第一話 蕃神とモノ
某秘密の姫が出ますが主人公ではありません。
あくまでエッセンスとしての登場。
ガチ勢様はスルー願います!
人生は簡単に変化する。
毎日流れる報道は、当事者以外はなんて事のない『ニュース』
画面越しの悲惨な事件は、いとも簡単に娯楽になり果てる。
なんとも無慈悲な話だ。
しかし、私たちは大衆というオペラグラスを常に掛け、
ありとあらゆる事件は『演劇』となる。
歌劇?
喜劇?
悲劇?
風刺劇?
神秘劇?
現代劇??
仮面劇?
それとも残酷劇?
繰り返される数多の演目を、私たちは観劇している。
安全な場所から。
−当事者になるわけがない−
という、意味のない根拠を片手に。
そんな何でもない日々だ。
さて、
ここで事件に成らず、駄作として世から消え行く定めの脚本があるとしよう。
「貴方はどうする?」
盲目なオペラグラスを外し、見えるのは…
無情で、
残酷で、
冷徹で、
意味のない虐殺。
無駄な繁殖、
黴の生えた価値感、
虚偽にまみれた世界。
そうして、問い掛けたのは蕃神。
答えたのはモノだ。
「貴方は生き残る為に何でも出来るか?ありとあらゆる事を生存に搾りこなせるか?ただ一つの過程の為に目的も意義も無く他を浅ましく貪り尽くせるかね?全てを糧とし『個』として生にしがみ付き続けられるかね?」
足元には、ばらばらに散った人間だったモノ。
「もし、貴方が生存という『非日常』のみを貪欲に欲しそれらを許容するならば…」
モノは『是』とする。
「宜しい!貴方に譲ろう!」
蕃神はとても愉快だ。
群体の中の一つだったモノは、己という個体存続を選んだ…それは、今までいた群体基盤が消滅する道であるというのに、だ。
手違いがあっては面倒なので、
失礼ではあるが、モノの脳の残骸と深層意識に接続し、再度確認をしてみたら…
躊躇いがなく、尚且つ一時的な選択では無いと判った。
あらゆる角度から覗き探りみたが、滑稽を越えている。
【生存本能】
【存続意思】
【個体維持】
蕃神は敬服せざる得ない。
『種の存続』はこの群体にとって、何より優先されるはず。
だが…
「貴方には要らぬようだね」
これほどの個体ならば、例えモノごと融合し繁殖したとして、上手くいく保証はないだろう。
胎内から侵食され終わる。
他にも幾つか予定地はあるのだ。
ならば良い。
「では、ワタシは行くよ良き恒久を送りたまえ」
去る前に、モノは蕃神の名を訊いた。
この尽きない『生』を分けて貰った蕃神の名を、衰えぬ命の記憶に加えたくて。
「名かい?ワタシの名は―、」
−Cthyllaと父等は呼ぶよ−