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Sna Knot《スネイノット》  作者: アリャハバキ
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蛇造人間ゴーゴン

 20XX年、日本のウロボロス県ミズガルズ市。そこは蛇型の宇宙人達が天敵「アイギス」達を根絶する為に人間と協力し兵器を開発する為の人工島。そこで繰り広げられる人間、蛇、アイギス……そして、とある少女の物語。

 町外れの森の中にあるボロボロの屋敷。人間が住んでいるとは到底思えない廃家からけたたましいベルの音が鳴り響く。

「五月蝿いですわね。こんな時間に電話を掛けてくるなんて非常識でなくって?」

 ベルを鳴り響かせ続ける電話にしかめっ面をしながら嫌々と腰を上げ、女は電話の受話器を取る。

「はい此方、毎度お馴染みアイギス退治請け負いサービス! こんな早朝に電話を寄越してくださるなんて、相応の報酬を用意してくれるんですわよね?」

 女が丁寧かつ威圧感のある対応をするが相手側はどうもそれ所ではない慌てた様子なので女は溜め息を吐きながら聞く。

「……場所をお言いなさい。いい? 報酬はタンマリと用意するんですわよ。」

 そう言って受話器を置くと仕事に取り掛かる為の支度をし始める。そこへまるで動く紐のような生き物達が女に声を掛けてきた。

「え、何何?お仕事なの?ヤッター!」

「戦闘か……いいか?今回こそ俺様の指示に――」

「今回の獲物は美味であって欲しいんだな。」

「ゲヘヘ! 喰う前に存分にブッ殺させろ!」

「ブツブツブツ……。」

「あ~、働きたくないよ~休もうよ~?」

「イェーイ! コイツぁ、蛇ィな仕事の予感だゼ!」

「依頼ですかお嬢様、御供いたします。」

 それぞれ異なった性格の生き物達は人語を喋る八匹の蛇だった。

「ああん、もう! さっさと支度なさいアレキサンダー! 今のは一人ではなく全員に言ったのですわよ!」

 八匹の蛇達は全員、名前がアレキサンダーのようだ。そのアレキサンダー達が雑談を始める勢いで会話をし始めたので女は我慢できなくなり叫ぶ。すると八匹の蛇達は各々、ワクワクしたり渋々だったりと様々な反応をしながら女の首や腰、腕や脚等の至る所に巻きついていく。

「ふぅ……それでは、蛇造人間(ゴーゴン)マナコ・ハバキリ! アイギス退治に出発ですわ!」



 高層の建物が並ぶ街の中、人々と人間と同じサイズの蛇のような者達が悲鳴を上げながら何者かから慌てて逃げ出していた。

『ニンゲン コロス ヘビ クラウ』

 それは巨大でつたない人語を話す頭は牛で屈強な人間の身体を持つ化け物、アイギスだった。

 牛型のアイギスは小型や中型のアイギスを操りながら手にした棍棒のような物を振り回し大暴れをしている。そして、目の前に一匹の怪我をして動けない蛇を見かけると捕食する為に手を延ばす。蛇は目に涙を浮かべながら諦めかけたその時――

『……ナンダ コレハ』

 牛型のアイギスの手足にいつの間にか数匹の蛇達が巻き付いていた。牛型のアイギスは振り払おうと暴れるがその蛇達はビクともしない。

「うふふ。甘いですわよアイギス! その蛇……アレキサンダー達はロープや鎖よりも頑丈でありましてよ。」

 八匹の蛇、もといアレキサンダー達を自分の手足のように操る女、マナコ・ハバキリはそのまま牛型のアイギスを持ち上げ軽く投げ飛ばした。

「ほら、ボヤッとしてないでさっさとお逃げなさい!」

 助けられた蛇は礼を言うとスルスルと逃げていった。それから間もなく、投げられた牛型のアイギスは起き上がる。ダメージは殆ど無い様子だったが頭に血が登っているのか興奮している。

「あぁら、まだ生きてらしたの?」

『コブン タチヨ アイツ ヲ コロセエエエエ』

 牛型のアイギスの叫びに呼応するかの様に複数の小型中型のアイギス達がマナコに襲い掛かって行く。

『コロス コロス ニンゲン ハ コロス』

「雑魚でも数が多いと厄介……とは言え、雑魚は雑魚ですわよ!」

 余裕を崩さないマナコはアレキサンダー達を使い、小型中型のアイギス達を難無く振り払っていった。

『キサマ ナニモノ ヘビ デモ ニンゲン デモ ナイ …………ナニモノナン ダアアアァアア』

 叫びながら突っ込んで来る牛型のアイギス。しかし単調な攻撃がマナコに当たる筈も無く軽く避けられる。

「人でも、蛇でも無い者、蛇達によって造られた蛇造人間(ゴーゴン)よ。冥土の土産に以後見知っておきなさい!」

 マナコはその辺にあった大きな瓦礫をアレキサンダーを使って巻き取る。そしてそれを鉄球のように牛型のアイギス目掛けて振り降ろした。致命的な一撃を脳天に喰らった牛型のアイギスは倒れ動かなくなった。

「そろそろいいですわね。ほら起きなさいアレキサンダー、ご飯の時間でありましてよ。」

 マナコによって起こされたアレキサンダーは腹の部分に巻き付いているアレキサンダーだった。どうやら一匹だけサボっていたようだった。

「ご飯、ご飯の時間なんだな?」

「ええ、分かったらさっさと済ませなさい。」

 すると起こされて気怠げだったアレキサンダーは目の色を変え、自分より何倍も大きな牛型のアイギスに喰らい付いて行った。牛型のアイギスをあっという間に呑み込みあっという間に消化するその様はまるで手品を見せられているようだった。

「アイギス退治、完了ですわね。」

 暫くして物陰から隠れていた人々や蛇達が姿を現し、マナコ達の活躍に大きな歓声を上げる。

「ありがとー、蛇造人間(ゴーゴン)!」「蛇造人間(ゴーゴン)様、素敵ー!」と様々な歓声が上がるとマナコは少し照れ臭くしていた。

「早朝に呼び出されて少し気分が悪かったのですけど……ま、たまにはこういうのも悪くありませんわね。」

 次々と沸き上がる歓声に満更でもない反応をするマナコだった。が――

「ウフ。皆様、盛大な拍手喝采ありがとうございます。私がこれからも活躍できるよう、皆様からはこれからも賛辞と莫大な寄付を宜しくお願いいたしますわ!」

 マナコが莫大な報酬を民衆に求めだした途端、空気は凍り付き、人々と蛇達から笑顔が消え去ったのだった。

「あら?私、変なことお言いになって?」


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