第三話 枝葉と餌戯曲①
蠢き始めるモノだった少女…。
<速報をお伝えします。先程、都内の改築中のビルから落下した鉄骨数本が、通行中の女子学生を直撃。ただいま懸命な救助活動中です>
ピッ!
<皆さん今晩は。本日の最新ニュースです、先日起こった鉄骨落下による死傷事件の続報です。被害に遭われた都内在住の○○○○さんは―>
ピッ!
<続いて次のニュースをお伝えします。●●付近にて、行方不明が多発しています。警察はこの事に関し、何らかの組織ぐるみによる事件性が高いと判断し捜査員を更に増員するとの発表がありました>
ピッ!
<〜での事ですが、以前として○○さんの行方を追っています>
ピッ!
<当時現場にいた作業員に話を聞いたところ、『普段から耐久ロープはボロボロでいつ切れてもおかしくなかった』との証言や会社ぐるみの隠蔽が明らかにされ…>
ピッ!
<速報です!警察はこの一連の失踪事件をテロと発表しました!繰り返しお伝えします!>
TVや新聞、ネットではこの『謎の失踪』を毎日報道している。
今やこの事件は国内に留まらず、諸外国でも多発化していた。
−そして、時が経つにつれ事態は混迷の一途を辿り、遂には行方不明者が… 百人を越えた。
たった一ヶ月で。
■■■
残業で帰宅が遅れた亀頭一朗は、ぶつぶつとビール片手に、愚痴を溢しながら夜道を歩く。
「毎回毎回あの腐れ整形デブ女がっっいい加減にしろよなぁ?いっつも課長に甘えやがって!どうせ媚びるしかネーならまず俺に媚びろよ!?くそがっっ」
グビッと呑み掛けのビールを一気に干す。
後に残るのは、爽快感では無く、今日も繰り返された苛立ちと劣等感だけ。
「〜っちっ」
彼は空き缶を投げ捨て…、投げ捨てたはずだ。
だが、ソレは宙で留まり…ゆっくり…ゆっくりと…消えた。
「は?」
地面に落ちずに消えた。
「いけないよ」
声がした。
「ゴミを捨てるなんていけない」
少女がいた。
投げ捨てた空き缶が、落ちるはずだったその位置に、突然少女は現れた。
「おま…いつから…」
暗がりから現れた少女に、多少驚きはしたが別に怖がるような出来事ではない。
ない?
本当に?
亀頭の頭は、少女に対し警報を鳴らす。
口が渇き、冷や汗が止まらない?
なぜ?
呼吸は荒く、心臓は激しく脈打ち、段々手先が冷え、震えが出始める。
「いつから?始めからいたよ?」
少女は、一切微動だにせず、そのまま滑る様にスゥーとこちらに向かってきた。
有り得ない動きに、益々怯えを深め、迫る少女から離れようとした瞬間…、
「ヒイぃっ!?」
少女が居た。