第二話 秘密の姫に願う
あるモノ視点と始まり。
私は何事にも興味がなかった。
ただ産まれたからには、生きなければ。
それは命ある者全てが持つ義務だ。
そう思っていた。
だからだろうか?
私は、死に対しても恐れはなかった。
生死は表裏一体で、死ぬ事もまた義務なのだ。
と、
たしかに わたしは
そう、
おもって いた の に
痛い痛い!寒い!熱い!焼ける!震えが止まらない!体がわからない?どこに!あああ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!バラバラにぃなっだぁ゛ぁ゛苦しい苦しい苦しい!!なんだこれなんだこれなんだこれ痛い痛い痛い血がわたしの中身が千切れて!!?わからない!なんでどうしていやだいやだ!!!沸騰する脳が!破裂した目が!皮膚がひび割れて!?筋肉がぶちぶちぶちぶちぶちぶち?ぜんぶがぶちぶちするぅぅぅ!!!痛い痛い痛い怖い怖い怖いいやだいやだいやだ!!ああああああああぁぁぁアアアアアアaaa−−−−!!!!!
はぜる わた SHi ガ
Waか ラ なく 死 ヌ?
死
「いやだ」
それだけ は
「いきる」
あ あ そう か
「生きる」
初めての執着を自覚した。
糞だ。
生まれたからには死ぬ?
生死は表裏一体だと?
必ず訪れる?
私は力の限り吠えた。
生きたいと!
無数の鉄骨が私を覆い尽くし、身体を押し潰す。
重みに耐えかねミンチになり、散らばってゆく中でも私は叫ぶ!
生きたい生きたい生きる生きる生き残る死にたくない!私は何がなんでも生を離さない!生きるんだ生きるんだ!死など誰が受け入れるものかっっ!!
私は ずっと 生きるんだ!!
死などいらない!!
生!!
ワタシ!!
生 欲 死 不 要
「貴方はどうする?」
誰?
「貴方は生き残る為に何でも出来るか?ありとあらゆる事を生存に搾りこなせるか?ただ一つの過程の為に目的も意義も無く他を浅ましく貪り尽くせるかね?全てを糧とし『個』として生にしがみ付き続けられるかね?」
うん
「もし、貴方が生存という『非日常』のみを貪欲に欲しそれらを許容するならば…」
問うまでもないよ
「宜しい!貴方に譲ろう!」
なにを?
「全ての生をさ!」
全て?
「貴方の生への執着は最早概念に等しい…本能などとは言えないね。ワタシの兄弟のようだ!貴方は供儀するに値する」
潰れた目玉が写し出したのは、異形の…
「貴方から視ればそうだね、だが我々からみたら君ら『人間』もそんなものだよ?」
話してる間に、異形から這い出したのは、緑と青と赤とが混じり会う塊…いや皮膚に似たものが歪にある。
所々には赤ちゃんのような手足が、生えて忙しなく動いている。
「これは貴方の肉の細切れを回収し再構成とワタシの肚を混ぜたものだよ」
あれが私…
「正確には貴方に成る為の部品だ、なにせ今の貴方の意識はこの中にあるからね」
異形の足元と言える場所には、白い…なんだろ?
「貴方の頭蓋だ」
上から声がする?
わかった…いま…。
私はこの頭蓋なんだ。
「まぁ色々説明したところで長くなるだけだし、すでにもう長い!ワタシが飽きてきたよ?兎に角咄嗟の処置でね?無事な箇所を纏めたら、収納する器が、これしかなかったんだ。まぁどうせ小さな体で無くなるのだし、あまり気にしない事だ」
異形は『私』を引き寄せ、囁く…。
《君は唯一の個体になるのだからね》
その笑みは酷く…甘かった。
−それから私は異形と話した…色々と。
「では、ワタシは行くよ良き恒久を送りたまえ」
別れたあと…私はクティーラにまた会いたいと願った。
きっと有り余る時間は、それを可能にする…。
さぁ…
私は
…これから
「ぎゃあアアア−−−!?」
生きる為に。
ゾブリ…!
その日一人の少女は亡くし得た。
同じ日に一人の人間は消えた。