、気になったんで…。




