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一滴の波紋【原文】・1巻の1  作者: 藤田幸人(ペンネーム)
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ある日の日記・37回

三十七回


 声→『会社に行っても見れるわ』


 ‥などと言って、どうやって俺のことを見ているんだろうか?

 サッパリ分からない!?


 望遠レンズを使って、カメラででも見ているんだろうか?

 それは“貞子”!?‥じゃなかった、さだかでわないが。


 しかし今日も1日、君達から見つめられている気がしていた‥‥

 本当かね!?‥‥


 チョッと行き過ぎじゃないの!

 ここまでやって、ハイおしまいなどと言われたんでは、全く俺一人バカを見ることになる。

 そのような気持ちを少しは汲んで、やっているのだろうか?



 昼メシのことで、岡本のオッサンが聞きにきた。

 俺にはお金がないから、仕事に出さえすれば、その分、金を使わなくてすむだろうと思って出ていったのに

 あにはからんや、食堂は休みで、出前たのむとおいでなさった。


 こりゃ~‥あてがハズレてしまった。

 これに金を使ったら、また自分のふところは無性に寂しくなる‥‥が、仕方がない。

 それでラーメン・ライスをたのんだ訳だ。

 これが一番安上がりするし、お腹も大きくなるだろうしね。

 ただスタミナの方がチョッと心配になる。

 ここんとこ随分あちらこちらで精力をすわれているみたいだからねぇ~‥

 これで身がもつのかと、今後心配であるが。

 しかし君の為ならやむを得ないことだ。

 この会社に入る時に、一・二ヶ月ばかし即席ラーメンきりで過ごしたタフがいの経験が自信をつけていて

 今後、もてるだけはもてそうな気がする。

 その点は心配しなくて良いことだ‥‥と思う。


 それで、次、(いわく

 声→『あの人、あんなのたのんでるわ。お金がないから、あんなのたのんでるのよ』


『可哀想に、ウチ達のために音楽を聴かせてやろうと思ってテープを買ってなくなったのよ』


『お金やろうか』


『そうしたんじゃ、このことがバレてしまうわ』


『ここは仕方がないわ。可哀想だけど、ほっておくしかないわ』


『本当に可哀想に。愛の為に、あんなに尽くしている人を見たのは初めてだわ』



 ‥確かにそうですよね。

 自分でも、これだけやれたら大したものだと、ふて腐れぎみにも納得(満足)しています。


 それもめったに、まれにしか好きになれない娘を相手にしているからなのである。

 もし君を捨てても、また、いつでもかわりの娘がすぐに手に入るとゆう程度の女性(ひと)であったら、こんなにバカなくらい、しつこく、また尽くしはしないだろうと思う。

 君であるからこその成せる(わざ)なのである。


 その為にこれまで、今まで、予想もしていなかった知恵も湧いてきたし、ド胸も精力も湧いてきた。

 君が居なかったら、とてもこのような生活をしていたんでは、とうの昔にバテテいたことだろう。


 しかしいまだに俺はバテないし、また今後も決してバテないだろうと思う。

 どのような無理をしても、どのような苦しみを受けても、決してバテないだろうと思う。

 ただ君ゆえに‥‥


 などと、またキザっぽいことを言ってしまったね。

 本当にこのような言葉は、文面でしか表せないことであって。

 実際、現実で、このような会話をしていたら、たちまち誤解でも受けて、ひじ鉄砲でもくらうことだろうと思う。

 だからこそ、こうして文面で語り合うことも、一風違った味がして良いというものだ。

 分かるね!

 今になって分かった、俺の方も‥‥ねっ!


 声→『どうして藤田さん、ウチの事そんなに好きなのかしら』


『本人にも分からないんじゃない』


『モタイさんが見ているって感じているだけで、あんなに元気が出るんだもん。一所になったら、もっと元気が出ると思うわ』



 ‥実際、異性を好きになる時には、理屈なんかありわしない。

 ただ、今、言えることは。

 ここまで来て、今、君を失ったら

 本当に、もうこの先の人生なんて、とても味気なく思うだろうということ‥‥である。


 それだけ理屈抜きに、君は僕の心を全占有している訳だ!

 自分でも分からない。

 理屈なんかありわしない。

 もしこのような気持ちが君にもあったなら、どんなに嬉しいことになるかしれないのである。


 しかし悲しいことに、君にはそのような気持ちが湧かないみたいだね。

 それでまた成り行きにまかせるしかないのです‥‥

 僕の気持ちほどにまで高まらずとも、いつか僕の胸の中に飛び込んで来る日を夢見て、今日も、また明日も、また明後日も‥‥このようなことを続けていくしかないのです‥‥


 声→『藤田さんが、そこまで思って苦しんでいるんだから、言ってやったらどうなの!あんまり可哀想よっ。ねぇ‥』


『言わないわ! まだ気持ちがハッキリしないのよ。藤田さんも言ってくれているわ。ハッキリしてからでいいって。だから‥‥それでまた何か書いてくれるでしよう』


 ‥俺は書いてやりたくて書いてるんじゃないんだよ!

 君が意思表示をしないから、このまま終わらせたくなくて、今の自分に出来るだけのことをやっているだけなんだ。


 ‥‥といっても、やはりこのようにして書いていることも、今の僕にとっては楽しみの一つになってわいるが。


 しかし本当にもうこのような煩わしい仕事からは逃れたいものだと思います。


 しかし君はまた言ったね!


 声→『藤田さんの日記を読むのが楽しみなの。だから何にも言わないでいて、最後まで書かせるわ。そしてあの人が帰ると言ってからウチ言うわ』


 ‥本当に本当デスかね!?

 本当に最後になって言ってくれる気さえあったら、このような仕事も苦にしないでやっていっても良いと思うのだけれども。

 今の僕としては、そのような会話も、まったくあてにならない存在ですので、やる気は半々です。


 しかしどうしてこのような言葉がアリアリと聞こえてくるんだろう!?

 その点が不思議でなりません!


 君達の方も、きっとそう思っていることだろうと思う‥‥

 本当に不思議だね!


 声→『藤田君、予定は今月一杯だって!労働基準に、二週間前に届けるよう書いてあるのに‥‥。 藤田君、それを知っているはずなのに、それを破るつもりなのかなぁ~。もう期間が切れてしまうよ』


 ‥本当に言われてみれば、そうだったね。 今までは、やめようという覚悟さえついたら、すぐにやめるつもりでいたが。

 そのようなことを聞かされたら、そうもいくまい。


 それにしたがって二週間、滞在しなければならないだろう。

 やめるんだったら‥‥


 その後、また何か気にくわないことでもあって


 声→『気が変わったわ。あの人のことあきらめるわ』



 ‥とか、どうのという言葉を聞いて、また一瞬にして途方に暮れてしまった。

 実際、今日は疲れているので、弱気なことばかり考えていた。

 ママさんが助っ人に来てくれるまでは‥‥ねぇ。


 それで、もう今度こそ本当に田舎へ帰る覚悟でもしなければならないなと思い

 一応、今日帰って、田舎の方に帰る手続きの手紙でも書いてだそうと思っていた。


 実際、帰るにしても、スグには帰れないんだよ!

 君とのことがハッキリしてから田舎の様子を探って

 また事を決しなければならないのだからねぇ。

 もう今月一杯ということは、諦めなければならないようになると思う。

 君がグズグズしているから‥‥

 本当に憎むべきだよ‥‥君を!





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