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第七話 とある花壇

種の次は、植える場所を用意する。

TVやネットに巷の噂にのぼる事件…。

関係ないって思ってた。

当事者になるまでは。





■■■





飯野紗英イイノサエの日々は変わらない。

今日も、かわり映えのない何時もの授業。

いつもどうりの時間に終わり、いつもどうりの部活に友達。

いつもどうりにまた明日…になる日だったのに…。


「…なにこれ」


朝、登校したら白い網みたいのが、学校全体を覆っていた。

『ソレ』は、屋上から校門まで絡まり縺れながらどんどん地面から生えて、先生や学生達を捕らえてゆく。

網は変化し、繭状に形を変え、色は白からピンクに、ピンクから赤にドンドン染まっていく。


「あぁ…あぁ…っっ」


あの色は…!

みんなの!?

早く逃げなきゃっ!

逃げなきゃいけないのにっっ!

私はただ、『ソレ』を見ている。

体が震えて動けないのだ…。

『ソレ』は、とうとう私を飲み込み…全部が一つの繭になり、『今日』は閉ざされた。





□□□




トクン トクン トクン… (チュゥ〜〜〜…チュゥズチュ)


やさしい音がする。

いつか聴いた音。



トクントクン…

(ビュチュゥゥィズルルル…)


そうだ。

おかあさんの鼓動オト



懐かしいなぁ。



トクントクン トクントクン…

(カリカリカリ…カリカリカリ…カリカリリ)


ずっとこのままで。



「聴いてたいな…」



薄く目を開いてみたら、橙色の薄暗い景色が、私を囲んでいる。

ここはお腹の中?

あるはずのない胎児の頃の郷愁に、私まぶたを閉じる。

私は、きっとこのまま…還るんだろう…。

人になる前の曖昧な受精卵。


繭の中のみんなは…きっと…私と同じ。


私たちは還るんだ…あの揺りかごに。


怖くないのは還るからだ。

消えてしまう自我…戻る肉体…。

大丈夫、おかあさんの中に還るだけ…。



あとは眠るように…。



「おやすみ…おかあさん…」



後に残るは何も無し。



「かわいいあなた、ゆっくりねむりましょう?



なぞるその手は誰の手か?

知るは赤し繭どもぞ…。

まだ死んでないかもよ?

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