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一滴の波紋【原文】・1巻の1  作者: 藤田幸人(ペンネーム)
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ある日の日記・4

      4


また、キズつきやすい自分のデリケートな心をもってして、大家さんに金を借りに行った事もあります。


何とも惨めな思いをその時、味わいました。


白い目で見られながらも、そうしなければ次の給料日まで食いつないでいく事ができなかったのです。


また、古ぼけた背広をボロ風呂敷に包んで質屋へ行った事もあります。


その結果は当然軽くあしらわれる始末です……


などとあの頃、苦しかった事も、


今思えば懐かしい楽しい思い出にとって変わっているものが一杯あります。


それらの事は今後、もしそのようなことを打ち話せる機会が出来たとしたら、


その時お話しすることにしましょう。



と言うことで、随分と横道にそれてしまいましたので、本筋を元に戻さなければなりません。


とにかく自分が本当に訴えたい事は、もっともっと後になりそうだからです。


今、午前一時です。


これから徹夜してこの先、終わりまで書いてしまおうかと思っています。


しかし正直なところ、いい加減、放り出したい気持ちになっています。


頭もボケてきましたし、自分の本当に書きたい事を書けるかどうか?…も疑問に思ってきましたから……


しかし書き続けなければなりません。


もう後がないんです。


期限が残っていないんです。


一歩遅れれば、貴女は僕の手の届かない所に行ってしまいそうな気がするからです。


とにかく気力を奮い立たせて、この先を続けていきます。


お読みになっている貴女の方も、いい加減ウンザリしていることと思いますが、


僕も辛抱して書いているのですから、貴女も辛抱してお読みになって下さい。


イヤイヤ、本当に本当は、こんなせせこましい難儀な仕事はほっぽらかして(放って)、ただ自分の口から一言、


『好きです、付き合って下さい』と言えば、それで事は解決するのだけれども。


しかし最初に断ったように、


僕にはその一言さえ言う勇気がありません。


だから仕方なく書いていくしかないのです……


本当にしょうのない(情けない)自分だと嘆きます。


「しかしそんな弱音を吐いている暇はないのだ!続けるしかないのだ!」



そういうあんばい(具合)で、一月(ひとつき)の内、最初の十日くらいしか行けず、


またスナックの方にも月一、二回くらいしか行けない状態の為、

先方の方も何だか変な目で見ているような感じがしてきました。


だんだん行き辛くなってきたのです。


そうこうしている内に、いよいよアパート暮らしも難儀な事となり、その土地を離れなければならなくなりました。


寮に入って、もっとシッカリと身をかためざるを得なくなったのです。


その引っ越しをする前の日に、よっぽど自分の心を打ち明けようかと店へ行きましたが、

とうとう打ち明けることが出来ませんでした。


それでそのまま何にも告げずに別れてしまったのです。


今思えば、それが僕たちの縁が切れる最大の原因となったのです。


一言いっておけば、あるいは僕たちは結ばれていたかもしれないのです。


一言、言っておけば……


その一言を言う勇気があったら……


しかしそれが運命というものではないでしょうか?‥


人の世の定めというものではないでしょうか?‥


僕のお袋がよく言っていました。


本当に好きな人とは一緒になれないと……


そういう苦い経験があるから、今、僕は貴女に訴えたいのです!


その貴重な一言を……


そのわずかな人生のかなめとなるものの何たるかを……


もうすでに手遅れなのかもしれませんが……


また、話しは元に戻ります‥


その時はその時です。


また新たな人生が開けてくるものと思います。


断っておきますが、そういう風な事で、


僕と彼女との間には何の関係も結んでおりません。


込み入った私的な会話もかわした事もありません。


ただ酒に酔って冗談を言ったり、些細なことを言い合ったりしたくらいで、


後は、ただお互いに遠くから恋心をあたためているくらいのものでした。


ただ今もって信じている事は、


彼女もまた僕が彼女を思っている以上に、僕を思っていたのでわないか…?


ということです(違うかもしれませんが?…たぶん)。


ですから僕が彼女の目の中から姿を消した時の彼女の悲しみようは、いくばくであったか?(それほどでもないか?!)


それを思うと、今でも胸が痛みます。


しかしもう無事、彼女は結婚したことだし、


今はもう、新婚の楽しい生活で過去の悲しみはその数倍の悦びとなってかえってきていることでしょう。


今はただ、それだけを祈って遠くから彼女を見守っているしかないのです。


しかし僕が結婚をまで考えるほど思い詰めた恋にぶつかったのはこれがはじめてでした。


だから後のことになりますが、


彼女が他の男性と結婚したという事を聞かされた時には、無性に涙が出てしかたがありませんでした。


それも人前も気にせずです。


それほどの事ですから、失恋の後の僕の悲しみようはいかほどであったか……、


貴女にも想像がつかれると思います。


もう彼女の事を話すのはよしましょう。


もっともっと書かなければいけないことだけど、もう疲れまし。


ただ僕にとって、彼女とその家族の人達が、僕に与えたた影響はすこぶる大きく


たとえ何の縁もなくなった今となっても、忘れられない存在なのです。


それでこれからも出来たら付き合っていきたい人達だと思っています。


それで本題に入ります。


と言っても、もう僕にはこの先の文章を考える根気がありません。


眠くて眠くてどうしようもありません。


この期におよんで何を言ってるのと、貴女は呆れられるだろうと思いますが


要するに一度会ってお話しすれば、 貴女への思いや、それにまつわる今現在の自分の苦しみも解決する事なんです。



今現在


ある年五月三十日午前三時半です‥


これからこの殴り書きしたものを清書して手紙としてまとめ、今日中に誰かの手を経て貴女の手元に届くものと思います。


それを読んで考えをおまとめになってから、明日三十一日土曜日の定時がくるまでにそのご返事をお待ちもうしております。


自分の口から言えなければ、人を経てでも構いません!。


とにかく是非とも貴女と一度お話しがしたいのです。


それについての返事の良し悪し云々は別にしましても、とにかく一度話し合わなければどうにも解決がつかないのです。


会社に居る時は普段の習性で、まったくとぼけた態度をとって、

とっつきにくいかと思いますが、それでも何とか勇気を出して ご返事下さい。


切に願ってやみません!。



最後に。


普段の会話においては このような形式ばった言葉使いは 一切しない‥


と言うよりも、


ここに記した言葉とは似ても似つかぬような、くだけた言葉使いをいたしますから、この点はご了承下さい!。


では喜報をお待ち申しております。




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